デューデリジェンス(DD)の目的と流れと必要性!

M&Aのプロセスとしてデューデリジェンス(DD)があります。

デューデリジェンス(DD)は、M&Aの買い手企業が売り手企業を財務・法務・ビジネスなどあらゆる側面から調査分析することであり、買収実行後の成長可能性や買収価格などを把握するための重要なプロセスとなっています。

今回は、デューデリジェンス(DD)についてその目的や種類、手続きの流れ、必要性などをご紹介します。

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1.デューデリジェンス(DD)とは

デューデリジェンス(Due Diligence、DD)は、「Due(正当な)」と「Diligence(努力)」から成る言葉であり、M&Aにおいて本契約が行われる前に、買い手企業が売り手企業に対して行う企業調査のことを指します。

買い手企業にとってM&Aは大きな投資となるため、売り手企業が本当に投資する価値があるのか、また買収価格は妥当なのかなど慎重に見極める必要があり、売り手企業の経営状況や市場環境、経営上のリスクなどを調査し、得られた情報を元にM&Aの投資判断や意思決定、買収価格の決定が行われます。

デューデリジェンス(DD)は、その調査の目的によって、ビジネスデューデリジェンス、財務デューデリジェンス、法務デューデリジェンス、人事デューデリジェンス、税務デューデリジェンス、ITデューデリジェンスなど様々な種類に分類されます。

2.デューデリジェンス(DD)の目的

デューデリジェンス(DD)はM&Aの意思決定を行うため、以下のようなポイントを目的として調査を行います。

(1)リスクの確認

デューデリジェンス(DD)によってM&Aの意思決定を行うため、最も重要な目的が「リスクの確認」です。

買収対象となっている企業が抱えている問題点や簿外債務など経営上のリスクを洗い出すことでM&A実施後のリスクを把握することができます。

リスクの確認を怠った場合、買収後に想定外のトラブルが発生したり、思わぬ損害を受けてしまうケースがあり注意が必要です。

場合によっては、「ディール・ブレーカー」と呼ばれるM&Aそのものを断念しなければならない程の大きな問題が発覚することもあり、あらかじめリスクを把握することはM&Aの成否を握る重要なポイントだと考えられます。

(2)買収価格の妥当性の検証

買い手企業にとってM&Aは大きな投資となり、株主などステークホルダーに対してもなぜその金額で投資をするのか説明を行うことが求められるため、M&Aに際して買収金額の妥当性を検証しておくことが必要です。

具体的には、対象企業の事業や財務状況、収益の状況などを分析して企業価値を把握し、M&Aの投資金額に対して妥当なリターンを得ることができるのか、また投資金額が計画の範囲内で回収できるのか、などを分析します。

デューデリジェンス(DD)による検証の結果、当初見込んでいたリターンが期待できない場合は買収価格の見直しや買収の取りやめを検討することも必要です。

デューデリジェンス(DD)は各分野の専門家でチームを組成して行うことが一般的であり、そのようなチームで分析した結果は売り手企業との交渉材料として活用できるため、妥当な買収価格を把握することは高値掴みを回避することにも繋がります。

(3)M&A実行後のシナジーの予測

デューデリジェンス(DD)を行うことでM&A対象となっている企業の様々な経営情報を入手することができますが、独占販売権など営業面の強みや、固有の技術やノウハウなどその企業が持つ特徴を分析することで、買収後の成長可能性を評価することや、自社とどのようにシナジーを発揮させるかを検討することが可能となります。

(4)最適なM&Aスキーム・契約内容の検討

一言にM&Aと言ってもその種類は様々で、株式譲渡や資産譲渡、事業譲渡、合併、会社分割、資本・業務提携など多岐にわたります。

どのスキームが良いのかは、M&Aを行う目的や買い手企業・売り手企業の状況などによって異なるため、デューデリジェンス(DD)によって対象企業の詳細を分析し、最適なスキームを検討することが必要です。

例えば、当初は対象企業全体を買収する計画であったとしても、特定の販路や技術などの獲得が目的であった場合には対象事業のみを取得する方が良いケースもあり、デューデリジェンス(DD)を行うことでM&Aのメリットを最大化することができる可能性があります。

また、デューデリジェンス(DD)を通じて想定外のリスクや問題が表面化する可能性があり、取得した情報を元にその対処方法などを買収の最終契約書に盛り込むことも必要です。

