アーンアウト条項とは?企業買収の価格合意に効果的な方法を詳細解説

M&Aや企業買収で企業や事業を買収する契約をする際に、ある一定の役割を果たす条項を特に付して契約を結ぶことがあります。その条項の1つがアーンアウト条項です。

このアーンアウト条項は、M&Aや企業買収で企業や事業を買収する際の対価の取り決めに関する条項です。

アーンアウト条項とは何なのか?どのような目的でどのような場合にアーンアウト条項を使うのか?アーンアウト条項は、M&Aや企業買収の際の対価の合意にとても効果的であると一般的には言われています。今回はアーンアウト条項について詳しく説明します。

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アーンアウト条項とは

アーンアウトとは、M&Aや企業買収などで企業や事業を買収する際に、買い手が売り手に対して一定の条件を付して対価を設定することを言います。アーンアウトは英語で書くと”Earnout”です。英語の辞書でその意味を引くと、ファイナンスの専門用語として紹介されています。

日本におけるM&Aや企業買収では、現在では、そのM&Aや企業買収の対価は、一括で支払われることが一般的です。

しかし、M&Aや企業買収で企業や事業を買収する買い手の側からすると、買収時にその企業や事業の将来の収益性が明確にわからない状況の場合、その企業や事業の将来の収益性を高く見積もられた対価で買収することは、かなりのリスクを伴うことになります。

このことから、このリスクを緩和する方策として取られるのが、アーンアウト条項を契約に入れ込むという方法です。M&Aや企業買収で企業や事業を買収する買い手が売り手と買収の契約をする際に、その契約にアーンアウト条項を追加します。

アーンアウト条項では、M&Aや企業買収で買収された企業や事業が一定の期間後(通常1年から3年)に、一定の基準を達した場合に、買い手が売り手に対して追加の支払いを行うということを取り決めておきます。

逆に言えば、M&Aや企業買収によって買収された企業や事業が、一定期間後にあらかじめ取り決められた基準に達する経営指標の成績に達しない場合には、買い手側が追加の支払いを行わないという取り決めをした契約とも言えます。

さらに、M&Aや企業買収によって買収された企業や事業が、一定期間後にあらかじめ取り決められた経営指標の基準に達しない場合には、契約時の買収対価の一定額を売り手から買い手に払い戻すという内容のアーンアウト条項も設定することが出来ます。

このような一定基準が達成した場合に追加の対価を支払ったり、達成しなかった場合には追加の対価支払いをしなかったり、買収対価を返還したりする約束をする条項のことをアーンアウト条項と呼び、アメリカなどでは、M&Aや企業買収で企業や事業を買収する際に、数多く行われている手法です。

アーンアウト条項の対象となる代表的な指標は、EBITDA、純利益、売上高、営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフローなどです。一定期間後にこれらの指標に予め決められた目標が達成された場合に、買い手企業から売り手企業に対して追加の対価が支払われたり、目標が達成されない場合には、追加の対価を支払わなかったり、買収対価を返還することになります。

アーンアウト条項を契約に入れることによって、これまでなら、買収対価で合意することが出来なかったM&Aや企業買収による企業や事業の買収案件も、まとまることが期待できます。

アーンアウト条項付き企業買収とは

M&Aや企業買収で企業や事業を買収する契約をする際に、その契約の中にアーンアウト条項という条項を取り入れて企業や事業の買収を行うことをアーンアウト条項付き企業買収と言います。

アーンアウト条項付き企業買収をすることで、対象となる企業や事業の将来性についての評価を売り手と買い手が納得できる結果に結びつけられる可能性が高まると考えられています。

アーンアウト条項付き企業買収は、M&Aや企業買収で企業や事業を買収する際に、対象となる企業や事業の将来性の評価のリスクを軽減する効果が見込める企業買収方法と言われています。

アーンアウト条項付き企業買収の目的、仕組み、役割

では、アーンアウト条項付き企業買収はどのような目的で行われるのでしょうか。また、アーンアウト条項付き企業買収をするとどのような効果が期待できるのでしょうか。

これを知ると、M&Aや企業買収で企業や事業を買収するための交渉の際に、どのような状況になったときにアーンアウト条項付き企業買収という手法をとるのが効果的なのかがわかります。

