M&Aにおける基本合意書についてM&A弁護士が徹底解説!

M&Aの基本合意書とは、無題M&Aの交渉が一定程度進み、買主候補企業が対象会社を基本的に買収するという意思を固めた場合に、基本的に対象会社を買収するとの意向及びそれまでに合意に至った事項について、当事者間で確認するための契約書です。

基本合意書は、英語では、Letter of Intent(LOI)と呼ばれますので、通常、日本でも、LOIと呼ばれたりします。

基本合意書の重要性

M&Aのプロセスは長く、時間もかかるため、売主や買主候補会社のM&Aに対する姿勢も、プロセスに応じて変化してゆきます。

M&Aの最終契約書において当事者双方が合意すべき内容については、非常に広範にわたることもあり、M&Aのプロセスの最終段階で最終契約書のDRAFTを提示され、突然、M&Aの詳細な取引条件を提示されても、速やかに合意至ることはできません。やはり、合意できるような事項については、随時、書面にして、双方当事者が明確に認識したうえで合意しつつ、M&Aのプロセスを進めてゆくことが、M&Aの最終合意にスムーズに到達することができます。

また、M&Aプロセスにおいては、プロセスの重要な節目節目において、相手方の意向を正確に確認しつつ進めてゆくことを欠いた場合、双方当事者ともM&Aの手続きを進めつつも、実際は、双方当事者が前提として考えていた事項が異なるなどした場合、最終契約書の段階で、双方の認識が異なり、同床異夢であることが発覚し、M&Aが取り止めになることもあり、そのようなことになると、双方がそれまでに費やしたM&Aに対するエネルギーとコストが無駄になることとなります。

また、M&Aのプロセスが進むごとに、売主や対象会社は対象会社の機密情報を開示することになりますが、売主や対象会社としても、買主候補会社が、M&Aに対して、それなりの具体的な意思を示して頂かないと、そのような機密情報を開示することはできませんし、マネジメントインタビューや経営者面談、さらにはデューデリジェンスなどの非常に手数のかかる対応は困難ということとなります。売主としても、希望する条件でのM&Aの実現可能性が高くないのであれば、次のステップに進みたくないのです。

他方、買主候補会社としても、売主のM&Aに対する意思が固まっていない場合や、売主が買主の希望する特定のM&Aの条件について、基本的に合意して頂いていない段階では、そのM&Aを具体的に検討することや、マネジメントインタビューや経営者面談、さらにはデューデリジェンスなどの非常に手数のかかる対応は、エネルギーやコストを無駄に投入することとなるため困難ということもあります。買主候補会社も、希望する条件でのM&Aの実現可能性が高くないのであれば、次のステップに進みたくないのです。

したがって、M&Aのプロセスにおいては、特に、株式譲渡価格などのM&A対価や特定の重要な取引条件などについて、相手方と基本的に合意しつつプロセスを進めるため、基本合意書が締結されることが多くなっています。

M&Aの基本合意書の構成

M&Aの基本合意書は、売主と買主候補企業とが、それまでに、基本的に合意に至った内容が記載されることになりますので、M&Aの基本合意書には、通常、基本的に対象会社を買収する旨及び基本的に対象会社を売却する旨の当事者の意思以外にも、買収予定価格(デューデリジェンス(DD)の結果に応じて価格が修正されること)、M&Aスキームの概要、対象会社の役員・従業員の処遇、一定事項の表明及び保証、一定事項の遵守義務、M&Aのスケジュール、M&Aのデューデリジェンス(DD)の実施、M&Aの独占交渉権などが記載されます。

すなわち、M&Aの基本合意書には、一般的に、以下のような項目が含まれます。

1.取引基本条件

2.スケジュール

3.独占交渉権

4. デューデリジェンス(DDに関する取り決め

5.誓約事項

6.法的拘束力

基本合意書には法的拘束力が存在しない!?