デューデリジェンス(DD)によってM&Aのスキームや契約内容を検討することで、買い手・売り手の双方にとってメリットのあるM&Aが実現できる可能性が高まります。

(5)買収後の経営体制の構築

M&Aが成立した後は、PMI(Post Merger Integration)と呼ばれる経営統合作業が行われます。PMIはデューデリジェンス(DD)と並ぶM&Aの重要なプロセスの一つであり、シナジーを早期に発揮するために経営体制を見直す作業で、組織再編や人事戦略、営業戦略、システム戦略など総合的に経営改革を行うことでM&Aの成功を目指します。

デューデリジェンス(DD)は、M&A成立後に最適な事業運営や経営体制の検討に際し、対象企業の現状や特徴を分析することで課題や改善点を特定し、PMIが効率的に進むよう準備する重要なプロセスにもなっています。

3.デューデリジェンス(DD)の種類

デューデリジェンス(DD)は、M&Aの意志決定に必要な情報を可能な限り入手するため、対象企業をあらゆる側面から分析することが必要であり、その調査の目的によって様々な種類に分類されますが、ここでは代表的なものをご紹介します。

(1)ビジネスデューデリジェンス

ビジネスデューデリジェンスは、M&A対象企業の事業や属している市場の環境を分析・調査することで、ビジネスの成功や成長の可能性、シナジー効果の有無などを評価します。

SWOT分析などを用いて対象企業の特徴(強み・弱み・機会・脅威など)を評価するほか、業界における立ち位置や競合他社の状況、属している業界の市場規模や成長性、経営陣の経歴や評判などを調査して対象企業の将来性を見極め、M&Aの目的が達成できるかどうかを確認します。

業界など外部環境を分析する際には、取引先や競合他社などにヒアリングをするケースもあります。

ビジネスデューデリジェンスでは、戦略系や会計系のコンサルティングファームのコンサルタントなどビジネスの専門家が分析を行うことが一般的であり、調査した内容や結果を元に、最終的には対象企業のビジネスを事業計画などで定量的に表現することを目的とします。

(2)財務デューデリジェンス

財務デューデリジェンスは、対象会社を財務的観点で分析することにより、企業価値を算出して最終的に買収価格を決定するために行われ、貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)、キャッシュフロー計算書(CF)などの財務諸表を元に調査が行われます。

財務デューデリジェンスでは、対象企業の財務健全性や資金繰り、収益力などのほか、保有している資産の含み損益の状況などを調査することで対象企業が持つ価値を実態に合わせて評価します。

また、会計上の不正の有無や簿外債務の有無、グループ感の取引の適正性やオーナー一族関連の取引状況など様々なポイントでの分析を行うことで、買収後に想定外の事態が発生し、追加で投資負担が必要となるようなリスクの有無なども分析します。

財務デューデリジェンスは、対象企業が作成した決算資料によって、過去の経営成績と現在の経営状況を分析するだけではなく、将来の成長可能性や収益力を評価して買収後の事業計画を立案する目的もあり、M&Aの意思決定を行うための重要なポイントとなっています。

財務デューデリジェンスは、先述したビジネスデューデリジェンスと調査項目が重複する場合が多く、効率的に調査を遂行するためにもビジネスデューデリジェンスと関連付けて調査を進めることが重要です。

財務デューデリジェンスでは高度な会計知識や分析力が求められ、公認会計士や税理士、会計系のコンサルティングファームのコンサルタントなどによって行われることが一般的です。

調査においては、対象企業から提出された各種資料を調査するだけではなく、対象会社の経理部門の責任者や経営陣へのインタビューなども実施され、最終的に調査結果はデューデリジェンスレポートとしてまとめられ、買い手企業に報告されます。

(3)法務デューデリジェンス

法務デューデリジェンスは、対象企業が抱える法的なリスクを調査するものであり、その会社が会社法などの法律や各種規定・権限に基づいて適切に運営されているか、M&Aの計画に影響を及ぼす重要な事項がないかなどを確認するプロセスです。

企業が有している法律・権利関係は複雑であり、会社法などの各種法律はもちろん、取引先との契約や発行している株式に関する権利、営業関係のライセンス、特許などのノウハウ、役員や従業員との契約内容、所有している資産に関する権利や義務など、法務デューデリジェンスの調査項目は非常に多岐にわたります。

対象企業が事業上で有している権利や許認可、契約、債権債務関係などのほか、訴訟や損害賠償等の状況、行政からの指導の有無などについて法的な問題やリスクが無いかを確認し、調査結果に基づいてM&Aスキームや最終契約書が検討されます。

