事業承継における株式分散による事業承継トラブル紛争!

事業承継に直面した際に、株主が既に分散していることで紛争が生じたり、新たな相続の発生によりさらに株主が分散したりといったトラブルに悩むケースが多いです。

この記事では、株主分散で困っている方向けに、株主の分散が起きる理由、分散した株式を集約することの困難性、事業承継における株主分散のリスクを解説し、そうしたリスクに備えるためにオーナーができる対策を紹介します。

株主分散によるトラブル紛争をできるだけ防いでスムーズな事業承継を行うために、ぜひお役立てください。

1 事業承継問題における株主分散の理由

株主の分散が起きる理由には、主に次のものがあります。

・相続

・相続税対策

・名義株主

・留保金課税制度への対策

・従業員へのインセンティブ制度 など

相続

日本の大半を占める中小企業においては、同族会社の株式が相続により分散するケースが多いです。

古い会社であれば、株式が子どもや親族に相続された後、そこからさらに次の相続が起きるといったように、関係がより遠い親族へと株式が分散している傾向があります。

オーナーが3代以上承継している場合、会社に携わっていない外部の人にまで株式が移転している事例が頻繁です。さらに、株式が負債の担保に取られ第三者に渡ってしまった事例もあります。

相続で株式が分散すると、株式の所有関係が不明確になって株主がだれかを特定すること自体が困難になってしまいます。

相続税対策

相続ではただでさえ株主分散が起こるのにもかかわらず、相続税対策として、あえて株主を分散しているケースもあります。

相続税における非上場株式の評価では、株主がもっている株式の割合などによって評価の方法や金額が変わるため、相続税の負担を小さくするために親族などに株式を分散するのです。

たとえば、後継者には3分の2など会社の運営に支障をきたさないだけの株式を与え、残りの株式を親族などに各5%未満ずつ配分するという方法などが考えられます。

これにより、後継者の株式は原則的評価方式で評価されますが、残りの株式は配当還元方式で評価されます。配当還元方式は配当金を基準としているため、原則的評価方式よりも株式の価値は低くなって相続税を減らせる効果があります。

この方法は、相続税を減らせる点が短期的なメリットですが、株主が分散してしまう点が長期的なデメリットです。

名義株主

平成2(1990)年に商法が改正されるまで、株式会社を募集設立するには、株主(発起人)が最低でも7人求められたうえ、株主が最低1株は引き受ける必要がありました。この条件を満たすために、出資金は会社の創業者が全額出して、株主の名義だけを親戚や知人から借りるケースが多数生じました。

こうした事情などにより、株主名簿に記載されている株主と、出資金を払った人が一致していない株式が「名義株」、名義だけを貸した人が「名義株主」です。古い会社ほど、商法改正前の影響から名義株主が多いため株主が分散しています。

留保金課税制度への対策

昭和36(1961)年に創設された留保金課税制度では、同族会社には一定税率を上乗せした法人税を課しています。この制度への対策のために同族関係者以外の人を株主とし、結果的に株主が分散している会社も多いです。

従業員へのインセンティブ制度

役員や従業員の意欲を高めるために、インセンティブ制度としてストックオプションを設定している会社があります。ベンチャー企業などで、優秀な人材を確保したいけれど大会社ほどの待遇を提供できない場合、その補填として活用しているのがストックオプション制度です。

上記のようなメリットも多いですが、株式は分散してしまいます。また、退職時の放棄に対する同意書の設定などを行っていないと、株式を取得したまま役員や従業員が退職するなどのリスクもあります。

⇒非上場株式・譲渡制限株式・少数株式でお困りの方はこちら!

