M&A契約書の表明保証条項(レプワラ)の内容とポイントをM&A弁護士が徹底解説!

M&A契約書|表明保証(レプワラ)とは?

M&Aの契約書(最終契約書)において、М&A取引の契約当事者間において、当該取引の当然の前提となった一定の事実が真実であることを表明及び保証することをいいます。

表明保証条項は、売主又は買主候補企業が相手方に対して、一定の事項が真実であり正確であることを表明し、表明したことを保証する条項を意味します。表明保証条項は、最終契約書(株式譲渡契約書や事業譲渡契約書など)において、特に、重要であるのみならず、M&Aに関するトラブルのほとんどはこの最終契約書(株式譲渡契約書や事業譲渡契約書)の表明保証条項を巡って訴訟紛争となっていますので、特に留意が必要です。

最終契約書(株式譲渡契約書や事業譲渡契約書)に表明保証条項が規定される理由は、すなわち、M&Aに際しては、買主候補企業はしっかりデューデリジェンス(DD)を行いますが、その調査・把握には限界があり、必ずしも全てのリスクが明らかになるわけではありません。また、特に、中小企業のM&Aではそのようなリスク情報は積極的に開示されませんので、買主候補企業としては、売主に最終契約書(株式譲渡契約書や事業譲渡契約書)においてしっかり表明保証条項を入れさせ、想定しないリスクが存在しないことを確認する必要があります。

また、最終契約書(株式譲渡契約書や事業譲渡契約書)の表明保証条項には、デューデリジェンス(DD)機能と言って、表明保証条項を見た売主が、表明保証条項に違反すると後日損害賠償請求をされることを恐れて、リスクが潜在している場合には自主的に申告してくれるという付随的機能がありますので、買主候補企業としては、この契約書(最終契約書)に表明保証条項を多く入れない手はありません。

他方、最終契約書(株式譲渡契約書や事業譲渡契約書)の表明保証条項は、売主のオーナー経営者様からすると、非常に悩ましい問題となります。真実ではない表明保証を行ってしまうと、後日、表明保証違反をめぐって、損害賠償請求の問題が生ずる反面、真実を説明してしまうと、会社の経営状態に瑕疵があるということとなり、買主から株式譲渡代金・事業譲渡代金などの減額を求められてしまう事態となるからです。

そうですので、最終契約書(株式譲渡契約書や事業譲渡契約書)において、買主の要求する表明保証条項の項目は、数十項目になることが通常であり、また、対象会社の問題点やリスクを熟知している売主としては細かい文言に拘ってくることとなりますので、条項の記載文言について非常に慎重に対応する必要があり、専門家のサポートが必須です。

最終契約書の表明保証条項の解説

M&A総合法律事務所では、M&Aにおいて取り扱う主な無題契約書である秘密保持の契約書・基本合意書・最終契約書・附随契約書などのM&Aの契約書について、10年来、300件以上の豊富な経験を有していますので、契約書の契約者様の権利を守り、リスクを排除するため、適切なM&Aの契約書の作成及びアドバイスを提供させて頂いております。

その中でも、このページでは、M&Aの契約書のうち最も重要な契約書である最終契約書(株式譲渡契約書・事業譲渡契約書等)の「表明保証条項」について説明いたします。

多様な表明保証条項について

最終契約書における表明保証条項として重要なものとしては、①対象会社の組織及び構成に事業遂行上の問題の不存在に関する表明保証、②対象会社の財務諸表の正確性・網羅性に関する表明保証、③対象会社の資産の所有及び使用権限等の継続性に関する表明保証、④対象会社の契約の継続性に関する表明保証、⑤知的財産権の侵害の不存在に関する表明保証、⑥情報システムの有効性に関する表明保証、⑦役員の待遇に関する表明保証、⑧従業員の雇用や処遇に関する表明保証、⑨年金及び保険等の未払の不存在に関する表明保証、⑩製造物責任の不存在に関する表明保証、⑪保険の存在に関する表明保証、⑫環境問題の不存在に関する表明保証、⑬公租公課の潜在債務の不存在に関する表明保証、⑭法令の遵守に関する表明保証、⑮許認可届出等の有効性・継続性に関する表明保証、⑯訴訟又は紛争の不存在に関する表明保証、⑰財務状態等の悪化の不存在に関する表明保証、⑱M&A仲介業者との業務委託契約の不存在に関する表明保証、⑳情報開示の正確性・網羅性に関する表明保証などが存在する。

表明保証条項の重要性について

最終契約書に表明保証条項が規定される理由は、すなわち、M&Aに際しては、買主候補企業は、対象会社について、デューデリジェンス(DD)を行うものの、そのデューデリジェンス(DD)の調査には限界があり、必ずしも全てのリスクが明らかになるわけではないため、表明保証条項を規定することにより、買主が、売主に対して、リスクを転換してヘッジし、M&A取引に入り易くするためである。

対象会社のオーナーである売主と、全くの第三者である買主候補会社との、対象会社の事業に関する情報をめぐる情報格差は大きく、買主候補会社が、対象会社を、1週間や2週間、デューデリジェンス(DD)を行ったとしても、完全に埋まることはない。また、そのような状況であることから、売主や対象会社が、対象会社の重要な情報を隠そうと思えば、容易に隠すことができ、売主としては、対象会社の重要な情報を隠したまま、対象会社を、買主候補会社に買収させてしまうことは、難しくはありません。

また、売主としても、買主候補会社による、対象会社に対するデューデリジェンス(DD)の際に、対象会社の不都合な情報を積極的に開示することによって、買主候補会社が、対象会社の事業上のリスクであるとして、対象会社のM&A価格(株式譲渡価格・事業譲渡価格など)を減額するなどという事態が生ずれば、大きな損害なのであり、売主としても、対象会社の重要情報の開示について、積極的になるインセンティブは特段存在しない。特に、事業承継M&Aの対象会社である中小企業・零細企業においては、売主や対象会社は、買主に対して、そのような対象会社のリスク情報を、積極的に開示しようとしないことも多い。

また、事業承継M&Aの対象会社である中小企業・零細企業においては、大企業などでは当然採用されている基準などが採用されていなかったり、オーナー経営者が、独自の事業運営方針を、当然の前提として考えていた場合なども多く、そのような場合、対象会社のリスク情報は積極的に開示されないこととなる。

そこで、買主候補会社としては、最終契約書において、しっかり表明保証条項を規定し、売主に表明保証させることにより、想定外のリスクが存在しないことを確認しつつ、表明保証違反があった場合に、売主に対して、その損害を補償請求できるように、売主に対して、リスクを転換してヘッジしておく必要がある。

表明保証違反の効果について

表明保証に違反した場合、前提条件を充足しないため株式譲渡が実行されないこととなるし、損害賠償条項・補償条項に基づき、表明保証違反に基づく損害について、補償義務・損害賠償義務を負うこととなるし、表明保証違反は解除原因ともなり得る。

すなわち、「表明保証」に違反し、「表明保証」の規定されている事実が真実と異なる場合、前提条件が充足されずに株式譲渡実行義務が発生しないという効果や、損害賠償条項・補償条項に基づき、表明保証違反に基づく損害について、補償義務・損害賠償義務を負うという効果が発生し、「表明保証」の規定されている事実が真実と異なる場合、それが解除事由となり、相手方に株式譲渡契約の解除権が発生してしまうという効果が発生するのである。

