譲渡制限株式と譲渡承認請求・買取請求!

会社や個人で保有している他社の株式を譲渡しようとしても、譲渡制限が付いていて勝手には譲渡できない場合があります。

このような株式を譲渡制限株式と言い、譲渡をするためには会社の取締役会や株主総会での承認が必要です。

中小企業の株式はこの譲渡制限が付いているものが多く、簡単に譲渡ができないケースが多々あります。

しかし、この譲渡制限により、会社にとっては望ましくない人や会社を株主にすることを防ぐこともできるのです。

今回は、この譲渡制限株式を譲渡する時の、譲渡承認請求や買取請求について詳しく解説していきます。

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1.譲渡制限株式とは?

譲渡制限株式を譲渡する時の譲渡承認請求や買取請求の解説を行うには、前提である譲渡制限株式について解説する必要があります。

まず本項では、譲渡制限株式とは何かについて詳しく解説していきます。

株式を譲渡するのに、会社の承認が必要と定款に定められている株式のことを譲渡制限株式といいます。

譲渡制限株式を会社の承認を得ることができずに譲渡しても、株式名簿の書き換えを請求することはできません。

そのため、譲渡しようとする株式が譲渡制限株式の場合は、必ず会社の承認が必要なのです。

一般的に株式は、証券取引所などで自由に売買されているものと理解している人が多いでしょう。

のように、発行株式に譲渡制限が設けられていない会社を公開会社といいます。

一方、発行株式にすべて譲渡制限を設けている会社を株式譲渡制限会社(非公開会社)といいます。

また、会社は発行する株式の種類によって、譲渡制限株式と制限のない株式の両方を発行することができるのです。

このような場合は、譲渡制限株式を発行していたとしても、譲渡制限のない株式も発行しているので公開会社に分類されます。

実際には、中小企業の7割以上が譲渡制限株式のは発行をしています。なぜなら、譲渡制限株式会社には、中小企業にとって以下のようなメリットがあるからです。

取締役会と監査役の設置義務がないこと

公開会社は、取締役3人以上で監査役1人以上と取締役会の設置義務があります。

しかし、株式譲渡制限会社は、取締役が1名以上いれば監査役や取締役会の設置義務はありません。

相続クーデターを阻止できること

相続が起きた場合、株式の分散や会社の意思に反する人に株式が渡ることが考えられます。

また、場合によっては相続クーデターが起こるかもしれません。

しかし、株式譲渡制限会社は、定款へ記載しておけば売渡請求により相続人に移転した株式を売却してもらうことができます。

この売渡請求を利用すれば、相続クーデターを阻止することができるのです。

請求がなければ株券を発行しなくても良いこと

株式譲渡制限会社は公開会社とは異なり、株主からの請求が無ければ株券を発行しなくても良いことになっています。

役員の任期を最大10年まで延長することができること

公開会社では、取締役の任期は最長2年、監査役の任期は最長4年と決められています。

一方、株式譲渡制限会社は、役員の任期を最大10年まで延長することができるのです。

但し、定款に定めておく必要があります。

株主総会招集の手続きが簡略化になること

株主への株主総会の開催通知は、公開会社の場合は開催の2週間前までに行わなければなりません。

しかし、株式譲渡制限会社は株主総会開催の1週間前までに通知をすれば良いことになっています。

また、取締役会が設置されていない株式譲渡制限会社が定款に定めた場合は、株主総会の開催の1週間前よりもさらに短い期間での通知が可能です。

そして、通知の方法は書面でなく口頭でも可能とされています。

株式の発行制限がないこと

原則、発行済の株式数の4倍までしか公開会社では株式の発行ができませんが、株式譲渡制限会社は株式の発行制限がありません。

計算書類の作成を簡略化できること

公開会社が計算書類に記載しなければならない注記は19項目ありますが、株式譲渡制限会社の場合はその内の6項目を記載すれば良いとされています。

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2.譲渡制限株式の譲渡承認請求

譲渡制限株式を譲渡するためには会社の承認が必要ですが、この承認を得るために株主または株式の譲受人は会社に譲渡承認請求をしなければなりません。

会社に対し譲渡承認請求を行うには、株式譲渡承認請求書に譲渡する株式の数と株式を譲り受ける者の氏名または名称を明らかにする必要があります。

株式の譲受人が譲渡承認請求をするには、原則株主と共同で行わなければなりません。

一方、株主は、単独で譲渡承認請求をすることができます。

3.譲渡承認請求の具体的な方法について

本項では、実際に譲渡承認請求を行う場合の具体的な手続きについて解説していきます。

株主が譲渡承認請求を行うには、会社に対して「株式譲渡承認請求書」という書類を提出する必要があります。

株式譲渡承認請求書には、以下の内容を記載しなければなりません。

・譲渡を行いたい譲渡制限株式の数と株式の種類(株式の種類が複数ある場合)

