株式買取請求権(株式譲渡制限導入定款変更)!

株式譲渡制限導入の定款変更には『反対株主株式買取請求権』を行使して対抗しよう!

会社は、自社が発行する株式に対し「譲渡制限」を付すことができます。
しかし、譲渡制限の定款変更は株主の権利に対する重大な制約であるため、株主はそれに反対することも可能です。

また、そのような反対株主には「反対株主株式買取請求権」が与えられるのですが、株式買取請求権は限られた場面でしか行使でないため、まずはそのタイミングを確認しなくてはいけません。

さらに、株式買取請求権を行使する場合、株価決定裁判を提起しなくてはいけない可能性もあります。

そこでこの記事では、反対株主株式買取請求権の行使できるタイミングや手続き方法、株価決定裁判申立や実際に売却されるまでの流れなどの情報を徹底解説していきます。

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反対株主株式買取請求権とは

『反対株主株式買取請求権』とは、株主が会社に対して、歩数する株式を買い取るように請求することができる権利です。

反対株主株式買取請求権が行使できる場面

反対株主株式買取請求権は、いつでも行使できるわけではありません。実は、会社法に規定されている、極めて限定されたケースのみでしか行使できないのです。

たとえば、以下のような場面ならば反対株主株式買取請求権を行使することが可能となっています。

反対株主株式買取請求権を行使できる場面

①株式譲渡制限導入定款変更(会社法116条)
②スクイーズアウト株式併合(会社法182条の4)
③事業譲渡・重要子会社売却(会社法469条)
④合併・会社分割・株式交換・株式移転(会社法785条・797条・806条)
など。

合併・会社分割・株式交換・株式移転というような組織再編は、会社にとって大きな影響を与える事象であり、その会社に投資している株主にとっても、前提そのものが変わってしまうことから、投下資本の回収の機会が与えられています。

また、株式併合の場合や新株式発行の場合、株式無償割り当ての場合、全株取得条項付き株式の全株取得条項付きの発動の場合など、株主が会社から強制的に排除されてしまうような状況でも反対株主株式買取請求権を行使することはできます。

条件次第では、少数株式を不当にも一方的に会社から排除しようとする手続きとなりえるため、そのような少数株主に会社法は投下資本の回収の機会を与えているのです。

その他では、前述の通り譲渡制限株式導入の定款変更の際にも、反対株主株式買取請求権を行使することが可能となっています。

反対株主株式買取請求権の手続き方法

反対株主株式買取請求権は、限られたケースでのみ行使できるとご説明しましたが、その手続きの方法も容易ではありません。

まず株主は、譲渡制限に関する規定を設ける定款変更の議案に反対する旨の通知を株主総会に先立って会社に通知し、株主総会において当該事項に反対しなければいけないのです。

しかも、ただ反対するだけではありません。
株主総会に先立って反対を通知しつつ、株主総会でも反対の議決権を行使する必要があります。

株主総会に漫然と出席し、反対の議決権を行使しただけでは、反対株主株式買取請求権を行使することはできないのです。

2回反対することは会社法に明記されている

反対株主株式買取請求権を行使するために2回反対することが必須であることは、会社法に明記されています。(会社法116条2項1号)

たとえば、株主総会への出席を取りやめ、外野で反対しているだけでは反対株主株式買取請求権は行使できません。
しっかりと、株主総会に先立って反対する必要があるのです。

もし、2回反対していないのに反対株主株式買取請求権を行使したとしても、会社は買い取りに応じてくれないかもしれません。
また、仮に応じてもらえたとしても、裁判所に起訴提起が有効にできない可能性もでてきます。

そのようなリスクを回避するためにも、株主総会までに行う反対については「内容証明郵便」で行うことが望ましいです。

さらに、株主総会における反対につきましても、会社から反対したことに関する証明書を貰っておくのが一般的とされています。

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代理人に議決権行使を委任する際の注意点

反対株主株式買取請求権を行使する場合、どうしても法的知識が必要となってきます。
そのため、弁護士などの専門家を代理人とすることも多いのですが、その際には注意点があります。

実は、定款等で代理人資格を限定されているケースがあるため、場合によっては代理人に議決権行使を委任できない可能性もあるのです。

そのため、代理人に議決権行使を委任する際には、株主総会に株主が自ら出席し該議案に反対するか、もしくは当該代理人資格の要件を満たす代理人に委任するなどの対処を取る必要があります。

・反対株主株式買取請求権の行使方法と行使期間

反対株主株式買取請求権を行使するためには、2回の反対が必要です。しかし、2回反対しただけでは、反対株主株式買取請求権を行使したことにはなりません。
あくまで、別途で反対株主株式買取請求権を行使しなければならないのです。