買主候補企業としては、M&Aの基本合意書の段階ではまだ対象会社の会社の精査・会社の監査(デューデリジェンス(DD))は終了していないでしょうから、M&Aの基本合意書に規定された条項は、法的拘束力を有しないものとすることが一般的です。

M&Aの基本合意書に法的拘束力がないのであればそのような基本合意書を締結しても意味がないじゃないかと思われるかもしれませんが、M&Aの詳細の条件が決定していないこの段階で法的拘束力を有する合意をすることができないのはやむを得ないことですし、法的拘束力がないと言っても書面に明確に記載される以上、相手方の意思が明らかになるわけですので、事実上の拘束力はあり、そもそも当事者の意思が明らかになることにより基本合意書に規定された当事者の意向が事実上固定化される効果があることは非常に重要です。

すなわち、M&Aの基本合意書に規定しなかったM&Aの条件については、後日、最終契約書において、条件として追加が事実上ではあるものの困難になるとか、基本合意書に規定した条件については、最終契約書で合理的な理由を説明し、それが受け入れられない限り、事実上、なかなか変更は困難になります。基本合意書において、法的拘束力は存在しないのですが、このような事実上の拘束力は存在し、この段階において、既にM&A交渉が始まっていることに留意する必要があるのです。

例えば、デューデリジェンス(DD)の結果に基づく企業価値相当額を、売主であるオーナーに対して、①株式譲渡代金と②退職慰労金に分けて支払う旨規定されていたが、売主であるオーナー貸付金の返済については言及されていなかった事例において、買主候補企業に対して、オーナー貸付金の返済は不要であると印象付けてしまい、最終的に、オーナー貸付金の放棄を迫られてしまうケースや、M&A株式譲渡代金は「時価純資産」を基準として決定する旨が規定されていた事例において、後日、収益性が著しく低いことが判明したとしても、「収益還元法」や「類似業種比準法」に基づくM&A代金への変更が拒否されるケースや、最終契約で表明保証などを規定することは規定されていたが、コベナンツを規定することは規定されていなかった事例において、コベナンツの規定を入れることを拒否されるケースなど、そうでなくとも揉め事になるケースがございますので、相手方が想定していないのであればなおさら、基本合意書の段階でそのような規定を盛り込み、相手方の期待可能性を調整することが必要となります。

M&Aの基本合意書でも法的拘束力が存在する規定がある!

なお、M&Aの基本合意書であってもすべての条項を法的拘束力が無いものとするわけではなく、例えば、デューデリジェンス(DD)の実施、独占交渉期間に関する条項は、法的拘束力があるものとすることが一般的です。

また、基本合意書であっても契約書ですので、例えば、当然、法的拘束力があるような書き方をした場合や、基本合意書の全体からして当然法的拘束力がある者との文言であった場合など、基本合意書の条文の書き方によっては、思わぬ法的拘束力が発生してしまいますので、基本合意書作成の際には、特に注意が必要です。

M&A代金に関する合意について

基本合意書にM&A代金について規定する場合、基本合意書には、法的拘束力はないものの、前述のとおり、事実上の拘束力は存在しますので、記載の仕方には工夫が必要です。

M&A対価について、買主候補会社としては、幅を持った記載の仕方にする方が、後日、M&A対価の額を変更しやすいため、好ましいですが、売主にとっては、M&A対価が幅をもって記載されている場合は、その上限額は期待できないものと考えるのが通常であり、下限額となる可能性が高いものと考えることとなります。売主としては、このM&A対価の額を最も重要な指標として、次のステップに進むことのできる買主候補会社を選定して、買主候補会社を振り落としてゆきますので、対象会社を買収する意欲が高い買主候補会社としては、M&A対価として、特に下限額について、低い金額を提示することは好ましいことではありません。

他方、M&A対価の額として、幅を持った提案をするのではなく、特定の金額を提示する場合は、売主としては、M&A代金の額が明示されたということで、高く評価をするものと思われますが、買主候補会社としては、事実上その金額に拘束力が生じてしまいますので、容易に提示することができないかもしれません。