このように、「表明保証」は、株式譲渡の多方面において影響を及ぼす重要な規定である。

表明保証の補償責任・損害賠償責任の無過失責任性

表明保証違反は、必ずしも、債務不履行ではなく、表明保証に違反したからと言って、当事者の帰責事由(当事者の故意過失)があるわけではなく、単に、売主による事実の表明に誤りがあったということに過ぎないのではあるが、相手方当事者はその事実の表明を信頼して取引に入ったのであり、そのような相手方当事者の保護のための規定である。すなわち、表明保証条項に違反する結果として、前提条件を充足せず株式譲渡が実行されない、補償義務・損害賠償義務を負うこととなる、解除原因になるなどの効果を持たせて、相手方当事者を保護することで、当事者間の情報の格差が、相手方当事者が取引に入るための障害になることを防ぎ、取引を促進するための条項である。

そうであるからこそ、この「表明保証」違反に基づく補償責任・損害賠償責任というのは、民商法の過失責任の原則に基づく責任ではなく、真実であると「表明保証」したにも係らず真実でなかった場合に責任を負わせることによって、売主と買主の間の損失分担を調整するための規定であるから、無過失の補償責任ともいうべきものである。

表明保証条項のデューデリジェンス(DD)機能

また、最終契約書の表明保証条項には、デューデリジェンス(DD)機能と言って、売主が、表明保証条項を見ることにより、表明保証条項に違反した場合、後日、その損害を補償請求されることを恐れて、リスクが潜在している場合には、自主的に申告してくれるという付随的機能が存在する。

すなわち、売主としては、最終契約書の表明保証条項を見て、対象会社に表明保証違反となる事実が存在している場合、M&A後に、買主がその表明保証違反の事実を発見し、売主に対して、その損害を補償請求してくることを避けるために、売主は、最終契約の表明保証条項の交渉中に、その表明保証条違反の事実を、買主候補会社に伝え、その該当する表明保証条項の削除または、表明保証条項の除外事由の規定追加を求めてくるのである。また、売主によっては、特定の表明保証条項について、「重大な」と付記することにより、重大な表明保証違反のみが損害の補償請求が可能と規定したり、「知る限り」と付記することにより、売主の知っている表明保証違反のみを損害の補償請求が可能と規定したりして、表明保証違反となる範囲を、極力、限定しようとする行動に出ることとなる。売主は、対象会社の事業のリスクをもっても詳細に熟知しているわけですので、その行動を見ていると、売主が、表明保証条項の細かい点や通常拘らないような点に拘る場合や、非常に細かい文言に拘る場合など、売主が、どこに表明保証違反が存在していることを心配しているのかが分かり、対象会社の事業のリスクの所在が分かるのである。

したがって、買主候補会社としては、最終的には、表明保証条項の項目は減るということになったとしても、最終契約書に表明保証条項を極力多く入れることが好ましい。また、売主が、不自然な形で、表明保証条項にこだわるような場合は、売主に対して、特にその点について、インタビューを行うなど、状況を深掘りし、対象会社の問題点を追及する姿勢が必要でとなる。

他方、対象会社のオーナー経営者である売主としては、最終契約書の表明保証条項については、対応を誤ると、対象事業のリスクを、買主候補会社に見透かされてしまうこととなるものの、とはいえ、現実に、表明保証条項が提案されてしまっている以上、そのまま見過ごすこともできず、非常に悩ましい問題となる。

最終契約書において、表明保証条項の項目は、数十項目になることが通常であり、条項の記載文言について非常に慎重に対応する必要があり、専門家のサポートが必須と思われる。

表明保証に関する認識又は認識可能性の影響

買主が、売主の表明保証違反の補償請求・損害賠償請求などを追及する場合に問題となるのが、表明保証をした事項に関する認識又は認識可能性の問題である。

すなわち、買主としては、事業承継M&Aにより損失を被った場合、売主が、対象会社に関して、何らかの表明保証をしており、その違反があった場合は、表明保証違反を根拠に、売主に対して、補償請求・損害賠償請求を行いたいところである。

買主としては、売主の行ったその表明保証を信用して、この事業承継M&Aに取り組んだのであるから当然である。

ただ、買主が表明保証を信用してこの事業承継M&Aに取り組んだというのであれば、買主がその表明保証違反について、認識又は認識可能性があった場合まで、買主の表明保証違反に基づく補償請求・損害賠償請求を認めるべきなのか否かということが問題となる。

この点、平成18年1月17日の東京地方裁判所判決平成16年(ワ)第8241号(アルコ事件)では、表明保証違反につき、売主がデューデリジェンスに資料を開示していたことに関連して、買主が悪意又は重過失がある場合、表明保証違反に基づく補償請求・損害賠償請求が認められない可能性があることを判示しつつ、売主が表明保証違反の事実を故意に秘匿したとして、売主の表明保証違反の責任を認めている。

すなわち、売主が表明保証をしたとしても、買主が表明保証違反の事実を認識していたり、認識可能性があったのに重大な過失により認識していなかった場合には、買主は、売主に対して、表明保証違反の補償請求・損害賠償請求を行うことができないのである。

また、売主は、デューデリジェンスに資料を開示していたとしても、表明保証違反の事実を故意に秘匿した場合は、表明保証違反の責任を免れないのである。

サンドバッキング条項について

上記のとおり、裁判例にて、買主が表明保証違反の事実を認識していた場合には、買主は、売主に対して、表明保証違反に関する認識の有無に係らず表明保証違反の補償責任・損害賠償責任を問うことができる旨を規定すれば、買主が表明保証違反の事実を認識していた場合でも、表明保証違反の補償請求・損害賠償請求を行うことができるのではないかとも思われる。

そのような規定が、いわゆるサンドバッギング条項(表明保証違反に関する認識があった場合にも表明保証違反の補償責任・損害賠償責任を認める規定)である。

なお、株式譲渡契約書において、このいわゆるサンドバッキング条項を規定する場合もあれば、いわゆるアンチ・サンドバッキング条項(表明保証違反に関する認識があった場合には表明保証違反の補償責任・損害賠償責任を認めない規定)を規定することもあれば、いずれも規定しない場合もある。いずれも規定しない場合は、上記の裁判例の立場がそのまま適用されることに相違ない。

事業承継M&Aにおいては、結果として、いずれも規定しない場合が多いように見受けられるものの、いわゆるサンドバッギング条項を規定する場合も多くみられる。

買主は、対象会社に対してデューデリジェンスを実施するため、実際は、特定の事項について、表明保証違反の状態にあることを認識するに至ることは多い。例えば、売主は対象会社における未払残業代の存在について否定し、表明保証を行うものの、買主は、対象会社をデューデリジェンスした結果、実際は、対象会社に未払残業代が存在することを発見するような場合である。

このような場合、買主は、そのような表明保証違反の状況があることを認識しつつ対象会社を買収するのであるから、そのような表明保証違反のリスクが顕在化して、例えば、従業員から対象会社に対して未払残業代の請求が行われたとしても、そのような場合は表明保証違反の責任追及を行うべきではないという考え方もある。上記の裁判例は、このようなスタンスであるものと思われる。

ただ、買主が労力とコストをかけてデューデリジェンスを実施し、売主の表明保証違反の事実を発見した時、売主に対する表明保証違反の責任追及を禁止することは経済合理的ではないと思われる。また、買主が売主の表明保証違反の事実を発見したとしても、その問題の詳細や影響の大きさなどまでは容易に判明するものではなく、表明保証違反の事実を認識していただけですべての売主に対する表明保証違反の責任追及を禁止することも経済的不合理とも思われる。

