前提条件|株式譲渡契約書を逐条解説!

株式譲渡契約書の逐条解説:前提条件

M&A総合法律事務所のM&A契約書類のフォーマットはメガバンクや大手M&A会社においても、頻繁に使用されています。
ここにM&A総合法律事務所の株式譲渡契約書のフォーマットを掲載しています。
M&Aを検討中の経営者の皆様でしたらご自由にご利用いただいて問題ございません。
ただし、M&A案件は個別具体的であり、このまま使用すると事故が起きるものと思われ、実際のM&A案件の際には、M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。
また、このフォーマットはM&A総合法律事務所のフォーマットのうちもっとも簡潔化させたフォーマットですので、実際のM&A取引において、これより内容の薄いDRAFTが出てきた場合は、なにか重要な欠落があると考えてよいと思われますので、やはり、実際のM&A案件の際には、M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。

⇒M&Aトラブル・表明保証違反・コベナンツ違反・M&Aの損害を解決する方法を見る!

なお、詳細な解説につきましては、以下の弊所書籍「事業承継M&Aの実務」をご覧ください。

株式譲渡契約書の逐条解説:前提条件

■■■第5条■■■■■■■■■■

第5条    (クロージングの前提条件)

1.       売主は、クロージング日において、以下の各号の事由が全て充足されていることを条件として、第3条に定める買主に対する義務(本件株式の譲渡義務)を履行するものとする。

(1)  第7条に規定する買主の表明保証の全てが、クロージング日に、真実かつ正確であること

(2)  買主が本契約上の義務について違反をしていないこと

2.       買主は、クロージング日において以下の各号の事由が全て充足されていることを条件として、第4条第2項に定める買主の義務(譲渡代金の支払義務)を履行するものとする。

(1)  第6条に規定する売主の表明保証の全てが、クロージング日に、真実かつ正確であること

(2)  売主が本契約上の義務について違反をしていないこと

第5条は、「前提条件」に関する規定である。

英語では、Condition Precedentと言い「前提条件」と直訳される。

(1) 前提条件について

本条1項では、売主の義務(対象会社の株式の譲渡義務)に関する「前提条件」が規定されている。したがって、売主は、本条1項に規定されている「前提条件」が満たされた場合のみ、株式譲渡の実行義務を負うのである。

本条2項では、同様に、買主の義務(株式譲渡の譲渡代金の支払義務)に関する「前提条件」が規定されている。また、同様に、買主は、本条2項で規定されている「前提条件」が満たされた場合のみ、株式譲渡の譲渡代金の支払義務を負うのである。

本条に規定された「前提条件」は、(1)と(2)の2つであるが、多数の前提条件を規定することも多く、本条は、最も少ない数の「前提条件」であり、①表明保証がすべて真実かつ正確であること、及び、②当事者が本契約上の義務について違反していないことのみが規定されている。

「前提条件」が充足されない以上、株式譲渡契約の相手方は、自らの義務を履行してくれないのであり(売主は株式を譲渡してくれないのであり、買主は譲渡代金を支払ってくないのであるから)、当事者としては、何とかして相手方の要請する「前提条件」を充足させることが必要となる。

(2)前提条件の放棄について

なお、「前提条件」は、いずれも当事者の義務の「前提条件」であるから、その相手方が「前提条件」の全部又は一部が充足されていない場合、その「前提条件」を放棄して、相手方が「前提条件」を充足していないにも拘らず、自ら自分の義務を履行することは禁止されない。

この点、この趣旨を明らかにするために、本条に「なお、クロージング日において以下の各号の事由の全部又は一部が充足されていない場合には、買主は、その任意の裁量により、かかる事由のいずれも放棄して第4条第2項に定める義務を履行することができるものとする。」と規定する場合もある。

なお、通常は、当事者が「前提条件」を放棄した場合、相手方としては、その「前提条件」を永久に充足せずに放置してよいかという問題が生じるものの、当事者としては、本来であれば、「前提条件」を放棄する際に、相手方と協議し、その「前提条件」に関して、永久に充足する必要がないのか、今後速やかに充足する必要があるのか、取り決めをするべきである。すなわち、そのような取り決めを行わずに一方的に「前提条件」を放棄してしまった場合、相手方は、もうその「前提条件」は永久に充足しなくても良いものと考える可能性が高い。

