合併のメリット・デメリットと手続の流れ!

合併とは、企業の再編を進めるためのもっとも代表的な手法です。合併という用語の意味については、「2つ以上の会社が合併契約を結んで、1つの会社として統合されること」と覚えておくとよいでしょう。

ここで「2つ以上の会社」という書き方をしたのは、合併が2社間で行うものとは限らないからです。3社間、あるいは4社間で、大規模な合併をすることも可能です。たとえば大きな企業グループが事業を再編する際、グループ内の数社がまとめて1社に統合される例も珍しくありません。

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合併と買収の違い――合併された会社は消滅する

なお、企業再編の手法として「企業買収」もよく行われます。企業買収とは、「株式譲渡や事業譲渡を通じて、買収の対象となる会社の経営権や資産を掌握し、自社の傘下に入れること」をいいます。ここでいう買収は、先に見た合併とはまったく異なる手続きだという点に注意しましょう。

というのも、買収された会社は、買収後も子会社として企業活動を継続します。これに対して、合併された会社は、合併によって消滅してしまうのです。

この違いに注目すれば、合併と買収の区別について明確に理解できるはずです。

消滅した会社の権利・義務のゆくえ――新設合併と吸収合併の違い

では、合併によって消滅した会社の従業員は、いったいどうなってしまうのでしょうか? 従業員だけではありません。消滅した会社が合併前に持っていた資産や債権・債務は、どのような運命をたどるのでしょうか?

ここで重要になってくるのが、合併には「新設合併」と「吸収合併」の2種類があるという点です。新設合併と吸収合併では、合併により消滅する会社が有する一切の権利義務の帰属先がまったく異なってくるのです。

新設合併の場合――消滅会社の権利義務を引き継ぐのは「新設会社」

まず、新設合併から見ていきましょう。

新設合併では、合併の当事者となる会社はすべて合併によって消滅します。その代わり、まったく新しい会社が合併により設立されることになります。「合併により新たな会社が新設される」ので、新設合併と呼ばれるのです。

つまり、新設合併契約を結んだすべての会社が「消滅会社」となり、合併後に残るのは新たに設立された「新設会社」だけです。したがって、新設合併の消滅会社が有していた一切の権利義務は、新設会社が引き継ぐことになります。

吸収合併の場合――消滅会社の権利義務を引き継ぐのは「存続会社」

次に、吸収合併についても見ていきましょう。

吸収合併では、合併契約を結んだ会社のすべてが消滅するわけではありません。いずれかの会社が、合併後も残ることになります。それ以外の会社は、合併後も存続する会社に「吸収」される形で消滅するのです。

つまり、吸収合併契約を結んだ会社は、「消滅会社」と「存続会社」に分かれます。吸収合併の後、消滅会社は存続会社に吸収されてしまうので、残るのは存続会社だけです。したがって、吸収合併の消滅会社が有していた一切の権利義務は、存続会社が引き継ぐこととなります。

合併のメリット

なぜ合併が行われるのでしょうか? 合併が必要とされる理由を理解するため、新設合併と吸収合併に共通する「合併のメリット」についても、いくつか見ていきましょう。

合併による業界シェアの拡大

合併によって2つ以上の会社が1つになると、業界内でのシェアが拡大し競争力が高まるというメリットが生じます。

たとえば、業界1位の企業を打倒するために、2位・3位の企業が合併して新たな会社に生まれ変わるケースがあります。この場合の狙いとしては、2位・3位の企業が合併することで、1位企業を上回る業界シェアを獲得することが意図されているのです。

合併による事業シナジー

また、2社以上の事業が統合することで、それまでになかった新たな価値を生み出す場合もあります(いわゆる「事業シナジー」)。

たとえば、まったく異なる分野の素材メーカー同士が、予想外の合併をするケースがあります。この場合は、異なる素材の研究・開発ノウハウを組み合わせることで、これまでになかった新素材を開発しようという狙いが考えられます。合併により、新たなマーケットを開拓することが意図されているのです。

合併による会計処理の簡便化

さらに、合併により1つの法人格に統合されるため、2社間では不可能だった会計処理ができるようになるというメリットもあります。

たとえば、累積する赤字に悩まされているA社が、黒字会社のB社と合併したとします。合併後は1つの会社として損益通算が可能なので、A社の赤字分をB社の黒字分でカバーすることができるのです。A社の損失を軽減できるのはもちろん、B社にとっても黒字額を圧縮することで法人税を節税できるというメリットがあります。

合併のデメリット

以上のようなメリットがある合併ですが、もちろん良いことばかりではありません。ここからは、「合併のデメリット」について見ていきましょう。

複雑な合併手続きに伴うコスト負担

もっとも大きなデメリットとしては、合併の手続きが非常に複雑であることが挙げられます。

たとえば、合併の当事者となる各会社の内部では、株主総会を開いて特別決議による賛成を得なければならないという、非常に高いハードルがあります。

あるいは、既存の株主や債権者といった利害関係者が合併によって不利益を被らないように、様々な情報開示手続や対価支払手続も課されています。

このような非常に煩雑な手続きをクリアするために、合併には多くの人的・時間的・金銭的なコストがかかるというデメリットがあります。合併を成功させるには、入念な準備や相応の対価が必要になるのです。

企業規模が大きくなることによるデメリット

また、合併により企業規模が拡大することの悪影響も挙げられます。

たとえば、合併前は別々の会社に属していた事業が、合併後は1つの会社のもと統合されることになります。これ自体は何ら悪いことではありませんが、会計上の数字を把握しにくくなる面があることに注意が必要です。合併前は別々に計上されていた数字が、合併後は1つの部門としてまとめて計上されるため、経営状態を分析するにはかえって手間がかかるようになるのです。

あるいは、合併により企業規模が大きくなることに伴い、社内ルールを整備するためのコストが必要になります。合併前は別々の会社で働いていた従業員が、安心して一緒に働けるような社内ルールを構築しなければなりません。この点をおろそかにすると、社内の人間関係が悪化したり、現場の指揮系統が混乱したりするといった悪影響が生じかねません。

偶発債務のリスクによるデメリット

偶発債務とは、「将来一定の条件が成立した場合に発生する債務」のことです。現時点で債務はまだ存在していないけれども、「いつか債務が発生するかもしれない」というリスクがある状態を考えてください。

代表的な例として、第三者が有する債務の保証人となった場合が挙げられます。現時点では保証債務が発生しているわけではありませんが、「もし第三者が債務を返済しなかったら、保証債務が発生してしまう」というリスクが存在するというわけです。

現時点ではまだ債務が発生していないので、会計上も負債として計上されるわけではありません。そのため、合併のプロセスを進めるうえでも、偶発債務の存在を見過ごしてしまうことが多々あるのです。

もし消滅会社が偶発債務を有していることに気づかないまま、合併を進めてしまったらどうなるでしょうか?