このような検討から、事業承継M&Aにおいては、現在においては、多くの場合で、いわゆるサンドバッキング条項を規定することが多くなっている。

ただ、他方、事業承継M&Aの交渉中に、表明保証違反を知っていたのなら、売主に対して補償請求・損害賠償請求をするのはおかしいのではないかという見解が売主から出されることもあり、最終的に、株式譲渡契約書にいわゆるサンドバッキング条項を盛り込まないこととなることも多い。

ただ、株式譲渡契約書にいわゆるサンドバッキング条項を盛り込む場合においても、このいわゆるサンドバッキング条項が、裁判所で有効と判断されるか否か現状明らかではない(サンドバッキング条項を規定したとしても、裁判になった場合、上記の裁判例の立場が貫かれ、表明保証違反に関する認識があった場合には、表明保証違反の補償責任・損害賠償責任が認められない可能性もある)ということもある。

したがって、近時においては、買主が、デューデリジェンスにおいて、表明保証違反の状態を発見した場合には、表明保証条項のみならず(表明保証条項ではなく)、特別補償条項を別途規定することにより、例えば、未払残業代などが発見され、そのリスクが顕在化した場合に、売主に対して、特別補償条項を発動することにより、その損失について補償請求を行えるように規定することが一般的となっている。

M&A契約書|表明保証(レプワラ)の具体的内容とは?

最終契約書(株式譲渡契約書や事業譲渡契約書)においては、通常、売主及び買主の双方がそれぞれの課された前提事情に関して表明保証を行い、具体的・典型的には、下記のような事項を表明保証することとなる。

売主の表明保証

第1 売主に関する表明保証

  1. 売主は、日本法に基づき適法かつ有効に設立され、かつ存続する株式会社であり、現在行っている事業を行うために必要な権限及び権能を有している。【売主は、日本法上、後見開始、保佐開始若しくは補助開始の審判又は審判の申立てを受けていない成年であり、かつ、本契約を締結し、本契約の諸条項を履行するのに必要な一切の能力と権限を有している。また、売主は、任意後見契約を締結しておらず、かつ売主らに関し、後見開始、保佐開始又は補助開始の審判申立ての原因となる事由は存在しない。】
  2. 売主は、本契約を締結し、これを履行するために必要な権限及び権能を有している。売主による本契約の締結及び履行は、その目的の範囲内の行為であり、売主は、本契約を締結し、これを履行するために必要な社内手続を全て履践している。
  3. 本契約は、売主により適法かつ有効に締結され、売主の適法、有効かつ法的拘束力のある義務を構成する。本契約は、その各条項に従い売主に対して強制執行が可能である。
  4. 売主による本契約の締結及び履行は、(i)売主の定款、(ii)売主が当事者となっている契約書、合意書、覚書等又は(iii)売主に適用される法律、政令、省令、命令若しくは判決に違反し、又は抵触しない。
  5. 売主に対して破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始及び特別清算開始その他類似の倒産手続は開始されておらず、売主自ら又は第三者によりかかる手続開始の申立もなされておらず、また、かかる手続を開始する原因となりうる事実も存在しない。売主は、債務超過、支払不能又は支払停止状態になく、また本契約の締結及び履行により債務超過、支払停止又は支払不能状態となるおそれもない。
  6. 売主は、本契約の締結にあたり、自己の債権者及び第三者を害する意図、本株式譲渡により取得した財産の隠匿等の処分(破産法第161条第1項第1号に規定される隠匿等の処分をいう)をする意思又はその他不法な意図を有さない。
  7. 売主は、暴力団、暴力団員又はこれらに準ずる反社会的勢力に属する者ではなく、また反社会的勢力と意図的に交流を持つ者ではなく、反社会的勢力に資金提供又はそれに準ずる行為を通じて、反社会的勢力の維持、運営に協力又は関与していない。また、売主は、反社会的勢力との間でいかなる契約(書面であるか否かを問わない)も締結していない。

第2 対象株式に関する表明保証

  1. 対象会社の発行可能株式総数は普通株式●株であり、本件株式は、発行済全株式である普通株式●株により構成され、いずれも適法かつ有効に発行されたものであり、この他に対象会社によって発行された株式又は潜在的株式(新株予約権を含むがこれに限られない)は存在しない。
  2. 対象会社は、株券不発行会社であり、その株式に関する株券は一切発行されていない。【本件株券は、いずれも対象会社により適法かつ有効に発行された本件株式を表章する真正な株券である。】
  3. 売主は、本契約に基づき譲渡対象とする本件株式の全部についての完全な権利者であり、対象会社の株主名簿に記載されている株主である。
  4. 本契約に基づき譲渡対象とする本件株式に、質権、譲渡担保権等の担保権は設定されておらず、その他何らの負担も存しない。
  5. 本契約に基づき譲渡対象とする本件株式の譲渡に関し、対象会社の取締役会の承認等、買主に本件株式を譲渡するために必要な手続が全て完了している。