一般的に、企業の契約書などの重要書類は情報管理が厳しく、法務デューデリジェンスに進むまでは精査ができないため、ここで初めて想定外の事態が発覚する可能性があります。

調査結果によっては、M&Aの目的を果たすことが難しく、M&Aそのものを断念せざるを得ないような問題が出てくる場合もあるため、法務デューデリジェンスはM&Aの意思決定においてかなり重要なプロセスであると言えます。

法務デューデリジェンスは、企業が有する膨大な分量の契約書類を確認する必要があり、極めて高度な法律的知識が求められることから、M&Aなどの企業法務に精通した法律事務所に所属する弁護士に依頼して対応することが重要です。

(4)税務デューデリジェンス

税務デューデリジェンスは、対象企業の現在までの税務処理と、M&A実行後に発生する税務作業について分析・調査します。

対象企業が過去に行った税務処理について調査し、法人税や事業税、繰越欠損金の処理がルールに基づいて適正に行われているか、またグループ間の取引などにおいて実態に即した税負担がなされているかなどを調査し、買収後に過去の申告漏れや不適切な税務処理が発覚して重加算税などのペナルティが発生するリスクを確認したり、M&A実行後に活用できる欠損金の有無などを見極めます。

税務デューデリジェンスは財務デューデリジェンスと合わせて調査が行われることが多く、税理士などが担当します。

(5)人事デューデリジェンス

人事デューデリジェンスは、対象企業が持つ「人材」に注目し、企業文化や就業規定、給与規定、退職金制度、人員の構成(勤続年数や年齢など)、採用制度などの調査をすることによって統合後の組織再編や人員計画、人事制度などを検討します。

企業にとって人材は事業運営を行うための重要な原動力ですが、M&Aにおける売り手企業に所属している役員や従業員にとって、M&Aは勤務環境が大きく変わることになり、統合がうまく行かなければモチベーションの低下や大規模な人材の流出に繋がる可能性があります。

そのため、人事デューデリジェンスはM&A実施後の成長やシナジーを発揮するために非常に重要なプロセスであり、M&Aの成否を握っていると言っても過言ではありません。

人事デューデリジェンスは、M&Aの買い手企業の人事部門の責任者のほか、人事・労務面に精通した人事コンサルティングファームのコンサルタントや、社会保険労務士などの力を活用して行うことが一般的です。

(6)ITデューデリジェンス

ITデューデリジェンスは、対象企業が採用しているシステムの内容や保守運用の状況などを調査し、M&A実施後のシステム統合計画や最適なシステムの運営を検討するために活用されます。

対象企業の財務会計システム、勤怠管理システム、顧客管理システム、営業系システムなどの基幹システムと、実際の作業などを照らし合わせ、業務改善やランニングコスト削減の余地などを確認し、統合後の業務運営の効率化を目指します。

買い手企業と売り手企業が異なるシステムを採用している場合、将来的に思わぬ追加投資が発生する可能性があり、統合後のスムーズな事業運営において重要なプロセスであると考えられます。

ITデューデリジェンスは企業のシステムに精通したITコンサルタントなどが担当することが一般的です。

(7)その他

上記でご紹介した以外にも、デューデリジェンス(DD)の対象となる項目はあります。

・知的財産デューデリジェンス

対象企業が有する知的財産に着目し、所有する特許や著作権、商標などについて適切なライセンスを取得しているか、権利関係で制限を受けていないか、権利の維持などにおいて問題なく手続きが行われているかなど知的財産権に関する調査を行うことでその価値の評価やM&A後の活用を目指します。

・環境デューデリジェンス

対象企業が事業上抱えている環境汚染などのリスクを調査し、M&A後に発生し得る問題の程度や対策費の見積もりを行います。

対象企業の業種によっては重大な環境問題が発生する可能性があり、想定外のコストが必要となるケースがあるため注意が必要です。

・不動産デューデリジェンス

対象企業が所有する不動産について不動産鑑定士などが調査・分析を行い、建築基準法や境界などの適法性、登記手続きや修繕状況などの管理面の適切性、対象不動産が有する価値などを確認します。

以上、様々な種類のデューデリジェンス(DD)についてご紹介しました。

上述の通り、デューデリジェンス(DD)は調査の目的や内容によって多岐にわたりますが、特に「財務デューデリジェンス」と「法務デューデリジェンス」についてはM&Aの意志決定を行うのに重要な影響を及ぼすものであり、M&Aに際しては必須の手続きとなります。