合併では、消滅会社が有する一切の権利義務を、合併後の会社(新設合併なら新設会社、吸収合併なら存続会社)が引き継ぎます。偶発債務も、その例外ではありません。消滅会社が有していた偶発債務の発生条件が合併後に満たされた場合、その請求先は合併後の会社となってしまうのです。

したがって、合併を進めるうえでの注意点として、消滅会社の経営状況を厳しくチェックしておく必要があると言えるでしょう。

新設合併と吸収合併について

では、実際に合併を行う際には、新設合併と吸収合併のどちらを選択すればよいのでしょうか? そこで、両者のメリット・デメリットについて、詳しく見ていくことにしましょう。

なお結論から言うと、吸収合併の方が圧倒的に多くのメリットがあります。そのため、実務ではほとんどのケースで吸収合併が選択されています。

新設合併のメリット――イメージ戦略上の利点

新設合併と吸収合併のもっとも大きな違いは、先ほど説明したように「新設合併では従来の会社がすべていったん消滅し、合併後にはまったく新たな会社が新設される」という点にあります。

たとえば、A社とB社が新設合併を行い、新たなC社が新設されたとしましょう。この場合、A社とB社の従業員に立場上の優劣はありません。いずれかの会社が「傘下に入る」というネガティブなイメージを負うこともなく、新たなC社で平等な再スタートを切ることができます。

あるいは、世間の評判が悪くなってしまった会社同士が、新設合併によってまったく新たな会社を立ち上げるということも考えられます。これまでの膿を出し切って、新たな会社として生まれ変わるというアピールをすることができるのです。

このように、新設合併のメリットとしては、「対等な合併である」「過去を清算して生まれ変わる」といったアピールができるという「イメージ戦略上の利点」が挙げられます。

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新設合併のデメリット①――新設会社を作ることによる負担

一方で「合併後に新たな会社を新設する」という新設合併の特徴は、いくつかのデメリットももたらします。

新設会社の設立手続上の負担

その中でも最大のデメリットは、合併後に改めて新設会社を設立することによる手続上の負担です。

吸収合併では存続会社が合併後も残ってくれるので、合併の際に改めて会社を設立する必要はありません。これに対して、新たな会社をゼロから設立する新設合併では、合併の手続きと同時に新設会社設立の手続きも行わなければならないのです。

合併の手続きは、ただでさえ非常に煩雑です。にもかかわらず、新設合併では新設会社の定款・役員構成などについても、改めて決定しなければなりません。

そのため、新設合併の手続上の負担は、吸収合併に比べて非常に重くなってしまうのです。

新設会社のマネジメント上の負担

また、新設合併には「マネジメント上の負担が大きい」というデメリットもあります。

たとえば、A社とB社が新設合併をして、新たにC社を設立するとしましょう。もしA社とB社の給与体系に大きな違いがあったとしたら、新たに設立されるC社ではいかなる給与体系を採用すべきかという問題が生じます。

他にも従業員の評価基準や労務管理など、企業風土にかかわるあらゆる局面で、周到な調整が必要になります。合併前の準備はもちろん、合併後も細心の注意を払って、C社独自の新たなマネジメント方針を確立していく必要があるのです。

もちろん、吸収合併でも旧消滅会社の従業員をどう処遇するかという、マネジメント上の問題は生じます。とはいえ、吸収合併のケースでは存続会社の経営方針を軸にして対処することが可能なので、新たにルールを設計しなければならない新設合併に比べると、負担は少なく済みます。

新設合併のデメリット②――「現金合併」ができない

さらに、新設合併には「現金合併ができない」というデメリットもあります。

ここで「現金合併」という用語が出てきました。この耳慣れない用語については、「合併対価」という重要キーワードとの関係で理解する必要があります。そこで、具体的なケースを例に挙げながら、「合併対価」と「現金合併」について説明をしていきます。

「合併対価」とは?

たとえば、あなたが株を持っているA社について、B社と合併をするというニュースが飛び込んできたとしましょう。

新設合併なら、A社とB社はいずれも消滅します。吸収合併の場合でも、A社が消滅会社なら合併とともに消滅することになります。仮にA社が合併により消滅するとして、あなたが持っているA社の株はどうなってしまうのでしょうか?

結論から言うと、A社の株は会社の消滅とともに価値を失ってしまいます。しかし、これだけではあなたが損をしてしまいます。そこであなたは、A社株を手放す代わりの「対価」を、合併後の会社から受け取ることができるのです。これがいわゆる「合併対価」です。

「合併対価」の内容はどのように決まる?

合併対価として受け取ることができるものとして、もっとも代表的なのは「合併後の会社の株式」です。新設合併なら新設会社の株式を、吸収合併なら存続会社の株式を、合併対価として受け取ることができるのです。この場合、合併により消滅する会社の株主は、合併後には新設会社または存続会社の株主となります。

「合併対価をどのような基準で交付するか」といった合併対価に関する事項は、合併契約書の中で定められます。合併契約書の効力が認められるには、株主総会の特別決議による承認が必要です。つまり、合併対価について株主の多数派が賛成しなければ、合併の効力は認められないことになります。

なお、たとえ株主の多数派が賛成したとしても、少数派の反対株主には「株式買取請求権」が認められます。合併に反対する少数株主は、会社に株を買い取ってもらい現金化することで、会社との縁を切ることができるのです。

「合併対価の柔軟化」とは?