第3 対象会社に関する表明保証

  1. 組織及び構成

対象会社は、日本法に準拠して適法かつ有効に設立され、適法かつ有効に存続している法人であり、現在行っている事業を行うために必要な権限及び権能を有する。

  1. 財務諸表
    • 本件の交渉の過程及び買収監査において、対象会社から買主に提出された直近3年分の貸借対照表、損益計算書及びその他の財務書類(以下「本件財務諸表」という)は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されたものであり、かかる基準に基づき、基準日又は対象期間における対象会社の財務状況及びその変化を正確かつ公正に表示している。
    • 対象会社には、①本件財務諸表において正確かつ公正に表示されている債務、②直近決算期日以降に行われた対象会社の過去の業務と明らかに矛盾することのない通常の業務の過程において発生する債務以外には、対象会社の債務(偶発的債務及び潜在的債務を含む)は一切存在しない。対象会社は、保証債務(保証予約、経営指導念書等に基づく保証類似債務を含む)を負担しておらず、第三者の債務を負担若しくは保証し、又は第三者の損失を補填若しくは担保する契約を締結していない。
    • 対象会社の直近決算期日以降クロージング日までの間、対象会社の資産及び負債の状況、財政状態並びに経営成績に悪影響を及ぼし、又は変動若しくはその原因となるような事実は何ら生じていない。
  1. 資産の所有及び使用権限等
  • 対象会社は、その事業を遂行するために使用している資産の全てについて、これらを適法に所有し、賃借し、又はその他の方法で使用する権利及び権限を有しており、かかる資産については適切に保守と整備がなされており、良好な稼動状態にある。対象会社が遂行している事業は第三者の権利及び権限を侵害するものではない。
  1. 契約の継続性
  • 対象会社は、対象会社の事業を継続するために必要な取引先との間で適法かつ有効に継続取引に関する契約を締結しており、契約継続に影響を与える事由はなく、また、そのおそれもない。
  • 対象会社が締結している対象会社の事業を継続するために必要な取引先との契約は、本契約に基づく本件株式の譲渡が行われても、いずれかの解約若しくは変更又は対象会社の期限の利益の喪失を招く結果とならない。本件株式の譲渡は、対象会社と事業継続において必要な取引先との契約の継続を妨げるものではない。
  • 事業領域の制限その他対象会社の事業活動を制約する対象会社の契約は存在せず、また、契約上の若しくは関連法令に基づく対象会社の競業避止義務は存在しない。
  1. 役員
  • 対象会社と役員との間には、契約又は合意は存在せず、本契約に基づく本件株式の譲渡を条件として対象会社に支払義務を負わせる契約も存在しない。また、売主の知り得る限り、対象会社の役員の中で、対象会社から退職又は転籍することを表明している者は存在しない。
  1. 従業員
  • 対象会社と従業員との間には、就業規則、給与規定、退職金規定以外に、契約又は合意(口頭によるものも含む)は存在しない。対象会社と従業員との間には、本契約に基づく本件株式の譲渡を条件として対象会社に支払義務を負わせる契約(口頭によるものも含む)は存在しない。また、売主の知り得る限り、対象会社が現在行っている事業の遂行の観点から主要又は重要な従業員の中で、対象会社から退職又は転籍することを表明している者は存在しない。
  1. 労使紛争等の不存在
  • 対象会社には、ストライキ、ピケッティング、その他類似の労働争議は存在せず、また、労働組合は存在しない。従業員に関して、支払期限が到来した未払いの賃金、時間外、休日及び深夜の割増賃金、退職金その他の報酬、又は社会保険料は存在しない。対象会社は、労働関連法規(労働基準法及び労働者災害補償保険法を含むがこれに限らない)を遵守している。
  1. 年金及び保険等
  • 対象会社は、社会保険その他の保険・年金に関し、対象会社において支払いが要求されている全ての金額は、期限までに適法に支払われている。従業員等に対して支払う給与から社会保険・年金のために控除されるべき全ての金額は控除され、適当な機関又は者に支払われている。
  1. 知的財産権の侵害
  • 対象会社は、その事業を遂行するに当たり、第三者の特許権、意匠権、商標権、著作権その他の知的財産権を侵害しておらず、また、第三者から侵害をしている旨の警告書その他の通知等を受領していない。
  1. 情報システム
  • 対象会社がその事業を行うにあたり稼働しているシステムは、良好な稼働状態にあり、対象会社は、これを維持するために必要な保守と整備を自ら行うために必要な人員を確保しており、又は、有効な契約に基づき第三者に委託している。
  1. 製造物責任
  • 対象会社が顧客に提供した製品に関して、瑕疵担保責任、瑕疵修補責任、製造物責任及びその他名称の如何を問わずこれらに類する責任並びにそれらの原因となるべき事由は、存在していない。
  1. 保険
  • 対象会社それぞれは、その事業の遂行に伴い生じ得る損害及び損失の全てを填補することができると合理的に見込まれる保険に加入しており、対象会社それぞれは、当該保険に係る保険料の支払その他の義務を全て適切に履行している。
  1. 環境
  • 対象会社は、土壌、地下水、汚水、大気汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭、危険物又は廃棄物その他の環境問題に関する法令・規則その他の規制の違反はなく、これらの問題に関連する行政機関その他の第三者による調査その他の手続、クレーム、及びこれらの問題に基づく損害賠償その他の責任も存在せず、それらが発生する原因となる事実も存在しない。
  1. 公租公課
  • 対象会社は、所管の税務当局に対して適時必要な全ての税務申告書を提出しており、各々が支払うべき公租公課は適時に全額支払われている。対象会社が支払うべき公租公課について、更正決定、賦課決定その他対象会社が支払うべき金額を増加させる税務当局その他所轄当局の処分の原因となる事由は存在しない。
  1. 法令の遵守
  • 対象会社は、関連法令等を遵守しており、関係法令に基づく関係官署からの指導、処分を受ける事由は存在しない。
  1. 許認可
  • 対象会社は、実施している事業に必要な全ての許認可を有効に取得、保有しており、これらの許認可の無効、取消し事由は存在しない。
  1. 訴訟又は紛争
  • 対象会社には、民事、刑事又は行政上の裁判手続、訴訟その他の争訟は係属しておらず、また、対象会社の事業、資産又は財務状況に悪影響を及ぼす可能性のある紛争は存在せず、また、そのおそれもない。
  1. 反社会的勢力
  • 対象会社又は対象会社の役員は、暴力団、暴力団員又はこれらに準ずる反社会的勢力に属する者ではなく、また反社会的勢力と意図的に交流を持つ者ではなく、反社会的勢力に資金提供又はそれに準ずる行為を通じて、反社会的勢力の維持、運営に協力又は関与していない。
  1. 倒産手続等の不存在
  • 対象会社に対して倒産手続は開始されておらず、その申立もなく、また、かかる手続を開始する原因となりうる事実も存在しない。対象会社は、債務超過、支払不能又は支払停止の状態になく、また、そのおそれもない。
  1. 情報開示の正確性
  • 売主、対象会社及び対象会社子会社が本件の交渉の過程及び買収監査の過程で買主に対して開示した情報はいずれも、真実かつ正確であり、かかる資料又は情報について誤解を生ぜしめ又は不正確にならしめるような事実の省略はなされていない。

以上

M&A契約書|表明保証(レプワラ)の逐条解説

※事務所内勉強会議事録より

【表明保証】

表明保証とは、株式譲渡契約書の第6条(売主の表明保証)、第7条(買主の表明保証)です。売主及び買主について、それぞれ、2つの基準日、契約締結日とクロージング日において、表明保証の内容を表明保証します。
表明保証の内容が虚偽であった場合は、前提条件を充足しないこととなり、株式譲渡が実行されないこととなります。また、表明保証違反による損害は損害賠償の対象となります。また、表明保証違反は解除事由にもなります。株式譲渡契約書第22条では「重大な表明保証違反があることが判明し、その結果本契約を維持することが困難になった場合」に解除が可能になりますが、ここでは、「重大な」という言葉が重要です。解除はM&Aに対する影響が大きいので、表明保証違反の程度が「重大な」場合のみ解除できるものとしたのです。

【表明保証別紙】
 別紙1 売主に関する表明保証、別紙2 買主に関する表明保証ともに、1から7まであります。ここでは売主や買主は契約当事者として問題ないという表明保証であり、内容は同じです。違う点は、売主については「第2 株式に関する表明保証」、「第3 対象会社に関する表明保証」が存在している点です。

【1 売主に関する表明保証、1】
「1 売主は、本契約を締結する完全な意思能力・行為能力を有している。」
契約当事者に、意思能力がなければ契約は無効、行為能力がなければ未成年者などですから、契約の取消事由になります。M&A契約が無効又は取消にならないよう、この表明保証では1つずつ押さえてゆきます。これらのうち一つでも漏れていたら弁護士の責任になりますので、全て書く必要があります。個別具体的なケースでは他にも書くべき表明保証が存在する場合があります。
「2 売主は、本契約を締結・履行するために必要な権限・権能を有しており、必要な手続を完了している。」
契約当事者は、「必要な手続を完了」していなければ、手続に何らかの瑕疵があることとなり、本契約を締結する権限・権能にも瑕疵があるとされ、最終的に無効・取消になりますので、このような表明保証がなされます。

【別紙2 買主の表明保証、1】
 株式譲渡契約書では、買主については法人、売主については個人を想定しています。
「1. 買主は、日本法に基づき適法かつ有効に設立され、かつ存続する株式会社であり、現在行っている事業を行うために必要な権限及び権能を有している。」
買主についても、(代表者に)意思能力がない場合は契約は無効になり、行為能力がない場合、すなわち(代表者が)未成年者の場合や成年後見がついている場合には行為能力が存在しないので取消事由になります。そして、株式会社のように日本法に基づき適法かつ有効に設立されていなければ、その法人には、権利能力がないこととなりますので、このような表明保証がなされます。

