- 1 事業譲渡契約書の逐条解説 事業の譲渡
- 2 事業譲渡契約書の逐条解説 事業の譲渡
- 2.1 ■■■前文■■■■■■■■■■
- 2.2 ■■■第1条■■■■■■■■■■
- 2.3 ■■■第2条■■■■■■■■■■
- 2.4 ■■■第3条から第6条■■■■■■
- 2.5 (1)対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員の特定
- 2.6 (2)対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員の個別の移転手続き
- 2.7 ■■■第3条■■■■■■■■■■
- 2.8 (1)対象資産の範囲
- 2.9 (2)対象資産の承継方法
- 2.10 ■■■第4条■■■■■■■■■■
- 2.11 (1)対象負債の範囲
- 2.12 (2)対象負債の承継方法
- 2.13 (3)事業譲渡方式においても承継することとなる債務
- 2.14 ■■■第5条■■■■■■■■■■
- 2.15 (1)対象契約の範囲及び既発生債権・債務の承継・不承継
- 2.16 (2)既発生債権・債務の承継・不承継
- 2.17 (3)対象契約の承継方法
- 2.18 (4)対象契約の承継の承諾の取得と条件変更問題等
- 2.19 ■■■第6条■■■■■■■■■■
- 2.20 (1)対象従業員の承継方法(承継方式と新規雇用方式)
- 2.21 (2)従業員の転籍同意の取得
- 2.22 ■■■別紙1-1■■■■■■■■■■
- 2.23 ■■■別紙1-2■■■■■■■■■■
- 2.24 ■■■別紙1-3■■■■■■■■■■
事業譲渡契約書の逐条解説 事業の譲渡
弁護士法人M&A総合法律事務所のM&A契約書類のフォーマットはメガバンクや大手M&A会社においても、頻繁に使用されています。
ここに弁護士法人M&A総合法律事務所の事業譲渡契約書のフォーマットを掲載しています。
M&Aを検討中の経営者の皆様でしたらご自由にご利用いただいて問題ございません。
ただし、M&A案件は個別具体的であり、このまま使用すると事故が起きるものと思われ、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。
また、このフォーマットは弁護士法人M&A総合法律事務所のフォーマットのうちもっとも簡潔化させたフォーマットですので、実際のM&A取引において、これより内容の薄いDRAFTが出てきた場合は、なにか重要な欠落があると考えてよいと思われますので、やはり、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。
なお、詳細な解説につきましては、以下の弊所書籍「事業承継M&Aの実務」をご覧ください。
事業譲渡契約書の逐条解説 事業の譲渡
■■■前文■■■■■■■■■■
前文は、本契約の内容を端的に説明するものである。 株式譲渡契約書と同趣旨であり、説明は省略する。 ■■■第1条■■■■■■■■■■
第1条は、定義に関する規定である。 株式譲渡契約書と同趣旨であり、説明は省略する。 ■■■第2条■■■■■■■■■■
第2条は、事業の譲渡に関する規定である。 本契約は、対象事業を譲渡するための事業譲渡契約書であることから、対象事業を譲渡することを明示している。 売主の譲渡義務を明記するとともに、買主の譲受義務を明記することが必要である。 ■■■第3条から第6条■■■■■■第3条から第6条においては、事業の構成要素である資産・債務・契約・従業員であることに鑑み、対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員ごとに、売主から、買主に対して、事業譲渡に伴い承継させる旨、及び、承継方法について、規定している。 事業譲渡は、会社分割と異なり、個別承継と呼ばれており、譲渡会社から譲受会社に対して、対象事業の権利義務が、個別に、当事者間の合意に基づいて、売買などの取引と同様に、承継される手続きであるとされるため、対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員の承継についての、個別の合意や個別の手続きが必要となるのである。 (1)対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員の特定事業譲渡方式においては、必ずしも、対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員を、事業譲渡契約書において、特定する必要はないものの、特定することの方が多い。 事業譲渡において、対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員を特定しなかった場合、第3条から第6条を記載せず、第2条のみを規定し、単に「〇〇事業」を譲渡するということになるのだが、その場合、対象会社の資産・債務・契約・従業員のうち、どこまでが「〇〇事業」に属する資産・債務・契約・従業員なのかが、必ずしも明らかにならない可能性もあり、また、売主の想定する「〇〇事業」に属する資産・債務・契約・従業員と、買主の想定する「〇〇事業」に属する資産・債務・契約・従業員と異なる可能性もあり、承継対象となる資産・債務・契約・従業員が明確ではないということになった場合、後日紛争となる可能性がある。 