自主再建する方法・債権カットする方法!

債務超過の解決方法のなかでも、経営続投意欲の高い事業者に適しているのが「自主再建」(私的整理)です。

債務者がイニシアティブを持って金融機関と個別交渉を行うことで、信用力の低下・支援者との信頼関係の破たんを最大限防ぐことが可能です。

しかし、メリットばかりではありません。自主再建(私的整理)のどの手法においても、法人オーナーにとって難しい局面があります。

自主再建(私的整理)が選ばれる理由と4種類の手法について、留意点を交えながら解説します。

【この記事で分かること】

  • 自主再建(私的整理)の特徴(法的整理・他の私的整理手段との違い)
  • 4種類の自主再建(私的整理)手法の流れ&ポイント(リスケ・DES・DDS・DPO)
  • 各手法に共通するデメリット&留意点

自主再建(私的整理)とは?

自主再建(私的整理)とは、財務の悪化した経営陣が取引先金融機関に直接打診することで、債務免除や返済負担減に応じてもらう企業再生手法です。

他の手法(民事再生や事業再生ADR等)とは異なり、裁判所や中小企業再生支援協議会などの第三者機関を通しません。したがって、債務超過状態が対象となる債権者以外に知られることは原則なく、風評リスク・事業価値の毀損度の両方を最小限に抑えられるのがメリットです。

自主再建(私的整理)が選ばれる理由

事業再建のために債務を減らす方法として、自主再建(私的整理)のほかに「準則的私的整理」「スポンサーによる私的整理」「法的整理」の3種類があります。

企業と金融機関との関係を主眼に置くと、自主再建(私的整理)以外の手法には以下のようなデメリットが存在します。

準則型私的整理のデメリット…

債務者側:債権者全員の同意が前提となり、経営責任を問われる可能性がある

債権者側:再生スケジュールが他の債権者の意向に左右されるため、不安定な状態が続く

【準則型私的整理の例】事業再生ADR・中小企業再生支援協議会による手続き・特定調停など

スポンサーによる私的整理のデメリット…

債務者側:株式をスポンサーに支配され、経営者が主導権を握れなくなる可能性がある

債権者側:手続きの公平性・透明性の両方に不安がある

【スポンサー協力による私的整理の例】第二会社方式(収益事業を切り離した上での清算)・M&A

法的整理のデメリット…

債務者側:事業価値が著しく損なわれ、早期の再建が難しくなる

債権者側:大量の不良債権が残され、貸倒引当金の積み増しも出来ない

【法的整理の例】:民事再生・会社更生・特別清算・破産手続き

どのような整理手法をとっても、債権者と債務者の両方に痛みを伴います。

ルールに則った私的整理では債務者側にほとんど主導権がなく、スポンサー協力のもと事業整理を行おうとすると債権者が蚊帳の外に置かれてしまいがちです。法的整理ともなると、債務者側はほとんど再起不能の状態に陥り、債権者側でも事前に貸倒引当金※の積み増しが出来ず、処理できない不良債権を一時的に抱える結果となります。

※貸倒引当金とは:

貸倒れの恐れがある債権について、先に損失分を予測・計上しておくことのできる勘定項目です。金融機関による貸倒引当金計上の際は、破綻に先立って独自の債務者評価(自己査定)によりリスクを把握できることが前提となります。

これらのデメリットは、自主再建(私的整理)を選択することで回避可能です。

債務者側には「現経営陣の支配力・事業価値の両方を最良の状態で保持できる」という利点があり、債権者側でも破たんによるダメージに備えることが可能です。

信頼できる融資先が事業再建に成功することこそ、何よりも金融機関の利益に繋がるでしょう。

上記のような思惑を背景として、積極的に自主再建(私的整理)が選ばれています。

【計4種類】自主再建(私的整理)の方法

自主再建(私的整理)の方法として、さらに細かく「返済期間の延長」「債務の資本化」「債務の劣後化」の3種類に分類できます。他にも、「サービサーに債権が払い下げられたあとの負債カット」も挙げられます。

活用されることの多い方法から順に、各手法のスキーム・留意点・メリットを紹介します。

リスケジュールの概要&ポイント

債務のリスケジュール(リスケ)は、返済期間を延長することで毎回の元本弁済額を低減する手法です。最初に行った融資契約を見直してもらうよう交渉を行い、金融機関が認めればリスケ成立となります。

