顧問弁護士を置くと費用はかえって下がるのか 中小企業における費用対効果の考え方
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顧問弁護士の費用対効果に関するメインのページです。本ページは、M&Aの契約を含む法務の相談を継続して受ける場合の費用を、紛争が生じてから依頼する場合と比べてご説明します。役割の内容は別のページをご参照ください。
▶ 顧問弁護士とは何をする弁護士か 契約の形、費用の考え方及び依頼するかどうかの判断
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従業員が数十名までの中小企業の経営者の方から、顧問弁護士を置きたい気持ちはあるものの、毎月の顧問料に見合うだけの相談があるかどうか分からない、というご質問をいただきます。本記事は、顧問弁護士を置く費用と、置かないことにより生じる費用とを並べて比較するための考え方を整理したものです。顧問弁護士を置くべきかどうかを、月々の支出の額だけで判断してよいのかという問題を扱います。
先に申し上げますと、費用対効果を金額の大小で示すことはできません。顧問料の額は事務所ごとに異なり、置かなかった場合に生じる費用は、その会社に何が起きるかによって変わるためです。本記事では、金額ではなく費用が生じる構造をご説明します。
比較の対象は、紛争が表に出てから依頼する場合の着手金及び報酬金、経営者が交渉に費やす時間、法務担当者を雇用する人件費、不利な契約を締結してしまった場合の損失の4つです。この4つを並べたうえでご判断ください。
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顧問弁護士という同じ主題であっても、費用の比較と、置くかどうかの判断と、契約書の条項の読み方とでは、確認すべき事項が異なりますので、次のとおり整理しています。
- 顧問弁護士を置く費用と置かない費用との比較……本記事
- 自社が顧問弁護士を置くべき会社かどうかを判断する場面……顧問弁護士と契約すべき場合と、契約しなくてよい場合 判断の分かれ目となる事情
- 顧問契約書の報酬の条項を確認する場面……顧問契約書に何を定めるか 業務の範囲、報酬、解約及び秘密保持の条項の読み方
顧問弁護士の費用は、支払う額だけを見ても判断できません
顧問料は毎月の帳簿に載りますので金額がはっきりと見えます。これに対して、置かないことにより生じる費用は、帳簿の別の場所に別の名目で現れます。
見えている費用と、見えにくい費用
顧問料は「支払った額」として見えます。一方、紛争処理の費用は数年に1度、多額の支出として現れ、経営者の時間は費用として計上されず、不利な契約による損失は売上の減少や利益率の低下として現れます。見え方が違うだけで、いずれも会社から出ていく資源です。
比較すべき4つの費用
| 置かない場合に生じうる費用 | どのような形で現れるか | 顧問弁護士を置くことで変わりうる点 |
|---|---|---|
| 紛争処理の費用 | 紛争が表に出た後の着手金及び報酬金として、まとまった支出になります。 | 早い段階で相談すれば、紛争に至る前に処理できる場合があります。 |
| 経営者の時間 | 費用としては計上されず、本業に充てられたはずの時間が失われます。 | 窓口を弁護士とすることで、経営者が直接応対する時間が減ります。 |
| 法務担当者の人件費 | 給与のほか、社会保険料、採用及び教育の費用が継続して生じます。 | 雇用によらず、必要な分野について外部から助言を得ることができます。 |
| 不利な契約による損失 | 売上の減少、利益率の低下、想定外の負担として、長期にわたり現れます。 | 署名の前に条項を確認することで、負担の偏りを是正できる場合があります。 |
金額の水準だけを並べても比較にならないこと
顧問料の水準を示す数値を掲げる例を見かけますが、業務の範囲も相談の量も事務所ごとに異なりますので、金額だけを並べても比較にはなりません。比較すべきは、同じ金額で何をどこまで行うのかという範囲です。当事務所の一般的な顧問契約も、対応の範囲に応じた幅があります。
紛争が表に出てから依頼する場合に生じる費用
顧問弁護士を置かない会社が弁護士に依頼するのは、多くの場合、相手方から通知書が届いた後、又は訴えを提起された後です。この段階からの依頼には、固有の費用がかかります。
着手金及び報酬金という費用の構造
個別の案件を受任する場合、着手から解決までの業務量に応じた費用が生じます。弁護士の報酬は特約によって定まりますので(民法第643条、第648条第1項)、当事務所においても、案件ごとに業務の範囲と費用の算定方法を確認したうえで着手します。日常の相談を随時受けられる状態を維持する費用と、1件の紛争を最初から最後まで処理する費用とは、性質が異なります。