2 事業承継と株式集約の困難性

このような理由で株主は分散しますが、いちど分散した株式を集約するのは困難です。いくつか事例を挙げてみます。

株式集約におけるトラブル事例

事例1:事業承継にあたって、前オーナーの遠戚がもつ株式を後継者が買い取ろうとするが、既に亡くなっており、相続人にも会えないで困っている。

事例2:非上場企業で、従業員の士気を高めるために株式を渡していたが、退職に伴い株式をいくらで買い取るかで争いに。退職時の放棄に対する同意書なども設定しておらず、会社が従業員に株式を返還するよう求めても拒否される。最終的には、従業員が取得した100倍の金額で会社が買い取った。

事例3:代襲相続(被相続人の子が既に死亡しているため孫が相続するパターン)により株主の孫に株式が引き継がれ、海外在住のため海を超えて株式を買い取りに出向く手間がかかった。

事例4:名義株を引き継いだ相続人から株主買取請求を受ける。名義株であることを立証したかったが、前オーナーが亡くなっていたために難しく、結果として大金を出して買い取る事態に。

事例5:役員が社長に対して不満をもち、株主総会の開催がなかったことなど手続き面での不備を理由として裁判を起こす。取引先などに裁判を知られる悪影響などを考え、役員の主張する価額で株式を買い取った。

事例6:為替差損による会社への損失など、会社側はささいな事柄と認識していたような内容で、株主代表訴訟の提起を受ける。数年にわたる裁判で時間や費用などの負担が大きかったうえ、大金を出して株式を買い取る事態に陥った。

このように、株主が分散したため株主からの買取などにより株式を集約しようとしても、株主が不明だったり判明しても買取に手間がかかったり、株主が抵抗して権利を行使したりするケースがあり、集約は困難です。

非上場の中小企業では会社法上のルールがあいまいになっている会社も多く、後述する少数株主の権利を行使されると太刀打ちできないこともあります。

3 事業承継における株主分散のリスク

株主が分散していて株式の集約が困難な場合、事業承継に際して主には次のようなリスクが生じます。

・会社が意思決定できないリスク

・相続により株式が準共有になるリスク

・内部紛争のリスク

・会社が乗っ取られるリスク

・少数株主が権利を行使するリスク など

議決権とは

事業承継において株式の集約が必要な理由は、もっている株式の割合に応じて議決権が付与されるからです。

議決権とは、株主総会において提案された議案への賛否を表すことで、会社の意思を決定する行為に参加する権利です。

株主総会において議決権が

・4分の1以上:特殊決議を否決できる

・3分の1以上:特別決議を否決できる

・2分の1以上:普通決議(一般的な議案)を可決できる

・3分の2以上:特別決議を可決できる

・4分の3以上:特殊決議を可決できる

・100%:単独で意思決定を行える

特別決議とは、定款の変更や取締役などの解任、営業権の譲渡やM&Aに関する事項など、重要な事項についての決議になります。

会社が意思決定できないリスク

事業承継において、後継者がもつ議決権が多いほど会社の意思決定を統一できます。

株主の分散は経営権の分散でもあり、後継者に株式を集約できなければ経営上の意思決定が上手くいかなくなります。後継者がもつ議決権が過半数に満たないと、取締役の選任などの一般的な議案すら決定できません。

事業承継をスムーズに行うには、株式を後継者へ集中させ、重要事項である特別決議を可決できる3分の2以上の議決権確保が最低でも必要です。

相続により株式が準共有になるリスク

生前贈与や遺言がない状態でオーナーが急逝し株式が法定相続になると、会社法においては株式が相続人に自動分割されません。遺産分割協議が終わるまでは、法定相続人間で株式が準共有される状態になってしまいます。

たとえばオーナーに前妻の子がいて、後妻の子である後継者は前妻の子とは全く交流がないケースがあるとしましょう。前妻の子が後継者との話し合いを拒んだり行方不明だったりといった事情で協議ができない場合、後継者はオーナーから法定相続した株式に関しては議決権が行使できない状態になります。