【リスケジュールの流れ】

  • 金融機関へ個別に「リスケを行いたい」と通知
  • 経営状態に関する説明書類を提出し、審査を受ける
  • 融資契約の見直しについて回答を得る

→弁済期間・契約金利・抵当権順位等の変更内容について経営者が確認し、問題なければ合意の上リスケ完了。

平成25年3月までは、中小企業金融円滑化法がリスケ促進のためのガイドラインとして機能していました。

令和元年現在はすでに法令廃止となっているものの、中小企業庁が引き続きリスケ・返済猶予に応じるよう金融機関に呼びかけています。

ポイント1:そもそも債務免除ではない

リスケについて誤解してはならないのは、そもそも債務免除ではないという点です。

あくまでも弁済期間の延期に過ぎず、一時的にキャッシュフローを改善して早期の事業再建を目指すという趣旨の手続きです。

ポイント2:債権者全員と交渉必須になる場合もある

金融機関の審査の結果「抵当権順位を変更したい」とされた場合、他の抵当権者(=債権者)に通達した上で順位変更登記を行わなければなりません(民法374条・361条)。

優先順位をつけて特定の金融機関とだけ交渉をするつもりでも、準則的私的整理と同じように、債権者全員の同意が必要となる可能性があります。

同じ不動産を担保に2カ所以上から融資を受けている場合、レピュテーションリスク回避等の目的がリスケでは果たせないケースも想定しなければなりません。

ポイント4:リスケ成功の要は財務透明性&再建計画</H4>

リスケ可否を決めるのは、金融機関が「短期間(目安として最長5年)で再建できる」と判断できる材料を提供できるかどうかです。

【参考】リスケ審査に用いられる提出書類一覧

  • 資金繰り表
  • 経営改善計画書(事業計画書)

…経営者保証がある場合、経営者個人の生活について尋ねられる可能性あり。

説得力のある材料(書類)を用意するにあたって、財務の透明化・再建計画の明確化は必須です。国内の中小企業に多いオーナー依存型の経営方針だと、事業承継等により経営に新しい風を吹き込むことも暗に求められることがあります。

ポイント5:「借換保証制度」によるリスケも可

中小企業庁が設ける借換保証制度とは、金融機関での債務一本化に必要な保証を公的機関で行うものです。最大10年間(据置期間1~2年)の信用保証が行われ、返済期間が残り9年以下の債務者は実質的なリスケ手段として活用できます。

【借換保証制度の利用要件&保証額】

下記セーフティネットの保証要件に当てはまる場合…最大4億円

要件に当てはまらない場合…最大保証額2億円

  • 取引先の経営難に連動して売上高が減少している
  • 事故・災害による経営難に陥った
  • 業況の悪化している業種
  • 取引先金融機関が破たんした
  • 取引先金融機関の経営合理化により借入がしづらくなった
  • RCC(整理回収機構)へ貸付債権が譲渡された

本制度の利用は事業計画書の提出が条件となりますが、現在の債権者と直接交渉する場合に比べ、審査のハードルは低く設定されています。

信用力や業況により、本制度の保証を受けた上での新規融資(=借り換え)も視野にいれるべきです。

DES(デッド・エクイティ・スワップ)の概要&ポイント

DES(債務の資本化)とは、債権者に新発株式を割り当てた上で、その評価額に相当する負債を自己資本として計上しなおす手法です。

ここまで解説したリスケとの決定的な違いは、債務超過の解決にあたって「返済方法」ではなく「帳簿上の負債の扱い方」を変更する点です。

【DESの流れ】

  • 債権者から株式引受の合意を得る
  • 株主総会で新発株式の募集事項を決議
  • 新株発行+債権者による評価
  • 引受に関する最終合意
  • 新株割り当て+③の評価額に相当する債務を資本に変換

ただし、DESにおいて免除額に過度な期待を抱くのは禁物です。

その理由については、DES特有のメリットを紹介した上で解説します。

【メリット】金融機関との信頼関係を最良の状態で保てる

DESは債務者・債権者側のどちらから見ても信頼関係を傷つけにくい性質の手続きです。

まず債務者側のメリットとして、債権カットだけでなく自己資本の増加という効果も得られる点が挙げられます。将来金融機関から新規融資を受ける上で有利に働き、事業再建の迅速化という間接的な効果も発生します。さらに、債務免除益に対する課税も発生しません。

金融機関側においても、自己査定(債務者の社内格付け)において高い評価を維持できるため、貸倒引当金の積み増しによる不良債権化の回避という利点が生じます。企業に対する定量化できない信頼においても、将来にわたって維持されるでしょう。

