共有不動産の売却トラブルの解決方法!

1. 共有不動産とは?

共有不動産とは、文字通り「共有」状態ある「不動産」のことを言い、土地または建物を割合で分割して、複数の人が持っている状態です。この割合を「持分割合」と言います。

共有不動産においては共有者が持分の割合に応じて権利を持っています。玄関だけ、キッチンだけという様に、物理的に区切って所有している訳ではありません。

相続時に親族で持分を分ける、親子や夫婦で資金を出し合って購入するなど、状況は様々ですが親族間での共有状態が多くあります。たとえば、2000万円の土地を夫婦で1000万円ずつ出して購入するのであれば、持分割合は1/2ずつです。土地と建物は別々に登記が必要ですので注意しましょう。親がお金を出して子の名義で購入するのであれば、持分割合の問題ではなく、贈与として課税対象の問題になります。

共有者のうち、対象の共有不動産で居住している共有者がいる場合、一般的には他の共有者の共有持分を買い取ることになります。「持分割合のある共有者」が居住しているのですから、不法占拠とは異なります。よって、原則として明渡請求はできません。

2. 相続による共有不動産

相続では、遺産分割協議によるもの、遺産分割未了のものに分けられます。

被相続人である故人の財産は、その死亡と同時に相続人に承継されることはご存知のことかと思います。そこで相続人が複数の場合に、民法の共有に関する規定が適用され、相続財産は相続人の共同所有となります。

相続トラブルは増加傾向にあり、ほとんどが5000万円以下の事件、つまり一般家庭で多く発生しています。してはならないのが不動産を「とりあえず共有」にし、問題を先送りにしてしまうことです。後に揉める原因になりますので、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

被相続人である故人が投資用の賃貸住宅を単独で所有していた場合に、相続人が複数いることでもトラブルの引き金になります。なぜなら、これまで単独で賃料・リフォーム・原状回復などを自由に行っていたものが、複数人で共有して所有することで決定権限のある権利者が複数存在してしまうためです。賃貸住宅は収益が関係するため入居条件・月額家賃・駐車料・敷金・その他特約条項など決定事項が多く、契約者が入居中にも判断すべき事項が継続的に発生し続けます。

3. 共有不動産の売却のトラブルの内容

共有状態においては、財産としての機能である使用方法(使用・収益・処分)について、共有者間の協議や協力が必要になります。典型事例として、使われていない共有不動産に関するもの、共有者の誰かが居住する共有不動産に関するもの、収益不動産の経費分担方法・収入分配方法・管理方法などをめぐるものが挙げられます。その内、トラブルの内容として最も多いのが売却方法と売却価格です。

4. 共有不動産の売却のトラブルが生ずる原因

誰も住んでない共有不動産が存在する

居住する地域以外に存在している共有不動産は、誰も住んでいなくとも当然に固定資産税が発生し、建物の維持管理費も捻出しなければいけません。そこで、誰がいくらの費用を払うのかという問題が生じます。

庭木が近隣住民に迷惑をかけることはもちろん、若者の溜まり場となってしまったり、放火に狙われたりと、管理が不十分だと責任が生じます。

民法 第251条【共有物の変更】

各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

民法 第252条【共有物の管理】

共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

民法 第253条【共有物に関する負担】

1項 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。

2項 共有者が1年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。

売却したいのに共有者と金額の折り合いがつかない

売却すれば良いと簡単に考えがちですが、そもそも買い手が見つからないケースも多く、その間の固定資産税や建物の維持管理費も捻出する必要があります。境界が確定されていない、接道要件が満たされない、通行権が確保されていないなどの理由により、有効に活用できない土地であれば売却は更に困難です。買い手が見つかったとしても、長男が「固定資産税や建物の維持管理費を捻出したくないから3000万円の価値があるとしても1500万円で売ってしまおう」と考えても、次男が「自分の手元に残るお金が減るのは困るから2500万円以上の買い手が見つかるまで待ちたい」として、売却金額で対立する可能性があります。

共有不動産に共有者の内の誰かが居住している

典型事例を挙げます。たとえば、父と長男が父の所有する不動産に同居しており、次男は別の場所に住んでいるような場合、その後、父が亡くなると法律的には兄弟の共有不動産となるのですが、長男が居住を続けることで次男が不満を抱きます。

固定資産税や建物の維持管理費は長男が負担し、兄弟の関係が良好であれば問題ないのですが、関係が悪化すると「家賃分の金銭請求」などの権利を一方的に主張されかねません。特徴的な経緯や背景がある場合には、事情の把握も検討・判断の材料になります。

固定資産税の負担を回避するために共有不動産を売却

固定資産税は共有者全員に連帯納付義務があるものの、固定資産の所在する市町村(東京23区内では都)が相続人の代表者1名に対し納付を迫ります。共有者それぞれの持分に応じて課税することはできません。