早い段階であれば、そもそも案件にならないこと
相手方から届いた1通の書面にどう返答するかは、多くの場合、その場での判断です。返答の仕方によって、話し合いで終わるか、請求の応酬に進むかが分かれます。返答の前に確認できる先があることの意味は、ここにあります。紛争にならなかった案件は、費用としても表に出ません。
時間の経過により選択肢が減ること
期間の経過は、とりうる手段を減らします。例えば、支払期日を令和3年10月31日とする売掛金は、その翌日から起算して5年を経過する令和8年10月31日の経過により、時効の完成猶予又は更新の措置をとっていない限り、消滅時効が完成しうることになります(民法第166条第1項第1号)。回収するかどうかを検討していた間に、請求そのものができなくなるという事態が生じます。
経営者が交渉に費やす時間という費用
中小企業では、取引先との交渉も、退職した従業員との話し合いも、経営者が自ら行うことが少なくありません。この時間は費用として計上されませんが、失われていることに変わりはありません。
経営者の時間には値段が付いていないこと
経営者が1日を交渉の準備と応対に費やしても、損益計算書には何も現れません。しかし、その日に行うはずだった営業も、採用の面接も、行われていません。顧問料と比較すべきなのは、この失われた時間です。
窓口を弁護士とすることで戻る時間
代理人を選任し、以後の連絡は代理人宛てとするよう相手方に通知しますと、経営者が直接応対する場面は大きく減ります。電話が鳴るたびに手が止まるという状態から離れることができます。相手方が感情的な言い分を述べてくる場合には、この効果は特に大きくなります。
判断の質が変わること
交渉の当事者本人は、経緯を最もよく知っている反面、譲れない点と譲ってよい点との区別が付きにくくなります。第三者が間に入ることで、争点を絞り、合意できる範囲を先に固めるという進め方をとりやすくなります。
法務担当者を雇用する場合との比較
法務の機能を社内に持つという選択肢もあります。弁護士は、当事者の依頼により法律事務を行うことをその職務とし(弁護士法第3条)、社内の担当者とは担える範囲が異なります。
人件費は月額の給与だけではないこと
雇用には、給与のほかに社会保険料の事業主負担、採用の費用、教育の時間が伴います。また、労働契約の終了には法律上の制約があり、業務量が減ったからという理由だけで整理することはできません。
1人の担当者が扱える分野には幅があること
法務担当者を1名採用したとしても、契約、労務、知的財産、債権回収、会社組織の運営のすべてに精通していることは通常ありません。他方、担当者を置くことで社内の情報が整理され、外部への相談が的確になるという効果はあります。
併存させるという考え方
法務担当者を置いている会社が顧問弁護士を置く場合、担当者が一次的な整理を行い、判断の分かれる論点だけを弁護士に確認するという分担になります。この形が、相談の件数に対して最も費用の効率がよいことが多くあります。
不利な契約を締結してしまった場合の損失
4つ目は、契約書の条項によって生じる損失です。もっとも見えにくく、もっとも長く続きます。
締結の前と後では、できることが違うこと
署名の前であれば、条項の修正を求めることは通常の交渉です。署名の後は、原則として契約の内容に拘束されます。合意の解消を求めるには、相手方の同意を得るか、契約に定められた解除の事由に当たることを主張するほかありません。同じ助言でも、得られる結果は署名の前後で大きく異なります。
気付くのが遅れる条項
自動更新、専属的な取引の義務、責任の上限、途中で解約した場合の違約金、取引の終了後にも残る義務といった条項は、締結の時点では問題として意識されにくく、事情が変わった後に効いてきます。締結時に読んでおくべき条項は、この種の「後で効く」条項です。
更新拒絶の通知には期限があること
期限のある論点ですので、日付を挙げてご説明します。期間の満了日を令和8年12月31日とし、満了の3か月前までに書面により申し出なければ同一の条件で更新される旨が定められている契約では、更新を拒む旨を通知することができる期限は令和8年9月30日です。この日を過ぎますと、次の1年間は同じ条件のまま続きます。契約書を締結時に読み、期限を控えておくことの実益は、ここにあります。
相手方は、なぜ支払や回答を後回しにするのか
費用を考える前提として、相手方の側の事情もご説明します。理由は3つあります。
請求が本気であるかどうかを見ているため
相手方は、複数の支払先のうちどれを先に処理するかを日々選んでいます。督促が定型的で、期限を過ぎても何も起きない相手への支払は後回しにされます。弁護士名の書面が届くかどうかは、この順序に影響します。
