会社清算の手続きと流れとは?解散までの期間や費用、円滑に進めるポイントを解説

業績悪化や後継者不在により会社を解散することになった際、どのような手続きを行えばよいのでしょうか。会社の解散と清算は法律行為であり専門性が高いため、事前に清算方法や流れを理解しておく必要があります。本記事では会社を解散する方に向けて、清算の流れや方法、費用を紹介します。最後には清算時のポイントと注意点も解説するため、ぜひ参考にしてください。

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会社の解散とは

会社の解散とは事業活動を辞めて廃業することを指し、法律上は法人格を消滅することになります。ただし事業を辞めたから即座に解散できるわけではなく、法律に則って資産や負債の清算手続きに移行する必要があります。清算手続きを行う理由は解散する会社にお金を貸している金融機関や取引先の企業が資金回収できなくなるのを防ぐためです。利害関係者を保護するためにも清算が完了するまでは清算会社として存続し、手続きを行うことになります。

任意解散と強制解散について

会社の解散には「任意解散」と「強制解散」の2種類あります。

任意解散とは会社の意思によって解散することです。例を挙げると以下のようなケースが挙げられます。

  • 解散が株主総会で決議された
  • 定款で定めた存続期間が終了した
  • 定款で定めた解散事由の発生した
  • 合併することになった

強制解散とは破産や法的な措置によって強制的に解散させられることです。以下のケースのように会社の意思と関係なく解散することになります。

  • 破産手続きの開始が決定した
  • 裁判所より解散命令・判決が出た
  • 最後の登記から12年経っても変更登記されていない会社(みなし解散)
  • 特別法による解散原因が発生した

任意解散と強制解散の違いは「会社の意思の違い」です。会社の経営に問題がなかったものの、後継者の不在などによって解散することになった場合などが任意解散に当てはまります。一方経営不振により会社の事業を継続することができず、破産しなければいけない状況となった場合などは強制解散に該当します。任意解散と強制解散をする場合は会社法で定められた理由に該当している必要があるため、次の項で紹介します。

会社を解散するための7つの理由

会社を解散するためには会社法で定められた相応な理由を満たしていることが条件です。ここでは7つの理由を紹介します。

定款で定めた存続期間の満了

定款で定めた存続期間が満了した翌日に会社は解散手続きに入ります。

定款で定めた解散事由の発生

定款で定めた解散事由が発生した場合、会社は解散となります。

株主総会の決議

株主総会で過半数の株主が出席した会社解散の特別決議(3分の2以上の賛成)がなされた場合解散となります。なお、外部株主がいないオーナー企業などの場合は経営者の判断で決めることができます。

合併により会社が消滅する場合

会社の合併によって会社が消滅する場合は解散となります。また会社の権利や義務を合併する存続会社に継承する手続きも必要です。

破産手続き開始の決定

負債額が大きくなり事業継続が難しくなった場合などは破産することができ、会社は解散手続きに移行します。

裁判所による解散命令

違法行為の継続や不当な目的の会社は、裁判所からの命令により強制的に解散させられることがあります。

休眠会社のみなし解散の制度

最後の登記から12年登記変更がない休眠会社はみなし解散となります。会社法によって株式会社は10年に1度役員変更登記を行わなければいけません。しかし登記内容が変更されていない会社は、法務大臣から官報公告を行われ、2か月以内に登記申請がなければ、みなし解散として登記されます。ただし解散登記から3年以内であれば、解散前の会社に戻ることができます。

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2つの会社清算方法について

会社の解散が決まった後は、資産や負債の清算手続きに移行します。ここでは2つの会社清算の方法を紹介します。

任意清算

任意清算とは合名会社と合資会社のみ認められた清算方法であり、定款や総社員の同意などによって清算できます。任意清算は財産などをどのように処分するかを会社側で決めることができます。株式会社が任意清算できない理由は、株を多く保有している方の意見で清算できてしまう恐れがあるためです。株式会社は次で紹介する法定清算で清算します。

