中国で裁判にすべきか仲裁にすべきか?

中国で裁判にすべきか仲裁にすべきか

中国における紛争解決の手段としては、『訴訟』と『仲裁』があります。
『訴訟』とは、裁判所における紛争解決手段であり、『仲裁』とは仲裁機関における紛争解決手段です。

中国の仲裁機関としては、国際取引では中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC)が最も有名ですが、その他にも多くの仲裁機関があります。
日本の仲裁機関としては、国際取引では一般社団法人日本商事仲裁協会が有名です。
いずれも裁判所のような国家機関ではなく半民間のような組織です。

日本において仲裁は一般的ではないですが、欧米や香港・シンガポールなど海外ではかなり普及しており、日中間の取引では、香港やシンガポールなどの仲裁機関が使用されることもありますし、イギリスの仲裁機関が指定されることもあります。

現在のところ、日本と中国の両国間に相手国裁判所の判決の執行を認める国際条約がありませんので、日本の裁判所の判決を中国で執行することはできませんし、中国の裁判所の判決も日本では執行されません(なお、欧米各国や韓国の裁判所の判決は日本で執行可能です)。

https://tokyo-malaw.jp/lps/oversea_kaisyu/

他方、仲裁機関の仲裁判断は、ニューヨーク条約加盟国であれば、同条約(外国の仲裁裁決を承認・執行する条約。当該条約の加盟国は、仲裁判断の執行に協力する義務が課されている)により、国内での執行を認めており、日本も中国もニューヨーク条約加盟国であることから、日本の仲裁機関の仲裁判断も中国で執行することができますし、海外の第三国の仲裁機関の仲裁判断も同様であることから、日中間の取引では、多くの場合、紛争解決手段として、訴訟ではなく仲裁が選択されています。

なお、紛争解決手段として仲裁を選択する場合は、事前に契約書で仲裁合意しておく必要があります。
そのような仲裁合意がない場合、紛争が生じてから、一方的に紛争解決手段として仲裁を選択することできません。

その他、日中間の取引で仲裁が選択される理由としては、従来からある中国の裁判所の『地方保護主義』の弊害や、裁判官の質の低さから、日系企業は中国での裁判には勝てないというイメージが強いことが挙げられます。
ただ、近年、中国の裁判官の質も向上しており、状況は刻々と変化しております。
また、『地方保護主義』の弊害の少ないと思われる地域、たとえば北京や上海などで契約を締結した上で、契約締結地の裁判所を管轄裁判所に指定するという対策を講じることも可能です。

また、仲裁機関として、海外の第三国の仲裁機関を選定した場合、双方が海外の第三国まで行って仲裁手続きを行うことは非常に負担が伴います。海外の第三国まで行って仲裁を行うくらいであれば負担が大きいのでそもそも手続を行わないという経営判断を行うことも多く、仲裁合意は、日本企業の権利の救済に役立たない場合も多くあります。

また、現実的にも、海外の第三国の仲裁機関で、中国の法律に基づいて仲裁判断を行うとなると、ほとんど審理が不可能であり、そうでなくとも非常に費用が掛かることとなります。これは日本の仲裁機関において審理を行う場合も同様です。

仲裁合意においては、使用言語も決める必要があります。日本の仲裁機関において、中国の法律に基づいて、英語を使用して審理を行うということとなると、やはり日本企業にとって非常に負担の重い手続となります。

また、中国において外国の仲裁機関が下した仲裁判断を執行するためには、中国の裁判所に仲裁判断の執行を申し立てる必要がありますが、日本語または英語で仲裁判断が出ている場合、日本企業にとってまた手続負担が重くなります。

また、日本企業の中国現地子会社と中国企業との取引上の紛争は、純粋に中国法の適用のある中国国内問題であり、外国の仲裁機関が判断するのには限界もありますし、手続負担やコスト負担が重くなりますし、そもそも、中国企業から日本または海外の第三国の仲裁機関を使用することに関する仲裁合意を得ることも非常に困難です。

そのような理由で近日、日本企業と中国企業との間の取引における紛争解決手段として、中国の仲裁機関や、更には中国の裁判所を選択することが多くなってきています。

中国の裁判所(人民法院)は二審制であり、三審制の日本とは異なり最高裁判所に相当するところでの審理はありません。
審理は原則として6ヶ月以内に終了しなければならないとされており、訴訟運用に裁判所(人民法院)の指導がかなり発揮され職権的な手続きとされています。
制度上も証拠提出期限が厳しくされており、証人尋問よりも書証・書面・契約書などによる証明を重視しています。

いずれにしろ中国で裁判・訴訟・仲裁手続きを提起する場合は、中国専門弁護士と中国弁護士(律師)とともに、中国の現地(北京、大連、上海、広州、成都その他、中国の各地域)において、訴訟・仲裁手続きへの対応、訴訟・仲裁手続きの提起、強制執行などを含め対応する必要があります。

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