未上場株式の譲渡方法!

オーナー会社などの未上場株式を抱えていて、売ることもできず塩漬け状態で悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、なぜ未上場株式は譲渡が難しいのか、未上場株式を譲渡する手順、未上場株式における評価額の算定方法、未上場株式を譲渡する際に納める税金について解説します。

未上場株式を実際に譲渡するうえで必要な手続きについてまとめましたので、譲渡について検討する際にぜひご活用ください。

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1.未上場株式の譲渡・売却が難しい理由

未上場株式の譲渡や売却が難しい理由として、主には次の点が挙げられます。

・株式に譲渡制限がついている

・譲渡先が見つからない

株式に譲渡制限がついている

親族だけでやっている同族会社などでは、自由な株式譲渡により全くの第三者が株主になると、経営が混乱して意思決定が難しくなったり、持株比率の変動により従来の経営者が支配権を失ってしまったりという事態が生じます。

このような事態を防ぐために、中小・零細企業では、株式に譲渡制限を設定しているケースが大半です。

会社の定款に、株式の譲渡には株主総会または取締役会の承認がいるとの旨が記載されていれば、株主が株式を譲渡するには会社(該当機関)の承認を得る必要があるため、譲渡には手間がかかります。

ちなみに、譲渡制限株式に関連した知識として、公開会社と上場会社の違いは次の通りです。

公開会社:譲渡制限がついていない株式を発行している

上場会社:証券取引所へと上場している

1株でも譲渡制限株式ではない株式を発行していれば公開会社と呼ばれるため、未上場会社(非上場会社)であっても公開会社であるケースもあります。

発行株式がすべて譲渡制限株式であれば、その会社は非公開会社です。

譲渡先が見つからない

譲渡制限株式について会社から譲渡の承認を得たり、そもそも譲渡制限株式でなかったりする場合も、未上場会社の株式については、買い手となる譲渡先を探すのは困難です。

上場株式であれば、市場を通じて不特定多数と自由に売買できますが、未上場株式の場合は自分で買い手を探してくる必要があります。

株式を買おうとする人は、売買による差益や配当、もしくは株主としての発言権などを購入の目的としているのが一般的です。

しかし、未上場株式は流動性がないため売買の差益は期待できません。さらに、未上場会社では利益を配当よりも役員報酬などに回す会社が多いです。また、未上場株式を買って同族会社の少数株主の地位を得ても、経営への関与はほぼできないでしょう。

このような背景から、未上場株式の買い手を見つけるのは難しいという事情があります。

2.未上場株式(譲渡制限つき)を譲渡する手順

未上場株式を譲渡・売却するのは難しいですが、仮に買い手が決まった場合は、どのような手続きを踏んで譲渡するのかを解説します。

1.譲受人を探して交渉し、譲渡について合意を得る

2.会社に株式の譲渡承認請求を行う

3.会社が承認するかどうかを決定し、株主に通知

3-A.承認された場合:株式の名義を譲受人に書換

4.会社が譲受人への株式譲渡を否認した場合

4-A.会社が株式を買い取る

4-B.指定買取人が株式を買い取る

2-1.譲受人を探して交渉し、譲渡について合意を得る

まず売り手(株主・Aさん)は、買い手(譲受人・Bさん)を見つけて、売買価格などの条件について交渉をし合意を得る必要があります。

2-2.会社に株式の譲渡承認請求を行う

株主であるAさんは会社に対して、譲受人となるBさんに株式を譲渡することについて承認するか否かを決めるよう、譲渡承認請求を行います。AさんからBさんへと株式が譲渡済の場合は、BさんはAさんと共同で請求をすることも可能です。

請求時には次の点を明示します。

・譲受人(Bさん)の氏名

・該当する譲渡制限株式の株数

・会社が譲渡を承認しない場合は、会社あるいは会社の指定買取人が株式を買い取るよう請求する旨*

2-3.会社が承認するかどうかを決定し、株主に回答

会社は、株主総会または取締役会(どちらかは定款による)で、AさんからBさんへの譲渡を承認するかどうかを決議します。

会社は譲渡を承認するかどうか、譲渡承認請求が届いた日から数えて「2週間以内」に、Aさんへと回答することが必要です。期間内に通知がされない場合は、Bさんへの譲渡は承認されたとみなされます。

2-3-A.承認された場合:株式の名義を譲受人に書換

承認された場合は、Aさん・Bさん間の株式譲渡取引は対会社においても有効となるため、Bさんは会社に対して、株主名簿に記載されている名義を書き換えるよう申請します。

2-4.会社が譲受人への株式譲渡を否認した場合

会社が、AさんからBさんへの株式譲渡を否認した場合はどうなるのでしょうか。

Aさんが譲渡承認請求時に、否認時には会社などが株式を買い取るよう請求(*印)していれば、会社は次のどちらを選ぶか株主総会か取締役会(定款による)で決議しなければなりません。