場合によってはM&A後に想定外のリスクが発生する懸念や、M&Aを断念せざるを得ないような事態が発生する可能性もあり、重要な項目についてはその分野の専門家を活用することをおすすめします。

なお、M&Aは意思決定するまでに時間が限られており、専門家の力を活用したとしても、全ての情報を分析することは現実的に不可能です。

M&Aの現場では買い手となる候補企業が複数現れる場合も多く、分析に時間を費やしすぎて案件を競合に持っていかれてしまう可能性もあります。

そのため、デューデリジェンス(DD)においては、対象企業の業種や特性、買い手企業が重視するポイントなどを踏まえて項目に優先度を付け、迅速かつ効率的に調査を行うことが重要です。

4.デューデリジェンス(DD)を行うタイミング

デューデリジェンス(DD)は上述の通り、調査項目が多く専門家への依頼も必要であり、大きな労力とコストを伴うためある程度M&Aの確度が高まった段階で行うことが一般的です。

そのため、M&Aの手続きの中でデューデリジェンス(DD)が実施されるのは、M&Aの基本合意契約の締結後~最終契約書に調印するまでの間となります。

M&Aの買い手企業は、譲渡案件の提案を受けた後、対象企業について公開情報や世間での評判などを元に自社とのシナジーを想定し、売り手企業とのトップ面談などを経てM&Aの可否を検討します。

M&Aを本格的に検討する場合は基本合意契約を締結し、デューデリジェンス(DD)を通してM&Aによる事業シナジーやリスク、経営体制などを調査・分析した上で買収価格を決定し最終契約書の調印に進みます。

5.デューデリジェンス(DD)の手続の流れ

デューデリジェンス(DD)は、一般的に以下のような流れで手続きが行われます。

デューデリジェンス(DD)に費やす期間は案件規模や調査項目などにより様々ですが、中小企業のM&Aなど小規模な案件では2~3日程度、大規模な案件では2~3週間程度となることが一般的です。

<デューデリジェンス(DD)の流れ>

・M&Aの基本合意契約締結

M&A案件を本格的に進める場合、基本合意契約を締結して検討の意志を表明します。

・デューデリジェンス(DD)のチームの組成

デューデリジェンス(DD)の種類に応じ、社内の専門部署の担当者のほか、弁護士や税理士、公認会計士など各分野の専門家を集めてデューデリジェンス(DD)を依頼します。

・デューデリジェンス(DD)を行う項目の特定

対象企業の業種や特性、買い手企業が重視するポイント、予算、スケジュールなどを踏まえてデューデリジェンス(DD)の方針や調査を行う項目を特定します。

・対象企業への資料開示要請

買い手企業は、デューデリジェンス(DD)に必要な情報を確認するため、売り手企業に対して必要資料の提出や質問上への回答を要請します。

・資料の精査・分析

売り手企業から提出された資料を元に、デューデリジェンス(DD)チームが調査・分析を行います。売り手企業によっては要請した資料に合う物が存在しない可能性もあるため、提出された資料を元に柔軟に調査を行うことが重要です。

・現地調査・インタビュー

デューデリジェンス(DD)では、売り手企業から提出された資料の分析以外にも、実際に売り手企業や拠点に訪れて現地調査を行ったり、経営陣へのインタビューを通じて資料だけでは確認できない情報も調査が行われます。

売り手企業の会議室などで面談や資料の確認を行う場合がありますが、複数の担当者で訪問することになるため、売り手企業の従業員に情報が漏洩したり悟られることがないよう、慎重な対応が必要です。

・デューデリジェンス(DD)報告書の作成

デューデリジェンス(DD)によって調査された結果は、専門家などによって報告書にまとめられ買い手企業に提出されます。デューデリジェンス(DD)の項目は多岐にわたるため、報告書は膨大な量となる可能性があります。

・デューデリジェンス(DD)結果の検討

買い手企業は、提出されたデューデリジェンス(DD)報告書を元にM&Aの最終契約を行うかどうかを検討します。報告内容によってはM&Aスキームの変更や買収価格の見直し、契約内容の変更などを検討します。

