取締役会議事録閲覧謄写請求権!

会社に投資する株主には、少数株主であっても様々な権利が与えられていますが、「取締役会議事録閲覧謄写請求権」もそのひとつです。

この記事では、取締役会議事録の概要と作成・保管義務、取締役会議事録閲覧謄写請求権の概要と要件、権利が認められるポイントなどを解説します。

1 取締役会議事録とは

会社には、意思決定や運営を行う「機関」があり、具体的には次のものが挙げられます。

・株主総会

・取締役(取締役会)

・監査役(監査役会)

・委員会/会計監査人/会計参与

このうち「取締役」とは、会社の業務を執行する役割を担う者です。株主は、会社に投資をすることで会社を所有していますが、経営は自ら行うのではなく、業務に詳しい取締役などに任せる形式をとっています。

公開会社や、監査役あるいは委員会を置いている株式会社では、取締役会の設置が必要です(会社法327条)。

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2 取締役会議事録作成義務とは

取締役会の開催時には、議事録の作成が義務づけられています(会社法369条3・4項)。

取締役会議事録の作成方法

取締役会の議事録は、書面あるいは電磁的記録によって作成します(会社法369条3項・会社法施行規則101条2項)。

「電磁的記録」とは電子的方式などで作られる記録で、磁気ディスクなどにファイルを記録したもの(会社法26条2項・会社法施行規則224条)とされ、具体的にはPCなどを使って作成したファイルを、USBフラッシュメモリやCD-Rなどの記録メディアやハードディスクなどに保存することを指します。

取締役会議事録の作成期間

取締役会議事録をいつ作成するべきかに関しては、特に規定はありません。ただ後述するように、議事録は取締役会の日から保管する必要があるため、早めに作成した方がよいでしょう。一定の規模がある会社では、取締役会の議事録は総務部や法務部が作成することが多いです。

また、登記事項に関する取締役会決議が行われた際には、登記申請書の添付書類として議事録が必要なことから、2週間以内(登記申請の期限内)の作成が求められます。

取締役会議事録に記載する内容

取締役会の議事録に記載する内容のうち、主なポイントは次のようになります(会社法施行規則101条3項)。

・開催日時と場所

・(議長がいる場合は)議長の氏名

・参加した執行役・会計監査人・会計参与・株主の氏名(名称)

・議事の経過と結果

・(決議事項に関して利害関係がある取締役がいる場合は)該当する取締役の氏名

・(取締役以外の発言などに対して、取締役会が行った発言がある場合は)該当する発言の内容

・特別取締役による取締役会である場合にはその旨

・特別の招集による取締役会である場合にはその旨 など

各取締役がどのような発言をし、取締役会でどのような決断が下されたのかを後から確認できるような内容の記載が必要です。

3 取締役会議事録の保管義務とは

取締役会議事録に関しては、取締役会の日から数えて10年間、会社の本店に保管する(備え置く)義務があります(会社法371条1項)。支店に保管する義務はありません。

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4 取締役会議事録閲覧謄写請求権とは

株主は会社に投資をすることで、配当や売却益などの利益を期待しています。会社は株主からの資金提供により存続しているため、株主には次の2つの権利が与えられています。

・自益権:配当などの経済的利益を受けられる権利

・共益権:会社の経営に関して、監視や是正、参与できる権利

株式会社では、株主は会社の経営を取締役などに任せています。しかし、取締役がどのように会社を経営するかで、株主が受け取る利益は大きく変わってくるのです。そのため、株主は取締役などの経営に対して口出しできる「共益権」をもっています。

「取締役会議事録閲覧謄写請求権」は共益権のひとつです。株主は自らの権利行使に必要とされる場合、取締役会議事録の閲覧や謄写(コピー)の請求を行なえます。

5 取締役会議事録閲覧謄写請求権の要件は

株主が「取締役会議事録閲覧謄写請求権」を行使できる要件は、次のようになります。

株主が『その権利を行使するため必要があるとき』は、

・監査役や委員会が設置されていない会社

株式会社の営業時間内ならいつでも、閲覧や謄写を請求できる

・監査役や委員会が設置されている会社

『裁判所の許可を得て』閲覧や謄写を請求できる

(※上記は会社法371条2〜3項、会社法施行規則226条より。『』は原文のまま)

この権利を行使するうえでのポイントは次の2点です。

・株主は、自らの権利行使に必要な際にのみ請求できる

・監査役や委員会が置かれている会社では、裁判所の許可が必要

6 どのような場合、取締役会議事録は閲覧謄写できるのか?権利行使に必要な場合かつ裁判所の許可

実際にはどのような場合に、取締役会議事録の閲覧・謄写が認められるのかを考えるにあたって、実際に起こったトラブル例を紹介します。

大株主が取締役会議事録の開示請求を検討するケース

オリンパスの大株主であったアメリカ投資会社のサウスイースタン・アセット・マネジメントが、情報開示や調査、第三者による監査などを求めて、質問状を公開した事例がありました。