内部紛争のリスク

先述した「会社が意思決定できないリスク」にも関連しますが、株主が分散していると、事業承継を機に新たな内部紛争が起こるリスクがあります。

・現経営陣 VS 前オーナーを含む旧経営陣

・現経営陣 VS 株主

・現経営陣どうし

・株主どうし

たとえば、前オーナーが従業員を後継者としたけれど、株式は前オーナーと家族が持ち続けるケースです。

前オーナーは、会社の債務に対して連帯保証を入れていることが多いです。引退後も連帯保証を外せない場合は、会社が上げる実績や利益に最も個人的な利害関係をもつのは、実は前オーナーであるという事態が生じます。このように、経営陣と会社の所有者が異なる場合は内部紛争も激しくなります。

現旧含めた経営陣間で争われる争点には、主に次のようなものがあります。

・退職金を含めた役員報酬

・競業避止義務

・利益相反取引

・忠実義務

・損害賠償 など

株主を含めた紛争の争点は、主に次の点です。

・経営権

・名義株など株主権の帰属

・会社運営における違法行為などの指摘

・株主総会をめぐる諸問題

・損害賠償 など

会社が乗っ取られるリスク

株式が分散した結果、第三者や敵対関係者に譲渡されると、会社に乗っ取りをかけられるリスクさえあります。

会社が買収された場合、後継者を含めた経営陣の入れ替えや、従業員のリストラなどが行われるケースもあり、後継者が不利益をこうむる可能性は高いです。

少数株主が権利を行使するリスク

議決権を一部しかもっていない「少数株主」にも、代表的なものとして次の権利が与えられています。

1株以上の議決権をもつ株主

・株式買取請求権

・株主代表訴訟を提起する権利 など

1%以上の議決権をもつ株主

・株主提案権 など

3%以上の議決権をもつ株主

・会計帳簿閲覧謄写請求権

・株主総会の招集を求める権利

・役員の解任請求権 など

※いずれも6か月より前から株式をもっている必要あり

中小企業庁によると、事業承継に際して少数株主について困ったことがあると回答した内容の内訳は次のようになっています。

・株式買取を求められた:20%

・株主代表訴訟を起こされる可能性がある:14%

・株式を100%もっていないためM&Aに支障が出る:13%

・株主総会が混乱する可能性がある:11%

・会計帳簿閲覧請求を求められる可能性がある:9%

・自らを役員にするよう株主から要求された:4%

・その他:29%

参考:https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2017/170410shoukei.pdf

少数株主とはいえ、中には会社の経営に大きな影響を及ぼす権利も付与されています。そのため、後継者に反感をもっている人物が3%以上の議決権をもっている場合、後継者が会社経営をやりにくい状況に追い込まれるリスクもあるため注意が必要です。

株式買取請求権

株式買取請求権とは、株主が会社に対して、自分がもっている株式を公正な金額で買い取ってくれるよう請求できる権利です。

ある日突然、自分の会社に対して、少数株主が株式買取請求を行ってきたとしましょう。その株式を買い取れるだけのキャッシュが手元にあるでしょうか。中小企業では突然の株式買取請求を想定しておらず、応じられる資金の準備がないことがほとんどでしょう。

株式買取請求を受けて買取金額の合意がなされれば、60日以内に代金を支払わなければなりません。また、価格交渉が難航すれば裁判へと進行する可能性もあります。

株主代表訴訟を提起する権利

株主代表訴訟とは、取締役などの役員が違法行為や著しいミスなどによって会社に損害を与えたのに会社が役員の責任を追求しなかった場合に、株主が役員に対して損害賠償を求めることができる制度です。

中小企業には同族会社も多く、同族内の役員が会社に損害をもたらしても、それほど追求はされない傾向があります。株主は、1株でも株式をもっていれば13,000円と低額の訴訟手数料にて裁判所に申し立てができるため、少数株主にとっては使いやすい制度です。

このような背景から、表立って報道はされませんが、中小企業での株主代表訴訟は実際には多いです。役員が会社に損害を与えたと判断された場合は、損害賠償を命じられるリスクがあります。