しかし、たいていの場合は、当事者が「前提条件」を放棄したとしても、それはその当事者の好意で「前提条件」を充足していないにも拘らず株式譲渡を実行してくれたのであり、「前提条件」を充足する義務を永久に無しにするものではなく、最終的に、相手方が「前提条件」を充足できず、それが株式譲渡契約書場の表明保証違反や義務違反を構成する場合は、相手方が損害賠償責任を負うものと解釈することが当事者の合理的意思である解釈できるため、そのように放棄された「前提条件」は、基本的に、クロージング後、可及的速やかに充足されることが求められると考えるべきである。

ただ、放棄された「前提条件」は、永久に充足する必要がないのか、可及的速やかに充足する必要があるのか、いずれなのかということで紛争化することを避けるためにも、の趣旨を明らかにするために、本条に、「なお、クロージング日において以下の各号の事由の全部又は一部が充足されていない場合には、買主は、その任意の裁量により、かかる事由のいずれも放棄して第4条第2項に定める義務を履行することができるものとする。」に続けて、買主による前提条件の放棄は、損害賠償又は補償請求権を放棄する趣旨ではない旨を規定することもある。

(3)前提条件と遵守条項について

その他、前提条件としては、対象会社の取締役会又は株主総会において、本件株式譲渡に関する譲渡承認決議が行われることを規定することもある。ただし、対象会社の株式譲渡承認を取得することは、株式譲渡契約書上の義務として、通常、別途、遵守条項として規定され、かつ、(2)の「売主が本契約上の義務について違反をしていないこと」は、通常、株式譲渡の「前提条件」として規定されるので、本件株式譲渡に関する譲渡承認決議が行われることについては、「前提条件」として殊更に規定しなくても、いずれにしろ株式譲渡の実行の「前提条件」となるため、敢えて、「前提条件」として規定する必要性はあまりない。

ただ、相手方に対して、その「前提条件」の充足を特に念を押す必要があるような場合や、その「前提条件」を充足することを重視していることを印象付ける必要がある場合には、屋上屋を重ねることとなるものの、表明保証や遵守条項して規定されているものを、重ねて「前提条件」にも盛り込むことがある。

その他、「前提条件」としては、株式譲渡を実行することにより、許認可が失効するような場合、許認可の再取得を「前提条件」として規定することや、いわゆるチェンジ・オブ・コントロール条項(COC条項)(事業承継M&Aが実行され、対象会社の支配権が変更になったような場合に解除事由などが発生する取引先等との取引契約における条項)との関連で、取引先等の事前承諾を取得することなど、敢えて、「前提条件」に明記することがあるものの、通常このような内容は、株式譲渡契約書に遵守条項としても規定されるため、やはり屋上屋を重ねて強調することにより、重ねて「前提条件」にも盛り込んでいるものといえる。

その他、取締役会又は株主総会の株式譲渡の譲渡承認決議の取得や、許認可の再取得、いわゆるチェンジ・オブ・コントロール条項(COC条項)に関する取引先等の事前承諾お取得などについて、遵守条項には規定しないものの、前提条件には規定する場合がある。このような場合は、買主としては、それらの条件を充足しなかった場合、売主に対して、損害賠償責任・補償責任は追及しないものの、前提条件に抵触するとして、株式譲渡を実行しないという強い意志の表れとも考えられるし、買主としては、クロージングに際しては、前提条件の充足については、柔軟に対応しようとする意図であるとも考えられる。

(4)独占禁止法上の企業結合の届出について

その他、M&Aの株式譲渡契約書の株式譲渡や事業譲渡契約書の事業譲渡の「前提条件」としては、独占禁止法上の企業結合の届出を行い、かつ待機期間(原則として30日)を経過していることを規定することも多くあるものの、事業承継M&Aにおいては独占禁止法上の届け出が求められるような取引(原則として、買主の売上が200億円超かつ対象会社の売上が50億円超(事業譲渡の場合は売上が30億円超)の場合)、は多くは存在しないため、ここでは説明を割愛する。

⇒M&Aトラブル・表明保証違反・コベナンツ違反・M&Aの損害でお困りの方はこちら!

お問い合わせ   

この記事に関連するお問い合わせは、弁護士法人M&A総合法律事務所にいつにてもお問い合わせください。ご不明な点等ございましたら、いつにてもお問い合わせいただけましたら幸いです。

    ■対象金額目安

    ■弁護士相談料【必須】

    ■アンケート

    >お気軽にお問い合わせください!!

    お気軽にお問い合わせください!!

    M&A相談・株式譲渡契約書・事業譲渡契約書・会社分割契約書・デューデリジェンスDD・表明保証違反・損害賠償請求・M&A裁判訴訟紛争トラブル対応に特化した弁護士法人M&A総合法律事務所が、全力でご協力いたします!!

    CTR IMG