【別紙2 買主の表明保証、2】
「2. 買主は、本契約を締結・履行するために必要な権限・権能を有しており、本契約の締結・履行はその目的の範囲内であり、本契約を締結・履行するために必要な内部手続を完了している。」
売主の2を見ているだけでは分かり難いですが、買主の2に関連して、法人については、過去、目的の範囲外の法律行為は、無効であるという論点がありました。さらに、医療法人などの他の法人形態の場合は、目的の範囲内でない行為は無効にされてしまうことがありますので、この表明保証が入っています。
また、「本契約を締結・履行するために必要な内部手続を完了」していない場合、株式会社については対外的には有効とされますが、他の法人形態については無効とされることもあります。そもそも手続きの履践がなされていない場合は、相手方当事者はトラブルに巻き込まれかねませんので、このような表明保証がなされます。

【第1 売主に関する表明保証、3】
「3. 本契約は、売主により適法かつ有効に締結され、法的拘束力を有し、強制執行が可能である。」
およそ当事者が合意した契約については、自然債務以外は法的拘束力があり、強制執行が可能なはずですが、違法な内容の合意は、強制執行が不可能です。また、違法とまではならなくても法的に執行が不可能な合意も存在します。ですので、このような表明保証がなされます。

【第1 売主に関する表明保証、4】
 「4. 売主による本契約の締結及び履行は、(i)売主が当事者となっている契約書等、又は(ii)売主に適用される法律等に違反・抵触しない。」
売主は、当事者となっている契約や法律に違反していないと幅広く書かれています。法人の場合は、買主に関する表明保証の方を見ると分かりますが、「4. 買主による本契約の締結・履行は、(i)買主の定款、(ii)売主が当事者となっている契約書等、又は(iii)買主に適用される法律等に違反・抵触しない。」とされ、「定款」に違反しないことも表明保証することとなります。財団であれば「寄附行為」を追加します。株式譲渡契約書がこれらに違反した場合、無効になる可能性もあり、そうでなくても契約書の執行に悪影響が生ずるため、このような表明保証がなされます。

【第1 売主に関する表明保証、5】
「5. 売主に対して倒産手続の開始・申立はなく、その開始原因も存在しない。売主は、債務超過、支払不能又は支払停止の状態になく、また、そのおそれもない。」
契約当事者が倒産手続に入ってしまうと、双方未履行の双務契約を解除することができることになりますので、株式譲渡契約書が解除可能となってしまいます。そもそも、それ以前に、株式譲渡契約の相手方が倒産してしまうような場合、株式譲渡代金を払ってもらえなかったり、無事に株式譲渡の実行にたどり着けない可能性が生じます。ですので、このような表明保証がなされます。

【第1 売主に関する表明保証、6】
「6. 売主は、本契約の締結にあたり、債権者又は第三者に対する、詐害意図、財産の隠匿等の処分意思又はその他不法な意図を有さない。」
株式譲渡契約書の当事者がこのような意図を有していた場合、契約自体が取消されるおそれがあります。民法424条の詐害行為取消権です。不法な意図、隠匿などは、破産法、民事再生法、会社更生法、に書かれている否認権です。倒産法下では、詐害行為取消権のことを否認権といいます。
詐害行為取消権・否認権は、時効がいずれも基本的に2年です。否認権はいくつか種類があり、その中には長い時効のものもあります。
M&Aを行った後2年後に、詐害意図、隠匿等の意図、不法な意図を有していたなどの理由により、株式譲渡契約が否認や取消をされてしまったとしたら大きな問題です。ですので、このような表明保証がなされます。

【第1 売主に関する表明保証、7】
「7. 売主は、反社会的勢力に属したことはなく、また、反社会的勢力との間で、いかなる合意又はこれに類する関係(書面であるか否かを問わない)を有していない。」
反社会勢力排除条項です。現在では一般的な規定となっています。

【第2 株式に関する表明保証】
株式譲渡契約ですので、取引の対象物である株式が、有効に成立し、存在していることが非常に重要です。存在していなければ取引自体が無効になりますので、このような表明保証があります。

【第2 株式に関する表明保証、1】
「1. 対象会社の発行済株式総数は普通株式○○株であり、この他の発行済株式又は潜在的株式は存在せず、いずれも適法かつ有効に発行されている。」
まずは発行済株式総数が重要であり、これは登記を見ればわかります。「この他の発行済株式又は潜在的株式は存在せず」とあり、この株式譲渡契約書では100%株式譲渡を想定しているためこのような表明保証となっています。
「潜在的株式」とは法律用語ではないため、本来ならば定義しなければなりませんが、長くなってしまうため、このフォーマットでは定義していません。潜在的株式とは、新株予約権、新株予約権付社債、増資をする際の新株引受権などのことです。株式オプション、株式発行契約も含まれます。また、外国法上のCB(転換社債)といわれるものにも、契約上、株式オプションがついています。
買主の意図に反して株式が発行されるなどし、買主の持株比率が減ってしまうようなものは存在していてはいけません。発行可能株式数については、受験枠が残っていたとしても、対象会社が株式を発行しなければよいだけですので、ここでは表明保証に含めていません。すでに発行されている新株予約権などについては、これが権利行使された場合は株式が発行されますので、問題となります。ですので、このような表明保証がなされます。

【第2 株式に関する表明保証、2】
「2. 本件株券は、いずれも対象会社により適法かつ有効に発行された本件株式を表章する真正な株券である。」
この表明保証は株券発行会社を想定している規定です。株券不発行会社であれば、対象会社には株券は存在しておらず、過去に発行されたことがないことを表明保証する必要があります。また、株券については、会社法上の必要記載事項(代表取締役の押印など)が記載されているかを確認する必要があります。「本件株式を『表章』する」の『表章』とは、株主権という権利を化体するといった意味です。

【第2 株式に関する表明保証、3】
「3. 売主は、本契約に基づき譲渡対象とする本件株式の全部についての完全な権利者であり、対象会社の株主名簿に記載されている株主である。」
「本件株式」とは、第1条において、本契約における譲渡対象となる株式であると定義されていますので、株式譲渡契約書に基づいて譲渡する株式全てについて、完全な権利者であるということを表明保証しています。「完全な」という言葉は、法律上の用語ではありませんが使われています。株主名簿の名義書換請求をする必要があるので、株主名簿に記載されている株主であることも表明保証していただく必要があります。

【第2 株式に関する表明保証、4】
「4. 本契約に基づき譲渡対象とする本件株式に、質権、譲渡担保権等の担保権は設定されておらず、その他何らの負担も存しない。」
株式に質権、譲渡担保権等の担保権が設定されていた場合、これらの権利を実行されると、売主は株主ではなくなってしまい、株式譲渡契約書に基づき取引対象物である株式そのものの譲渡ができなくなってしまいます。また、「その他何らの負担も存しない」の「負担」についても本来は定義する必要がありますが、賃借権、地上権などの権利が存在します。株式にこれらの「負担」が存在していた場合、やはり、買主は完全な株主権を行使できなくなってしまいますので、このような表明保証がなされます。
ここでは種類株式については特段表明保証されていません。上記1で、「対象会社の発行済株式総数は普通株式○○株・・」と表明保証していますので、種類株式が発行されていない前提であり、もし種類株式が発行されていた場合は、この表明保証に違反します。また、種類株式には転換権がついていることが多くなっています。取得条項付株式、取得権付株式などは、会社がこの種類株式を取得し、その後に別の株式を発行するか、現金を交付するか、新株予約権を発行すると言ったことを予定していますので、転換権付きの種類株式の多くは潜在株式となり、上記1の表明保証に違反することとなるのです。