・譲受人の氏名または名称

・会社が株式譲渡承認の不承認を決定した時に、会社または指定買取人に買取請求を行うのならばその旨

株式譲渡承認請求書を記載したら、その請求書に署名押印をします。

印鑑は、必ずしも実印でなくてもかまいません。

但し、株式譲渡承認請求書が株主本人のものであることを証明するために、会社から実印と印鑑証明書を要求される可能性もあります。

4.株主から譲渡承認請求を受けた会社の対応

譲渡譲渡承認請求を受けた会社は、譲渡承認機関の承認決議で譲渡の承認をするかどうかの決定をします。

譲渡承認機関は、取締役会が設置されている会社かどうかや、定款に規定があるかどうかで会社ごとに異なるのです。

まず取締役会が設置されている会社の場合の譲渡承認機関は、取締役会になります。

取締役会での承認条件は、取締役の過半数の出席と出席した取締役の過半数の賛成です。

取締役会が設置されていない会社の場合の譲渡承認機関は、株主総会になります。

譲渡承認請求を受けた会社は、臨時の株主総会を開催して議決権の過半数を持つ株主の出席と出席した株主が持つ議決権の過半数の賛成により承認が決定されます。

また、例え取締役会が設置されている会社であったとしても、定款に定めることにより代表取締役や取締役全員の承認を譲渡承認機関とすることもできるのです。

譲渡承認請求の承認決議を終えた会社は、承認するかしないのかにかかわらず株主に結果を通知しなければなりません。

もし譲渡承認請求を受けた日から2週間以内に通知を行わなかった場合は、自動的に譲渡を承認を決定したとみなされてしまうのです。

このことは、承認決議が承認であったとしても不承認であったとしても同じく承認を決定したとみなされますので、会社側は日程に対する注意が必要です。

5.株式譲渡契約の締結

譲渡承認請求を受けた会社が承認決議で承認した場合、株式譲渡契約の締結の手続きが行われます。

株式譲渡契約の締結の手続きは、譲渡側と譲受側が株式譲渡契約書に必要な内容を記載することにより行われます。

株式譲渡契約書に記載すべき内容は以下になります。

・株主の氏名

・株式を譲渡する価格

・譲渡側の支払い方法

・譲渡側の支払い期限

・株主からの除名手続きの内容

・新しい株主としての株主名義の書き換え請求の内容

株式譲渡契約の締結が実行されたら、譲渡人と譲受人が共同で会社に対して株主名簿の書き換えを請求します。

なぜなら、譲渡人と譲受人との間での株式の受け渡しだけでは、株式の譲渡が完了するわけではないからです。

会社が持っている株主名簿の書き換えが完了して初めて株式の譲渡が完了するのです。

株主名簿の書き換えが完了したら、譲受人は株主名簿記載事項証明書の交付を行います。

株主名簿記載事項証明書の交付を行うことにより、株主名簿に譲受人が新しい株主として記載されているかを確認することができます。

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6.譲渡制限株式の買取請求

譲渡制限株式の譲渡承認請求を受けた会社は、譲渡承認機関で不承認の選択をすることもできます。

この不承認を受けた場合、株主は株式の譲渡が一切できなくなるわけではありません。

株主が希望した譲受人への譲渡ができなくなるだけで、会社または指定買取人がその株式を買い取る請求を譲渡承認請求時に行うことができるのです。

不承認を決定した会社は買取請求を受けて、株主総会または取締役会などにて会社自ら買い取るか、全部または一部を買い取る人(指定買取人)を決める決議をする必要があるのです。

即ち、会社と指定買取人が両者で譲渡承認請求を受けた株式を買い取ることができます。

しかし、譲渡承認請求を受けた株式の一部を譲渡承認をし、一部を買い取ることは禁止されています。

会社が株式を買い取る場合は、譲渡承認請求をした株主に会社が買い取ることを通知する必要があります。

また、この通知より前に、買い取る株式の1株あたりの純資産額に譲渡承認請求をされた株式の数を乗じ、その計算により得た額を会社の本店所在地の供託所に供託する必要があるのです。

そして、この供託を証する書面を譲渡承認請求した株主に対して交付する必要があります。

この供託の前に譲渡承認をした株主に行った通知については、原則として無効になります。

また、買い取る株式の供託を証する書面の交付は、譲渡承認請求を不承認にする通知を株主に行ってから40日以内にする必要があります。

なぜなら、手続きが40日を過ぎてしまった場合は、会社が買い取ることを決定したとしても譲渡承認をしたとしてみなされてしまうからです。

即ち、会社は株主からの譲渡承認請求が行われてから2週間以内に不承認の通知をしなければ、自動的に承認したとみなされます。

さらに、会社は不承認の通知から40日以内に買い取ることを決定して通知と供託を証する書面を交付しなければ承認したとみなされてしまいます。

そのため、手続きは早めに行う必要があるのです。

指定買取人が株式を買い取る場合は、会社が株式を買い取る場合と同様に譲渡承認請求をした株主に買取指定人になったことと買い取る対象株式の数を通知する必要があります。

また、買い取る株式の1株あたりの純資産額に買い取る対象株式の数を乗じた額を供託する必要があるのも会社が株式を買い取る場合と同様です。

会社が株式を買い取る場合と異なるのは、指定買取人が会社の株主に対する不承認の通知から10日以内に買い取ることを決定した通知と供託を証する書面を交付しなければ承認したとみなされてしまうことです。

即ち、会社が買い取る場合は40日以内だった通知と書面の交付が、指定買取人が買い取る場合は10日以内に短縮されることです。

株式の譲渡が不承認になり譲渡制限株式の買取請求が行われ会社または指定買取人が買い取ることになった場合、買取価格はどのように決まっていくのでしょうか。

まずは、会社または指定買取人と株主が協議によって、売買価格が決定されます。

しかし、実際のところは株主はできるだけ高い価格で売りたいのと、会社または指定買取人はできるだけ安い価格で買い取りたいはずです。

そのため、協議が成立しないケースも考えられます。

その場合は、会社または指定買取人が通知をした日から20日以内に、売買価格の申し立てを裁判所に対して行うことができます。

この申し立ては、会社または指定買取人と株主の双方が行うことができるのです。

また、会社または指定買取人と株主の双方共に売買価格の申し立てをしなかった場合は、1株あたりの純資産額に株式の数を乗じた額が売買価格になります。

まとめ