合併対価として交付されるものは、株式に限られません。合併後の会社の社債も、合併対価として交付することが認められています。このように、株式以外のものも合併対価として認められるようになったことを、「合併対価の柔軟化」と呼びます。

合併対価の柔軟化は、急速に変化する経済環境に企業が対応できるようにするために、近年の法改正で認められたものです。合併プロセスの選択肢を増やすことで、企業の柔軟な再編を促すという政策的意図があります。

なお「合併対価として何を交付するか」についても、合併契約書の中で定められます。株主総会の特別決議による承認が必要ですし、少数派となった反対株主は「株式買取請求権」を行使して会社と縁を切ることができます。

新設合併では「現金合併」ができない――合併対価の柔軟化の限界

注意が必要なのは、「合併対価として現金を交付できるか」という点です。なお、合併対価として現金を交付して行う合併のことを、「現金合併」と呼びます。

現金合併を行った場合、消滅会社の株主は合併後、株主としての地位を失います。つまり消滅会社の株主は、合併後の新会社の経営に対して関与することができなくなるのです。合併を行う会社からすると、消滅会社の株主と「お金で縁を切る」ことができるので、魅力的な選択肢となり得ます。

しかし新設合併の場合には、現金合併を行うことが認められていません。なぜなら、新設合併では合併の当事者である会社がすべて消滅するため、現金合併を認めると新設会社の株主が誰もいなくなってしまうからです。現金合併が可能なのは、吸収合併だけなのです。

このように、新設合併は吸収合併に比べて、合併対価の柔軟化が制限されていると言えます。現金合併という選択肢を選べない点は、新設合併のデメリットの一つとして数えられます。

新設合併のデメリット③――登録免許税の負担

合併手続きの締めくくりとして登記が行われますが、登記には「登録免許税」という税金が必要になります。この登録免許税については新設合併の場合の方が、吸収合併の場合よりも大きな負担となる点に注意しましょう。

算定基準となる金額の違い

その理由は、登録免許税の算定基準となる金額の違いにあります。

新設合併の際に必要となる「新設会社の設立登記」では、「新設会社の資本金の額」全体を基準として、登録免許税を算定します。これに対して、吸収合併の際に必要な「存続会社の変更登記」では、「存続会社の資本金の増加額」のみが算定基準となります。

こうした算定基準の違いが影響して、登録免許税の負担は新設合併の方が大きくなります。

吸収合併のメリット――新設合併のデメリットの裏返し

ここからは、吸収合併のメリットについて説明します。もっとも、吸収合併のメリットは、先ほど詳しく説明した新設合併のデメリットの裏返しでもあります。重複する部分も多いので、ここでは簡単に見ていくことにしましょう。

新設合併に比べて手続きがシンプル

まず、新設合併では新たに新設会社を設立する必要があったのに対して、吸収合併ではその必要がありません。

つまり、吸収合併では会社設立の手続きが不要な分、新設会社よりも手続きがシンプルです。そのため、負担するコストも少なくて済みます。

合併後のマネジメントが新設合併よりも容易

吸収合併では、合併後も存続会社が残ります。そのため、合併後のマネジメントについては、合併前から存続会社が採用していたマネジメントの方針の延長線上で行うことができます。

もちろん旧消滅会社の従業員を迎え入れるための手間暇はかかりますが、新設会社のマネジメントプランをゼロから作る必要のある新設合併に比べると、はるかに少ないプロセスで済むことになります。

現金合併が可能

吸収合併では、新設合併と異なり現金合併をすることができます。

つまり、消滅会社の株主と「お金で縁を切る」ことにより、存続会社の株主構成を変えずに合併を行うことが可能です。そのため、新設合併よりもスムーズに合併の手続きを進めることができます。

新設合併に比べて登録免許税の負担が小さい

登記に必要な登録免許税についても、吸収合併の方が軽い負担で済むというメリットがあります。なお、登録免許税の具体的な計算方法の説明については、後に詳しく説明します。

吸収合併のデメリット――ネガティブなイメージ

吸収合併のデメリットについても、新設合併のメリットの裏返しと考えれば簡単です。つまり、新設合併にはイメージ戦略上の利点があったのに対して、吸収合併には「ネガティブなイメージがついてしまう」というデメリットがあります。

吸収合併に対するイメージは、「落ち目の消滅会社が存続会社に飲み込まれてしまった」というものになる傾向があります。「消滅会社には経営上何らかの問題があったはずだ」という先入観を持たれやすいので、吸収合併を進めるうえではイメージ戦略に細心の注意を払う必要があります。

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新設合併と吸収合併の手続きの流れ

合併の手続きの概要

合併の手続きは、非常に複雑です。そこでまずは、全体的なイメージをおおまかに捉えるところから始めましょう。

合併契約の締結・承認

合併とは、突き詰めると「会社同士の契約」です。

そのため、新設合併と吸収合併のいずれも、「合併契約の締結」が不可欠とされています。合併契約の締結は、合併する会社の取締役同士で「合併契約書」を取り交わして行います。

合併契約書では、「合併の効力はいつ発生するのか」「消滅会社の株主には合併対価として何を交付するのか」といった内容が定められます。つまり合併契約書は、合併の設計図としての役割を果たすものです。

もっとも、取締役同士で合併契約書を取り交わすだけでは、合併の効力は発生しません。株主総会を開催し、過半数の出席と3分の2以上の賛成を得ることが必要です。これを「株主総会の特別決議による承認」といいます。

以上のように、合併する会社の取締役同士で「合併契約の締結」を行い、各会社の株主総会で「特別決議による承認」を得ることが、合併の手続きの中核となります。

利害関係者の保護

一方で会社には、債権者や株主といった多数の利害関係者が存在します。合併は会社の在り方を大きく変えてしまう契約なので、利害関係者を保護するための手続きを踏むことが非常に重要となります。

たとえば債権者からすると、自分の持っている債権の請求先が別会社になってしまいます。また株主からすると、自分の持っている株が別会社のものに変わってしまいます。債権者や株主から見ても、合併は一大事なのです。

そのため、合併に反対する債権者や株主には、合併への対抗手段が法律上認められています。反対債権者は、合併について異議を述べることで、会社に対して債務の弁済をさせることができます(債権者異議手続)。反対株主は、自分の株を会社に買い取ってもらうよう請求できます(株式買取請求権)。