株主提案権

総株主における議決権の1%以上(もしくは議決権を300個以上)もっていれば、議題提案権・議案通知請求権・議案提案権から成る株主提案権を行使することができます。

株主提案権で最も多いものが定款の変更、そのほか、剰余金の配当や取締役の解任・選任などの提案です。

会計帳簿閲覧謄写請求権

オーナーにとって経理関係の資料は最も見られたくないものですが、会計帳簿閲覧謄写請求権を行使すれば、仕訳帳や総勘定元帳、契約書や伝票などの、会計帳簿やそれに付随する資料を見ることが可能です。

先述した株式買取請求や株主代表訴訟とも関連し、取締役が行っている違法行為の差し止めを請求する際や株式の買取金額で揉めた際などに、資料として閲覧を請求するケースがあります。

株主総会の招集を求める権利

少数株主は、株主総会の招集を求めることもできます。少数株主が法に従って招集を要求したのに会社がその手続きを怠った場合は、少数株主は裁判所から許可をもらって、株主総会を招集することが可能です。

その場合、少数株主は株主総会を自ら招集できるため、株主総会の議長を総会にて選ぶこともできます。そのため、会社側のコントロールが効かなくなるリスクがあるので注意してください。対策としては、総会検査役の選任について裁判所に申し立てを行うことです。

役員の解任請求権

ある一定の条件のもと、役員の解任についての訴えを裁判所に申し立てることができます。実際には解任まで至らなくとも裁判には費用と時間がかかるため、嫌がらせの手段として用いられるリスクがあります。

M&Aを進めるうえでの支障

事業承継にあたってM&Aを検討したい場合に、少数株主が複数いて更に相続などにより把握が難しかったり、株式の買取を拒否したりといったトラブルで、M&Aに支障をきたす場合があります。

⇒非上場株式・譲渡制限株式・少数株式でお困りの方はこちら!

4 事業承継前に取っておきたい株式分散リスク対策

株主分散によって起こるこれらのリスクを避けるため、事業承継前にオーナーが取っておきたいリスク対策として次が挙げられます。

・生前贈与

・遺言の作成

・持株会社の設立

・ほかの株主から株式を買い取る

・種類株式の発行

・名義株主の整理

・所在不明株主の把握

・安定株主への承継 など

オーナーの急逝後などに後継者がとれる対策

・相続人への売渡請求

・特別支配株主による株式等売渡請求 など

株式の生前贈与

相続によって株式が分散するのを防ぐためには、オーナーの存命中に後継者を決定し、すべての株式を後継者に生前贈与するのが最もシンプルな対策です。

生前贈与には贈与税が課されますが、生前であれば税金に対しても次のような対策を取ることができます。

・暦年課税制度:基礎控除を年間110万円受けられる

・相続時精算課税制度:生前贈与時には軽減された納付税を支払い、相続時に支払う相続税で精算を行う

・事業承継税制:贈与税が免除・猶予される制度 など

生前贈与は、前オーナーが経営から完全に退いて、後継者が経営を行う体制が確立された際に実施するといった具合に、タイミングを計るよう心がけましょう。

遺言の作成

生前贈与とあわせて、遺言の作成も効果的です。後継者が子どもの場合、後継者に株式を集中させると、ほかの相続人である兄弟姉妹が不満を感じてトラブルになるケースもあるため、ほかの相続人には現金や事業に無関係な資産を残すなどの配慮も遺言ならできます。

遺言を作る際には、法的に無効とならないよう定められた形式を守り、遺産分割協議の手間を相続人にとらせないよう全財産について相続人を指定しましょう。

遺留分に関する民法の特例

相続時には、それぞれの法定相続人は、民法で最低限定められた割合の財産(遺留分)を受け継ぐ権利が保証されています。

そのため、生前贈与や遺言で後継者に株式を集中しようとして、ほかの相続人の遺留分を侵害してしまうと、遺留分減殺請求を起こされることがあります。

このようなトラブルを事前に防ぐためには、遺留分に関する民法の特例を活用できます。この特例により、相続人全員が合意して合意書を作成すれば、オーナーが後継者に贈与した自社株式については、次の2つ(組み合わせも可)が可能になります。