法定清算

法定清算は法律に則って財産を処分する方法です。法定清算では清算業務を執行する清算人の選出を行い、財産整理手続きを始めます。法定清算には以下の2種類あります。

  • 通常清算・・・会社の財産で負債を全額返済できる場合に取られる清算方法
  • 特別清算・・・会社の負債が大きく債務超過となっている場合や清算をするうえで支障をきたすような特別な事情がある時に取られる清算方法

一般的には通常清算となることが多いですが、債務超過などの場合は特別清算となり、裁判所の監督のもとで遂行します。一見特別清算と似ている「破産」と同じと思われますが、双方はまったく別の手続きです。破産は破産法15条に基づいて裁判所に申し立てを行い、破産管財人が主導して債務を完済しないことを前提とした清算方法です。一方特別清算は債権者への返済を前提としているため、手続きも異なります。

清算人について

清算人とは、会社解散後の清算業務を遂行する会社機関です。清算人の職務は会社法で以下の3つに定められています。

  • 現務の結了・・・会社が解散時に完結していない契約の履行などを行います。新規の契約はできません。
  • 債権の取立て及び債務の弁済・・・残された債権を回収し、売却して現金に換えて支払いなどを行います。
  • 残余財産の分配・・・会社の資産を現金に換え、債務の弁済を行ったうえで余ったお金を株主に分配します。

では清算人はどのように決めるのでしょうか。清算人の選定は4つあり、清算人になれない人もいます。

清算人の選定方法清算人になれない人
  • 定款の定めによる選任
  • 株主総会決議による選任
  • 取締役が清算人に就任
  • 裁判所による清算人の選任
  • 法人
  • 成年被後見人もしくは被保佐人
  • 会社法などの法律に定められた罪によって刑に処せられその執行を終えてから2年を経過していない者
  • 禁固以上の罪に処せられその執行を終えていない者
  • 清算会社の監査役

清算人の選定は解散を決める特別決議と同時に決めるケースが多いです。定款に清算人を定めている企業は少なく、株主総会でも選任できなかった場合は取締役が清算人に就任することが多いです。取締役が亡くなっている場合は裁判所が清算人を決めますが、ケースとしては少ないです。一方清算人になれない人は法律上定められているため、選任する際は注意してください。

任意清算と法定清算の違いについて紹介

任意清算と法定清算は以下の表のような違いがあります。

任意清算法定清算
清算人の選出不要必要
債権者保護手続き必要不要
社員の承認不要必要

任意清算では清算人の選出や社員の承認が不要となりますが、債権者保護手続きが必要です。債権者保護手続きとは、企業が債権者に異議を唱えることができる手続きです。債権者にとって不利益な影響を及ぼす経営判断が行われると、債権者は利益を損失してしまう可能性もあるため、債権者保護手続きによって利益の保護をすることができます。一方法定清算では清算人の選出が必須となります。

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会社の解散と清算の流れ

ここでは会社の解散と清算の流れについて紹介します。

株主総会での解散決議

株主総会で解散決議を行います。会社を解散するには、会社法で定められた理由が必要であり、7つの中で最も株式総会で解散を決めることが多いです。解散決議には特別決議に出席した株主から3分の2以上の承認を得る必要があります。

解散、清算人就任の登記

解散することが決まった後は、2週間以内に「解散の登記」と「清算人の選任登記」を法務局で手続きします。登記する際は以下の必要書類を用意しましょう。

解散の登記に必要書類清算人の選任登記に必要書類
  • 登記申請書
  • 定款
  • 株主総会議事録
  • 清算人の就任承諾書
  • 株主リスト
  • 印鑑届出書
  • 清算人個人の印鑑証明書
  • 登記申請書
  • 株主総会議事録
  • 定款
  • 株主リスト
  • 清算人の就任承諾書
  • 委任状(登記申請を司法書士に依頼する場合)