債権者・株主がこうした対抗手段を講じるためには、会社側があらかじめ十分な情報提供を行うことが必要です。そこで、「書類の備え置き」「債権者への催告」「株主に対する通知」といった情報開示の手続きが定められています。

合併のプロセスでは、要所要所で情報開示の手続きを踏むことが必要となるのですが、その意義は「利害関係者の保護」にあるのです。

合併の登記

利害関係者保護のための手続きをきちんと踏みながら、合併契約の締結・承認を無事完了したら、最後に「合併の登記」を申請することになります。必要書類と所定の登録免許料を用意して、管轄の法務局で申請手続きを行います。

登記が完了すると、合併の手続きは晴れて終了となります。

吸収合併の手続きの流れ

以上の全体像を踏まえたうえで、まずは吸収合併の手続きの流れについて詳しく見ていきます。合併の基本ともいうべき吸収合併の手続きから先に説明し、より多くの手続きが必要な新設合併の説明はその後に行うこととします。

効力発生日を決める――吸収合併契約の締結

吸収合併の手続きは、消滅会社と存続会社で「吸収合併契約の締結」を行うことから始まります。その際に両者の間で取り交わす「吸収合併契約書」では、多岐にわたる事項を定めなければなりません。中でも手続きの流れを考えるうえでは、「吸収合併の効力発生日」の決定について特に注意が必要です。

なぜなら、吸収合併手続のスケジュールを決めるうえで、この「効力発生日」が重要な役割を果たすからです。

吸収合併を進めるためには、様々な手続きを踏む必要があります。そして、それぞれの手続きの期限は、効力発生日を基準に決められています。つまり、吸収合併契約を締結して効力発生日が確定することで、その後の手続きのスケジュールが逆算的に決まっていくのです。

そこで、まずは合併の準備として債権者・株主といった利害関係者に対する事前調整を進めながら、各種手続きにかかる時間を見積もりましょう。そのうえで、余裕をもって合併の手続きを進められるように効力発生日を決定して、合併契約の締結を行いましょう。

合併契約締結後にまず行うべきこと――書類の備え置き

吸収合併契約の締結後、真っ先に行わなければならないのが「書類の備え置き」です。合併契約書の内容を記載した書面等を消滅会社・存続会社の両社の本店に備え置くことで、債権者や株主が閲覧できる状態にしておかなければなりません。

「書類の備え置き」は、「合併契約を承認するための株主総会の2週間前」「債権者への催告を行った日」「株主への通知を行った日」のうち、もっとも早いタイミングに合わせて行う必要があります。

つまり、合併契約締結後のスケジュールを決める際には、いちばん最初に「書類の備え置き」を持ってこなければならないのです。

なお、書類を備え置く期間は「合併の効力発生日の6か月後まで」とされています。効力発生日前の備え置きを「事前備え置き」、効力発生日後の備え置きを「事後備え置き」と呼ぶこともあります。

効力発生日の1か月以上前までに――債権者への催告(公告)

吸収合併のスケジュールを決めるうえで、もっとも注意すべき手続きは「債権者への催告」です。これは先ほど説明したように、合併に反対する債権者を保護するために行われる手続きです。

「債権者への催告」は原則として、消滅会社・存続会社の両社が、それぞれの債権者に対して個別に行います。合併に関する各種情報を開示すると同時に、「合併に反対の場合は、会社に対して一定期間内に異議を述べることができます」という内容を伝えます。期間内に異議を述べた債権者は、会社からすぐに債務を弁済してもらうという形で保護されます(債権者異議手続)。

この手続きで、債権者が異議を述べることのできる締め切りとして提示される「一定期間」は、1か月以上でなければならないと法律で決まっています。また、合併の効力が発生するためには、上記の債権者保護手続はすべて完了している必要があります。

つまり、債権者への催告は「合併の効力発生日の1か月以上前までに」行わなければなりません。したがって、吸収合併契約書に定める効力発生日は、余裕をもって債権者異議手続を進められるように設定しておく必要があるのです。

なお、個々の債権者に対して催告を行う代わりに、官報等による公告を利用することも可能です。特に多数の債権者が存在する大規模な企業においては、催告のコストを削減するために公告が活用されることが多くなっています。

効力発生日の20日前までに――株主への通知(公告)

次に注意しておくべき手続きは、「株主への通知」です。この手続きは、合併に反対する株主を保護するためのものです。合併に反対する株主が「株式買取請求権」を行使できるように、消滅会社・存続会社の両社が、それぞれの株主に対して合併の情報を事前開示するための手続きです。

この通知は「合併の効力発生日の20日前までに」行わなければなりません。株主への通知を期限内に完了できるように、余裕をもって合併手続きのスケジュールを決めておく必要があるのです。

特に消滅会社の株主に対しては、「合併対価の交付」という大事な手続きがあります。消滅会社の株主に交付する合併対価について、株主側の理解を得るための時間が必要です。

ここで多くの株主の反対にあってしまうと、反対株主による株式買取請求権行使により合併手続きが滞ってしまいます。最悪の場合、株主総会の承認自体を得られなくなることも考えられます。したがって、株主への通知は時間的にも十分に余裕をもって、慎重に行うようにしましょう。

なお、株主への通知についても、官報等による公告で代用することが可能です。多数の株主を抱える大会社では、個々の株主に通知するよりも官報を利用する方が、コストを削減できることが多いと言えるでしょう。

効力発生日の前日までに――株主総会の承認

吸収合併契約の効力を発生させるには、消滅会社・存続会社がそれぞれ株主総会を開催して、特別決議を得ることが必要です。そのタイムリミットは、合併契約で定めた効力発生日の前日となっています。

なお、承認決議のタイムリミットは効力発生日の前日ですが、もっと余裕のあるタイミングで株主総会を開いても構いません。たとえば、「債権者への催告」を効力発生日の1か月以上前に行ったうえで、それよりも早いタイミングで合併契約承認のための株主総会を開くことも可能です。

効力発生日当日――吸収合併の効力発生

以上の手続きを正しく踏むことができれば、合併契約で定めた効力発生日の当日に、吸収合併の法的効力が有効なものとして認められます。

消滅会社が有していた一切の権利義務は、この日を境に存続会社に帰属することになります。また、消滅会社の旧株主に対する合併対価の交付も、吸収合併の効力発生を経て実際に始まることとなります。

