中国からの撤退に伴い生ずる問題!

中国からの撤退に伴い生ずる問題

中国からの撤退は困難であり、日本企業が中国から撤退する場合、実務上さまざまな問題が発生します。
従業員に対する多額の経済補償金、労使紛争や知的財産の保護、多額の租税債務・関税債務の発覚、中国人責任者の不正の発覚などの法的問題や手続上の困難が生じる可能性がありますので、専門家による支援が必要となります。

優遇税制により享受した利益の返還の問題

まず、会社設立以降、10年を経過していなければ、優遇税制の適用を受けていると思います。通常であれば、課税所得が発生した事業年度から「2免3半」(2年間課税免除及び3年間課税半額)の優遇税制を享受していると思いますが、中国撤退をする場合は、過去に遡及して課税所得が発生した事業年度から2007年までは30%、2008年以降は20%の剥奪課税(クロー・バック)を求められます。

税務当局・関税当局による税務調査の問題

また、中国では、租税債務・関税債務を支払うことなく会社を解散・清算することはできません。

また、関税当局より、税関調査が行われ、追徴課税が行われることが多くなっています。また、企業所得税(法人税)、個人所得税、営業税・増値税(消費税)等に関して、税務当局による税務調査も行われます。

会社清算の際には、税務当局や関税当局も会社を精査しますので、思わぬ多額の租税債務や関税債務が発覚し、巨額の追徴課税がなされることも有ります。税務調査を行えば、大抵の場合、何らかの追徴課税がなされ、追徴時には、延滞税・加算税も貸されることになります。

また、特に、税務調査の結果、中国人管理職のインマイポケットや出入りの業者からのキックバック又は横領・横流しなどの不正が発覚することも多くなっています。

中国人労働者の取扱いの問題

特に、中国人労働者に対して、労働契約法の関係で、解雇に際して、経済補償金を支払う必要があります。

経済補償金は、勤続年数1年につき1ヶ月分(勤務年数が6ヶ月以上1年未満の者については1ヶ月分、6ヶ月未満の者は半月分)の賃金相当額を支給しなければならないとされています。

なお、中国撤退の際の経済補償金は、実際にはこの1.2倍~2.0倍くらいの水準で労使間交渉が妥結するケースが多いと思われます。

中国人労働者の解雇の場合、労働者のデモ、座り込み、暴動・破壊、現地責任者の監禁などへ発展するケースも散見されますので特に注意が必要です。特に、中国撤退の手続に入る前に情報が漏洩したりすると、いきなり労働組合が動き、暴動等へ発展することもありますので、情報管理が重要となります。

特に、従業員の関係では、人員整理・解雇の際に、従業員側の大きな抵抗に遭遇することが多くなっています。
雇用問題は、中国政府や地方政府が非常に気にするところであり、日本企業も人員整理・解雇の際に、中国政府や地方政府から指導を受けることも多くなっています。
また、人員整理・解雇自体、従業員から思わぬ反発を受けないよう、専門家と綿密に相談したうえで計画的に行う必要があります。

中国法人の資金繰りの問題

優遇税制の返還や、税務調査に基づく追徴課税、及び中国人労働者への経済補償金などの中国撤退に伴う費用については、多くの場合、本社からの借入に依存することになります。

中国法人が資金繰りに窮した場合、日本企業から資金を補充するか、破産手続きをせざるを得なくなります。

中国からの撤退の方法(解散・清算・破産とM&A)

撤退の方法には、(1)出資持分の譲渡、(2)会社の解散による清算、(3)破産、の3通りがあります。
このいずれの方法においても、審査認可機関の許可に加え、出資者全員の合意と董事会での全会一致決議が必要です。

中国法人をM&Aにより売却する場合も会社の解散による清算の場合も、債務超過の場合は、日本企業から資金を補充しなければ、出資持分の買い手を見つけることは容易ではなく、会社の清算は完了しません。
中国では会社を休眠させることができませんので、撤退ができないこととなります。

また、破産手続きには厳格な要件が定められており、また、労働債務は支払いを求められることが一般的ですので、やはり日本企業からの資金の補充が必要になることがあります。他方、破産手続きにより、租税債務・関税債務を削減することができることは重要なメリットかと思われます。

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