【第2 株式に関する表明保証、5】
「5. クロージング日において、対象会社において、買主に本件株式を譲渡するために必要な手続が全て完了している。」
中小企業の事業承継M&Aの場合は、対象会社の株式譲渡について譲渡制限がついていることが一般的ですが、この表明保証は、譲渡承認手続きが完了しているということを表明保証するものです。
「クロージング日において」と表明保証の基準日が限定されているのは、株式譲渡に説いては、クロージング日にこの手続きが完了していれば問題ないのであって、契約締結日にこの手続きが完了している必要はないためです。

【第3 対象会社に関する表明保証、1. 組織及び構成】
 ここからが表明保証の本丸です。
「対象会社は、日本法に準拠して適法かつ有効に設立され存続している株式会社であり、現在の事業を行うために必要な権限及び権能を有する。」
この表明保証は基本的なことを言っています。「対象会社」という言葉は定義されているかと思いますが、買収される対象の会社のことをいいます。対象会社が適法かつ有効に設立されておらず、また、存続していなかったら、買収することはできません。現在の事業を行うために必要な権限及び権能を有していなければ、そもそも買収の対象になりえません。

【第3 対象会社に関する表明保証、2. 財務諸表】
 M&Aにおいては、買主は、売主から提出された財務諸表を含む一切の書類を信用した上で弁護士・会計士がデューデリジェンスをおこない、M&Aを行います。その書類の中で一番重要なものが決算書類を含む財務諸表です。買主は、これらに基づいて企業価値を算定し、株式価値を計算し、M&Aを行います。重要なのは、それらの数字です。
 「(1) 対象会社から買主に提出された貸借対照表、損益計算書及びその他の財務書類は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されたものであり、対象会社の財務状況及びその変化を、正確かつ公正に表示している。」
本項では、決算書を含む貸借対照表、損益計算書等が正しいことを表明保証していただいています。「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」という用語ですが、企業会計基準に基づいて決算書などが作成されているときに使われる典型的な用語です。会計士が作成する決算書などは、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいており、その基準は、日本のもの、そして海外のものも含みます。対象会社の「財務状況」を正確かつ公正に表示しているのは貸借対照表であり、ある特定時点の会社の財務状況を示しています。対象会社の財務状況の「変化」を正確かつ公正に表示しているのは損益計算書であり、1年間の変化を示しています。
「(2) 対象会社には、①貸借対照表、損益計算書及びその他の財務書類に表示されている債務、②通常の業務の過程において発生する債務以外には、債務(偶発的債務及び潜在的債務を含む)は存在しない。対象会社は、保証債務及び保証類似債務を負担しておらず、第三者の債務を負担・保証・補填・担保していない。」
(1)では、決算書、財務諸表が正しい旨を表明保証していただいているのに対して、、(2)では財務諸表以外でも問題ない旨を表明保証していただいています。偶発的債務とは保証債務のような、なにか事件が起きた場合に具体的な債務が発生するものをいい、潜在的債務とは隠れた債務、たとえば作った製品に瑕疵があり、平常時においては隠れているものの、将来損害賠償される可能性があるようなものをいいます。
 「(3) 対象会社は、直近決算期日以降、その資産・負債・財政状態・経営成績に、悪影響又は変動若しくはその原因となる事実は何ら生じていない。」
(1)(2)において、財務諸表の内も外も問題ない旨を表明保証していただいておりますが、(3)では、財務諸表の基準日以降も問題ない旨を表明保証していただいています。
 契約書全体がMECEであることが重要です。MECEとは、「相互に排他的な項目」による「完全な全体集合」を意味する言葉であり、「重複なく・漏れ なく」という意味です。ロジカル・シンキングの一手法であり、弁護士は論理的な思考をしなくてはいけません。規定に漏れがないようにしつつ、かつ、また重複もあってはなりません。

【第3 対象会社に関する表明保証、3. 資産の所有及び使用権限等】
 「(1)対象会社は、その事業を遂行するために使用している資産を適法に所有し、賃借し、又はその他の方法で使用する権利及び権限を有している。」
買主は、対象会社を買い受けた後も、従前同様に事業を運営できることがM&Aの目的ですので、対象会社の資産をしっかり所有し使用収益できることが前提です。所有だけではなく、賃借その他の方法によっても使用できますので、いずれかの方法で使用収益できることが前提です。
 「(2)かかる資産には、質権、譲渡担保権等の担保権は設定されておらず、その他何らの負担も存しない。」
対象会社の資産について、質権、譲渡担保権等の担保権のような負担が存在していると使用収益できなくなりますので、ここにて表明保証していただいています。
 「(3)かかる資産については適切に保守と整備がなされており、良好な稼動状態にある。」
対象会社の資産は、上記のようにしよう就役するために必要なものですので、良好な稼働状態にある必要があります。

【第3 対象会社に関する表明保証、4. 契約の継続性】
 「(1)対象会社は、その事業を継続するために必要な取引先等との契約を適法かつ有効に締結しており、契約継続・取引条件の維持に重大な影響を与える事由はなく、また、そのおそれもない。」
買主の目的は、対象会社を買い受けた後も従前どおり会社を経営することですので、そういったケースを想定して、株式譲渡契約書は作られています。M&Aの後も事業を継続するためには、対象会社は、必要な取引先との契約を適法かつ有効に締結している必要があります。賃貸借契約を締結しているが賃料を払っていない、ライセンス料を払っていない、などの重大な問題が存在しないことが重要です。「必要な取引先等との契約」とありますが、対象会社が必ずしも必要な契約のすべてを締結していない場合については、「必要な」を「重要な」に入れ替えます。「重大な影響を与える事由はなく」とありますが、小さな影響はままありますので、「重大な」に限定しています。
 また、「重大な」ではなく、「知る限り」「知り得る限り」という言葉もよく使われます。「必要な取引先等との契約を適法かつ有効に締結」について、売主としては、対象会社が実際に締結しているか不明な場合は、「売主の知り得る限り」または「売主の知る限り」と書くことで、表明保証違反が存在したとしても、それについて知らなかったということで言い逃れができます。ただ、「知る限り」ではなく、少なくとも「知り得る限り」にした上で契約書を最終化すべきです。「知り得る」であれば、売主が過失によって知らなかった場合は免責されませんので、買主は売主に対して表明保証違反の責任を追求できます。本当に知らなかったという、やむをえない場合のみが免責されることとなります。
 「(2)対象会社が締結している取引先等との契約は、本契約に基づく取引が行われても、いずれかの解約若しくは変更又は期限の利益の喪失を招く結果とならない。」
M&Aが行われても、対象会社において、取引先等との契約が解除されてしまわないといういわゆるチェンジ・オブ・コントロール条項(COC条項)が存在しない旨の規定です。
 「(3)本契約に基づく取引は、事業継続において必要な取引先等との契約や条件の継続及び維持を妨げるものではない。」
いわゆるチェンジ・オブ・コントロール条項(COC条項)に似ていますが、事業継続一般に必要な契約を妨げるものではない旨を表明保証していただいています。
 「(4)対象会社の契約において、事業領域の制限その他事業活動の重大な制約は存在せず、また、対象会社の競業避止義務は存在しない。」
対象会社に、事業領域の制限や競業避止義務を定めた契約が存在した場合、買主による対象会社の経営に大きな制約が生じますので、このような表明保証がなされます。

【第3 対象会社に関する表明保証、5. 知的財産権の侵害】
 「対象会社は、その事業を遂行するに当たり、第三者の特許権、意匠権、商標権、著作権その他の知的財産権を侵害しておらず、また、第三者から侵害をしている旨の警告書その他の通知等を受領していない。」
対象会社が特許権の侵害をしていた場合は、買主の不慮の損害につながりますので、このような表明保証がなされます。

