遺産分割協議の内容に納得できない!

財産を所有している人が亡くなると、その亡くなった人が所有していた財産などの遺産の相続が発生します。遺産の相続の仕方には、一般的に3つの方法があるのですが、そのうちの1つが遺産分割協議と呼ばれる方法です。

遺産分割協議は、ごく簡単に言うと、亡くなった人が所有していた財産などの遺産を、その相続人全員で話し合って、遺産の分割方法を決めるやり方です。相続人全員で話し合いをして、全員が納得できる遺産の分割方法が決まれば問題がないのですが、なかなかそのようにいかない場合もあります。

今回は、このように遺産分割協議に納得できない場合にどのようにすればよいのかについて、徹底的に解説してみようと思います。

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1.遺産分割協議とは

前述のとおり、遺産の分割の方法は、3つあります。そのうちの1つが遺産分割協議です。では、まず、遺産の相続について理解をするために、その3つの遺産の分割方法について、どのようなものなのかを見ていきましょう。

遺言書による相続

1つ目は、遺産の相続方法について、亡くなった人(被相続人)の遺言書に従う方法です。遺言書には一般的に、自分で書く「自筆証書遺言」と公証役場で公証人の指導の下で作成する「公正証書遺言」の2つがあります。いずれにしても、「遺言書」には、被相続人が考えた遺産の分け方が書かれています。その分け方は、被相続人の遺志とも言うべきものです。従って、「遺言書」がある場合には、一般的に、相続人はそこに書かれている遺産の分割方法を尊重して、それに従って遺産を分割して、相続することになります。

民法に従う相続

2つ目は、民法に書かれている遺産の分け方に従う方法です。民法に書かれている分け方に従って遺産を分けるときの割合を「法定相続分」と言います。

例えば、父親が亡くなり、相続人が母親、長男、次男の3人だとします。このような場合、民法では、法定相続分は、配偶者(母親)に相続財産の2分の1、子どもたち(長男、次男)に2分の1と定められています。また、さらに、子どもたちは相続財産を等分すると民法では規定されているので、長男、次男ともに2分の1の半分の4分の1が法定相続分となります。この方法によって遺産を分割することは、法律に定められた方法ですので、被相続人の「遺言書」がない場合には、相続人全員が納得しやすい方法であると考えられます。また、相続人間のトラブルも発生しないことが多いように思えます。ただ、家や土地など、そもそも分けることが難しい財産もありますから、そのような場合には、結局話し合いが必要になってくることがあります。

遺産分割協議による相続

3つ目の方法として、相続人全員で話し合いを行い、遺産の分割方法を決める方法があります。これを「遺産分割協議による相続」と言います。被相続人の遺産の分割方法について相続人全員で話し合い、全員が納得できる遺産の分割方法が決まれば、「遺産分割協議書」を作ります。遺産分割協議書には、被相続人の遺産を列記し、それぞれ誰がどのような割合で相続するかを記載し、最後に相続人全員が署名、押印します。押印は、市区町村に届け出ている実印を押し、「印鑑証明書」を添付します。なお、全く相続しない相続人がいても、その人の署名、押印も必要です。なぜなら、「全く相続しないということに合意した」という証拠が必要だからです。このように、相続人全員で被相続人の遺産の分割の方法を決めることを遺産分割協議と言います。

これまで見てきた通り、遺産分割協議は、相続の方法のうちの1つです。被相続人の遺言書がない場合には、まず、その遺産の分割方法を民法で定められている法定相続分によって分割をするのか、相続人全員での協議による遺産分割協議によって分割するのかを決める必要があります。次に、遺産分割協議による分割をすることになった場合には、相続人全員で遺産の分割方法について協議をします。そして、遺産の分割方法を決めて、その結果について相続人全員が納得した場合には、遺産分割協議書を作成して、遺産の分割をすることになります。

2.遺産分割協議の内容が不平等であり納得いかない場合、どうすればよいのか?!