効力発生日から2週間以内――登記申請

効力発生日を無事迎えた後は、最後の仕上げとして「合併の登記」の申請を行います。登記申請の期限は、効力発生日から2週間以内と定められています。

新設合併の手続き

今度は、新設合併の手続きについて見ていきます。もっとも、その多くは吸収合併の場合と共通です。そこで、吸収合併と異なる新設合併独自の要素についてのみ、説明することとします。

新設会社の定款の作成

新設合併は「合併後に新たな会社を設立する」という点で、吸収合併と大きく異なります。その大きな違いの一つとして、新設合併の手続きでは「新設会社の定款作成」が別途必要だという点が挙げられます。

定款とは会社の設計図のようなもので、会社を設立するにあたって必ず作成しなければならない書面です。新設合併によって設立される新設会社についても、例外ではありません。

定款の作成に当たっては、特に発行可能株式総数など株式に関する規定の作成が、手続き上の大きな負担として大きくのしかかります。新設合併の手続きが煩雑になってしまう大きな一因です。

なお、ここで作成した定款は、新設合併の登記を申請する際の添付書面としても必要となるので注意しましょう。

設立時役員の選定手続

「設立時役員」とは、いわば会社成立後に役員(取締役・監査役・会計監査人など)となる「役員の卵」のようなものです。会社設立のプロセスで設立時役員に就任した人は、設立手続が完了して会社が成立した時点で、自動的に正式な役員の地位に就くこととなります。

新設合併においても、新設会社の設立時役員を選定しておく必要があります。ここで選定された設立時役員は、新設会社の定款にも記載しなければなりません。なお設立時取締役については、その就任承諾を証する書面が、登記申請の添付書面として必要になります。

新設会社の株式発行手続

吸収合併では、消滅会社の旧株主に対して、「合併対価」として現金を交付することが可能でした。「現金合併」を行う場合には、合併に際して改めて株式を発行する必要がありません。

これに対して、新設合併では現金合併が認められていません。つまり、消滅会社の旧株主に対して、新設会社の株式を発行することが必須となっているのです。

具体的には、消滅会社株と新設会社株の割り当て比率を決定して、新設会社の株式発行を行います。たとえば、A社とB社が新設合併をしてC社を設立する場合を例にすると、「A社の株式〇株に対してC社の株式〇株を、B社の株式に対してC社の株式〇株を、それぞれ割り当て交付する」といった形で、A社・B社の旧株主に対してC社の株式を発行します。

新設合併の効力発生

吸収合併では、吸収合併契約で効力発生日を定めることができました。これに対して、新設合併の効力発生日は、新設会社の成立の日(新設合併の登記が完了した日)とされています。

細かな違いのようですが、このことによって合併契約書の書き方が変わってくるので注意が必要です。

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新設合併契約書と吸収合併契約書の作成方法

合併の手続きの流れを理解できたところで、合併契約書の作成方法についても見ていきましょう。

合併契約書は、合併契約の締結のために必要な書面であることはもちろん、利害関係者保護の手続きを進めるうえでも不可欠なものです。合併契約書の記載事項に不備があると、合併の効力自体が否定されてしまう原因となりますので、十分に注意して作成しなければなりません。

なお新設合併と吸収合併を比較すると、より手続的な負担の大きい新設合併の方が、合併契約書の記載事項も多くなる点に注意が必要です。

合併契約書一般の作成方法

まず、新設合併契約書と吸収合併契約書に共通する、合併契約書一般の作成方法について説明します。

合併契約書の構成

合併契約書は、その名の通り「契約書」に分類される書面です。したがって、合併契約書を作成する際に用いられる構成は、一般的な契約書と同様のものとなっています。

具体的には、「①タイトル→②前文→③本文→④後文→⑤契約年月日・代表者の署名捺印」という構成が用いられます。

①タイトルは法的な効果を持つものではないので、神経質になる必要はありません。ざっくりと「合併契約書」と書いておくだけでも十分です。

②前文も法的効果を持つものではありませんが、合併の当事者となる会社を明らかにする役割を果たします。たとえば「(存続会社)〇〇〇〇(以下「甲」という。)」のように、当事者となる会社の略称を指定するのも、前文の重要な役割です。

③本文は、条文形式で作成するのが一般的です。合併契約書の本体であり、法的効果を持つ部分なので、注意して作成しましょう。具体的な内容については、のちほど詳しく説明します。

④後文は、契約書の作成通数や、原本・写しの作成について明らかにするための部分です。たとえば「本契約締結の証として、本契約書2通を作成し、甲乙相互に署名又は記名捺印のうえ、各1通を保有することとする」といった文を記載します。

⑤最後に、契約年月日を明示して、合併の当事者である会社代表者が署名・捺印をすれば、合併契約書の完成です。

印紙税

契約書を作成する際には、税法上「印紙税」を支払うことが要求されています。したがって、合併契約書を作成する際にも、所定の収入印紙を貼付する必要があるのです。

印紙税額は、新設合併契約書・吸収合併契約書ともに共通で、税法上1通につき4万円と規定されています。合併契約書を作成するには、4万円分の収入印紙を購入して、1通ずつ貼付しなければなりません。たとえば合併契約書を2通作成する場合、合計8万円分の収入印紙が必要になります。

必要通数

契約書は原則として、契約の当事者の数だけ作成します。これは、合併契約書についても同じです。

したがって、2社の間で合併契約を締結する場合は、合併契約書も2通作成するのが原則です。3社の間で合併契約を結ぶなら、原則として3通の合併契約書を作成します。

つまり、合併契約の当事者となる会社の数が増えれば増えるほど、必要となる収入印紙の金額も増えてしまうことになるのです。

印紙税の節税テクニック

もっとも、税法で印紙税が必要とされている契約書は、原本に限られています。つまり、契約書の写しについては、印紙税を支払う必要はありません。

したがって、合併契約書を作成する際にも「写し」を活用すれば、それだけ印紙税を節税できることになります。

たとえば、同じ企業グループに属する会社同士で合併を行う場合には、合併契約書の原本を親会社で保管しておくことが可能です。1通の原本を存続会社の親会社用に作っておけば、消滅会社用には写しの作成で済むことになります。そうすれば、印紙税を1通分の4万円に節税することができるのです。