・遺留分を算定するベースとなる財産から株式を除外できる(除外合意)

・ベースとなる財産に算定する際に、株式の価額を相続時ではなく合意時における時価で計算できる(固定合意)

この特例を使う場合は、次の要件を満たさなければなりません。

・中小企業

・相続人の合意時点で、事業を3年以上続けて運営している非上場企業

・前オーナーは、合意時あるいは過去に会社の代表者であった

・後継者は、合意時に会社の代表者である

・後継者は、前オーナーの贈与により、会社での議決権の過半数をもっている

持株会社の設立により株式集約

生前贈与のほかにも、相続によって株式が分散するのを防ぐ方法として、持株会社の設立が挙げられます。

後継者が新たに会社を設立し、前オーナーの会社から株式を買い取るのです。前オーナーは株式のかわりに現金を得ます。

この方法のメリットは、後継者が相続税や贈与税を支払う必要なく株式を引き継げる点と、前オーナーの遺産に株式が含まれなくなるため株式の分散を防げる点です。

一方、デメリットとして、後継者は株式を買い取る資金を融資などにより用意する必要がある点と、前オーナーに株式売却益による所得税が課せられる点、さらにその売却益は将来的に相続財産となって相続税の対象となる点が挙げられます。

他の株主から株式を買い取る

既に株式が分散している場合、オーナーまたは後継者がほかの株主から株式を買い取るのが理想的です。ですが、個人による買取は資金の準備が難しいでしょう

その場合は、株主総会で決議を受ければ、会社がほかの株主から株式を買い取ることもできます。株主から同意を得る手続きや税金などに注意が必要です。

種類株式の発行(種類株式化)

会社を一代で築き上げたオーナーに多いのは、子どものうち一人を後継者にしたいけれど、株式以外の相続財産がないために、ほかの子どもにも株式を引き継がせたいという要望です。

こうした場合や、生前贈与において、ほかの相続人全員と合意がとれず遺留分減殺請求のために後継者に株式移転を集中できない場合などに取れる対策があります。

たとえば、後継者以外の相続人には議決権制限株式を引き継がせ、後継者には普通株式を引き継がせる方法です。

議決権制限株式とは、行使できる議決権に制限がある種類株式で、議決権の範囲や条件は定款で定めることができます。事前に定款変更の特別決議を行い、一部の普通株式に対して議決権制限株式へと定款の変更を行いましょう。

非上場企業については、株主の権利を不平等に設定することも可能なため、後継者以外の子どもには、代償として配当を多く設定した議決権制限株式を引き継がせることもできます。

また、株式分散を防ぎたい場合には、取得条件付種類株式や譲渡制限株式を発行する方法もあります。

取得条件付種類株式は、一定の事由が発生した際に、株主の同意を得ることなく会社が株式を買い取ることが可能な種類株式です。株主の死亡時に会社が株式を買い取るよう事前に設定しておけば、相続による株式の分散を防げます。

譲渡制限株式は、株式を譲渡する際に取締役会あるいは株主総会での承認が必要となる種類株式です。ただし、相続で株式を引き継ぐ場合には承認は不要なため、相続対策を考えると取得条件付種類株式のほうがよいでしょう。

名義株主の整理(名義株主の株式を集約)

度重なる相続などにより株主の特定自体が難しい場合には、現時点での株主がだれなのかを確定する作業が必要です。その過程で、株式の売買契約や株式引受けを支払った証拠が存在しない株主については、名義株主とみなして整理を行います。

具体的には、名義株主に対して株主名簿からの削除を申し入れます。拒否された場合は、名義株主が本当の株主でないことの確認を求める訴訟が必要です。

所在不明株主の把握

オーナーが急逝するなどのアクシデント時に、オーナーしか面識のない所在不明の株主が存在して後継者が困るケースがあります。所在不明株主の現所在や名義関係については、オーナーが責任をもって把握しておきたいです。