ここまで見てきたように、被相続人の遺言書がない場合に、その被相続人の遺産の分割方法を相続人全員で協議によって決める方法が遺産分割協議による相続です。相続人全員によって遺産の分割方法や割合が決まるので、その結果に全員が納得できれば、円満な解決方法と言えます。

しかし、相続人のうちの一人でも、自分の主張を譲らなければ、協議は整わないことになります。また、相続人のなかに強引な人がいて、自分に有利な分割方法で決めるようとすると、その他の相続人の人は、不平等だと感じたり、納得がいかなかったりするようなことになります。

そのような場合には、弁護士に相談するのが良い結果に結びつくことが多いです。なぜなら、弁護士は、まず、法律的な知識が豊富です。さらに、これまでに取り扱った遺産分割協議についての経験もあります。多くの相続人にとって、遺産分割協議は何度もあるようなことではないので、ほとんど経験がないのに対して、このような法律的な事案を取り扱うのがプロである弁護士は、みんなが納得できる分割方法についての知識や経験もたくさん持っています。さらに、遺産分割協議がまとまらず、調停や裁判に至った場合の裁判所などの判断の傾向などについても、よく理解しているので、最終的にどのような判断になる可能性が高いかについても予測ができます。

このようなことから、遺産分割協議の内容が不平等であり、納得いかないような場合には、弁護士に相談すると相続人全員が納得できる円満な解決に結びつく可能性が高くなります。よって、このような場合には、是非一度、弁護士に相談されることをお勧めします。

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3.遺産分割協議書に押印してしまった場合のデメリット

相続人全員が協議をして、全員が納得できる遺産の分割方法を決めることができると、遺産分割協議書を作成することになります。この遺産協議書は、相続人全員が署名・押印して完成します。しかし、押印する前に、押印してしまった場合のデメリットについて考えてみましょう。

3.1署名・押印してしまったら、取り消すことは困難

遺産分割協議書に署名・押印してしまうということは、その遺産分割協議書に書かれている遺産の分割方法について納得し、承諾したことになります。よって、後でその分割方法について納得できなくなって、取り消そうと思っても、取り消しは極めて困難になります。さらに、その遺産分割協議書の内容に基づいて、実際に不動産の相続登記(名義変更)が完了してしまうと、民法の規定上も取り消しがほとんど不可能な状態となってしまいます。

判例として、内容に不備の無い遺産分割協議書に、間違いなく実印を押印し、印鑑登録証明書も添付しているという場合には、多くの裁判例で遺産分割協議の無効が否定されています(東京地裁平成27年1月28日)。すなわち、後でよくよく考えたら納得できないので取り消そうと思っても、取り消すことは非常に困難だということです。

そのため、遺産分割方法などについて、少しでも不安なことや疑問があるのであれば、遺産分割協議書に署名・押印をする前に弁護士などの専門家に相談することをお勧めいたします。

3.2遺産分割のやり直しができる場合

前述したとおり、遺産分割協議書が作成された場合には、基本的にはそのやり直しはできませんが、次のような場合には、やり直しができるとされています。

財産の漏れなどがあった場合

遺産分割協議書作成時に、重大な財産の漏れがあり、「その遺産の存在が分かっていたら遺産分割に合意しなかったであろう」と認められる場合などには、相続人は「錯誤無効」を基にその遺産分割協議の無効を主張できます(民法95条)。その場合、遺産分割協議書は無効になるのでやり直しが可能です。

詐欺、強迫による場合

相続人のうちの誰かが相続財産を故意に隠していたため、他の相続人が被相続人の遺産について勘違いをした状態で遺産分割協議がまとまってしまった場合や、遺産分割協議の際に、強迫(脅迫)が行われて、恐怖した相続人がやむなく遺産分割協議に応じた場合などには、だまされたり脅されたりした相続人が遺産分割協議を取り消すことができます。その場合、遺産分割協議は無効になるので、やり直しが可能になります。

やり直しに全員が合意した場合

無効や取消の理由がなくても、相続人全員が遺産分割のやり直しに合意した場合には、当然、再度の遺産分割協議が可能です。

4.弁護士に遺産分割協議を依頼することのメリット

これまで見てきたとおり、遺産分割協議は、相続人だけで行うことも可能です。しかし、法律の素人である相続人のみで遺産分割の協議内容を決めると、「これで本当に正しいのか?」と不安になったり、「誰かが不当に得をしているのではないか?」と思ったりするようなことが起こり得ます。そんな時には、法律プロである弁護士に遺産分割協議を依頼することをお勧めします。弁護士に遺産分割協議を依頼すると次のようなメリットが考えられます。

法的なアドバイスを受けられ、正しく反論できる

遺産分割協議では、他の相続人が無茶な請求をしてきてトラブルになるケースがよくあります。自分では相手の相続人の言い分が正しいのかどうかわからなくても、弁護士に聞けば相手の相続人の言っていることが法律的に合っているのか間違っているのかが明らかになります。そんな時には、法律的に正しく反論できるので、相手の相続人の不当な言い分を受け入れて、不利な結果になるのを防ぐことができます。