ポイント1:株主に理解を求める必要がある

DESは第三者割当増資で行われ、議決権に制限が設けられているものの他の株式に比べて優先的な配当を受けられる株式(優先株)が発行されます。

DES実施をする上で第一の障害となるのが、株主総会における募集事項の決議を行った上で全員に通知する義務(会社法201条・203条)です。スポンサーが株主であれば、新発株式の割り当てについてなおのこと慎重に折衝する必要があるでしょう。

ポイント2:「株主の利益を害さない範囲」でしか資本化できない

加えて、DESは法律上「現物出資(金銭以外の資産による出資=ここでは債務)」であることにも留意しなければなりません。負債や新発株式の価額しだいで既存株主の利益を侵害する恐れがあるため、会社法上で厳しいルールが設けられています。

現物出資規制の原則は、裁判所による検査役の選任です。本来は事業継続に関わる当事者だけで手続きを完結することが出来ません。

そこで、迅速性が求められる事業再建目的のDESにおいては、検査役の選任が不要となる以下要件を満たすのがセオリーです。

【現物出資規制】検査役の選任を省略するための要件

  • 引受人に割り当てる株式が「総発行株式の1/10」かつ「500万円以下の価額」であること。
  • 弁護士・公認会計士・監査法人・税理士等により、割り当てる株式の価額が相当であると証明を受けていること
  • 対象とする金銭債権の弁済期が到来していること
  • 金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えないこと

参考:会社法207条9項5号

以上の要件を総合して解釈すると、帳簿庁の負債を全額資本化することは可能である一方で、発行できる株式数には限度があります。

これが「期待通り負債が減るわけではない」と解説した理由です。

ポイント3;金融機関による引受は「5%ルール」が適用される

DESで発行する株式は「無議決権株式」または「議決権制限株式」です。

金融機関には国内企業に対する保有議決権数について法令で制限されており、銀行は5%・保険会社は15%と定められているからです。

ここまで解説したルールを守るため、DESでは税理士・弁護士に適法性について確認しなければなりません。

DDS(デッド・デッド・スワップ)の概要&ポイント

DDSとは、現在ある債務の条件を変更することで「資本性借入金」とする手法です。

具体的には、事業の重荷となった融資契約を劣後ローン(返済順位の低い無担保ローン等)に置き換えることで、バランスシート上は限りなく資本に近い性質を持つ債務という扱いにします。

【DDSの流れ】

  • 債権者に劣後ローンへの変換を申し出る
  • 事業計画書などを提出し、審査を受ける
  • 抵当権を解除してもらい、契約内容のへ項に合意する

DDSにおける債権者側・債務者側のメリットは、債務の資本化(DES)とほぼ同じです。

債務者側は免除益への課税を回避でき、信用力も維持可能です。金融機関側でも、やはり同じく債務者区分を下げずに済む(不良債権化しない)という利点が存在します。

DESとの違いは、スポンサー等の株主の同意を得る必要が必ずしもない点です。あくまでも債務の性格を変更するだけで出資金扱いとはしないため、株主の利益を大きく毀損することはありません。

ただし、債権カットの効果の大きさという点については不安が残ります。加えて、DESと同様にルールに沿った手続きを心がける必要があります。

ポイント1:金利はむしろ高くなる傾向がある

劣後ローンにおいては、担保がなく回収不能リスクが大きいため、現在の融資契約よりも金利が高くなる可能性があります。また、業績連動型の変動金利に設定されるケースが多く、事業再建が順調でも弁済義務が将来重荷になる可能性は否めません。

債務者側としては、やみくもに債務超過分に資本性を持たせるのではなく、リスケと組み合わせる等、企業の財政状況により最適なプランを立てる必要があるでしょう。

もちろん、提案したプランについて「金融機関が認めるか」という問題があることも否めません。

ポイント2:「資本とみなせる借入金」には条件がある

DDSを行うにあたり、当事者向けに金融庁・国税庁が「資本と見なせる借入金(資本性借入金)の条件」見解をまとめています。

【資本性借入金の条件(一部)】

  • 償還期間が5年超である
  • 10年以内の合実計画(=合理的で実現性の高い経営再建計画)がある
  • 必ずしも担保解除を要しない

これらの条件を満たしていても、さらに「償還期限の5年前から資本と見なす部分を20%ずつ減少させる」と規定されています。資本性とする借入金の割合が減るごとに債務者評価は下がっていき、やがては資金繰りや弁済に苦慮することになります。

