遵守条項|株式譲渡契約書を逐条解説!

株式譲渡契約書の逐条解説:遵守条項

M&A総合法律事務所のM&A契約書類のフォーマットはメガバンクや大手M&A会社においても、頻繁に使用されています。
ここにM&A総合法律事務所の株式譲渡契約書のフォーマットを掲載しています。
M&Aを検討中の経営者の皆様でしたらご自由にご利用いただいて問題ございません。
ただし、M&A案件は個別具体的であり、このまま使用すると事故が起きるものと思われ、実際のM&A案件の際には、M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。
また、このフォーマットはM&A総合法律事務所のフォーマットのうちもっとも簡潔化させたフォーマットですので、実際のM&A取引において、これより内容の薄いDRAFTが出てきた場合は、なにか重要な欠落があると考えてよいと思われますので、やはり、実際のM&A案件の際には、M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。

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なお、詳細な解説につきましては、以下の弊所書籍「事業承継M&Aの実務」をご覧ください。

株式譲渡契約書の逐条解説:遵守条項

■■■第8条■■■■■■■■■■

第8条   (クロージングまでの誓約事項)

1.       売主は、本契約締結日以降、クロージングまでの間、対象会社をして、善良なる管理者の注意をもって、本契約締結日以前と実質的に同一かつ通常の業務の方法により、業務の執行及び財産の管理・運営を行わせしめるものとし、買主の事前の書面による承諾のある場合を除き、通常の業務以外の重要な業務執行を一切行わせしめてはならないものとする。

2.       売主は、本契約締結日以降、クロージングまでの間、対象会社に関して、訴訟、法令違反、その他事業、資産、負債、財務状態、経営成績、キャッシュフロー又は将来の収益計画に重大な悪影響を及ぼすおそれのある事由又は事象が生じた可能性を認識した場合には、直ちに買主に対してその報告を行うものとする。

第8条以下は、いわゆる遵守条項である。

英語ではCovenants(コベナンツ)と言われ、株式譲渡契約書を構成する主要な項目の一つである。

遵守条項とは、売主又は買主候補会社が、事業承継M&Aに際して、相手方に対して約束し遵守する事項である。

(1) 善管注意義務の遵守条項について

本条1項は、株式譲渡契約書締結日からクロージング日までの間、売主に、対象会社の経営に関して、善管注意義務違反を負わせる遵守条項である。

すなわち、買主は、株式譲渡契約書の締結日の直前まで、対象会社についてデューデリジェンスを行い、その結果を踏まえて企業価値を算定し、それに基づいて株式譲渡価格を決定し、株式譲渡契約を締結するのであるから、株式譲渡契約の締結日以降、売主が、対象会社の企業価値を変動させるようなことをするようでは、株式譲渡価格の前提が崩れてしまうのである。であるから、買主としては、株式譲渡契約の締結日以降、対象会社の企業価値を変動させるようなことを禁止する必要があり、売主に対して、その間、対象会社の経営に関して、善管注意義務を規定しているのである。

勿論、買主が事前に承諾したことであれば、企業価値を変動させるような業務運営を行っても問題はない。買主もそれを前提として企業価値を計算し、株式譲渡代金を決定しているのであり、また、そうでなくても、承諾をする前提条件として、売主と別途合意し、買主が想定外の損失を被らないよう、何らかの施策を要求したり、株式譲渡価格の変更を要求したり、買主の株式譲渡価格の前提が崩れない対策が可能である。

(2) 追加デューデリジェンスの必要性について

このような善管注意義務の遵守条項を規定していても、売主や対象会社のこの善管注意義務違反が行われることはあり、買主は、株式譲渡のクロージングの直前まで、対象会社について、デューデリジェンス情報をアップデートする必要がある。

すなわち、買主は、デューデリジェンス完了から、株式譲渡契約締結日までに、一定の期間が空いてしまったような場合、株式譲渡契約締結の直前に、追加デューデリジェンスを行うことで、対象会社の企業価値を変動させる事項が発生していないかを最終的に確認する必要がある。

また、デューデリジェンス完了(又は株式譲渡契約書の締結)からクロージングまでの間に、一定の期間が空いてしまったような場合、クロージング直前に、対象会社の企業価値を変動させる事項が発生していないかを、最終的に確認する追加デューデリジェンスを行うこともある。

通常、株式譲渡契約書の表明保証には、売主は買主に対して対象会社に関する重要な事項はすべて開示した旨の表明保証(完全開示条項)が規定されることから、対象会社の企業価値を変動させる事項が発生していたにも拘らず、売主が買主に対してその事実を開示しなかった場合には、売主は買主に生じた損害について、損害賠償責任・補償責任を負担することとなるが、事後的に表明保証違反の事実を発見して、売主に対して、損害賠償請求・補償請求するのでは、救済が十分ではなくなる可能性もあり、追加デューデリジェンスによって、クロージング前に表明保証違反などの事実を確認し、未然に対応をすることが好ましい。

(3) 後発事象の通知義務について

本条2項には、同様の趣旨から、売主が、対象会社の企業価値を変動させる事項(後発事象)を認識した場合の、買主への通知義務が規定されている。

この規定は、対象会社の企業価値を変動させる事項(後発事象)が発生している場合は、買主としては、その事実を踏まえて、売主に対して、対象会社の企業価値の毀損させる事項(後発事象)の発生により、買主が想定外の損失を被らないよう、何らかの施策を要求したり、株式譲渡価格の変更を要求したり、あるいはそもそもこの株式譲渡を取りやめるか否かを検討することができる機会を与えるための規定である。

しかし、このように対象会社の企業価値を変動させる事由が発生したとしても、それに応じて、株式譲渡価格を変更することは、その旨の当事者の合意がなければ不可能である。そこで、株式譲渡契約書に、そのような対象会社の企業価値を変動させる事由が発生した場合、株式譲渡価格について再交渉することができる規定を盛り込むこともある。また、そうでなくても、株式譲渡価格の変更を要するような重要な事項が発生したのであれば、表明保証条項やその他の遵守条項に違反することとなることが多いと思われ、また、特に、通常、株式譲渡契約書の表明保証条項には、売主は買主に対して対象会社に関する重要な事項はすべて開示した旨の表明保証(完全開示条項)が含まれることからも、買主は、売主に対して、いずれかの方法により、損害賠償責任・補償責任を追及することができ、それにより、実質的に、株式譲渡価格を減額することができ、また、株式譲渡契約書の前提条件や解除条項に基づき、事業承継M&Aの取り止めをすることもできる。また、そうであるからこそ、このような場合、売主は、通常、株式譲渡価格の再交渉などに応じざるを得ないということとなる。

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