その他、買主候補会社としては、提案したM&A対価の額については、デューデリジェンスの結果次第では変動しうる旨を付記することも多くあります。

この場合、売主としては、デューデリジェンスにおいて、対象会社の粗探しをされてM&A対価の額の提案額が引き下げられるのだろうと考えます。しかし、買主候補会社としては、デューデリジェンスを実施していない段階において、M&A価格を提示し、その後その変更を認められないというのでは、M&A対価の額の提案はなかなか困難かもしれません。

他方、M&A対価の額の提案として、条件の良い金額を提示し、又は、幅を持った提案であったとしてもその下限額の条件が良好な場合、さらには、買主候補会社が、基本合意書に規定するM&A対価の額の提案についても、法的拘束力を認めるような場合は、売主としては、M&Aが間違いなく実現する、良好な条件でのM&Aが実現できるという確信を持つことができ、その買主候補会社が優先して次のステップに進むことができるようになるものと思われます。

売主としては、希望する条件でのM&Aの実現可能性が高いのであれば、その条件を確保したうえで、積極的に、次のステップに進みたいのですし、買主候補会社としても、希望する条件でのM&Aの実現可能性が高いのであれば、積極的にその条件を提示し、次のステップに進む方が好ましいものと思われます。

独占交渉権に関する合意について

基本合意書においては、売主は、買主候補会社との間で、M&Aの基本的な条件について合意をするとともに、通常、買主候補会社に対して、一定期間の、独占交渉権を与えます。

買主候補会社としては、対象会社のM&Aの実現可能性が高いからこそ、そのM&Aにつついて具体的に検討し、マネジメントインタビューや経営者面談、さらにはデューデリジェンスを実施するというエネルギーとコストを投入するわけですので、その検討を行っている期間は、売主及び対象会社との独占交渉権を入手したいのである。

この独占交渉権ですが、ひとことで独占交渉権といってもその内容にはさまざまなものがあります。

買主候補会社が、M&Aの交渉だけを独占することができるものから、他の買主候補会社に対して、情報提供や提案は可能とするものもありますが、やはり、買主候補会社としては、対象会社のM&Aの実現可能性が高いからこそ、そのM&Aにつついて具体的に検討し、マネジメントインタビューや経営者面談、さらにはデューデリジェンスを実施するというエネルギーとコストを投入するわけですので、売主や対象会社には、他の買主候補企業に対して、情報提供も含め一切のコミュニケーションはとってもらいたくないと思うものです。

ただ、売主や対象会社としても、買主候補会社とは、まだ、基本合意書を締結する段階であり、M&Aが間違いなく実現する、良好な条件でのM&Aが実現できるという確信まで得られていない段階であると思われ、他の買主候補会社も、このM&Aにつなぎとめておきたいと思うことも自然であり、そのような他の買主候補会社とのコミュニケーションは継続する必要があると考えることもやむを得ないこともあります。

意向表明書について

なお、基本合意書を締結せずに、買主候補企業から売主に対して差し入れる意向表明書を作成することもあります。これも、文字通り、買主候補企業が基本的に対象会社を買いますよという意向を表明する書面であり、法的拘束力は無いものとすることが一般的です。ちなみに、意向表明書も、英語では、Letter of Intent(LOI)と呼ばれます。こちらの方が文字通りですね。

M&A 総合 法律事務所では、想定される具体的なM&Aの事案に応じて、オーダーメードでM&Aの基本合意書や意向表明書を作成しています。法的拘束力がないとしても、M&Aの基本合意書や意向表明書に書かれた内容は、その時点での買主候補企業の意思を表示したものであり、交渉のスタート地点になります。M&Aのプロセスはすべて交渉です。交渉を適切に進めることができるかどうか、交渉上有利になるか不利になるか、基本合意書や意向表明書の文面に掛かってくるのです。

実際に、M&Aの基本合意書に記載した事項が原因で、その後の交渉力学が大きく変わった事例も多く存在します。このような最初のステップでつまずいてはいけませんので、M&Aの基本合意書締結や意向表明書差入れの際は、専門家にお問い合わせください。

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