また、事業譲渡方式を採用する場合は、多分に、買主が、今後、対象事業を運営する際に、不要となる資産・債務・契約・従業員については承継しないことを想定していることが多いところ、第3条から第6条を記載せず、第2条のみを規定し、単に「〇〇事業」を譲渡するという場合、その買主が承継したくない又は承継することを想定していない資産・債務・契約・従業員までも、「〇〇事業」に含まれると解釈された場合、買主が承継してしまう可能性が生ずるのである。特に、簿外債務などの負債について、承継するか承継しないかが紛争になる場合、特に問題は大きくなるのであり、やはり、対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員は、特定することが好ましい。 したがって、筆者らが普段使用する事業譲渡契約書のフォーマットにおいては、対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員ごとに別紙を作成し、添付することとしている。 (2)対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員の個別の移転手続きまた、事業譲渡において、売主から、買主に対して、対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員を承継させる場合、資産・債務・契約・従業員を買主に移転させるための個別の手続きが必要になる。また、これらの資産の移転について、個別に、対抗要件の取得も必要となる。 すなわち、株式譲渡方式の場合は、対象事業を構成する資産・債務・契約・従業員はすべて対象会社に含まれており、対象会社の所有権を表章する株式を、売主から買主に対して譲渡しさえすれば、すべての資産・債務・契約・従業員が、買主に移転することとなったのであるが、事業譲渡においては、全く異なり、対象事業を構成する資産・債務・契約・従業員について、すべて、個別に、売主から買主に対して、移転させることが必要となる。 したがって、資産・債務・契約・従業員のそれぞれについて、それぞれを承継する方式に従って、移転手続きが必要となる。 資産・債務・契約・従業員の移転について、資産の場合は登記手続きなどの移転手続きが必要であったり、取引契約の場合は取引先の個別の同意が必要であったり、従業員の承継についてもその従業員の個別の同意が必要であるなど、非常に多数にわたる場合は非常に手続きは煩雑であり、移転手続き自体が複雑又は困難な場合もあり、また、その移転手続きによっては、不動産の登録免許税など多額の費用が掛かることがあり、事業承継M&Aにおいて、現在、株式譲渡方式が多用されているのは、このような理由があるものと思われる。 なお、資産・債務・契約・従業員が、非常に多数にわたる場合は、その移転手続きが煩雑などの問題があり、事業譲渡のクロージングまでに、これらの移転手続きがすべて完了しない可能性もある。その場合、売主と買主が個別に協議し、買主による対象事業の運営のために必須の手続きが完了していることを確認したうえで、その他の手続きはクロージング後に可及的速やかに対応するものと合意し、ひとまずクロージングを行ってしまうことも多い。 ■■■第3条■■■■■■■■■■
第3条は、対象資産の承継及び承継方法に関する規定である。 承継する対象資産としては、ここでは、売主から、買主に対して、別紙1-1記載の資産を承継することとされている。 (1)対象資産の範囲対象資産といっても、事業にはさまざまな資産が含まれている。すなわち、土地、建物、機械設備、什器備品、現預金、売掛金、在庫、仕掛品、原材料、車両、ソフトウェア、出資金、投資有価証券、貸付金、金融商品、敷金、保証金、保険積立金などが挙げられる。 本条2項においては、この対象資産の承継方法が規定されている。 すなわち、事業譲渡において、売主から、買主に対して、対象資産を買主に移転させるための個別の手続きが必要になり、個別に対抗要件の取得も必要となるが、これら対象資産の承継方法は、その対象資産ごとに異なることから、手続きを特定することなく、「必要となる登記、登録、引渡及び対抗要件の具備その他の一切の行為を行うものとする」と規定している。 (2)対象資産の承継方法この点、対象資産の承継方法として、土地・建物などの不動産については、移転登記手続きが必要となり(民法177条)、機械設備、什器備品、在庫、仕掛品、原材料などの動産については、占有の移転などが必要となり(民法178条)、車両、ソフトウェアなどについては登録が必要となり、売掛金や貸付金などの債権については、確定日付ある債権譲渡通知(民法467条及び468条)などが必要となる。 対象資産としては、個別に譲渡可能であり、二重譲渡されてしまうことを避けるべく、事業譲渡に際しては、第三者対抗要件を取得しておく必要がある。 ■■■第4条■■■■■■■■■■