そして、実際にアーンアウト条項付き企業買収にするためにはどのような仕組みにすればいいのでしょうか?その仕組みが分かれば、効果的にアーンアウト条項付きの契約をすることが出来ます。

ここからは、企業買収におけるアーンアウト条項の目的や仕組み、その役割について見ていきたいと思います。

アーンアウトの目的

アーンアウト条項付き企業買収という手法を使う目的は、M&Aや企業買収で企業や事業を買収する売り手と買い手の間にある買収対価の値ごろ感のギャップを埋めるということが一番大きいと言われます。

売り手の側が、M&Aや企業買収を行う企業や事業の価値を過大に評価している場合に、買い手の側が、売り手ほどにその事業の将来性の価値を評価していなければ、いつまで経っても買収対価で合意することは不可能です。

そのような場合に、アーンアウト条項を契約の中に入れることで、M&Aや企業買収で企業や事業の買収を行う売り手と買い手の買収対価のズレをある程度解消できます。

このことから考えれば、いろいろな条件については合意しているにもかかわらず、M&Aや企業買収で企業や事業の買収を行う売り手と買い手との間に、対象となる企業や事業の将来性の評価だけにズレがあるようなときには、アーンアウト条項を契約に入れることによってそのギャップを埋めるという方法を取ることで、契約の合意に至るという可能性を見出すことが出来るということです。

アーンアウトの仕組み

アーンアウトは、M&Aや企業買収で企業や事業を買収する際に、買い手が買収時には一時金を支払い、残りの代金は、一定の条件が達成された場合に支払われるという仕組みのことを言います。

このようなアーンアウト条項をM&Aや企業売却の契約に組み込むことによって、設定された条件がクリアされることにより、結果的には、M&Aや企業買収で企業や事業を買収する買い手は、その企業や事業の対価を分割払いするのと同じ結果になります。

また、逆に一定期間後にアーンアウト条項で定めた経営指標の条件をクリアできなかった場合には追加の対価の支払いを行わなかったり、さらにアーンアウト条項で定めた経営目標の条件を大きく下回ったりした場合には、売主から買収対価の返還を求めるような条項を結ぶこともできます。

このようなアーンアウト条項を結ぶことは、これまで買収対価の乖離が原因で合意に至れなかったM&Aや企業買収による企業や事業の買収案件が最終合意できるための方策ということが出来ます。

そして、M&Aや企業買収で企業や事業を買収する際に設定された条件がクリアされるために、売り手企業の経営者やキーパーソンが売却後も買収された企業や事業に残り、課せられた条件を達成するために経営に関与することもあります。これを定める条項をロックアップ条項(またはキーマン条項)と言います。

M&Aや企業買収で企業や事業を買収するときに、アーンアウト条項を契約に入れ込む際には、同時にこのロックアップ条項も入れるということがあります。

これは、売却した企業や事業の将来性に対する一種の保証のような役割を果たすという意味もあるとも言えます。

アーンアウトの役割

アーンアウトの役割は、特にM&Aや企業買収で企業や事業を買収するときに対価を決める際に、将来性の評価でM&Aや企業買収の売り手と買い手の評価が大きく乖離しているような場合に、最も発揮されます。

アーンアウト条項をM&Aや企業買収で企業や事業を買収する契約に導入することによって、買収時の対価の一時金の額を抑え、将来性が証明された場合に残りの対価を支払うようにすることができます。

アーンアウト条項を設けることによって、M&Aや企業買収で企業や事業を買収する売り手と買い手の納得した買収対価に近付けられる可能性が高くなるという役割を果たすことになります。よって、いろんな条件で合意をしているものの、買収対価について合意に至ることが出来ずに最終的に破談になってしまっていた案件でも、アーンアウト条項を使うことによって、売り手も買い手も納得した買収対価の設定になることで、合意に至ることが出来る可能性が高まります。