オリンパスが過去に企業買収を行った際に支払った助言会社への手数料が、業界における相場の何倍もの金額でした。そのためサウス社は、取締役会自体の信用性が問われるとして、取締役会議事録の閲覧を含む情報開示などを請求しましたが、オリンパスが拒否したため議事録の開示請求も検討しているとされていました。

当時、オリンパスは個別の案件に関してはコメントできないとしており、その後の報道もないためどう決着したかは不明となっています。

このケースでは、オリンパスは監査役設置会社のため、サウス社が取締役会議事録を閲覧するには裁判所の許可が必要です。

オリンパスが開示を拒否したため商事非訟事件となり、サウス社は審問手続きにおいて、議事録の閲覧や謄写が株主としての権利行使に必要である点を疎明し、オリンパスは防衛策として、議事録の開示により大きな損害を被る点を疎明する必要があります。

ただし、会社側(この場合はオリンパス)が任意で議事録を開示すれば、株主(この場合はサウス社)が申立を取り下げて和解的に解決するケースも、他の例では存在します。

また、オリンパスが第三者委員会による事実解明を希望しており、株主が自ら議事録を閲覧せずとも第三者による監査が入るため、サウス社に議事録の閲覧を認める必要性は高くはないという説もありました。

このようなケースで事態を収集するポイントは、第三者委員会の迅速な設置です。対応が遅れると、会社と大株主間で法的紛争が勃発してしまうリスクがあります。

少数株主から取締役会議事録の開示請求を受けるケース

一方、規模が小さい同族会社などでは、少数株主である不仲な親族などが、取締役会議事録の閲覧を請求してくるケースがあります。

このような場合は、請求が不当な目的である可能性があるため、会社側は開示を一律で拒否することが多いです。その後は、株主が裁判所に議事録の開示請求を求める申立を行い、株主の権利行使において閲覧・謄写が必要だと疎明し、会社側は必要でないと互いに疎明します。

少数株主から取締役会議事録などの開示請求を受けた場合は、請求自体への対応だけではなく、株主との紛争をどう解消するかという総合的な観点が大切です。

少数株主がもつ株式を買い取ってしまう対応もあれば、少数株主に付け入る隙を与えないよう法律を遵守して会社経営を行うといった対応も考えられます。どちらにしても、専門家である弁護士などに相談し、よりよい選択肢を考えることが必要です。

取締役会議事録の閲覧・謄写が認められるには

紹介したトラブル例のように、取締役会議事録の閲覧・謄写が認められるかどうかは、「議事録の閲覧・謄写が、株主の権利行使に必要か」という点がポイントです。

商事非訟事件に進展した場合には、株主・会社間でその点を争い、裁判所も許可を与えるか否かを判断するという手順になります。

実際には、全国株懇連合会の調査によれば、裁判所が許可を与えるケースは年間通して数件ほどと少ないようです。

7 会計監査限定監査役しかいない場合の取締役会議事録閲覧謄写請求権の要件は?裁判所の許可は不要

監査役には、取締役が職務を執行しているかを監査する義務がありますが、ある条件のもと、監査役が行う監査の範囲を、会計関連の業務に限定する旨を定款にて規定できる、または定款で規定されているとみなされる場合があります。

監査の範囲を会計に限定された監査役を、通常の監査役とは区別して「会計監査限定監査役」と呼びます。

会計監査限定監査役が定款で規定されているケース

次が、会計監査限定監査役が定款で規定されているとみなされる、または定款で規定されているケースであり、その旨の登記が必要です。

・平成18年4月30日より前に設立された株式会社のうち、小会社ならびに非公開会社で、監査役の監査範囲に関して平成18年5月1日以降に定款を変更していない会社

・平成18年5月1日より後に設立された株式会社のうち、非公開会社で、監査役の監査範囲を会計に限定する旨を定款で規定している会社

通常の監査役と会計監査限定監査役、それぞれが設置されている会社では、株主の権利も異なってきます。そのうちのひとつとして、取締役会議事録の閲覧・謄写に関しては次のようになる点に注意しましょう。

・監査役設置会社:裁判所の許可を要する

・会計監査限定監査役設置会社:営業時間内ならいつでも閲覧・謄写できる

まとめ

取締役会を開く際には議事録を作成して、取締役会の日から数えて10年間、会社の本店に保管する義務があります。

株主には、共益権(会社経営に参与できる権利)のひとつとして、取締役会議事録の閲覧・謄写を請求できる権利が認められています。

ただし、「取締役会議事録の閲覧・謄写が株主の権利行使に必要であること」という要件があり、監査役や委員会が置かれている会社では裁判所の許可が必要です。

株主が取締役会議事録の開示を求める申立を行った場合は、議事録の閲覧等が株主の権利行使に必要であるか否かに関して、株主と会社間で主張を戦わせることになります。

株主と会社、どちらの側に立った場合も、どのように対応・決着を図るかは自ら考えるよりも、プロであるM&A弁護士に相談した方がよりよい選択肢を見つけることが可能です。一人で悩んでいるよりも、豊富な事例に精通している弁護士にまずは相談してみましょう。

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