・会社が株式を買い取る

・指定買取人が株式を買い取る

しかし、会社が株式を買い取る際には、自己株式扱いとなって財源規制を受けるため、内部留保などの剰余金が少ない状態では、指定買取人の方式を選択することになります。

なお、請求していない場合は、譲渡についての承認が得られなかった状態で確定します。

2-4-A.会社が株式を買い取る

会社は、自らが株式を買い取ることを株主総会などで決議した際には、次の実施が必要です。

・譲渡承認請求に回答してから40日以内に、自らが買取を行う旨を株主に通知

・会社本店が所在する地域の供託所へと「1株あたりの純資産価額×対象の株式数」にあたる金額を供託

・供託を証明する書面を株主に交付

供託する金額は、簿価純資産法で求めた株価となります。簿価純資産法とは、貸借対照表に記載されている資産から負債を引いた純資産の金額を、会社の株式価値と考える方法です。

該当する株式の株券が存在する場合には、書面が交付された日から数えて1週間以内に、株主は上と同じ供託所へ該当する株券を供託して、会社にその旨を通知する必要があります。

2-4-B.指定買取人が株式を買い取る

会社が、指定買取人による株式の買取を株主総会などで決議した際には、指定買取人は次の実施が必要です。

・譲渡承認請求に回答してから40日以内に、自らが指定買取人に指名された旨と株式買取数を株主に通知

・会社本店が所在する地域の供託所へと「1株あたりの純資産額×対象の株式数」にあたる金額を供託

・供託を証明する書面を株主に交付

株券が存在する場合には、会社が買い取る場合と同じ期間内に、株主は同じように供託し指定買取人にその旨を通知します。

このように、会社または指定買取人のどちらが買い取る際も、買い取る人が変わるだけで手順はほぼ同じです。

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会社または指定買取人が買い取る場合の売買価格

会社または指定買取人が、株主であるAさんから株式を買い取る場合は、Aさんが買取の旨の通知を受けた日から20日以内に、両者間で協議をして売買価格を決めます。

協議がうまくいかない場合は、20日以内であれば両者は裁判所に、売買価格決定の申立てができます。この場合は、裁判所が決定した金額が売買価格です。

このとき、裁判所は(1)株主における株式価値評価額と(2)会社または指定買取人における株式価値評価額の、2つの平均をとって売買価格を決めます。

20日以内に協議が頓挫し、裁判所に申立ても行われていない場合には、「1株あたりの純資産価額×対象の株式数」にあたる金額が売買価格となります。この金額は簿価純資産法によって算出されており、供託した金額と同じです。

3.未上場株式における評価額の算定方法

未上場株式は証券取引所で売買されていないため、上場株式のように市場の動きによって株価が決まりません。

先ほど、裁判所は株主・会社それぞれの株式価値評価額の平均をとると述べましたが、裁判所では主に次の方法で、株式価値評価額を算定しています。

・時価純資産法

・収益還元法

・DCF法

・(実質的)配当還元法

時価純資産法

このうち、1番目の時価純資産法や、先述した簿価純資産法などの算定方法をまとめて、コストアプローチと呼びます。コストアプローチは、資産や負債などの過去に積み上げた数値をもとに株式価値を算定するため、わかりやすい方法です。

時価純資産法は、資産と負債それぞれを時価換算し、資産から負債を引いた純資産の時価額を株式価値の評価額とします。帳簿には記載されない無形資産の時価評価額をプラスすることもあります。

先述した簿価純資産法は、貸借対照表上の数値をもとに純資産額を算定しますが、時価純資産法は、帳簿上の数値ではなく時価に換算した金額を用いることで、より実情に即した価額を算定しようとしているのです。

収益還元法・DCF法・配当還元法

また、収益還元法やDCF法、配当還元法などをまとめて、インカムアプローチと呼びます。過去の数値を用いるコストアプローチに対して、インカムアプローチは将来的に見込まれる収益を現在の価値へと置き換えて、株式価値を算定する方法です。

なぜ現在の価値に置き換えるのかといえば、現在の10万円と1年後の10万円とは価値がちがうからです。

たとえば金利が5%であれば、現在の10万円は1年後には10万5千円になります。

現在の10万円=1年後の10万5千円>1年後の10万円

現在の10万円のほうが、1年後の10万円より価値が高いのです。そのため、1年後の10万円を現在の価値に代替するには、金利分で割り引く必要があります。

10万円÷(1+5%)=95,238円

インカムアプローチでも、将来の数値を割り引いて現在の価値に代替する計算方法を用います。実際の計算は複雑なため概要だけ説明すると、収益還元法は、将来的に見込まれる利益を、資本還元率という数値で割り引くことで現在の価値に代替し、株式価値を算定します。

DCF法は、将来的に見込まれるフリーキャッシュフロー(自由に使える現金)を、資本コストという数値で割り引く算定方法です。配当還元法は、将来的に見込まれる配当を、企業へと株主が期待する利回りで割り引きます。