各機関への解散の届出

登記が完了した後は労働基準監督署や税務署などへ必要書類を提出し、解散の届け出を行います。各機関への提出先と必要書類は以下の表の通りです。

提出先必要書類
税務署
  • 解散届
  • 事業廃止届出書
市役所・役場異動届出書
都道府県事務所異動届出書
年金保険事務所
  • 健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届

※解散登記が完了してから5日以内

ハローワーク
  • 雇用保険適用事業所廃止届
  • 雇用保険被保険者資格喪失届
  • 雇用保険被保険者離職証明書

※事業廃止日から10以内

労働基準監督署
  • 労働保険確定保険料申告書
  • 労働保険料・一般拠出金還付請求書

※事業廃止日から50以内

財産目録および貸借対照表の作成

解散が決議された後は、清算人が解散日時点での財産目録と貸借対照表の作成を行います。清算手続きで使用するため会社で保管しておきましょう。

債権者保護手続き

解散することによって債権者が不利益になることを保護するための債権者保護手続きを行います。債権者保護手続きは「官報公告」と「個別催告」の2種類あります。

  • 官報公告・・・清算人が官報公告にて債権者に会社の解散を知らせる方法です。期間は2か月です。
  • 個別催告・・・会社が把握している債権者に対して個別に会社の解散を伝える方法です。

税務署へ解散確定申告書の提出

解散が決まった際は事業年度開始日から解散日までの確定申告を、解散日の翌日から2か月以内に行います。申告する年度が12か月未満の場合は税額控除が適用できないものもあるため、税理士などに相談して手続きすることをおすすめします。

資産の現金化、債務弁済、残余財産の確定および分配

清算人は会社の債権を回収し、資産の現金化と債務の弁済を行います。その結果財産が余っていた場合は株主へ分配します。分配金は株主の保有株数に応じた金額です。

税務署へ清算確定申告書の提出

残余財産が確定し分配が完了した後は、清算確定申告書を1か月以内に税務署へ提出します。清算確定申告書は通常の確定申告書に内容を記載し、所得が生じた場合は納税しなければいけません。ただし、残余財産がある場合と債務超過の場合では申告内容が異なるため、税理士と相談して申告しましょう。

決算報告書の作成および承認

清算人が債権や債務、残余財産の分配に関する決算報告書を作成します。作成した後は株主総会で清算事務報告の承認を受けることで法人格が消滅します。

清算結了の登記

株主総会で決算事務報告の承認を受けた後は、2週間以内に清算結了の登記申請を行います。申請時に必要な書類は以下の通りです。

  • 株式会社清算結了登記申請書
  • 株主総会議事録
  • 決算報告書

各機関への解散の届出

清算結了の登記が完了した後は正式に会社が消滅しますが、税務署・都道府県税事務所・市区町村の役所などに清算結了の届け出を提出しなければいけません。異動届出書と登記事項証明書も添付するため、忘れないように注意してください。すべて書類を提出すれば会社の解散に関する手続きは完了となります。

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会社別解散の手続きの違い

会社には株式会社、有限会社、合同会社と分かれており、それぞれ解散の手続きは異なります。具体的には「解散決議」「清算人会の設置」「代表清算人の登記」は異なる。

解散決議清算人の設置代表清算人の登記
株式会社株主総会(特別会議)設置可能必要
有限会社株主総会(特別会議)総株主の半数以上が出席した上で4分の3以上の賛同設置不可会社を代表しない清算人がいる場合のみ必要
合同会社総社員の同意設置不可会社を代表しない清算人がいる場合のみ必要

会社の解散にかかる期間と費用とは

ここでは会社の解散にかかる期間と4つの費用について紹介します。

最低3か月以上は必要

会社の解散には最低でも3か月の期間を要します。官報公告期間に2か月と清算確定申告に1か月がかかり、その他にも書類の準備や作成などを考慮するとすべて完了するまである程度時間を要します。すぐに解散できるわけではないため、余裕をもってスケジュール管理を行いならが手続きしましょう。以下の表は解散日を基準とした期日スケジュールです。目安として参考にしてください。