なお、この場合は後文で、原本・写しについて言及するようにしましょう。たとえば「本契約締結の証として、本契約書1通を作成し、甲乙相互に署名又は記名・捺印のうえ、甲が原本を保有し、乙が写しを保有することとする」といった文を記載します。

新設合併契約書の法定記載事項

合併契約書一般の作成方法について理解したところで、次は新設合併契約書の本文に記載すべき事項について見ていきましょう。

なお、合併契約書の記載事項は、法律上必ず記載すべきとされている「法定記載事項」と、できるだけ記載したほうが良い「任意の記載事項」に分けることができます。特に「法定記載事項」に漏れがあると、合併契約に法律違反があったとして合併の効力を否定されるおそれがありますので、十分に注意しましょう。

消滅会社の商号・住所

消滅会社の商号と住所は、法定記載事項とされています。必ず漏れなく記載しましょう。

新設会社の目的・商号・住所・発行可能株式総数

新設会社については、商号・住所に加えて、目的・発行可能株式総数も記載しなければなりません。これは、新設会社が新しく設立される会社だからです。

消滅会社は、設立時に目的・発行可能株式総数が登記されているので、合併契約書で改めて記載する必要はありません。これに対して、新設会社は今回はじめて設立される会社なので、目的・発行可能株式総数を合併契約書の中に記載すべきこととされているのです。

なお、新設会社の定款を作成する際にも、目的・発行可能株式総数を記載する必要があります。新設合併の手続きが吸収合併に比べて煩雑になってしまう大きな要因です。

新設会社の設立時役員の氏名

設立時役員の氏名も、新設合併に特有の法定記載事項です。定款に記載するとともに、新設合併契約書にも記載しておく必要があります。

新設会社の株式(合併対価)の交付に関する事項

新設合併では、消滅会社の旧株主に対して「合併対価」として新設会社の株式を交付します。その際に交付する株式数の算定方法について、新設合併契約書に記載する必要があります。

算定方法の記載の仕方としては、割り当て比率を記載するのが一般的です。たとえば、「消滅会社の株式〇株につき、新設会社の株式〇株の割合をもって交付する」といった形で記載します。

新設会社の資本金及び資本準備金

資本金とは、「株主が設立時の会社に対して投資した財産の額」を意味します。ざっくり「株主が株を買うのと引き換えに会社に支払ったお金の総額」と考えると理解しやすいでしょう。

つまり資本金は、株式の交付ときわめて重要な関係を持っています。資本金の額と発行株式の数の関係が不透明では、会社に対する信頼が損なわれてしまうのです。

そこで、合併対価として必ず新設会社の株式を交付する新設合併では、新設会社の資本金を明示しなければならないとされています。合併対価の透明性を確保するための、非常に重要な記載事項と考えてください。

新設合併契約書の任意の記載事項

法定記載事項の次は、任意の記載事項についても見ていきましょう。必ず記載しなければならないものではありませんが、記載しておいた方が無難な事項をまとめて説明します。

効力発生日

新設合併において、合併の効力発生日は法定記載事項ではありません。なぜなら、新設合併の効力が発生するのは登記完了日であり、合併契約で決められることではないからです。

したがって、新設合併契約に効力発生日の記載がなくても、致命的な落ち度になるわけではありません。もっとも、合併のスケジュールを明らかにする意図で、「新設会社の設立予定日を〇〇とする」のような記載を入れるのが一般的です。

合併承認総会

合併を承認するための株主総会の日取りについても、合併契約書に記載しておくのが無難です。合併契約書に明記しておくことで、無用なトラブルを避けるためです。

守秘義務

合併契約においては、当事者となる会社がお互いに企業秘密を知ることとなります。のちの紛争を防止するために、守秘義務条項を置いておくと良いでしょう。

なお守秘義務の存続期間については、仮に合併が解消した後にも及ぶことを明記するのが安全です。たとえば「本契約期間中はもとより、終了後も」といった文言を入れておくことが考えられます。

表明・保証

合併契約を締結する際、当事者となる会社はお互いに様々な情報を開示します。財務諸表や様々な会計上・契約上・法律上の文書を開示しあいながら、合併の条件を詰めていきます。しかし、ここで開示された情報に虚偽や誤りがあると、合併の前提が大きく崩れてしまいます。

そこで、合併契約書では、お互いの会社が開示した情報が適正なものであることを「表明・保証」する条項を置くのが一般的です。さらに、万が一情報に虚偽・誤りがあった場合には、合併契約を解除できるとともに損害賠償もできる、という旨の条項も置いておきましょう。

合意管轄

万が一訴訟となった場合、管轄裁判所の場所が地理的に不便にならないように、あらかじめ合意をしておくための記載事項です。合併契約締結の際には、なるべく自社に好都合な裁判所を管轄とする合意を得るのも、交渉の重要な要素となります。

従業員・会社財産の承継

消滅会社の人的・物的資産は、合併の効力発生に伴い、自動的に新設会社へ承継されます。したがって、従業員・会社財産の承継について合併契約書に記載することは、必須ではありません。

もっとも、従業員については雇用条件について、会社財産については財産価値を算定する基準日について、それぞれトラブルのリスクがあります。そこで、これらを合併契約書で明示しておくと、未然にトラブルを防止することができます。

善管注意義務

合併契約の締結から、実際に合併の効力が発生するまでは、時間的に間があります。その間、会社財産の管理責任が不明確になってしまうリスクがあります。

そこで、会社財産の管理について責任を明確化する条項を置くことで、トラブルを未然に回避しましょう。たとえば、「消滅会社は、合併期日まで、善良なる管理者の注意をもって自らの全財産を管理運営しなければならない」といった条項を置くのが一般的です。

損害賠償・損害補償

合併契約に限らず、契約一般にも通じる話なのですが、不測の事態に備えて「損害賠償額の合意」の条項がよく置かれます。

これは、民法等の法定の賠償額よりも高額の賠償額を規定しておくことで、万一損害が発生した場合に備えるためのものです。賠償額を高額に設定することで、無用のトラブルを抑制する心理的な効果もあります。