【第3 対象会社に関する表明保証、6. 情報システム】
 「対象会社がその事業を行うにあたり稼働しているシステムは、良好な稼働状態にあり、対象会社は、これを維持するために必要な保守と整備を自ら行うために必要な人員を確保しており、又は、有効な契約に基づき第三者に委託している。」
ここでは、対象会社のシステムが良好な稼働状態にあって、自ら行うために必要なメンテナンスもしっかり行われているということを表明保証していただいています。
 知的財産権や情報システムも資産ですので、上記の資産に関する表明保証も適用されます。ここでは、知的財産権や情報システムに特別な表明保証を追加しています。

【第3 対象会社に関する表明保証、7. 役員】
 「対象会社と役員との間には、契約・合意(ただし、任用契約として一般的に合意される内容を除く)は存在しない。」
一般的に、役員の場合は任用契約を締結しませんが、口頭でも契約は成立しますので、任用契約も存在しており、一般的な任用契約以外は存在していないと表明保証していただいています。「一般的なもの」に退職慰労金規程が含まれるのかはわかりませんが、退職慰労金規程が存在しないのであれば明確に規定することが好ましいと思われます。
 「対象会社と役員との間には、本件株式の譲渡を条件として対象会社に重大な支払義務を負わせる契約(口頭によるものも含む)も存在しない。」
ゴールデンパラシュートの禁止です。日本ではあまり聞きませんが、M&Aにより役員がクビになった場合に、何十億円もの退職慰労金が発生する契約を結ばれている場合があります。役員がゴールドでできたパラシュートで会社から逃げるということですが、これを禁止する規定です。日本でも、オーナー経営者が会社を売却する際に、自分や従業員に臨時ボーナスや臨時昇給などと称して、会社の資金をばらまいてしまうことがありますので、表明保証していただいています。

【第3 対象会社に関する表明保証、8. 従業員】
 「(1)対象会社と従業員との間には、就業規則、給与規定、退職金規程以外に、契約又は合意(口頭によるものも含み、雇用契約として一般的に合意される内容を除く)は存在しない。」
対象会社には、デューデリジェンスした就業規則、給与規定、退職金規程以外の従業員との契約は存在しない旨の規定です。いこれら以外にも存在する場合はここに追記しなくてはなりませんし、M&A後にもし他の規程などが発見された場合は、表明保証違反に基づき売主に対して損害賠償請求が可能となります。
 「対象会社と従業員との間には、本件株式の譲渡を条件として対象会社に重大な支払義務を負わせる契約(口頭によるものも含む)は存在しない。」
従業員用のゴールデンパラシュートが存在しないことを表明保証していただいています。
 「(2)対象会社が事業の遂行の観点から主要又は重要な従業員の中で、対象会社から退職又は他社への転籍を表明している者は存在しない。」
これはいわゆる「キーマン条項」と言われます。特に、中小企業の場合、特定の従業員が対象会社にとって非常に大きな役割を果たしていることがあります。その人が辞めてしまうと、買主としては対象会社を従前どおり運営できなくなり、企業価値が毀損されてしまうこととなります。このような「キーマン条項」においては、そのキーマンである従業員の具体的な名前を挙げることもありますし、その従業員が一定期間以内に退職した場合、表明保証性菌を負うように規定することもあります。

【第3 対象会社に関する表明保証、9. 労使紛争等の不存在】
 「(1)対象会社には、重大な労働争議は存在せず、また、労働組合は存在しない。」労働争議や労働組合が存在する会社を買いたくない場合に規定します。
 「(2)従業員に関して、支払期限が到来した未払賃金・退職金その他の報酬、又は社会保険料は存在しない。」未払残業代などが存在してないという規定です。
 「(3)対象会社は、労働関連法規(労働基準法及び労働者災害補償保険法を含むがこれに限らない)を、遵守している。」労働関係の問題としては2つ、未払残業代などの数字の問題、およびコンプライアンスの問題があります。遵守していないがために、労基署が入ってくる、1年間労基署の監理になってしまうと非常に負担が大きいため、この規定があります。

【第3 対象会社に関する表明保証、10. 年金及び保険等】
 「対象会社は、社会保険料その他の保険料・年金掛金等について、期限までに適法に支払われている。対象会社は、加入する社会保険組合や年金基金(※フォーマット本文は、基金の「金」が抜けています。)に積立不足など存在せず、保険料・年金掛金等について、特別掛金他の追加資金拠出義務が発生することもない。」未払賃金と並ぶ重要な問題が、未払社会保険料です。支払われていたとしても、現在は株価が高いので多くはありませんが、株価が下がると積立不足が発生することがあります。買主が対象会社を買った後、自身の会社の年金基金に加入させよう、元々の年金基金から脱退しようとした際に、特別掛金などの追加資金拠出義務が生じることになります。株価が下がっている場合はインパクトが非常に大きく、1億円、2億円追加拠出させられることがあります。株価が低い時期のM&Aはブレイクすることが多くあります。年金にそもそも入っていなければ問題は生じません。

【第3 対象会社に関する表明保証、11. 製造物責任】
 「対象会社が顧客に提供した製品に関して、瑕疵担保責任、瑕疵修補責任、製造物責任及びその他名称の如何を問わずこれらに類する責任並びにそれらの原因となるべき事由は、存在していない。」たとえば、対象会社が製造したスピーカーに瑕疵があるのであれば大きな問題ではありませんが、スピーカーの一部品のみを作っており、その部品が壊れていた場合はスピーカー全体に影響が及ぶため、損害賠償義務が大きくふくれあがります。デューデリジェンスにおいて、製造物責任に関するチェックが非常に重要です。多くの会社は保険に加入し、可及的に損害が拡がることを防いでいますが、保険でカバーできる程度については不明です。

【第3 対象会社に関する表明保証、12. 保険】
 「対象会社は、事業の遂行に必要な保険に加入しており、当該保険に係る保険料の支払その他の義務を、全て適切に履行している。」「必要な」保険の水準ですが、通常、同業者であれば入っているべき保険、かつ通常の保険の水準、といった漠然とした意味です。全てカバーできるわけではないが、通常期待できるぐらいの保険には入っておいてくださいという規定です。

【第3 対象会社に関する表明保証、13. 環境】
 「対象会社は、環境問題に関する法令等の重大な違反はなく、行政機関等による調査手続、クレーム、及び損害賠償等の重大な責任も存在せず、それらが発生する原因となる事実も存在しない。」M&Aで頻出する環境問題としては、アスベストとPCBがあります。アスベストの処理には非常に費用がかかります。PCBについても、たとえば地下に保管されていたケースなどがありますが、保管方法には決められたものがあるため、非常に費用がかかります。そのほか典型的な環境問題としては、土壌汚染および水質汚濁があります。化学工場から汚染された水が垂れ流されている場合、隣の土地、地下水までも汚染されていることがあります。某不動産会社が購入したマンション用の土地が汚染されていたため、地表から1~2メートルの土を新しいものと入れ替えることになり、何十億円もの費用がかかったことがあります。工場やクリーニング店、自動車整備工場、食品工場などのM&Aにおいては、環境問題について注意する必要があります。

