株券不発行会社化(即日可能か?)の問題とM&A!

株券不発行会社化は即日可能か?

M&Aのクロージングにおいて、株式譲渡を行う場合、株券発行会社であれば、株券の交付が必要となります(会社法146条)。

しかし、現在、会社法の原則は、株券不発行会社ですし、株券を作成すること自体、非常に巨額の価値を化体する証券を作成することとなり、紛失のリスクが発生するわけです。売主も買主もアドバイザーも、そのような巨額の価値を化体する証券を、保管しておくことは憚られます。

また、M&Aのクロージング時に、株券の調整するとしても、1枚作成すればよいだけではありません。

定款に、株券の券種が書かれていると思いますので、譲渡対象株式の数に応じて、その券種で作成する必要があります。通常、その券種は、1株券・10株券・100株券といった感じですので、999株券となった場合は、非常に多い枚数の株券を作成する必要があります。また、株券には通し番号を付することが一般的ですし、代表取締役の記名(会社実印)や押印も必要となり、株券の調整の手間は膨大です。

また、株券が発行されているか否か不明な場合、または株券を誰か昔の株主が保管している可能性があるような場合、株式譲渡のうち主と買主としては、その株券を探して取り戻したうえで、売主から買主に交付する必要がありますが、そのようなことは現実的ではありません。しかし、株式譲渡において、株券の交付が必要だとすると、真実の株券が存在している可能性があるわけですので、その株券の交付を行うことができないわけですので、株式譲渡を有効に実行し、M&Aをクロージングすることができるかどうか、はなはだ不明だということとなってしまいます。

そこで、このような場合、M&Aのクロージングに際しては、対象会社を株券不発行会社化すれば、株式譲渡の実行に際して、株券の交付を行わず、株主名簿名義書換請求書のみで行うことができるのです。

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株券不発行会社化の手続き

この株券不発行会社化の手続きですが、会社法218条に規定があります。

同条によりますと、株券不発行会社化の効力発生日の2週間前までに、株主に対して、株券不発行会社化の通知及び公告したうえで、定款変更の株主総会を行う必要があります。

ただ、株券発行会社であっても、株券が実際には発行されていない場合には、通知又は公告のいずれか一つで足ります。

この点、公告をする場合、官報公告であれば10日又は15日以上前に官報販売書に掲載を申請する必要がありますし、新聞公告であっても最短1週間くらいは必要ですし、費用もかなり高額になります。また、電子公告でも電子公告会社に申入れするのに何日かかかります。

株券発行会社であっても、株券が実際には発行されていない場合には、このボトルネックが解消することとなっているのです。

すなわち、公告ではなく、通知であれば、株主(全員)と握ってしまえば、株主通知書をバックデートで作成することも可能なのであり、売主が100%株主であれば、株主(全員)と握ることも難しくなく、下記の株主総会決議を株券不発行会社化の定款変更の効力発生日までに行いさえすれば、株券不発行会社化するのです。

その上で、定款変更の株主総会決議を経て、株券不発行会社化の効力発生日に、株券不発行会社化が完了するということとなります。

こうすることによって、M&Aのクロージングにおいて、無事、株券の交付なしに、株式譲渡が実行することができるのです。

その他、株券不発行会社化から2週間以内に登記変更申請を行うべきことも忘れてはいけません。

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株券不発行会社化の問題点

しかし、このような株券不発行会社化ですが、万能ではありません。

株券不発行会社化の定款変更には、株主総会決議が必要なのです。

すなわち、従前、株券を発行していたかいなかったか不明である場合や、従前、株券を発行していた可能性があり、現在、過去の株主が保管したままになっている可能性がある場合というのは、従前の株式譲渡において、株券の交付が行われていなかったということとなろうかと思います。

そうなると、現在の株主は、株券の交付を受けていない株主ということとなり、現在の株主への株式譲渡は無効だったということとなり、株券不発行会社化の定款変更の株主総会を構成する株主が、実は、真実の株主ではないということとなり、株券不発行会社化の定款変更の株主総会決議に瑕疵があるということとなるのです。

したがって、会社法831条の株主総会決議取消の訴えが可能な、取消事由が存在するということとなります。

なお、この場合であっても、同条において、株主総会等の決議の方法が法令に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる、とされており、このような場合、裁量棄却となり、事なきを得るかもしれませんが、M&Aのクロージングをスムーズに行えない可能性や、瑕疵が継続してしまう可能性もあります。

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会社法

(株券を発行する旨の定款の定めの廃止)
第二百十八条 株券発行会社は、その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしようとするときは、当該定款の変更の効力が生ずる日の二週間前までに、次に掲げる事項を公告し、かつ、株主及び登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければならない。
一 その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する旨
二 定款の変更がその効力を生ずる日
三 前号の日において当該株式会社の株券は無効となる旨
2 株券発行会社の株式に係る株券は、前項第二号の日に無効となる。
3 第一項の規定にかかわらず、株式の全部について株券を発行していない株券発行会社がその株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしようとする場合には、同項第二号の日の二週間前までに、株主及び登録株式質権者に対し、同項第一号及び第二号に掲げる事項を通知すれば足りる。
4 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
5 第一項に規定する場合には、株式の質権者(登録株式質権者を除く。)は、同項第二号の日の前日までに、株券発行会社に対し、第百四十八条各号に掲げる事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。
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