こうした点を考慮すると、5年と言わずより短期間での経常利益黒字化の目標を立て、早期に弁済できるようにしておくべきです。

DPO(ディスカウント・ペイオフ)の概要&ポイント

自主再建におけるDPOとは、債権回収会社(サービサー)と債務免除交渉を行うことです。手続きの前提として「債権譲渡通知書」が金融機関より送達されている必要があります。

【DPOの流れ】

  • 金融機関の自己査定で「破綻懸念あり」と評価を受ける(不良債権化)
  • 年2回行われるバルクセールで、サービサーに債権が払い下げられる
  • 「債権譲渡通知」に債務者が同意し、債権者がサービサーに変更される
  • 交渉により、指定された和解金を支払って残債の免除を受ける

債権の払い下げは額面より大幅にディスカウントされた額であり、それを上回る金額であれば交渉に応じてもらえる可能性が高いと言えます。結果的に超過した債務の大部分がカットされ、事業の清算を回避できるのがメリットです。

とはいえ、あくまでも事業の再建を目指すという上で、DPOを積極的に選択するのは無理があります。

ポイント1:そもそも債権が払い下げられることはほとんどない

そもそも、不良債権化するまで債務が放置されることはほとんどありません。回収不能と判断される前に、抵当権を実行されるか、債権者破産(債権者側から破産を宣告されること)が行われるからです

債権譲渡される状況は極めて特殊であり、DPOはあくまでも「運よく」金融機関側の都合等が重なって実行されるものと考えましょう。

ポイント2:サービサーに担保資産の売却を迫られることがある

仮にDPOを始めるとしても、サービサー側に「もともと抵当に入れていた資産を売却すれば弁済できるのではないか」と指摘される可能性があります。

その際の交渉を法人オーナー単独で成功させることは難しく、企業専門の弁護士等の力を借りなければなりません。

自主再建(私的整理)のデメリット・留意点

自主再建(私的整理)は専門家の助力がなければ成功率が低く、経営者による努力が必要です。

債務免除もしくは減額に成功したとしても、その際の課税をどう扱うかという問題が生じます。「いつ金融機関に切り出すのか」「法人オーナーとしてどこまで責任を負うべきか」という点も含め、戦略を立ててから交渉に入る必要があるでしょう。

免除益課税が発生する可能性がある

債務がカットされた部分については、法律上「金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(債務免除益/法人税法37条)」として課税対象になる可能性があります。リスケジュール・DDS・DPOにおいては、課税有無について特に意識しなければなりません。

考えられる対策としては、節税のため期限切れ欠損金などの損金を計上しておくことです。

税負担を考慮すると、期限切れ欠損金が計上できる「準則型私的整理」が適している場合もあります。

タイミング・優先順位の見極めが重要

次に重要なのが、金融機関と交渉を始めるタイミングです。

モラトリアム(返済猶予)を申し出なければならないときは、極力早く債務免除を提案すべきでしょう。最新の業績を元に説得力のある経営再建計画を説明できるよう、決算直後に着手することも意識しなければなりません。他にも、経営者交代の予定(事業承継など)があれば勘案事項に含めるべきです。

交渉の優先順位については、物的担保・経営者保証のある金融機関を最優先にするのが一般的です。弁護士等と相談した上で、交渉前の段階から自主再建(私的整理)のロードマップを組みましょう。

まとめ

自主再建(私的整理)における債務者側のメリットは、金融機関との信頼関係を保てること・経営陣の支配力と事業価値の両方を維持できることの2点です。

ただし、金融機関との交渉は一筋縄にはいきません。スポンサー等の株主の理解を得なければならない場合もあります。

自主再建(私的整理)を検討する際は、紹介した下記4種類の手法のスキーム・メリット&デメリットの理解を深めておきましょう。

【まとめ】自主再建(私的整理)手法のメリット&デメリット
自主再建(私的整理)の手法メリットデメリット
リスケジュール一時的にキャッシュフローが改善できる抵当権者全員と交渉しなければならない可能性あり
DES(債務の資本化)免除益課税が原則発生しない

金融信用力を保持できる

既存の株主(スポンサー)の理解必須

超過分の一部しか資本化できない可能性あり

DDS(債務の劣後化)金融信用力を保持できる金利が高くなる傾向にあり

資本扱いとなる借入金の割合は減少する

DPO債務を大幅にカットできるそもそも機会がほとんどない

担保資産売却を迫られる可能性あり

自主再建(私的整理)の成功のポイントとなるのは、タイミングの見極め・客観的に見て信頼性の高い経営再建計画作りです。今後の課税状況に対する理解も十分にしておかなければなりません。

弁護士・税理士・会計士の力を得て、万全の状態で望みましょう。

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