連続して5年以上、会社からの通知が届かずに戻ってくる株主がもつ株式については、公告や通知などの手続きを踏んだうえで、会社が自社株買いなどの処分を行うことも可能です。

安定株主への株式の承継

相続税や贈与税などの負担が大きいため、後継者に株式すべての移転ができないケースもあります。そうした場合には、オーナーのほかに安定株主を導入してみましょう。

安定株主とは、役員・従業員持株会や金融機関など、会社の経営方針に対して同意し、株式を第三者に売却することなく長期的に保有してくれる株主を指します。安定株主を導入すれば、多数の議決権割合を安定的に保持でき、経営における意思決定の安定化が可能です。

国の政策実施期間である中小企業投資育成株式会社は、5,000社以上の中小企業に対して株式の引受けなどの形で投資しており、経営に干渉せず配当を期待する友好的な安定株主として長期的な支援を行っています。

相続人への株式売渡請求(スクイーズアウト)

株式を分散することなく後継者に確実な引き継ぎを行うには、前オーナーが生前から準備を重ねておくことが必要です。ですが、前オーナーが急逝するなど対策を取れなかった場合にも、利用できる対処法はあります。

そのひとつが、相続人への売渡請求です。定款をあらかじめ設定しておけば、株式が相続などで移転しても、会社は相続人に対して株式の売り渡しを請求できます。相手が請求に応じない場合は、裁判所による決定を受けることが必要です。

注意したいのは、後継者以外の株主も、後継者に売渡請求を行える点です。さらに、後継者が売渡請求を受けた場合、この事項に関しては利害関係者であるため、株主総会において議決権の行使ができなくなります。そのため、経営権を得ようと、後継者に売渡請求を行使する株主が登場する可能性には注意してください。

特別支配株主による株式等売渡請求(スクイーズアウト)

後継者が90%以上の議決権を有していれば、強制的に少数株主から株式を買い取ることが可能です。株式は時価で買い取られるため、少数株主は買取金額が安いことを理由に拒否はできません。ですが、時価をどのように算定するかで裁判沙汰になるケースはあります。

所在不明株主に悩んでいる場合は、特別支配株主による株式等売渡請求が役立ちます。

たとえば、オーナーがもつ議決権が90%に満たない場合は、所在がわかっているほかの株主と交渉して株式を買い取り90%以上を確保します。その後、連絡が取れない所在不明株主に対して、特別支配株主による株式等売渡請求を行うのです。

⇒非上場株式・譲渡制限株式・少数株式でお困りの方はこちら!

まとめ

株主の分散が起こる理由として、最も大きなものは相続です。

いちど株主が分散してしまうと、株式を集約するのは困難になります。古い会社では、所在不明株主や名義株主の対応に時間がかかるケースが多いです。

株主が分散していて後継者に株式を集中できないと、会社の意思決定に支障をきたしたり、内部紛争が起こったりなどのリスクがあります。最低でも、特別決議を可決できる3分の2以上の議決権確保が必要です。特に、少数株主が権利を行使した場合は、日頃から会社法上のルールを遵守しておかないと、対応に苦労する場合もあります。

株主分散によって生じるリスクを避けるため、事業承継の前にオーナーは、後継者への生前贈与や遺言作成などの対策を取っておきましょう。自らの相続でさらに株主が分散する事態は避けたいものです。

紹介した対策のほかにも、オーナーや後継者が、少数株主を含めた株主と円満な関係を築いておくことが非常に重要です。たとえ株主が分散していても、オーナーや後継者に賛同してくれる限りは大きな問題は起こらないからです。

オーナーの生前に生じていた小さな諍いが、後継者の承継後に大きな紛争に発展する可能性もあります。株主は決して敵に回さず、安定した経営体制を確立することを心がけましょう。

お問い合わせ