そのため、共有者全員から固定資産税を共同で支払う協力を得られない場合に、嫌気がさして単独で売却に踏み切り、トラブルに発展するケースもあります。

地方税法 第10条の2【連帯納付義務】

1項 共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。

2項 共有物、共同使用物、共同事業又は共同行為に係る地方団体の徴収金は、特別徴収義務者である共有者、共同使用者、共同事業者又は共同行為者が連帯して納入する義務を負う。

相続によって共有状態になった不動産の売却

遺産分割協議を経なくとも共有名義であれば手続きを進めることができ、遺産分割協議で揉めるくらいなら「とりあえず共有」にしておこうと考える方も少なくありません。法定相続分によっては親・叔父叔母・孫・いとこ・兄弟姉妹と共有持分が細分化され、収集のつかない状態に陥る危険性があります。たとえば、兄弟が相続人となり1/2ずつ相続するとしても、長男が故人の場合は長男の子が代襲相続し、更に長男の子が故人の場合は子の子が代襲相続し…、一体誰に持分があるのかわからなくなるためです。

相続においては、本人の意思を予め家族で確認しておいたり、遺言書を残すことで、そもそも共有状態を避けることが効果的です。

5. 共有不動産の売却のトラブルの解決方法

「共有物分割訴訟」で強制的に競売にかける

共有物分割請求を行い、共有者全員の協議がまとまらない場合、共有物分割訴訟を起こすことになります。売却したい価格が共有者の間で意見が一致しない場合も同じです。

共有物分割訴訟で強制的に競売にかけることで、活用方法がない不動産への固定資産税支払いや維持管理費の無駄な支払い負担を解消できます。ただし、競売だと通常の売却よりも売却価格が大幅に下がります

境界が確定されていない、接道要件が満たされない、通行権が確保されていないなどの理由により、有効に活用できない土地であれば売却は更に困難です。

実際には訴訟を起こさなくとも、判決の見込みを弁護士から予め説明することで、早期に解決することがあります。状況が悪化する前に1日でも早く専門家である弁護士に相談しましょう。

民法 第256条【共有物の分割請求】

1項 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。

2項 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から5年を超えることができない。

民法 第258条【裁判による共有物の分割】

1項 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。

2項 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

民法 第260条【共有物の分割への参加】

1項 共有物について権利を有する者及び各共有者の債権者は、自己の費用で、分割に参加することができる。

2項 前項の規定による参加の請求があったにもかかわらず、その請求をした者を参加させないで分割をしたときは、その分割は、その請求をした者に対抗することができない。

他の共有者に買い取ってもらう

他の共有者へ買い取りを要求し、折り合いがつく価格で共有持ち分を買い取ってもらうことが理想的です。共有持分を買い取った方の単独所有となります。

単純明快なのですが、評価額や買い取り要求額で意見が対立し、なかなか合意に達しないケースが多くあります。

農地の場合は市町村に寄付する

農地を売却するには農業委員会または知事の許可が必要です。農地のままでは売却が難しく価格も低いため、農地を宅地に転用・造成して売却する方法もあります。宅地であれば高い価格で売却も見込めますが、高い固定資産税を売れるまでの期間払い続けなければいけません。

使用されない農地が放置されている状態は国や市町村にとってもマイナスであるため、農地を市町村に寄付する方法があります。ただし、市町村としても寄付された農地を管理する義務が発生しますので、使い道が全くない場合には受け取ってもくれません。

農地法 第3条【農地又は採草放牧地の権利移動の制限】

1項 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可(これらの権利を取得する者(政令で定める者を除く。)がその住所のある市町村の区域の外にある農地又は採草放牧地について権利を取得する場合その他政令で定める場合には、都道府県知事の許可)を受けなければならない。~以下省略

トラブル自体から身を引く

共有持分を放棄することにより、共有関係そのものから離脱することができます。放棄すること自体に裁判手続きは不要で、通知するだけで足ります。ただし、登記の変更まで必ず行ってください。台帳課税主義のため、登記に名前が残っていれば固定資産税の負担義務だけが残ります。

持分の財産を手放すことになりますが、長く激しい争いにかかる時間的負担や精神的負担から離脱できますし、固定資産税の負担を行わなくて済みます。他の共有者から、登記申請の委任状に印鑑をもらうなどの協力を得なければなりませんが、手続き自体は難しくありません。

民法 第255条【持分の放棄及び共有者の死亡】

共有者の1人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

まとめ

共有者間で争いが起きなければ良い話なのですが、権利(お金)が絡むことで些細なことでもトラブルに発展します。共有状態となる前に、共有の予定者全員で、誰がどの様に管理・処分するのかを明確に取り決め、合意を得ることが望ましいです。共有に関する法律的な規定や解釈はとても多く、権利関係などを個人で判断するのは危険ですので、専門家である弁護士に一つ一つ確認しておくことでトラブルのリスクを少しでも回避しましょう。

また、共有不動産の「負」の部分ばかり述べましたが、共有状態であることによって住宅ローン控除を二重に受けられるなどのメリットもあります。税理士へも相談や確認をしておく方が安心です。

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