遺産の調査を依頼して遺産隠しを防止できる

他の相続人が被相続人の預貯金などの遺産を隠しているために、遺産分割協議を正しく進められないケースがあります。そんなとき、弁護士に相談して被相続人の遺産の調査をしてもらうと、隠されていた遺産が明らかになり、遺産隠しを防止できる可能性があります。

代理人になってもらい、有利に交渉を進められる

相続人だけで話し合いを進めると、お互い近い関係だけに、感情的になって遺産分割協議が進まないケースがあります。そこで、弁護士に代理人になってもらえば、他の相続人も冷静になりますし、法律的な考え方をベースに適正な方法で交渉を進めることができます。また、他の相続人よりも法律的に強い立場になれますので、自分に有利に交渉が進められます。

遺産分割協議書の作成やその後の手続きも依頼できる

相続人全員が納得をし、遺産分割協議が成立したら、「遺産分割協議書」を作成しなければなりません。そして、その後、預貯金の払い戻しや相続登記など、実際に遺産を分割するための手続きも必要です。弁護士に依頼すれば、こうした手続きの対応もまとめて依頼できるので、手間を省くことができます。

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5.遺産分割の手続きの流れ

ここまで、遺産分割協議とはどのようなものかについて、詳しく見てきました。しかし、実際に遺産分割協議をするときには、具体的にどのような手続きをしなくてはならないのでしょうか?次に、遺産分割協議の実際の手続きの流れについて、見ていきましょう。

遺産分割協議で大切なのは、いきなり、だれが何を相続するのか?という最終結論からスタートしないことです。キチンと順を追って手続きを進める方が、結果的にスムーズに協議が進みます。

相続人の範囲の確定

まず、遺産分割手続きに参加できる相続人は誰かを確定します。必ず戸籍をたどり、相続人の範囲を確認しましょう。戸籍をたどると、被相続人と別の異性との間に子供がいた、というような事実が、出てくることがあります。相続人かどうかで争いがある可能性があるときは、まず、この点を確定しないと次の段階には進めません。また、あとから別の相続人がいたことが判明すると、せっかく合意した遺産分割協議が無効になってしまうこともあります。ですから、まず相続人の範囲をキチンと確定する必要があります。

この段階で相続手続きから脱退したいという人は、相続の放棄、相続分の放棄、相続分の譲渡の手続きをとります。

遺言書の確認

次に被相続人の遺言書が存在しないことを確認します。被相続人の遺言書があれば、遺言書が相続人による遺産分割協議に優先することになります。被相続人の遺言書がある場合には、被相続人の遺言書によって相続が定められた以外の財産について遺産分割協議をすることになります。

公正証書遺言については、最寄りの公証人役場で検索をすれば、全国の公証人役場に届け出されている公正証書遺言を調べることができますが、自筆証書遺言は、被相続人が自ら書いてどこかに保管しているか、誰かに預けているのが不明な場合、検索をして調査する方法がありません。それでも、思い当たるところをあたって、被相続人の遺言書がなかったのかどうか確認しておく必要があります。

遺産の範囲の確定

この遺産分割協議でどの遺産を協議して分割するのかを確定します。被相続人の遺産のうち、不動産は、名寄せで確認出来ます。しかし、銀行などに預けている預金などは、金融機関に対し、相続人として調査するしか確認する方法はありません。またその預金などが被相続人の遺産か否かで争いがある場合は、この点でまず相続人全員が合意できないと、次の段階には、進めません。

遺産の評価

分割対象の被相続人の遺産の評価を決めます。不動産は、相続人全員が、相続税評価額あるいは固定資産評価額で評価するなどと、価格合意できればその価格によります。

しかし、相続人の一人でも時価を主張すれば、不動産仲介業者などから複数の情報を取り寄せ、そのなかでどのような額を時価とするのか合意に努力するしか方法はありません。

被相続人の財産に非上場株の株式などがある場合は、時価評価が難しく、相続税評価額で評価するしかないと思われます。ただ、それでも、税法が認めた評価方式のうち、どの方法をとるかで、相続人全員の合意をすることが難しい場合もあります。遺産の評価について、相続人全員で合意をしないと次の段階には、進むことができません。

分割基準の決定

分割基準は、民法で定められている法定相続分を原則とすることが通常ですが、もちろん、当事者間の協議で自由に分割基準を定めることも可能です。

まず、相続人の中に生前被相続人の面倒を見ていたなど、特別寄与や特別受益がある相続人がいるときは、その内容について確定し、具体的相続分を算定します。そして、それ以外の遺産総額×各人の相続割合で、相続人各人が取得できる財産額を数値化します。分割基準で相続人全員の合意がないと次の段階には進めません。