裁判所による各方法の使い分け方

裁判所では、各方法を次のように使い分けています。

・支配株主:時価純資産法 並びに 収益還元法・DCF法

・一般株主:(実質的)配当還元法

・中間的な株主:支配株主と一般株主のどちらに近いかを判断し、その程度を各算定方法に加重平均する

どの方法を使っても算定する株式価値は同じと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は各方法によって数値はかなり異なるため、目的に応じて各方法を使い分ける必要があるのです。

たとえば、過去の実績はないけれど画期的なビジネスプランをもつスタートアップ企業の評価には、過去数値に基づくコストアプローチよりも将来数値の比重が大きいインカム・アプローチの方が株式価値は高く出ます。

そのため、未上場株式の譲渡において、買い手と売買価格を交渉する際には、株式価値ができるだけ高く出る算定方法を、会社の性質に合わせて使い分けることがポイントです。

4.未上場株式を譲渡する際に納める税金

ぶじに未上場株式を譲渡できた際に納める税金について解説します。

譲渡所得税・法人税

個人において、株式を譲渡して譲渡益が発生した場合は、上場・未上場株式に限らず、次の税金を納める必要があります。

・所得税:15%

・住民税:5%

・復興特別所得税:0.315%

合計:20.315%

法人の場合は、29%〜42%の法人税がかかります。

個人ないし法人における未上場株式の譲渡にかかる税金

未上場株式の譲渡にあたって、売り手・買い手が個人ないし法人か、価格が時価より高いか安いかに応じて、かかる税金の種類が変わってきます

個人から個人へ

・時価での譲渡

売り手(個人):譲渡所得税

買い手(個人):なし

・時価よりも安めに譲渡

売り手(個人):譲渡所得税

買い手(個人):みなし贈与税

・時価よりも高めに譲渡

売り手(個人):譲渡所得税+贈与税

買い手(個人):なし

みなし贈与税は、個人が時価よりも安く株式の譲渡を受けた場合に、贈与とみなされて課税されます。

時価よりも安く譲渡した場合は、儲かった買い手にみなし贈与税が、時価よりも高く譲渡した場合は、儲かった売り手に贈与税がプラスでかかる仕組みになっています。

個人から法人へ

・時価での譲渡

売り手(個人):譲渡所得税

買い手(法人):なし

・時価よりも安めに譲渡

売り手(個人):みなし譲渡所得税

買い手(法人):法人税

・時価よりも高めに譲渡

売り手(個人):譲渡所得税+贈与税

買い手(法人):寄付金として損金に参入

みなし贈与所得税は、個人が法人へ安く株式を譲渡した際に精算の意味あいから課されます。また、法人が安く個人に株式を譲渡した場合、発生した損失を寄付金とみなして損金に参入が可能です。

法人から個人へ

・時価での譲渡

売り手(法人):法人税

買い手(個人):なし

・時価よりも安めに譲渡

売り手(法人):寄付金として損金に参入

買い手(個人):所得税(一時所得)

・時価よりも高めに譲渡

売り手(法人):法人税

買い手(個人):なし

法人から法人へ

・時価での譲渡

売り手(法人):法人税

買い手(法人):なし

・時価よりも安めに譲渡

売り手(法人):法人税+寄付金として損金に参入

買い手(法人):法人税

・時価よりも高めに譲渡

売り手(法人):譲渡所得税+法人税

買い手(法人):寄付金として損金に参入

未上場株式を相続した場合

未上場株式の相続にあたって、相続した財産全体(株式含む)が基礎控除額である「3,000万円+(600万円×相続人の人数)」を超過する場合は、相続税を納める必要があります。

事業承継・贈与時の特例

事業承継にあたっての未上場株式の相続・贈与では、相続税・贈与税ともに100%の猶予を受けます。猶予の適用には、5年以上の事業継続など複数の条件があります。

事業承継以外でも、親族に未上場株式を贈与する際は既定の金額が控除されます。

・配偶者控除(贈与税):合計2,000万円まで非課税

・相続時精算課税制度:合計2,500万円まで非課税 など

まとめ:未上場株式の譲渡はM&A弁護士に一任を

未上場株式の譲渡が難しい理由の最も大きなものとして、譲渡先が見つからない点があります。

未上場株式は市場で売買できないため流動性に欠け、売買に必要な株式価額の算定にも手間がかかります。また、同族会社のような中小企業では、利益を配当として少数株主に還元するという考えが薄いです。

そのため、一般会社や投資家、金融機関やファンドなどで、未上場株式の買い手を見つけるのは困難な状況といえます。

しかし、M&Aに精通した弁護士事務所であれば、M&A仲介業者と協力して独自のコネクションをもとに、未上場株式や少数株式の買取に興味を示す投資家を探すことも可能です。

未上場株式の価値評価や、譲渡制限株式の譲渡承認請求など、一般の方には困難な手続きも、弁護士であればスムーズに代行できます。

オーナー会社の未上場株式が塩漬け状態で悩んでいる方も、ぜひ一度、気軽にご相談ください。

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