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アーンアウト条項付き企業買収のメリット

アーンアウト条項付き企業買収を行うことメリットは、概略的に言うと、M&Aや企業買収によって企業や事業の買収を行う際の対価合意に至りやすいということになります。

買収された企業や事業が一定の成果が得られた場合に、追加して対価の支払いをするという条項を契約に入れることによって、売り手と買い手の双方ともに納得した買収対価を設定することが出来ます。

売り手と買い手のそれぞれの立場から、メリットについて考えてみようと思います。

アーンアウト条項付き企業買収の売り手側のメリット

M&Aや企業買収で企業や事業を買収する際に、アーンアウト条項付きの企業買収をすることの売り手側のメリットとしては、売り手がM&Aや企業買収で企業や事業を売却した後も、その企業や事業に関わりつづけて、その企業や事業で収入を稼ぐことが出来る可能性があるということが挙げられます。

アーンアウト条項付き企業買収を行う限りは、その最終的な売却対価は一定期間後の経営成績によって決まるということから、M&Aや企業売却をした後も、その企業や事業の経営成績について、責任を持ちたいという売り手もいます。

これは、前経営者が関与せずに経営を行った場合に、買収側が、故意にアーンアウトで経営成績が問われる間だけ経営成績を悪くして、トータルの買収額を減らそうとするという可能性が考えられるからです。

よって、アーンアウト条項付きの企業買収が行われた場合には、前経営者が買収後の企業の経営にも参画するという場合もあります。前経営者やキーマンが買収後もその企業や事業に参画することを定める条項をロックアップ条項(またはキーマン条項)と言います。

つまり、M&Aや企業買収で企業や事業を買収する際にアーンアウト条項付きの契約プラスロックアップ条項を加えることにすると、売り手は売却後もその企業や事業の経営成績に対してインセンティブが働き、さらに良い成績をあげようとするというメリットが考えられます。

また、アーンアウト条項付き企業買収を行った場合は、売却がスムーズに進むということも挙げられます。M&Aや企業買収で企業や事業の買収を行う際に、最も売り手と買い手の評価のギャップが顕在化するのが、その事業の将来性の評価です。

M&Aや企業買収の対象となる企業や事業の現状の評価は、所有している資産の評価額や現状の利益、株価などによって、一定の客観性を持って評価が可能ですが、将来の収益性については、それぞれの味方によって大きく乖離する可能性があります。

一般的に売り手側はM&Aや企業買収の対象となる企業や事業の将来性を高く評価することが多く、買い手側はその逆であることは、容易に想像がつきます。

このような場合に、アーンアウト条項付き契約にすると、そのギャップを埋められる可能性が高まります。アーンアウト条項は、将来の一定の経営指標の達成を条件として、買い手が追加で買収対価を支払ったり、売り手に売却対価の返還を要求したりするものですから、お互いに納得のいく結果になることが見込まれるので、合意に至りやすくなります。

アーンアウト条項付き企業買収の買い手側のメリット

M&Aや企業買収で企業や事業を買収するときに、アーンアウト条項付き契約を結ぶ買い手側のメリットとしては、将来の収益性というM&Aや企業買収時には明確には分からないリスクを、売り手側にも負わせることが出来るということがあります。

一定期間ののちにM&Aや企業買収時に定めた経営指標の達成目標に到達しなかった場合には、対価の追加支払いを行わなかったり、逆に売り手から買収対価から一定の額を返還させたりすることによって、リスクを避けることが出来ます。

また、その結果、M&Aや企業買収時に支払う買収対価が少なくて済み、後に経営目標を達成した場合に追加支払いをすることとなった場合でも、M&Aや企業買収で得た企業や事業のある意味適正な対価の支払いを、最終的には、分割払いしたのと同じ結果になるということもメリットと言えると思います。

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アーンアウト条項付き企業買収のデメリット

M&Aや企業買収で企業や事業の買収を行う際に、アーンアウト条項を契約に入れることには、メリットがある反面、デメリットもあります。

容易に考えられるのは、アーンアウト条項というのは、M&Aや企業買収の対価の確定を先送りしていることと同じことなので、そのことによる弊害が出るということです。M&Aや企業買収の際にアーンアウト条項を契約に入れることによるデメリットについても、売り手の側と買い手の側でそれぞれ見ていきたいと思います。