遺産の割り振り

この段階で、ようやく相続人各人が取得希望する財産を確定することができます。相続人各人が取得できる財産額と取得希望の財産を比較し、取得できる財産額が取得希望の財産の額より少ないときは、多い相続人から代償金をもらいます。逆に取得できる財産額が取得希望の財産より多いときは、少ない相続人へ代償金を支払います。

遺産分割協議書の確定

これまでの段階を踏んで、最終的に相続人全員が納得し、無事に遺産分割協議の話がついたら、相続人全員で遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・押印して協議書を完成させます。

このように、遺産分割協議の実際の手続きは、非常にたくさんの複雑な段階を踏んで進める必要がありますので、できれば、弁護士に依頼した方が、間違いがなく、賢明でしょう。

6.遺産分割調停や遺産分割審判で解決!

6.1遺産分割調停の申し立て

これまで見てきた通り、遺産分割協議は、相続人全員で話し合い、全員が納得できる結論に至る必要があります。よって、一人でも反対の相続人がいたら、遺産分割協議は不成立になります。相続人は、基本的には被相続人の親族ということがほとんどですので、色々な意見や主張があっても、どこかで落しどころを探りながら、最後には合意するケースが多くなります。いつまでも、遺産の分配方法で揉めていると、その後の人間関係にも影響が出るからです。

しかし、どうしても相続人同士では遺産分割協議の折り合いがつかず、らちが明かないこともあります。そのような時は、遺産の分割方法に納得できない相続人が、家庭裁判所に対して、調停を申し立てることができます。これを「遺産分割調停」と言います。

ただ、家庭裁判所の調停は、裁判所に申し立てると言っても、基本的には相続人同士の話し合いには違いありません。つまり、裁判所に場所を移して遺産分割協議の話し合いを継続したということになります。もっとも、この遺産分割調停の場には、調停委員という人がいて、専門家の立場から出席者の意見を聞いて、話し合いの争点をまとめ、円滑に話し合いが進められるようにします。

遺産分割調停の申し立てをするためには、「5.遺産分割手続きの流れ」で示したような、「相続人の確定」や「遺産範囲の確定」をし、裁判所によって定められた書類を準備したうえで、被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所に調停を申し立てます。

このように遺産分割調停の申し立てには、さまざまな調査や書類の作成・準備が必要となりますので、できれば、弁護士に依頼した方がよいと思われます。

6.2遺産分割調停での話し合い

遺産分割調停が申し立てられた後は、家庭裁判所から調停の日時の案内が送られてきます。この日に、原則的に相続人全員が家庭裁判所に集まり、家庭裁判所の調停員を介して、遺産分割の話し合いが進められることになります。話し合いの内容は、相続財産の評価、特別受益や寄与分の有無、相続財産をどのように分配するかなど、遺産分割全般に関することです。調停は一回で終わることはあまりなく、日を置いて二回、三回と続きます。この間に相続人全員が納得し、遺産分割協議が調えば、調停は終わります。しかし、数回調停を重ねても、協議が調わなければ、次の段階の「審判」へと進んでいくことになります。

6.3遺産分割調停の審判

調停を数回重ねても話し合いがつかなければ、次に「審判」の手続きに進んでいきます。審判では、家庭裁判所の裁判官が、調停での協議を基に、判断を下します。つまり、調停でどのようなことが話し合われたが重要になってきます。審判を下す裁判官は一般的に調停に参加することは少なく、調停でどのようなことが話し合われたかを調停委員から報告を受けて判断することになります。

弁護士にサポートを依頼していると、調停の場での弁護士がついていた相続人の主張は、きちんとした法的な根拠があるので、審判でも有利に働くことになります。ですから、最終的に審判まで進むことも考えた場合、遺産分割調停においては、弁護士にサポートを依頼する方がよいでしょう。

審判では、裁判官が遺産の分割方法について判断することから、相続人が望んでいた解決とは異なる判断がされる可能性があります。審判手続は裁判所が遺産分割方法を決定しますので、その内容に納得できない場合があるかもしれません。その場合、遺産分割審判の決定内容については、即時抗告という方法で不服を申し立てることができます。ただ、即時抗告の申し立ては、原審の審判書を受け取ってから2週間以内に、家庭裁判所に即時抗告申し立て書を提出して行わなければなりませんので、提出期限については注意してください。即時抗告をした場合でも遺産の分割方法については裁判所が判断することになりますので、遺産の分割を柔軟に行うためには、調停の段階において相続人間でしっかりと話し合うことによって解決することが望ましいとも言えます。

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