手続に進む負担を見積もっているため
相手方は、こちらが法的な手続に進む場合の手間と費用を見積もっています。確認先がなく手続に進むことが考えにくい相手であれば、支払を先延ばしにする判断が働きます。
時間が経つほど有利になると考えているため
時間の経過により資料が散逸し、関係者の記憶も薄れます。時効の完成という結果もあります。相手方が回答を引き延ばす場合、背景にこの見込みがあることは少なくありません。
当事務所の顧問弁護士契約における費用の考え方
最後に、当事務所の場合の費用の組立てをご説明します。金額はいずれも消費税別途です。
月額の費用には幅があること
当事務所の一般的な顧問契約は、簡易顧問の月額70,000円から特別顧問の月額1,000,000円までの5つのプランに分かれています。ほかに、M&A、事業承継、敵対的株主への対応といった場面に応じた顧問契約があります。
時間制報酬の割引という仕組み
顧問契約を締結いただいている場合、個別の案件を時間制報酬により受任するときの請求額が一定の割合で割引となります。割引の率はプランにより異なり、簡易顧問は15パーセント、通常顧問1は20パーセント、通常顧問2は25パーセント、専門顧問は30パーセントです。日常の相談を顧問料の範囲で行い、案件になったものだけを割引後の時間制報酬で処理するという組立てです。
割引の対象とならないもの
実費、事務手数料、スタッフの費用及び事前の預り金は、割引の対象ではありません。費用の見通しを立てる際は、この点を分けてご確認ください。
弁護士費用の詳細は弁護士費用一覧をご覧ください。
いま確認していただきたいこと
- 直近3年間に、弁護士、司法書士その他の専門家へ支払った費用の合計額を確認してください。顧問料と比較する出発点になります。
- 継続的な取引の契約書について、期間の満了日と、更新を拒む旨を通知することができる期限を一覧にしてください。
- 支払期日を過ぎたまま回収できていない売掛金について、支払期日と最後に督促した日を確認してください。
- 経営者ご自身が、取引先又は元従業員との応対に費やした時間を、直近1か月について振り返ってください。
- 以上が整理できましたら当事務所までお電話ください。どの類型が適しているかを、その場でお伝えするよう努めます。
よくあるご質問
顧問弁護士を置けば弁護士費用の総額は下がりますか。
下がると申し上げることはできません。紛争が生じるかどうかは会社ごとに異なるためです。申し上げられるのは、早い段階で相談することにより紛争に至らずに済む場合があること、及び顧問契約を締結いただいている場合には時間制報酬がプランに応じた割合で割引となることです。
相談する事項が思い当たらないのですが、置く意味はありますか。
相談すべき事項は、多くの場合、突然生じます。届いた書面にどう返答するかを判断しなければならない場面で、その日のうちに確認できる先があるかどうかが分かれ目です。平時に相談がないこと自体は、置かない理由にはなりません。
案件が生じたときに、その都度依頼するのでは足りませんか。
足りる場合もあります。ただし、その都度の依頼では会社の事情を毎回説明する時間が必要となり、相談すべきかどうかの判断も経営者ご自身が行うことになります。
顧問料のほかに費用がかかるのはどのような場合ですか。
顧問業務は、随時の指導及び助言を提供する業務です。契約書の作成、具体的な紛争への対応、訴訟への対応などは顧問料とは別途となり、個別の案件として別に受任します。締結の前に境界を確認してください。
おわりに
顧問弁護士を置くかどうかは、毎月の支出を増やすかどうかという問題ではなく、判断を要する場面でどこに確認するかをあらかじめ決めておくかどうかという問題です。現在お困りの事項があれば、それを材料に費用の見通しをお示しします。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
顧問弁護士の費用に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間:8:00~21:00(土日祝含む)
出典
民法第166条第1項第1号(債権等の消滅時効)、第643条(委任)、第648条第1項(受任者の報酬)
弁護士法第3条(弁護士の職務)
顧問業務において扱う分野の法令として、下請代金支払遅延等防止法、労働基準法、個人情報の保護に関する法律などがあります。
当事務所の顧問料及び割引に関する記載は、当事務所の弁護士費用一覧(令和8年8月24日現在)によります。金額は消費税を別途申し受けます。
具体的なご相談をお考えの皆様へ
本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。

