M&A買収した対象会社の貸借対照表の利益が水増しされていた場合

M&Aで買収した対象会社の貸借対照表の利益が水増しをされており、そのために本来の譲渡価格より高い価格を支払っってしまったというケースが多く存在します。

実際に、買収した対象会社が利益を水増ししていたケースに対する裁判所の判断が出されたものとして、下級審裁判例ではあるものの、東京地方裁判所平成18年1月17日判決があります。

これは、消費者金融会社Aの全株式の株式譲渡契約についての事件です。

この事件では、株式譲渡価格は、Aの簿価純資産額により算出されており、株式の売主である被告らが、買主である原告に対して、株式譲渡契約書の中で、「Aの財務諸表が完全かつ正確であり、一般に承認された会計原則に従って作成されたものであること」等を表明保証し、この表明保証した事項に違反があった場合には「これにより被った原告の損害を補償する」ことを合意していたのですが、Aは、実際には、元本の弁済に充当していた和解債権についての弁済金を利息に充当し、同額の元本についての貸倒引当金の計上をせず、貸借対照表上不当に資産計上していたという事案でした。

裁判所は、「本件において、原告が、本件株式譲渡契約締結時において、わずかの注意を払いさえすれば、本件和解債権処理を発見し、被告らが本件表明保証を行った事項に関して違反していることを知り得たにもかかわらず、漫然これに気付かないままに本件株式譲渡契約を締結した場合、すなわち、原告が被告らが本件表明保証を行った事項に関して違反していることについて善意であることが原告の重大な過失に基づくと認められる場合には、公平の見地に照らし、悪意の場合と同視し、被告らは本件表明保証責任を免れると解する余地があるというべきである。」と述べています。

要するに、原告がわずかな注意を払えば知ることができた事実については、表明保証に違反をしていたとしても、損害賠償を受けられない可能性があるということを裁判所が示したのです。

本件においては、原告が上記の点につき悪意または重大な過失があるとは認められないとして、被告らは、原告に対し、不当に資産計上された利息充当額等の損害を補償する義務を負う旨を判示しています。

注意をして調査をすれば、判明した事実については損害賠償を受けられないと判断したものですが、株式譲渡契約書の表明保証の規定に基づいた補償責任を真っ向から認めた裁判であり、非常に意義があります。

他方、M&Aに際して、デューデリジェンス(DD)を漫然と怠り、注意を怠り調査しなかったような場合は、表明保証の規定が存在していても、その規定に基づいて救済されないことを判示したものですので、この点からも、やはり、M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)の重要性は高まっているものと言えます。

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