M&A買収した対象会社が不良債権を抱えていた場合

M&A買収した対象会社が不良債権を抱えていた場合

M&Aにより企業の買収を行ったが、買収後に対象会社が不良債権を抱えていたことが判明した場合、買主企業には何かとりうる策があるのでしょうか。

すなわち、M&Aの過程では対象会社の決算書等財務資料をデューデリジェンス(DD)するのが一般的ですが、財務資料のみから対象会社が不良債権を抱えているかを明確に判断することは困難といえます。したがって、買収した後に、例えば債権回収不能な貸付金が判明する等して不良債権の存在が発覚し、結果的に買主企業が損失を蒙る事態が生じることがあります。それでは、このような場合、買主企業は、売主企業に対して何らかの責任を問えるのでしょうか。

まずは、売主企業との間で締結した株式譲渡契約書等を確認して、買主企業が不足の損失を蒙った場合に、売主企業に対して補償又は損害賠償請求ができる規定があるか、またその内容を確認する必要があります。

例えば、東京高判平成8年12月18日金法1511号61頁では、M&Aにより企業買収を行った買主企業が買収後に対象会社が不良債権を抱えていたことが判明した事例において、当該買主企業及び売主企業との間の株式譲渡契約書に「第1項、売主は、対象会社の平成3年12月31日現在の貸借対照表記載の純資産が減少した場合には、その減少分だけ代金額を調整する。」、「同条第2項、売主は、前項の違反に起因して買主に損害が生じた場合、かかる損害について、買主に対し、これを補償する。」との規定が存在していたことから、これら規定の解釈が争われました。すなわち、当該規定第1項には、「貸借対照表記載の純資産が減少した場合」には当該減少分の代金額の調整を行う旨及び買主の損害を補償すると規定されていますが、「不良債権」とは、形式的には貸借対照表上の純資産を減少させるものではなく、貸借対照表上に計上された債権は存在するが当該債権が回収不能となる状態ですので、不良債権の存在は、当該規定が定める「貸借対照表記載の純資産が減少した場合」には該当しないのではないか、との点が問題となりました。

この問題について、上記東京高裁判例は、当該規定の趣旨とは、売主企業が買主企業に対し「債権等が回収可能であることを保証し、その回収が不能な場合に買主企業に生じる損害を補償する旨を約したものと解するのが相当である」でとして、買収した対象会社が不良債権を抱えていた場合には、買主企業は売主企業に対し補償請求を行って責任を問うことができるとの判断を下しました。

「第1項、売主は、対象会社の平成3年12月31日現在の貸借対照表記載の純資産が減少した場合には、その減少分だけ代金額を調整する。」という条項、このような条項を、M&A実務上は、価格調整条項といいます。

しかし、このような価格調整条項がM&A契約書に入ることは多くはありません。おそらく、貴社のM&Aにおいてもこのような価格調整条項はM&A契約書に入ってこないことになります。そのようなとき、対象会社に不良債権が発覚した場合、貴社が売主に補償請求・損害賠償請求ができるかは、必ずしも明らかではありません。

裁判例としては、M&Aに際して、対象会社を、M&A契約書の表明保証の規定に基づいた補償責任を真っ向から認めた裁判例がありますが、表明保証が存在したとしても、注意をしてデューデリジェンス(DD)をすれば判明した事実については損害賠償を受けられないと判断したものもあり、また、M&Aに際して、デューデリジェンス(DD)を漫然と怠り調査しなかったような場合は、表明保証の規定が存在していても、その規定に基づいて救済されないことを判示したものもありますので、この点からも、やはり、M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)の重要性は高まっているものと言えます。

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