協議解決

合併契約に定めのない事項や、合併契約の解釈について意見が分かれたときには、当事者が誠意をもって協議のうえ解決する、という内容の条項です。

特に法的な効果があるわけではありませんが、紛争回避のために相手方当事者を協議のテーブルにつかせるための根拠として使える条項です。念のため入れておくと良いでしょう。

吸収合併契約書の法定記載事項

吸収合併契約書の法定記載事項は、新設合併契約書の場合よりも少なくなります。吸収合併の手続きの方が比較的シンプルだということが、ここにも表れています。

存続会社・消滅会社の商号・住所

吸収合併契約書には、存続会社・消滅会社双方の商号・住所を記載することが必要です。

合併対価の交付に関する事項

吸収合併契約書には、「合併対価として何を交付するか」「交付する合併対価の数・額の算定方法」を記載することが必要です。

なお吸収合併では、株式・社債・現金のいずれかを合併対価として交付することが認められています。

合併対価として存続会社の株式を交付するときに限り、新設合併と同様に「存続会社の資本金及び資本準備金の額」も合併契約書に記載する必要があるので、注意してください。

効力発生日

吸収合併では、合併契約で定めた効力発生日に、合併の効力が発生します。非常に重要な意味を持つ日付なので、吸収合併契約書に必ず記載しなければなりません。

なお、新設合併契約書における効力発生日の扱いとの違いに、注意しましょう。

吸収合併契約書の任意の記載事項

吸収合併契約書の任意の記載事項は、効力発生日を除き、新設合併の場合とまったく同様に考えて大丈夫です。新設合併契約書の任意記載事項として掲げた条項(効力発生日を除く)については、吸収合併契約書にもなるべく記載するようにしましょう。

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新設合併と吸収合併の登記

会社の登記とは

ここからは、合併手続きの仕上げとして必要となる「登記」について説明します。合併の登記について詳しい説明をする前に、まずは会社が行う登記手続きの全体について、大まかな理解をしておきましょう。

会社の登記が必要な理由

会社は、一定の重要事項について「登記」をする義務があります。会社の登記義務が生ずる事項の中には、合併も含まれています。したがって、合併手続きの締めくくりとして、合併の登記を申請する必要があるのです。

そもそも会社には、なぜ登記義務が課されているのでしょうか? それは、会社取引の安全を確保するために登記が必要だからです。登記という形で会社の重要情報を公開しておけば、誰でも簡単に「これから取引しようとする会社が信用に足りる相手なのか」を確認できるというわけです。

会社の登記を怠るとどうなるか

以上のことを裏返して考えると、「登記していない事項は、取引相手に対して主張できなくなる」という結論が導かれます。なぜなら、取引相手は登記簿に公開されている情報を前提にして、会社との交渉に臨んでいるからです。登記簿に書いていない情報は、なかったものとしなければなりません。

新設合併の登記を怠った場合を例にしてみましょう。合併の登記を怠ったままだと、消滅会社は登記簿上「まだ消滅していない」ことになっており、新設会社は「まだ設立されていない」ことになっています。事実とは異なりますが、取引相手の第三者からすると、登記簿の情報を信用するしかありません。

そこで、登記簿の情報を信用した取引相手を保護するため、消滅会社は「まだ消滅していない」ものとして扱われます。消滅会社の代表者は、「うちの会社は合併で消滅したから関係ない」とは言えなくなってしまうのです。

このように、会社が登記を怠ることには、非常に重大なリスクが伴います。そのため、登記義務違反には過料も科されています。合併に伴う登記は、必ず申請するようにしましょう。

会社の登記の具体的な手続き

登記の具体的な手続きについても見ておきましょう。

登記の手続きは、法務局に登記の申請をすることによって行います。登記申請の際には、申請書に添付書面と登録免許税を添えて提出します。

ここで重要になるのが、添付書面と登録免許税です。

まず添付書面については、必要となるものを漏れなく揃えなければなりません。特に合併の登記ではたくさんの書面が必要になるので、注意が必要です。

また登録免許税とは、法務局に登記手続きをしてもらうのに必要となる税金のことです。ざっくり「登記にかかる手数料」として理解しておけば良いでしょう。金額の計算方法が煩雑なので、こちらも注意しておきましょう。

新設合併の登記① 新設合併による設立の登記

ここからは、新設合併を行う際に必要となる登記について、添付書面と登録免許税の説明を詳しく行います。まず取り上げるのは、新設会社の設立についての登記です。

添付書面(1) 新設合併契約書

新設合併契約を締結する際に作成する「新設合併契約書」です。新設会社の設立登記の際にも、添付書面として必要となります。

添付書面(2) 株主総会議事録

新設合併契約を承認した株主総会について、その議事録が添付書面として必要になります。すべての消滅会社の株主総会議事録の提出が求められる点に注意してください。

添付書面(3) 新設会社の定款

新設会社の設立手続きでは、「定款」を作成する必要があります。ここで作成する定款は、設立登記の添付書面としても必要です。

添付書面(4) 設立時取締役に関する書面

新設会社の設立に際しては、設立時役員(新設会社の成立と同時に役員となる人)の選定も行います。特に設立時取締役については、会社成立後に代表者となる予定の最重要人物なので、登記申請の際には添付書面の提出が要求されています。

具体的には、「設立時取締役の就任承諾書」を作成する必要があります。なお、設立時代表取締役については、「選定を証明する書面」もあわせて必要です。

添付書面(5) 資本金の額に関する書面

会社の資本金の額は、取引相手が会社の経営状態を判断するための重要な情報です。そのため、登記簿上に記載しておく必要があります。新設会社の設立登記についても例外ではなく、資本金の額に関する書面を提出しなければなりません。

具体的には、「資本金の額の計上に関する証明書」を作成する必要があります。商業登記法81条第4項に規定された事項を記載します。

添付書面(6) 登録免許税の算定に関する書面

新設会社の設立登記では、登録免許税の算定には複雑な計算が必要です。そこで、登録免許税の算定基準となる事項について証明する書面を添付しなければなりません。記載すべき事項は、登録免許税法施行規則12条に定めてあります。