第4条は、対象負債の承継及び承継方法に関する規定である。 承継する対象負債としては、ここでは、売主から、買主に対して、別紙1-2記載の債務を承継することとされている。 (1)対象負債の範囲対象負債といっても、事業にはさまざまな負債が含まれている。すなわち、借入金、買掛金、未払費用、リース債務、未払金、支払手形、及び預り金などが挙げられる。 本条2項においては、この対象資産の承継方法が規定されている。 ただし、事業承継M&Aにおいて、事業譲渡方式を採用する場合の多くは、債務は一切承継しないとするものが多く、債務を一切承継しないということとすることも可能であり、承継する場合も、対象事業に関連して、必然的に承継せざるを得ない債務のみを承継するとする場合も多い。 (2)対象負債の承継方法また、ここでは、債務の承継方法を、免責的債務引き受けによるとしており、免責的債務引き受けの場合は、債権者は、承継後は、従前の債務者である売主に対して、債権を主張できなくなる。このような免責的債務引き受けの場合、債務者が変更になるのであるから、民法上、債権者の承諾を取得する必要があり、本条2項において、承継の方法として、債権者の承諾を取得する必要があることが規定されている。 なお、債務の承継の方法としては、その他に重畳的債務引き受けの方法もあり、その場合、債権者は、承継後、債務を承継した新債務者である買主に対して債権を主張できるのみならず、従前の債務者である売主に対しても債権を主張することができる。この場合、債務の承継のため債権者の承諾は必ずしも必要ではないが、債務者の承諾を取得することは多い。 (3)事業譲渡方式においても承継することとなる債務買主としては、事業譲渡方式を採用する以上、債務を一切承継しない意図であったとしても、承継する対象事業の関係で、事実上、やむなく特定の債務を承継する必要が生ずることもある。 ただ、そのような場合であっても、それ以外の債務については、法的には、承継しないことを確実にするため、本条3項においては、買主は、その他の債務については、一切承継せず、売主が責任を負うものと明記している。 ■■■第5条■■■■■■■■■■
第5条は、対象契約の承継及び承継方法に関する規定である。 承継する対象契約としては、ここでは、売主から、買主に対して、別紙1-3記載の契約を承継することとされている。 (1)対象契約の範囲及び既発生債権・債務の承継・不承継事業の運営に必要となる契約は多岐にわたっており、売買契約、販売契約、仕入契約、取引基本契約、業務委託契約、ライセンス契約、賃貸借契約、リース契約など多岐にわたる。 本条2項及び3項においては、この対象契約の承継方法が規定されている。 なお、従業員との間の雇用契約も、承継の対象契約となることがあるものの、ここでは、従業員については、次条にて定めるものとし、本条での対象とはしていない。 (2)既発生債権・債務の承継・不承継売主から、買主に対して、事業譲渡に伴い対象契約を承継するとした場合であっても、対象契約に関連して発生した権利義務一切までも承継するのか否かは別の問題である。これらはすでに発生した債権又は債務であり、契約とは、別に承継対象又は承継対象外となるからである。他方、対象契約に関連して、将来発生する権利義務一切については、対象契約が移転したのちに発生するものであるから、対象契約とともに、買主に承継されるほかない。 対象契約に関連して、すでに発生して具体的な債権となっている売掛債権や、すでに発生して具体的な負債となっている買掛債務などは、承継せず、今後発生する売掛債権や買掛債務は承継するというのが合理的意思かと思われるが、通常、事業譲渡契約書の文言上、必ずしも明らかではないことも多く、ここでは、確認的意味合いも含め、既存の売掛債権や買掛債務は承継しないことを明記している。 (3)対象契約の承継方法対象契約の承継方法についてであるが、いずれも、契約締結上の地位を承継させるためには、基本的に、相手方当事者の承諾が必要であり、本条2項において、承継の方法として、債権者の承諾を取得する必要があることが規定されている。 特に、相手方当事者の取引先によっては、売主が相手方であるから契約をしたのであり、買主が相手方となるのであれば契約はしなかったとして、契約締結上の地位の承継について承諾を拒否することもあり、事業譲渡のクロージングまでに、契約の移転手続きがすべて完了しない可能性もある。そこで、ここでは、本条3項を規定し、相手方当事者の承諾の取得が困難な場合においては、売主と買主が個別に協議するものとし、その中で、例えば、買主による対象事業の運営のために必須の手続きが完了していることを確認したうえで、その他の手続きはクロージング後に可及的速やかに対応するものと合意し、その間は、取引先と買主の取引の間に売主が入り、売主が取引先と買主の間の取引を取り次ぐこととして、ひとまずクロージングを行ってしまうことも多い。 (4)対象契約の承継の承諾の取得と条件変更問題等また、契約締結上の地位の承継に際して、取引先などが、契約締結上の地位の承継の承諾をしてくれる場合であっても、取引条件の変更を要求されることもある。 一定の保証金の提供を求められるとか、取引単価の条件が悪化する場合、更新料を求められる場合、保証人の追加・変更を求められるとか、保証会社の更新が必要になり追加保証料が必要になる場合もある。 また、信用調査が必要とされ、信用調査料金を請求されることもあろう。このような場合、買主としては、想定した対象事業の事業価値の前提が崩れるわけであるから、そのような事態が生じないよう、売主に対して、取引先などと粘り強く交渉するよう求めたり、また自ら取引先などと交渉を行ったり行うこととなる。また、買主が想定した対象事業の事業価値の前提が大きく崩れ、事業承継M&Aをする前提が崩れる場合は、売主による本条に基づく事業譲渡の履行が困難として、事業譲渡を取りやめることも検討する必要がある場合もあろう。 ■■■第6条■■■■■■■■■■
第6条は、対象従業員の承継及び承継方法に関する規定である。 承継する対象契約としては、ここでは、売主から、買主に対して、別紙1-4記載の従業員を承継することとされている。 (1)対象従業員の承継方法(承継方式と新規雇用方式)ただ、対象従業員の承継方法としては、売主が買主に対して対象従業員との既存の雇用契約を承継するのではなく、売主が対象従業員を解雇し、既存の雇用契約は終了させ、買主が対象従業員を新規雇用する方式を採用している。 売主が買主に対して対象従業員との既存の雇用契約を承継する場合、対象従業員から転籍同意さえ取得すれば可能だが、雇用条件以外に、売主と従業員の間の様々な権利義務を承継してしまうこととなり、特に、買主としては、売主が雇用している期間における退職金(勤続年数を含む)を承継することや、売主が雇用している期間において発生した未払い残業代などを承継すること、その他、売主の社内での対象従業員の地位や、潜在的紛争原因なども承継してしまうこととなる。買主としては、事業承継M&Aにおいて、これは、簿外債務を承継してしまう可能性が高いことから、最も避けるべき事項である。そのため、本条において、新規雇用方式をとることを明記しつつ、本条4項においては、確認的に、買主は、売主から、対象従業員の賃金(未払残業代及び退職金を含む)支払債務を一切承継しない旨を規定している。 そこで、事業承継M&Aにおいて、事業譲渡方式の場合は、買主は、対象従業員について、雇用契約を承継するのではなく、対象従業員を新規雇用する方式を採用することが多い。 (2)従業員の転籍同意の取得買主が、対象従業員について、雇用契約を承継する場合であっても、新規雇用する場合であっても、対象従業員の同意が必要となる。 買主としては、売主から承継すべき、対象従業員を見極め、不要な従業員まで承継してしまうことも避ける必要がある。そういう側面から、事業譲渡において、対象従業員の同意を取得する作業は、売主と買主が共同で行い、買主が、クロージングまでの間に、対象事業の従業員に対して、説明会を開催したり、個別面接したりして、買主が承継すべき対象従業員を選別し、又は買主に対して転籍することを促しつつ、対象従業員の同意を取得することが多いように見受けられる。 なお、買主としても、対象従業員が退職するという場合(転籍しないという場合)、これを阻止することはできない。 [1] 民法177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件) 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。 [2] 民法178条(動産に関する物権の譲渡の対抗要件) 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。 [3] 民法467条(指名債権の譲渡の対抗要件) 1 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。 2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。 民法468条(指名債権の譲渡における債務者の抗弁) 1 債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。この場合において、債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し、譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。 2 譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。 | |||||||
■■■別紙1-1■■■■■■■■■■
■■■別紙1-2■■■■■■■■■■
■■■別紙1-3■■■■■■■■■■
■■■別紙1-4■■■■■■■■■■
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