株主総会での解散決議解散日
解散、清算人就任の登記解散日から2週間以内
財産目録および貸借対照表の作成解散日から2か月以内
債権者保護手続き
税務署へ解散確定申告書の提出
決算報告書の作成および承認
債権・債務の整理と残余財産の分配
各機関への解散の届出
清算確定申告残余財産確定から1カ月以内
清算結了登記株主総会で決算事務報告の承認を得た日から2週間以内

4つの費用が発生する

会社の解散を行う際は以下の4つの費用が発生します。

  • 登録免許税・・・会社の解散登記を行う際など、登記簿の内容を変更する際に課税される税金です。解散と清算人の登記に3万9,000円、清算結了の登記に2,000円の費用が発生します。
  • 官報公告費用・・・官報公告の掲載料として3万円がかかります。
  • 必要書類発行費用・・・登記事項証明書の取得費用など申請や登記に関わる必要書類の発行費用として数千円程度必要となります。
  • 専門家への依頼費用・・・会社を解散する際は司法書士や税理士、弁護士に一任するケースもあり、数十万円程度費用が発生します。

専門家によって依頼費用が異なるだけでなく、会社規模のよっても変わるため、事前に相談から依頼しましょう。

会社清算を円滑に進めるためのポイント

ここでは会社の清算を円滑に進めるためのポイントを2つ紹介します。

事前準備を行う

会社の解散を行うには事前に全体的な流れを理解し、必要書類の準備を行っておくことが大切です。流れを理解しないまま進めると次の手続きや作業がわからなくなり、スムーズに進めることができません。また申請や登記するたびに役所や法務局などに足を運ぶと手間がかかってしまうため、さまざまな書類を事前に用意しておく必要があります。事前準備に不安のある方は弁護士や司法書士などの専門家に相談しながら進めると、よりスムーズに手続きを進めることも可能です。

スケジュール管理を徹底する

会社の解散と清算はスケジュール管理が大切です。解散日から2か月でさまざまな清算事務と手続きが必要となり、少しでも遅れてしまうと、清算結了が遅れることにもなります。会社の清算手続きをスムーズ進めるためには、2か月間の清算事務を以下に素早く完了させられるかがポイントです。とはいえ会社の解散を行う方のほとんどが初めてであるため、専門家に相談しておくことをおすすめします。

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会社清算を行う際の注意点

会社の清算を行う際に注意しておくべき点があります。ここでは3つ紹介します。

清算手続き中に清算形式が変更になることもある

清算手続き中に会社の負債額が高額であることがわかり、清算形式が変更になることもあります。負債額より資産の方が多いと思っていて通常清算の手続きを行っていたものの、債務超過であることがわかると、特別清算や破産へ手続きを移さなければいけません。手続きを変えることは決して安易なことでなく、手間と労力を費やします。清算を始める前に、会社の財務状況を把握しておくようにしましょう。

通常とは異なる確定申告が必要

会社の清算手続きでは通常の確定申告とはことなる解散確定申告と清算確定申告を行わなければいけません。解散確定申告は事業開始日から解散日まで、清算確定申告は翌日から1年間となります。通常の確定申告と期日が異なるうえ、申告内容によっては申告方法も異なるため注意してください。

専門家に相談してから清算する

会社の清算手続きは専門的な知識が求められます 。初めて行う方は、専門家に会社の清算を相談しておくことで、より手続きをスムーズに進めることが可能です。さらに清算するうえでのアドバイスなどももらえるため、弁護士や司法書士などに相談しながら進めることをおすすめします。

まとめ

会社の清算が完了するまでは最低でも3か月の期間を要します。さらに専門的な知識が求められる手続きであるため、初めて会社の解散をする方は事前準備をするためにも専門家のサポートが必要です。また、特別清算や破産が必要となる債務超過の場合、裁判所との手続きが必要となるため、弁護士や司法書士などに一度相談してから進めましょう。

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