【第3 対象会社に関する表明保証、14. 公租公課】
 「対象会社は、税務当局に対して適時必要な税務申告書を提出しており、公租公課は適時に全額支払われている。」
「公租」は税金、「公課」は社会保険などの公的な負担のことです。ここでは、税務申告書を提出しているだけでなく、適時公租公課を支払っている旨を表明保証していただいています。
 「また、公租公課の更正決定、賦課決定その他対象会社が支払うべき金額を増加させる税務当局の処分の原因となる事由は存在しない。」
もちろん、対象会社が公租公課を支払った後も引き続き問題が生じないこと、すなわち対象会社が支払うべき金額を増加させるような更正決定なども存在しないと規定しています。

【第3 対象会社に関する表明保証、15. 法令の遵守】
 「対象会社は、関連法令等を遵守しており、関係法令等に基づく関係官署からの指導、処分を受ける事由は存在しない。」
対象会社に法令違反が存在していないことについて、表明保証していただいています。

【第3 対象会社に関する表明保証、16. 許認可届出等】
 「対象会社は、実施している事業に必要な全ての許認可届出等について、有効に取得、保有しており、又は適切に届出等の手続きをしており、これらの許認可届出等の無効、取消事由は存在しない。」
対象会社の許認可届出等が取り消されてしまうと、事業を継続できません。買主の目的はあくまでも、対象会社を買収し、従前どおり事業を継続することですので、M&Aの後においても、許認可届出等は引き続き有効で、かつ、取消事由は存在しないことが必要であり、ここでは、これを表明保証していただいています。

【第3 対象会社に関する表明保証、17. 訴訟又は紛争】
 「対象会社には、訴訟その他の争訟は係属しておらず、また、対象会社の事業、資産又は財務状況に悪影響を及ぼす可能性のある紛争は存在せず、また、そのおそれもない。」
訴訟紛争が存在しないことを、表明保証していただいています。
ここでは、「おそれ」という言葉を使用しています。すなわち、訴訟紛争が存在していないことに加えて、今後も発生する可能性がないということを表明保証していただいています。表明保証とは、契約締結日及びクロージング日の2つの基準日における表明保証となりますので、それらの基準日に紛争が存在していないとしても、基準日の3日後に訴訟提起がされる可能性もあります。そこで、このように「おそれ」もない旨の表明保証をしていただくことにより、基準日以降も当面の間において発生した場合も表明保証違反となるように規定しています。

【第3 対象会社に関する表明保証、18. 反社会的勢力】
 「対象会社は、反社会的勢力に属したことはなく、また、反社会的勢力との間でいかなる契約又はこれに類する関係(書面であるか否かを問わない)も有していない。」
いわゆる反社会的勢力の排除に関する表明保証です。

【第3 対象会社に関する表明保証、19. 倒産手続等の不存在】
 「対象会社に対して倒産手続の開始・申立はなく、その開始原因も存在しない。対象会社は、債務超過、支払不能又は支払停止の状態になく、また、そのおそれもない。」
対象会社が倒産情痴にないことについての表明保証です。

【第3 対象会社に関する表明保証、20. 財務状態等】
 「対象会社の資産、負債、財務状態、事業収益性又は営業に悪影響を及ぼすと認められる事由は生じておらず、将来、かかる事由が生じることを合理的に推認させる事実も存在しない。」
対象会社に後発事象が存在しないことに関する表明保証です。

【第3 対象会社に関する表明保証、21. 業務委託契約の不存在】
 「対象会社は、本件株式の譲渡に関連して、委託売買手数料、代理人手数料、斡旋人手数料又はこれらに類するその他の報酬を支払う義務を第三者に対して負担しておらず、かつ、負担することに合意していない。」
この表明保証は、M&A仲介契約の不存在について表明保証していただいているので、文章を簡潔にするために「M&A仲介契約」と書くべきかもしれません。M&A仲介契約を締結すべきなのは、売主と買主であり、対象会社ではありません。売主と買主がM&A仲介会社に仲介手数料5%を払います。1億円のM&Aの場合のM&A仲介手数料は500万円です。このM&A仲介手数料の支払いから逃れようとする売主が非常に多く、対象会社にM&A仲介契約を締結させ、対象会社にM&A仲介手数料を負担させようとするので。買主としては、そのようなことは受け入れることはできませんので、このような表明保証がなされます。

【第3 対象会社に関する表明保証、22. 情報開示の正確性・網羅性】
 「売主が本件の交渉の過程及び買収監査の過程で買主に対して開示した情報はいずれも、真実かつ正確であり、かかる資料又は情報について誤解を生ぜしめ又は不正確にならしめるような事実の省略はなされていない。」
この表明保証は、完全開示条項と言われるもので、売主が開示した情報は全て正確であるべき旨、表明保証していただいています。売主によっては、買主に聞かれなかったので黙っていたと言うことがあります。しかし、買収監査での開示は網羅的に行う必要もありますので、その場合であっても表明保証責任は負うこととなります。

【表明保証におけるデューデリジェンス機能】
 M&Aにおいて、トラブルが起こるたびに、株式譲渡契約書の規定が増え、依頼者から契約書が長すぎると言われることもあります。この株式譲渡契約書はかなり定義を省略したり、規程を簡潔にしたミニマムなバージョンです。
 表明保証には、デューデリジェンス機能があります。売主に対して、株式譲渡契約書の表明保証を説明していると、売主のオーナー経営者が、「私の会社はこのように完璧ではないから、サインできない」と言い出すことが多くあります。その場合、どうすべきか。株式譲渡契約書を締結されていないなら、どこが問題なのか確認する必要があります。設備が良好な稼働状態にあると言えないのであれば、どこが良好ではないのか、と聞く必要があります。すなわち、表明保証はいわばデューデリジェンスの質問票です。もし、表明保証条項に違反したら損害賠償責任を負いますと明快に説明しなければいけません。これを説明することで、売主は、表明保証条項違反に基づく損害賠償責任を恐れ、「この箇所は実際と違う」と言い出しますので、さらにヒアリングした上で、株式譲渡契約書を修正することとなります。本来は、表明保証条項は基本的には修正せず、表明保証条項を修正する別紙を付けることで対処します。
 売主の表明保証は別紙1ですので、たとえば、「4. 契約の継続性」の表明保証条項について修正するのであれば、別紙2の4とします。
買主としては、デューデリジェンスをして問題が発見された場合、①表明保証を削除して、その問題の存在を甘受するか、もしくは、②表明保証を修正するため修正の別紙を作成するかということになります。その際、表明保証条項違反についての認識又は認識可能性の影響の問題に留意する必要があります。表明保証に嘘を書いたらその表明保証条項は効力が生じません。このような場合、表明保証違反以外の方法で損失を補償してもらえるように特別補償条項を規定します。
 例えば、別紙2の4を作成し、「以下の契約はM&A後の法的な継続性に疑義がある」として、「対象会社と○○取引先との間における平成○年○月○日付○○商品売買契約書」などと規定し、別紙で表明保証の対象から除外します。表明保証の4全体を削除すると、想定外のものまで表明保証違反の対象からは売れてしまいますので、別紙において、限定的に削除するのです。
表明保証条項に「重大な」「知り得る限り」との文言を入れて、重要ではない場合を表明保証の対象から除外することもあります。英語で「重要な」はmaterialですので、material carve-outと言います。
デューデリジェンスにおける確認事項は広範に渡りますが、表明保証条項は、デューデリジェンスにおける確認事項と重複します。表明保証条項のデューデリジェンス機能により、M&Aでは最後の最後までデューデリジェンスを実施するということとなるのです。表明保証の確認は、デューデリジェンスにもなりますので、M&Aにおいて非常に重要です。

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