アーンアウト条項付き企業買収の売り手側のデメリット

M&Aや企業買収で企業や事業の買収を行う際に、契約にアーンアウト条項を入れることによる売り手側のデメリットとしては、売却時にM&Aや企業買収する企業や事業の対価が全額もらえないということが挙げられます。

アーンアウト条項によらないM&Aや企業買収であれば、その企業や事業の売却時に対価を一括で支払いを受けて、すっきりクロージングして、前経営者は売却した企業や事業との関係を終えることが出来ますが、アーンアウト条項付き企業買収によると、一旦、対象となる企業や事業を売却した後も、その企業や事業の経営成績について、一定期間関心を持ち続けなければならなくなります。

特にアーンアウト条項に加えて、前経営者やキーパーソンをM&Aや企業買収を行った企業や事業の経営に関わらせるロックアップ条項(キーパマン条項)も結んだ場合には、買収後の売却後の企業や事業に前経営者が参画することもあり、売却前と変わらず、M&Aや企業買収された企業や事業の経営に深くかかわることになってしまいます。

逆にロックアップ条項を結ばず、M&Aや企業買収を行った企業や事業の経営を買い手に完全に任せてしまった場合、買い手側によって、意図的にアーンアウト条項で定められた経営指標を低くするように恣意的に経営が行われる可能性もあります。

そのような場合、一定期間経過後、M&Aや企業買収された企業や事業の経営成績が悪かったときには、追加の支払いが行われなかったり、場合によっては、買収対価の返還が生じたりする可能性もあります。これも、売り手側から見れば、デメリットと言えるでしょう。

アーンアウト条項付き企業買収の買い手側のデメリット

M&Aや企業買収で企業や事業を買収する際に、契約にアーンアウト条項を入れることによる買い手側のデメリットは、まず、通常のM&Aや企業買収で企業や事業を買収するよりも、手間がかかるということが挙げられるかと思います。

単純に純資産プラス何年か分の将来利益などで買収対価を確定させることが出来るところを、一定期間後に追加支払いするために評価する指標を定める必要があります。

どのような指標に対してどのような評価を達成目標にし、達成された場合にどのような対価の追加支払いあるいは買収対価の返還を行うこととするのか?このような交渉が手間になることもあります。これをデメリットということもできると思います。

また、定められた一定期間後の経営指標を結果として大きく上回ったために、追加の対価支払いが予想より多額になる可能性もあります。

単純にM&Aや企業買収をする際に一般的に買収対価として算定される手法によって買収対価を決められたところが、アーンアウト条項で後に追加支払いをすることにしたがために、特に予想以上の好成績になった場合、かなりの対価の追加支払いをしなければならない可能性があります。これも買い手側にとってはデメリットと言えると思います。

さらに、アーンアウト条項に加えてロックアップ条項も契約に入れて、前経営者またはキーパーソンをM&Aや企業買収の企業または事業の経営に参画させ続けた場合、それらの人が、アーンアウト条項にある経営指標の目標達成のための短期的な成績アップを目的とした経営戦略ばかりを取って、長期的に見れば、その企業や事業にとって必ずしも良い戦略を取らない可能性もあります。これも、買い手にとってはデメリットと言えるでしょう。

アーンアウト条項付き企業買収の条項設定について

M&Aや企業買収で企業や事業の買収を行う場合において、対象の企業や事業の対価を決める際に、アーンアウト条項を入れるという場合に、その条項の条件設定いうのはどのように定めるべきなのでしょうか。

実際にアーンアウト条項がどのように設定され、どのような期間が設けられるのかなどについて、見ていこうと思います。

条件設定について

M&Aや企業買収で企業や事業の買収を行う際に設定される、アーンアウト条項の条件としては、売上高、EBITDAや営業利益、当期純利益などの財務指標で設定する場合や、売上個数やユーザー数、契約数、入居率、空室率などの非財務指標などで設定することが考えられます。