行使方法としましては、会社に対して、株式買取請求権を行使する株式の種類及び数を通知する手段があります。

行使期間に注意

反対株主株式買取請求権を行使できる期間は、株式併合による少数株主排除(スクイーズアウト)や、譲渡制限株式導入の定款変更の効力発生日の20日前の日から、効力発生日の前日までの間となっています。

そして、反対株主株式買取請求権を行使する場合、その期間中に買取請求に係る株式の数を明らかにし、さらに株券が発行されている株式であるならば、当該株式にかかる株券を会社に提出して株式買取請求を行使しなくてはいけません。

また、民商法の原則により通知は「到達主義」となるため、期間内に会社に対して通知書を到達させている必要があります。

通知書の送付は内容証明郵便を推奨

通知書を会社へ送付する場合、「通知が届いた」という証拠を残すために内容証明郵便で送ることを推奨します。

ただし、内容証明郵便は受け取り拒否を行うことも可能なので、場合によっては「通知書が到達していない」というトラブルが発生し、反対株主株式買取請求権を行使できないというリスクもあります。

ですので、できれば受け取り拒否のできない普通郵便や速達郵便、レターパック等で送る方法を併用することが望ましいです。

株式買取請求は撤回できなくなる

反対株主株式買取請求権を行使した場合その株主は、会社の承諾を得られない限り株式買取請求を撤回できなくなります。

ただし、価格についての協議が整わず、さらに効力発生日から「60日以内」に価格決定の申立てがない場合に限り、株式買取請求を撤回することが可能となります。

株式買取価格はどのように決まるのか?

反対株主株式買取請求権を行使した場合、株式買取価格は会社と株主の交渉により決定していきます。

仮に、協議がスムーズに調った場合には、会社が効力発生日から60日以内に代金を支払うことで株式の売却は完了します。

ただし、両者には安く買い取ろうとする会社と、高く売却しようとする株主の異なる思惑があるため、実際にはそう簡単に協議が調うことはありません。
よって、ほとんどのケースでは、裁判所への申立により価格が決定されます。

また、裁判所への株式買取価格決定申立には期限があります。
株式併合による少数株主排除(スクイーズアウト)や、譲渡制限株式導入の定款変更の効力発生日から「60日以内」に申立は行わなくてはいけないのです。

さらに、この点正確には、株式併合による少数株主排除(スクイーズアウト)や、譲渡制限株式導入の定款変更の効力発生日から30日間が「株式買取価格交渉期間」とされ、その後の30日が「株式買取決定申立て期間」とされています。

株価の交渉をしていると、60日(2ヶ月)などあっという間です。
ただでもお互いの意見が割れ、協議が調いにくい株価ですが、申立の期限が定められていることが、さらに協議での株価決定のしにくさを手伝っています。

上記のことから、多くのケースではこの期限ぎりぎりではなく、かなり余裕を持って株式買取価格決定申立が裁判所へ提起されることとなります。

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価格決定裁判の「公正な価格」とは?

価格決定裁判において、決定される価格は「公正な価格」とされています。では、この「公正な価格」とは、何をもって公正としているのでしょうか?

ここでいう公正な価格とは、反対株主株式買取請求権の制度趣旨が、株式併合による少数株主排除(スクイーズアウト)や譲渡制限株式導入の定款変更から、「従前の株主の地位を保護する」という趣旨であることから、仮に株式併合による少数株主排除(スクイーズアウト)や、譲渡制限株式導入の定款変更がなかった場合に有していたであろう株式の価格(いわゆる「ナカリセバ価格」)が公正な価格と考えられています。

ただし、公正な価格については、「具体的な算出方法として会社法では特段定められていない」というのが実状です。

非上場株式・譲渡制限株式・同族株式・少数株式の株式買い取り価格の決定方法

非上場株式や譲渡制限株式、同族株式や少数株式というのは、上場企業のように判例が多いわけではなく、法令上も判例上も明らかでない部分がほとんどであるため、市場価格法による計算を行うのが困難です。

そのため、非上場株式や譲渡制限株式、同族株式や少数株式の株式買取価格につきましては、価格決定裁判において、一般的には裁判所が株価鑑定人(通常は専門の公認会計士)を指定し、その株価鑑定人が株式価値評価書を作成・提出したのちに、その金額が基準となり裁判所の判断が行われることとなります。

また、株価鑑定人はたいてい、時価純資産法と収益還元法をバランスよく使用して株式価値を評価します。

価格決定裁判は弁護士への依頼がおすすめ

価格決定裁判申立期間は「30日」ですが、価格決定裁判申立を行う場合、実はこの期間中に株主は起訴書類を作成しなくてはいけません。
そしてこの起訴書類ですが、30日で作成するというのは、素人としては非常にハードな作業となります。

