株式譲渡契約書の逐条解説:貸借関係清算
弁護士法人M&A総合法律事務所のM&A契約書類のフォーマットはメガバンクや大手M&A会社においても、頻繁に使用されています。
ここに弁護士法人M&A総合法律事務所の株式譲渡契約書のフォーマットを掲載しています。
M&Aを検討中の経営者の皆様でしたらご自由にご利用いただいて問題ございません。
ただし、M&A案件は個別具体的であり、このまま使用すると事故が起きるものと思われ、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。
また、このフォーマットは弁護士法人M&A総合法律事務所のフォーマットのうちもっとも簡潔化させたフォーマットですので、実際のM&A取引において、これより内容の薄いDRAFTが出てきた場合は、なにか重要な欠落があると考えてよいと思われますので、やはり、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。
⇒M&Aトラブル・表明保証違反・コベナンツ違反・M&Aの損害を解決する方法を見る!
なお、詳細な解説につきましては、以下の弊所書籍「事業承継M&Aの実務」をご覧ください。
株式譲渡契約書の逐条解説:貸借関係清算
■■■第11条■■■■■■■■■■
第11条は、借入金の清算に関する遵守条項である。 (1) 借入金の清算に関する遵守条項について事業承継M&Aの対象となる中小企業、零細企業においては、オーナー(売主)が、対象会社に対して、運転資金等の金銭を貸し付けていることが多い。また、金銭を貸し付けている場合以外に、オーナー(売主)は、実際には対象会社に対して金銭を貸し付けていないものの、対象会社が経営不振の時代や資金繰りに窮した場合などに、役員報酬を受領せずに、対象会社に対して、その役員報酬相当額の貸付を行ったこととして経理処理している場合(準消費貸借)も多い。 また、反対に、オーナー(売主)が対象会社から金銭の借り入れを行って言う場合もある。すなわち、オーナー(売主)が、対象会社を自己の財布代わりに使用していることが多いことも、事業承継M&Aの対象会社である中小企業、零細企業の特徴である。 事業承継M&Aにより、対象会社は、他人(買主)の会社になるわけだから、売主としては、対象会社に対する金銭の貸し借りの関係を清算して頂く必要がある。 売主にとっても、この事業承継M&Aの機会に、対象会社から貸付金を返済してもらわないと、その後、対象会社は他人(買主)の会社になるわけだから、容易に貸付金の返済を受けることができなくなってしまいこともあり、また、借入金については激しく債権回収をされることとなる可能性も高く、事業承継M&Aの機会に対象会社に対する貸付金や対象会社からの借入金を清算しておくことは重要であろう。 (2) 返済原資がない場合の対策についてこの点、売主が、対象会社に対して、貸付金を有している場合、対象会社に返済原資があれば、対象会社から売主に対して、そのまま返済をすればよいのであるが、そうではなく、対象会社に返済原資がない場合は問題である。そのような場合は、事業承継M&Aのクロージング日に、買主が対象会社に対して金銭の貸し付けを実行し、クロージング日のうちに、対象会社が売主に対して金銭の返済を行うというメカニズムを、株式譲渡契約書に盛り込む必要がある。 また、対象会社が売主に対して金銭を貸し付けている場合、売主に返済原資があればよいが、売主に返済原資がないような場合もある。また、売主が自らの個人財産から返済資金を出捐することに、抵抗感を覚えることも多い。そのような場合は、売主から対象会社に対する金銭の返済について、その相当額について、株式譲渡代金と相殺する又は株式譲渡代金から控除するメカニズムを、株式譲渡契約書に盛り込む必要がある。 (3) 借入金の清算を行わない場合もある勿論、このように、オーナー(売主)の貸借関係については、清算する場合だけではなく、オーナー(売主)にその貸付金債権を放棄してもらう場合や、オーナー(売主)から対象会社に対する貸付金についても、株式譲渡と同時に、買主に対して譲渡する債権譲渡スキームを採用することもあり、また、オーナー(売主)から対象会社に対する貸付金債権を、デット・エクイティ・スワップ(DES)の方法により、対象会社に対する株式(出資金)に転換し、買主に対して、その新株式も一緒に株式譲渡するスキームを採用する場合もある、その際に、その分、株式譲渡代金を調整することも多い。 また、売主が対象会社から借入金を有する場合、対象会社から売主に対して、特別報酬を支給したり、役員退職慰労金を支給したりして、それにより対象会社への借入金を返済することとし、実質的に借金を棚上げし、その分、株式譲渡代金を調整することも多い。 |