それらの指標について目標値を定め、目標達成をした場合の追加の対価の支払い額や、逆にはるかに目標を達成しなかったような場合の買収対価の返還額などを定めることになります。

このような売り手、買い手が納得できる条件設定をするアーンアウト条項は、これまで対価の乖離が原因で合意に至らなかったM&Aや企業買収による企業や事業の買収がまとまる結果となる可能性を高めることができる手法と言えます。

期間設定について

M&Aや企業買収で企業や事業の買収をする際に設定される、アーンアウト条項の期間については、できるだけ短い方が望ましいと言われています。

その理由は、やはり長期間になると、M&Aや企業買収で買収される企業や事業の状況が全く変わってしまうという可能性が高いということと、買い手側がM&Aや企業買収で買収した企業や事業を再び売却する際に、アーンアウト条項が売却の妨げになる可能性があるからです。

よって、アーンアウト条項の期間については、1年から3年を期間とするのが一般的であると言われています。

また、買い手側が設定されたアーンアウト期間内に再売却することを想定して、再売却する際には、一定額を売り手側に支払うという項目も追加するという方法が取られることもあります。

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アーンアウト条項付き企業買収が行われる背景

M&Aや企業買収で企業や事業を買収する場合において、アーンアウト条項付き企業買収が行われるようになった背景には、M&Aや企業買収で企業や事業を買収する場合においては、買収対価の合意が非常に難しいということが挙げられます。

M&Aや企業買収においては、買収対価は売り手と買い手の合意によって定められます。しかし、このM&Aや企業買収を行う企業や事業の対価の評価について、売り手と買い手の差が大きい場合、なかなか合意に至ることが出来なくなってしまいます。

一般的に、M&Aや企業買収で企業や事業を買収する際に、売り手側としては、のれん代やブランド価値など目に見えない価値についても過大に評価をして、売却対価を算定する傾向にあります。さらに将来の収益性についても、ベストストーリーでの将来収益の算定をしがちです。

一方で、買い手側は、M&Aや企業買収で企業や事業を買収する際に、その価値については一般的に厳しく査定することになります。将来性についても、最も厳しい状況になった場合を想定して将来の収益を算定するのが普通です。

これらのミスマッチの状況を解消する方法として、アーンアウト条項が導入されるようになってきています。

のれん代やブランド力については、実際に経営を行ってみて初めて分かるという部分もあります。そして、将来性については、一定期間後の実際の経営指標などで適正な評価ができます。

このようなことから、特に無形財産の評価や将来性の評価に乖離があるようなM&Aや企業買収の案件について、アーンアウト条項が有効であると考えられるようになってきています。

日本におけるアーンアウト条項付き企業買収の事情

アメリカなどでは、M&Aや企業買収で企業や事業の買収をする場合において、アーンアウト条項付き企業買収はポピュラーな手法である一方、日本では、アーンアウト条項付き企業買収は、まだまだ件数としては多くない状況です。このような状況になっている理由としては、次のような理由が考えられます。

まず、そもそも、アーンアウト条項付き企業買収の実績が日本ではまだまだ少ないということ自体がその理由の一つと考えられます。このことは、M&Aや企業買収で企業や事業の買収をする際に、アーンアウト条項付き企業買収にした場合にどのようになるのか?ということの実績が少ないため、売り手も買い手もアーンアウト条項を用いることに躊躇してしまうということがあると考えられます。

また、実績が少ないということは、実際にアーンアウト条項付き企業買収を行ったことのあるM&Aや企業買収の専門家も少ないということであり、M&Aや企業買収の専門家が売り手と買い手が買収対価で合意に至らない事例を取り扱った際に、実例をもって両者を説得することが出来ないということもあると思われます。これらの状況は、今後、日本でもアーンアウト条項付き企業買収が行われるようになれば、これまでなかなか対価で合意できなかったM&Aや企業買収による企業や事業の買収も、合意に至るケースが増えていくことが期待できます。