膨大な手間と時間がかかり、場合によっては間に合わない可能性もあります。なんせ、期限は30日しかありません。

その点弁護士に依頼すれば、書類の作成は任せておくことができるので、自身は裁判だけに備えることができます。

また、裁判でも法の専門家である弁護士の存在は大変貴重です。的確なアドバイスを受けることが可能であり、交渉なども一任できるためです。

有利に価格交渉を行うためにも、価格決定裁判は弁護士への依頼がおすすめとなります。

反対株主の株式買取請求権を行使するまでの大まかな流れ

非上場株式・同族株式・少数株式・譲渡制限株式の株式譲渡承認請求・株式買取請求(株式譲渡制限導入定款変更)のおおまかな流れは以下のとおりです。

反対株主株式買取請求権を行使するまでの大まかな流れ

①合併や会社分割、事業譲渡、株式交換、株式移転、譲渡制限株式導入の定款変更などに対し2回の反対を行う(会社法第116条2項)

合併や会社分割、事業譲渡、株式交換、株式移転、譲渡制限株式導入の定款変更などに対し、株主総会に先立っての反対、そして株主総会での反対の議決権行使、合計2回の反対を行います。

②当該行為をする旨を通知(会社法116条3項4項)

株式会社は効力発生日の20日前までに、株主に対し当該行為をする旨を通知(又は公告)しなくてはいけません。

③株式買取請求係る株式の数を明らかにし(会社法116条5項)、株式が発行されている場合は株券を提出する(会社法116条6項)

株主は、株式買取請求を行う場合、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間にその株式買取請求に係る株式の数を明らかにしておく必要があります。

また、株券が発行されている株式である場合は、株式会社に対し当該株式に係る株券を提出しなくてはいけません。

④株式買取価格の協議、価格決定の申立(会社法117条1項2項)

株式買取請求があった場合において、株式会社と株主との間で株式買取価格の協議を行い、協議が調ったときは、株式会社は効力発生日から60日以内にその支払いをしなくてはいけません。

また、株式の価格の決定について、効力発生日から30日以内に協議が調わないときは、株主又は株式会社は、その期間の満了の日後30日以内に裁判所に対し、価格決定の申し手をすることができます。

⑤利息などの代金の支払い(会社法第117条4項5項7項)

株式会社は、裁判所の決定した価格に対する第一項の、期間の満了日後の年6分の利率により算定した利息を株主に支払わなくてはいけません。

ただし株式会社は、株式の価格の決定があるまでは株主に対し、該当株式会社が公正な価格と認める額を支払うことが可能となっています。
また、支払いを行った場合には、当該部分についての利息の支払いを行う必要はなくなります。

株式発行会社は、株券が発行されている株式について株式買取請求があったときは、株券とひきかえに、その株式買取請求に係る株式の代金を支払わなくてはいけません。

⑥株式買取請求に係る株式の買取りの効力発生日(会社法第117条6項)

株式買取請求に係る株式の買取りは、効力発生日に、その効力が生じます。

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反対株主株式買取請求は弁護士への依頼がおすすめ

これまでご説明しましたとおり、反対株主株式買取請求とは非常に難しく、複雑なものです。
会社相手の直接交渉や、株式買取価格決定申立手続き、裁判など法的知識が必要となることも沢山あります。

「素人では不可能!」とはいいませんが、多くの不明点や問題点がでてきてしまう可能は非常に高いでしょう。

しかし、弁護士に依頼することで、そのような問題も解決できます。
弁護士に依頼すれば、あとは大部分を任せておくことができますので、多くの時間を反対株主株式買取請求に割かれることもなくなります。
その間にも、自分は本業に集中することができるでしょう。

また、より有利に交渉を進めることができるようになるため、株式買取価格決定申立の手続きから裁判、株式の売却までを円滑に遂行することが可能となります。

「反対株主株式買取請求で悩んでいる」という方は、まずは気軽に法律相談を行ってみることを推奨します。

まとめ

株主にとって、株式譲渡制限導入の定款変更は見過ごすことができない事象です。
役員の任期の延長、取締役・監査役の限定化、売渡請求権の利用、株主総会招集手続きの簡略化など、株式譲渡制限導入の定款変更は様々な規定を変えてしまうため、自分が投資してきたものと全く異なる会社となってしまう可能性があります。

当然、株主は反対株主株式買取請求の行使を考慮すべきですが、会社には会社の思惑があるため、そうスムーズに株式の売却は進みません。

そこで専門家である弁護士の登場です。
法の専門家である弁護士に依頼すれば、的確なアドバイスを受けることが可能となり、大部分の手続きを任せることができます。

株主にとって、株式譲渡制限導入の定款変更や反対株主株式買取請求は、非常に厄介な悩みの種です。
それをできるだけ早く取り除くためにも、反対株主株式買取請求は弁護士へ任せることを検討してみてはいかがでしょうか?

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