デューデリジェンス(DD)の一般的な流れは上記のとおりですが、実際の調査の流れはデューデリジェンス(DD)の種類によって異なります。

以下では、デューデリジェンス(DD)の中でも特に重要な「財務デューデリジェンス」と「法務デューデリジェンス」について主な手続きの流れをご紹介します。

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6.財務デューデリジェンス(DD)の手続の流れ

財務デューデリジェンスは、対象会社を財務的観点で分析することにより、その資産や収益力などから企業価値を評価したり、財務的なリスクを把握するために行われます。

財務デューデリジェンスは、以下のような流れで手続きを進めます。

①資料の準備

財務デューデリジェンスでは、売り手企業が作成した決算書類(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書など)のほか、会社案内やパンフレット、不動産の登記簿謄本、税務申告書、勘定内訳書、総勘定元帳など複数の書類を分析して調査を行います。

また、上記以外にも株主総会や取締役会など意思決定機関の議事録を確認することで、意思決定の過程や重要な経営判断の根拠なども調査されることが一般的です。

②資料の分析

買い手企業は、売り手企業が準備した必要書類を元に、過去の経営成績や現状の経営状況、財政状況、財務的なリスクについて分析を行います。

分析は公認会計士や税理士などの専門家が行うことが一般的であり、決算書類では適用している会計方針の確認を行うとともに、貸借対照表(資産の含み損益や財務健全性など)、損益計算書(収益構造など)、キャッシュフロー計算書(資金繰りなど)などの分析を通じて企業価値評価に必要な情報の収集を行います。

また、会計監査や税務調査など外部調査の内容を確認することで適切な財務処理・税務処理が行われているかなどを確認したり、必要に応じて経営陣や経理担当者にヒアリングを行い、財務的側面での理解を深めます。

③企業価値の評価

分析結果に応じて売り手企業から提示された将来の事業計画を修正し、適切な企業価値を算出します。

企業価値の評価においては、インカムアプローチ(DCF法や配当還元法)、コストアプローチ(簿価純資産法や時価純資産法)、マーケットアプローチ(類似業種比較法)など様々な手法があり、対象企業の状況に応じて適切な手法を選択することが必要です。

④デューデリジェンス(DD)レポートの作成

財務デューデリジェンスの結果はレポート(調査報告書)にまとめられ、買い手企業に提出されます。レポートは売り手企業の財務面を定量的・定性的に分析した内容と、企業価値の算出結果などが記載され、M&Aの意思決定や買収価格の検討において重要な情報となります。

7.法務デューデリジェンス(DD)の手続の流れ

法務デューデリジェンスは、対象企業を法律的観点で調査することで、M&Aの実行に影響を及ぼすような法的リスクの有無を確認するために行われます。

法務デューデリジェンスの主な流れは以下の通りです。

①調査項目の洗い出し

対象企業の業種や特性、買い手企業が重視する法務的なポイントに応じ、調査する範囲や内容を検討します。

②資料の準備

定款や社内規定、株主名簿、登記簿謄本など会社に関する基本的な資料に加え、買い手企業が要請する調査項目に応じて取引先との契約書類や労務関係の書類、その他訴訟などトラブルに関する書類など複数の資料を準備します。

③資料の分析・インタビュー

法務デューデリジェンスでは提出された資料を元に、弁護士などの専門家がM&Aにおける事業計画や企業価値に影響を与えるような問題点の調査を行います。具体的には、許認可関係の手続きが適正に行われているか、取引先との間で法的に不利な契約が成されていないか、顧客から訴訟を受けるリスクはないかなど、事業継続上の潜在的なリスクを分析していきます。

この時にも、問題点の背景や実態を確認するため、売り手企業の経営陣や法務部門の責任者などにインタビューを行うことがあります。

④デューデリジェンス(DD)レポートの作成

法務デューデリジェンスの結果は、調査報告書(全体像、労務面、重要な契約関係、取引契約、許認可等、訴訟などの構成が一般的)にまとめられ、買い手企業に対して提出されます。

買い手企業は、調査報告書において対象企業に法的な課題がある場合は、それをクリアするための対策(取引の停止、経済条件の変更、追加契約、保険の加入など)を検討したり、場合によってはM&Aを断念するかどうかを判断します。

法務デューデリジェンスは、M&Aスキームや最終契約書の内容を検討する観点でも参考となる重要なプロセスとなっています。

M&Aにおいては複雑な企業法務の知識が必要となるため、その分野に強い弁護士などの専門家に法務デューデリジェンスを依頼することをおすすめします。

8.デューデリジェンス(DD)は必須か?・・・・・M&AにおいてDDを行わないことは自殺行為である!