次に、日本では、M&Aや企業買収をする際に、売り手も買い手も契約を複雑化させたくないということが多いということも挙げられます。アーンアウト条項付き企業買収の売り手にも買い手にもデメリットとして感じられることに、契約が複雑化するということがあります。

日本の企業は、まだM&Aや企業買収での企業や事業の買収について、それほど慣れていないということもあり、通常のM&Aや企業買収であっても、資産や将来性の評価やデューデリジェンスなど手間がかかるという印象がある上に、さらにアーンアウト条項の制定となると、非常に手間がかかる印象があるようです。

これも、日本でまだまだアーンアウト条項付き企業買収が行われる件数が少ない要因であると考えられます。これについても、実際にM&Aや企業買収での企業や事業の買収を取り扱う専門家がアーンアウト条項付き企業買収の経験が増えていくことで、合意に至りやすい手法を提案できるようになり、これまでであればまとまらなかったM&Aや企業買収による企業や事業の買収がアーンアウト条項を使うことによって合意できることが増えると考えられます。

最後に、アメリカなどでは、M&Aや企業買収される企業や事業について、買い手が買収後もロックアップ条項などを設けて、売り手の経営者などが継続して経営することが一般的であるというのに対し、日本では、買い手は買い取った後、売り手の経営者などの関与を求めないことが多いということもアーンアウト条項付き企業買収が普及しない要因であると考えられます。

その一方で、M&Aや企業買収される企業や事業について、買収後に売り手の経営者などが関与しない場合、売り手側からすると、最終的な買収対価を抑えるために、買い手が恣意的にアーンアウト条項に関する経営指標を低くするような経営をするのではないか?という疑念を伴います。

よって、日本では現在はまだまだアーンアウト条項付き企業買収が普及しないことになっていると思われます。

しかし、上記の通り、そもそもいろんな条件についてほぼ合意に至っているM&Aや企業買収による企業や事業の買収で、対価だけが合意できないような場合には、アーンアウト条項を追加するという手法は、非常に効果的であると考えられ、今後日本でも増加していくものと思われます。

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アーンアウト条項付き企業買収の会計処理

アーンアウト条項付き企業買収の会計処理は、日本基準とIFRS(国際財務報告基準)とでは取り扱いが違っています。それぞれの場合の会計処理について説明しようと思います。

日本基準による会計処理

アーンアウトに対する会計処理について、日本基準では次のように定められています。

「条件付取得対価が企業結合契約締結後の将来の業績に依存する場合には、条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、支払対価を取得原価として追加的に認識するとともに、のれん又は負ののれんを追加的に認識する。」(企業結合会計基準第27項1号)

つまり、アーンアウト条項付き企業買収の場合は、M&Aや企業買収される企業や事業について、買収契約が締結されたときに、一旦会計処理がなされ、その後、アーンアウト条項によって定められた基準の成否が確実となり、その対価の額が合理的に決定可能になった時点で、のれん又は負ののれんを追加的に認識したうえで、もう一度会計処理をするということになります。

端的に言えば、M&Aや企業買収される企業や事業について、買収契約が締結されたときと、アーンアウト条項で定められた基準の達成の成否が分かった時点での二度の会計処理が必要となるということです。

IFRS(国際財務報告基準)での会計処理

IFRS(国際財務報告基準)では、アーンアウトの会計処理は次のように定められています。

「取得企業は条件付対価の取得日公正価値を、被取得企業との交換で移転された対価の一部として認識しなければならない」(IFRS第3号39項)とされています。

すなわち、アーンアウト条項付き企業買収の場合、IFRSによる場合は、買収契約時にアーンアウト条項の評価も含めた額を対価として会計処理を行うことになります。

そして、後に、アーンアウト条項に定められた基準を達成したか否かによる追加または減額については、その時の純損益として認識されることになります。

まとめ

以上の通り、まだまだ日本では一般的ではないアーンアウト条項付き企業買収のですが、M&Aや企業買収で、特に将来性について売り手と買い手の評価に乖離がある場合には有効な手段ですので、アーンアウト条項の活用で、これまでであればまとまらなかった可能性のあるM&Aや企業買収がまとまることが期待されます。

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