添付書面(7) 消滅会社の登記事項証明書

登記申請を行う法務局について、新設会社と消滅会社で管轄が異なる場合に必要となる書面です。

もし新設会社と消滅会社が同じ法務局の管轄なら、消滅会社の登記情報も同じ法務局にあります。この場合は、改めて消滅会社の登記情報を法務局に提供する必要はありません。

これに対して、新設会社と消滅会社で法務局の管轄が異なる場合は、事情が変わってきます。新設会社の管轄法務局に、消滅会社の登記情報は存在しません。そこで、「消滅会社の登記事項証明書」を提出する必要が出てくるわけです。

添付書面(7) 委任状

登記の申請手続きは、司法書士に依頼するのが通常です。そのための委任状も、登記申請の際に提出する必要があります。

登録免許税

登録免許税の計算は、まず課税対象となる金額を決定し、そこへ所定の税率をかけて計算します。

新設会社の設立登記の場合、課税対象となる金額は「新設会社の資本金の額」です。

次に税率ですが、こちらについては若干複雑な規定の仕方がされています。課税対象となった「新設会社の資本金の額」のうち、まず「消滅会社を含めて、全体として増加した資本金の額」について、0.7%の税率が適用されます。次に残りの金額について、0.15%の税率で計算するという流れになっているのです。

たとえば、A社(資本金1,000万円)とB社(資本金1,000万円)が新設合併を行い、新たにC社(資本金4,000万円)を設立したとしましょう。

この場合、課税対象はC社の資本金4,000万円です。一方「消滅会社を含めて、全体として増加した資本金の額」については、C社の資本金4,000万円から、A社・B社の資本金の合計2,000万円を差し引いて計算するので、2,000万円となります。

したがって、課税対象の4,000万円のうち、まず2,000万円について、0.7%の税率で計算します。次に、残りの2,000万円について、0.15%の税率で計算します。

その結果、2,000万円×0.7%+2,000万円×0.15%という計算により、17万円の登録免許税を支払うこととなるのです。

新設合併の登記② 新設合併による解散の登記

新設合併を行う際には、消滅会社の解散についても登記をしなければなりません。新設会社の設立登記と同じタイミングで、同じ法務局(新設会社の管轄法務局)に対して申請を行います。こちらの登記についても、添付書面と登録免許税を見ていきましょう。

添付書面

新設会社の設立登記の申請書に、必要な添付書面はすべて添付されています。したがって、こちらの申請書に添付書面は必要ありません。

登録免許税

解散の登記については、登録免許税は一律3万円とされています。特に計算は不要です。

吸収合併の登記① 吸収合併による変更の登記

それでは、吸収合併の登記についても詳しく見ていきましょう。まずは、存続会社について必要となる「吸収合併による変更の登記」の添付書面・登録免許税を取り上げます。

添付書面(1) 吸収合併契約書

合併契約書の添付が必要となるのは、新設合併の場合と同様です。

添付書面(2) 株主総会議事録

吸収合併契約を承認した株主総会について、その議事録を添付書面とすることが必要です。注意すべき点として、存続会社と消滅会社双方の株主総会議事録を添付しなければなりません。

添付書面(3) 債権者保護手続に関する書面

債権者保護手続が必要となるのは、吸収合併の場合も同じです。したがって、登記申請の際には債権者保護手続が正しく行われたことを証明する書面を添付しなければなりません。

添付書面(4) 存続会社の資本金の額に関する書面

消滅会社の株主に対する合併対価として存続会社の株式を交付する場合など、吸収合併によって存続会社の資本金の額は変動する可能性があります。したがって、吸収合併の際には、存続会社の登記簿に資本金の額を明記しておくことが求められます。

そこで、吸収合併による変更登記の申請には、存続会社の資本金の額に関する書面の添付が必要です。記載すべき事項は商業登記法81条第4項に定められています。

添付書面(5) 登録免許税の算定に関する書面

吸収合併による変更登記の登録免許税は、金額を算定するのに複雑な計算が必要です。そこで、算定基準となる事項について証明する書面の添付が求められています。記載すべき事項については、商業登記法81条第4項をご参照ください。

添付書面(6) 消滅会社の登記事項証明書

存続会社と消滅会社で法務局の管轄が異なる場合に、提出が必要となる書面です。

解散登記は消滅会社に関するものですが、申請先が新設会社の管轄法務局となっています。存続会社の管轄法務局に消滅会社の登記情報がない場合には、消滅会社の登記事項証明書も添付する必要があるのです。

添付書面(7) 委任状

司法書士に申請を委任するための書面です。

登録免許税

新設会社設立の登記と同様に、「課税対象となる金額」に「所定の税率」をかけて計算します。

もっとも課税対象について、存続会社の変更登記の場合は「存続会社の資本金の増加額」に限定されます。新設会社設立の登記と異なり、資本金全額ではないので、登録免許税の額が若干安くなります。

税率については、新設会社設立の登記と同様の考え方となっています。課税対象となった金額のうち、まずは「消滅会社を含めた全体での資本金増加額」について、0.7%の税率で計算します。一方、残りの金額については0.15%の税率を適用します。

たとえば、A社(資本金1,000万円)とB社(資本金1,000万円)が吸収合併を行い、B社が存続会社(資本金4,000万円)になったとしましょう。

この場合、課税対象はB社の資本金の増加額3,000万円です。一方「消滅会社を含めた全体での資本金増加額」については、合併後B社の資本金4,000万円から、A社・合併前B社の資本金の合計2,000万円を差し引いて計算するので、2,000万円となります。

したがって、課税対象の3,000万円のうち、まず2,000万円について、0.7%の税率で計算します。次に、残りの1,000万円について、0.15%の税率で計算します。

その結果、2,000万円×0.7%+1,000万円×0.15%という計算により、15.5万円の登録免許税を支払うこととなるのです。

吸収合併の登記② 吸収合併による解散の登記

最後に、消滅会社について必要となる「吸収合併による解散の登記」について、添付書面と登録免許税の説明を行います。なお、存続会社の変更登記と同時に、同一の法務局へ申請することとなっています。

添付書面

必要な添付書面は、存続会社の変更登記申請にすべて添付してあります。したがって、こちらの添付書面は一切不要です。

登録免許税

解散登記の登録免許税は、一律で3万円となっています。特に計算をする必要はありません。

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