M&Aにおいてデューデリジェンス(DD)は必須なのでしょうか。

上述の通り、デューデリジェンス(DD)は調査項目が多岐にわたり、多くの専門家の知識も必要なため、大きな労力とコストが必要となります。

実際、デューデリジェンス(DD)にかかる費用は案件規模により様々ですが、数百万円~数千万円かかる場合もあり、手間やコストを削減するためにデューデリジェンス(DD)を省略してしまうケースがあるのではないかと思います。

しかしながら、グローバル化や技術革新に伴い企業を取り巻く経営環境が複雑化する中において、M&Aでデューデリジェンス(DD)を行わないことは行為であると言えます。

企業は事業活動の中で様々なリスクを抱えており、公開情報などの表面的な情報のみでは特定できないリスクも数多くあります。

そのようなリスクを把握せずにM&Aを進めた場合、M&A実施後に想定外の事態が発覚して追加投資や対策費用などのコストが発生したり、訴訟や損害賠償など様々なトラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。

また、昨今のM&A市場では企業再編の活性化を背景に売り案件の価格が高騰しており、本来の企業価値と比較して高値掴みをしてしまう可能性も想定され、結果、見込んでいた投資回収ができずに最悪の場合は減損損失を計上してしまうケースも発生しています。

このような問題は、デューデリジェンス(DD)を行っていれば防ぐことができる場合があり、手間やコストをかけてでもデューデリジェンス(DD)を行うことをおすすめします。

また、デューデリジェンス(DD)は経営上のリスクを特定するだけではなく、M&A実行後のPMI(経営統合作業)を円滑に進め、事業シナジーを早期に発揮する観点でも必須の手続きであり、M&Aの成功の可否を握る重要なプロセスだと言えます。

9.デューデリジェンス(DD)において売り手はどのように対応すればよいのか?

デューデリジェンス(DD)において、売り手企業はどのように備え、対応すればよいのでしょうか。

デューデリジェンス(DD)は、売り手企業が抱えるリスクや課題を特定し、当初提示された企業価値(買収価格)を適切に修正する手続きであるため、基本的にデューデリジェンス(DD)によって買収価格が引き下がることはあっても、価格が引き上がることはありません。

売り手企業の目線で考えると、企業価値の低下につながるようなマイナスの情報や不都合な事実を買い手企業に対して伝えることを躊躇してしまう場合があるかもしれません。

しかし、M&Aの契約では、売り手が買い手に対して提供する情報が真実かつ正確であることを表明し、その内容を保証する「表明保証事項」が記載されることが一般的であり、売り手企業が正確な情報を伝えることを怠り、万が一、M&A実行後にトラブルが発生した場合は買い手企業から損害賠償などを請求されてしまう可能性があります。

そのため、M&Aのデューデリジェンス(DD)において、売り手企業は買い手企業に対して、良い情報だけではなく悪い情報も含めて正確に伝えることが何よりも重要です。

また、デューデリジェンス(DD)はM&Aの買い手が行うものと考えがちですが、買い手企業のデューデリジェンス(DD)に適切に対応できるよう、あらかじめ自社のリスクや課題を把握しておく、「セルサイドデューデリジェンス(DD)」も有効です。

デューデリジェンス(DD)では、買い手企業が複数の専門家を活用して調査を行いますが、専門家は売り手企業の事業や業界に精通しているとは限らないため、短い時間で詳細な調査を行うことは難しい場合があります。

売り手企業にとっても、M&Aは頻繁に起こるものではなく、いざ手続きが発生した時には短期間で膨大な資料の準備や説明が求められるため、有効な情報提供ができず、結果的に企業価値を引き下げてしまったり、最悪の場合はM&Aが白紙になってしまう可能性も考えられます。

このような事態を回避し、M&Aを成功に繋げるためには、あらかじめ自社の経営上の各種リスクの分析を行い、買い手企業のデューデリジェンス(DD)に対応することができるよう資料を整備しておくことが必要です。

セルサイドデューデリジェンス(DD)においても、外部の目を活用することで正確な調査を行うことができるため、各分野の専門家に依頼することをおすすめします。

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最後に

以上、M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)について、目的や種類、手続きの流れなどをご紹介しました。

デューデリジェンス(DD)は、M&Aの成否、およびM&A実行後の成長やシナジーの発揮を左右する重要なプロセスであり、M&Aにおいては必須の手続きとなっています。

デューデリジェンス(DD)には様々な種類がありますが、対象企業に関する膨大な情報を限られた時間の中で正確に分析することが必要となるため、デューデリジェンス(DD)の目的や調査項目に応じ、各分野の専門家に依頼して対応することが重要です。

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