秘密保持契約書の重要性と注意点

■秘密保持契約書の重要性

M&Aを行うにあたって最も重要な契約書の一つが秘密保持契約書です。

M&Aを行う場合、売主、買主及びそれぞれのファイナンシャルアドバイザー(以下「FA」という)の間で、対象会社に関する、財務上や法務上の問題を含んだ会社の全ての情報について、大量に対象会社から開示がなされます。このような情報がFAや買主を通じて第三者に漏洩された場合、対象会社の信用不安となり業績悪化などを誘発して、M&Aの目的を達成できなくなるどころか、会社の存続の危機に発展しかねないこととなりえます。そこで、買主、売主及びそれぞれのFAとの間でこれらの対象会社の情報について厳格に管理させるために秘密保持契約を締結する必要があります。

■秘密保持契約書で気を付けるべきこと

このように、会社の存続の危機に発展しかねない会社の全ての情報を扱うので、M&Aにおける秘密保持契約書は、個人情報保護や一般的な取引における秘密保持契約書の内容よりも厳格なものとすべきです。

そして、特に気を付けるべき点は、以下の3点です。

1つ目は、相手方に対する秘密保持義務のみならず、第三者に対して開示した情報に対する秘密保持義務も課させることです。M&Aの当事者は多数にのぼり、売主と直接秘密保持契約書を締結することが難しい場合もあります。たとえば、以下の図のように、売主と買主候補の間に複数のFAが介在して、売主が買主候補と直接秘密保持契約書を締結できない場合もあります。そうすると、たとえば④⑤で密保持契約書が締結されていないと買主まで秘密保持義務が架橋されないので、秘密保持義務を買主に負わせることができないこととなってしまいます。このようなことを回避するために、①で締結する契約において、相手方に対して、第三者に開示する場合にその第三者にも同一の秘密保持義務を課す義務を負わせるのです。それにより、その第三者もさらに第三者に秘密を開示する場合には同様の秘密保持義務を負わせることとなり、秘密情報を保有するものに連鎖的に秘密保持義務を負わせることができることになります。

2つ目は、情報の返還又は破棄の義務を規定すべきことです。M&Aの検討に際しては、対象会社から、定款や会社の各種規程類、関係会社関係図、社内組織図、営業情報、株主総会等各種議事録、取引先や不動産等の契約書、労務関係書類、複数年度の決算書・確定申告書等大量の情報を開示されることになります。さらに、これら情報の開示を受けた相手方はPDFに取り込む等情報を複製していることが考えられます。これら情報を確実に漏洩防止するために、開示者から請求があった場合や本契約が終了した場合に、理由の如何を問わず、直ちに秘密情報とその複製物を返還又は破棄する義務を負わせる規定をおくことが重要です。

3つ目は、秘密保持契約書を締結するタイミングを逸しないことです。M&Aの交渉を開始する前の最初の段階でならば、買主側は、対象会社を買収したいというインセンティブを有するので、そのようなメリットを享受できるならば合わせてデメリットである情報管理の義務を併せて負うことについて問題なく受け入れます。しかし、交渉の最初の段階で締結せずに、M&Aの交渉が終了して事後的に秘密保持契約書を締結する場合は、困難となることが多いといえます。なぜなら、相手方である買主はM&Aを検討し終えて買収することを断念したならば、対象会社とはもう関わりをもつ必要がなく、その後にさらに秘密を保持し情報管理に責任を負うというデメリットのみを引き受けるインセンティブを失うため、途端に契約締結したがらなくなるからです。

したがって、買主側が対象会社の買収の検討に入った早い段階で、秘密保持契約書を締結することが重要です。

 

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