事業譲渡契約書に記載される基本的な事項と注意点

M&Aの手法の一つに事業譲渡があります。事業譲渡をする際には事業譲渡契約書を作成することが通常です。

事業とは、資産・債務・契約・従業員などが有機的一体となった組織であり、事業譲渡はそれら資産・債務・契約・従業員などの権利義務の有機的一体の状態での承継であり、複雑かつ多数の権利義務を承継させるものであり、かつ規模も大きく、会社の命運を大きく左右します。また、事業譲渡契約書の内容によっては、想定通りの事業譲渡が行われず、大きな損失が発生してしまいます。そこでこの記事では、弁護士法人M&A総合法律事務所の事業譲渡契約書フォーマットに基づき、事業譲渡契約書の重要な条項について解説いたします。

なお、弁護士法人M&A総合法律事務所では、事業譲渡契約書以外に、株式譲渡契約書・会社分割契約書・合併契約書・株式交換契約書・株式移転契約書・経営統合契約書などのフォーマットもご用意しておりますので、お問い合わせください。

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事業譲渡契約書とは

事業譲渡契約書とは、事業譲渡をする場合に締結される事業譲渡契約の内容を証するために作成される契約書のことをいいます。

事業譲渡とは

事業譲渡とは、事業の一部または全部を他の会社に譲渡するもので、M&Aの手法の一つです。

他のM&Aの手法との違い

なお、M&Aの手法としては、他に、株式譲渡・合併(吸収合併・新設合併)などがあります。

株式譲渡とは、対象会社の株式を譲渡することにより会社の経営権を譲渡するM&Aの手法です。個々の資産・債務の譲渡ではなく、株式という会社のオーナーの地位をそのまま譲渡するM&Aの手法であり、この点で、事業譲渡とは大きく異なります。

合併とは、複数の会社を一つの会社にすることです。吸収合併は一方の会社が他方の会社を吸収する形で合併を行なうものをいい、新設合併は複数の会社が合併をして新しい会社を作るものをいいます。合併も、個々の資産・債務の譲渡ではなく、複数の会社がそのまま一つの会社となるM&Aの手法であり、この点で、事業譲渡とは大きく異なります。

すなわち、事業譲渡においては、譲渡する事業を取捨選択することができますが、その分、事業譲渡契約書においては、単に事業譲渡をするとのみ規定するのでは足りず、事業譲渡の対象となる事業や事業に属する個々の資産・債務を取捨選択して特定する必要があるのです。

事業譲渡における契約書の重要性

事業譲渡をする場合、対象事業に属する資産・債務の移転など、当事者間に一定の権利・義務を発生させることが必要となります。

ですので、事業譲渡契約書を作成して、対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員を明記することが必要となりますが、契約書の内容によって、想定していた対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員の移転を主張できなくなったり、想定通り当事者間の権利・義務が発生しないこととなってしまいます。

そして、事業譲渡は取引規模が大きいため、事業譲渡が失敗に終わった場合にはその損害も非常に大きなものになり、場合によっては会社の存続を危うくすることもあります。

そのため、事業譲渡においては事業譲渡契約書を作成することはもちろん、事業譲渡契約書にどのような規定を盛り込むかが非常に重要になります。

事業譲渡のメリット・デメリット

事業譲渡には次のようなメリット・デメリットがあります。

買い手・売り手双方のメリット

まず、買い手・売り手双方のメリットとしては、対象となる事業を取捨選択することができる点です。取捨選択は、事業単位のみならず、事業に属する対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員に関する権利義務についても、その一部一部について取捨選択することができます。

他のM&Aの手法によると会社の資産・債務のすべてを承継するしかないのに対して、事業譲渡においては、買い手・売り手双方がニーズに応じて事業を取捨選択して、事業譲渡の対象とすることができます。

売り手のメリット

売り手としては、不要となった事業のみを売却することができるというメリットや、一部の事業のみを譲渡し残したい事業は残すことができ、事業譲渡後も会社や対象事業以外の事業は手元に残るため会社を継続することができるというメリットや、事業を譲渡する場合でも債務は残すこともできるため、会社に大きな債務を抱えていても買い手が比較的見つかりやすいといったメリットがあります。

買い手のメリット

買い手は、事業の一部または全部を譲り受けることで、新規事業を行なうことができ、既存事業とのシナジー効果を得ることができます。

例えば、ある製品を作っている中で、いままで部品を購入していたとして、その部品を製造することができる会社から部品製造事業の譲渡を受ければ、以後は自社で部品から製品まで全てを製造することが可能となります。

また、関東圏で営業していた会社が、北海道で同じ商品・サービスを提供している会社から事業譲渡を受けると、販売エリアを北海道にも広げることが可能となります。

また、買い手のメリットとしては、事業を承継しても、債務を引き継ぐ必要がないこと、事業譲渡後にのれんの償却や有形固定資産の減価償却などにより節税が可能となる点があります。

買い手・売り手双方のデメリット

一方で買い手・売り手に共通するデメリットとしては、どうしても対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員の特定や、対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員ごとに承継すべきか否かの検討・合意が必要となり、かつ個々の対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員ごとに移転・承継する手続きが必要となるため、非常に手数がかかります。また、対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員によっては、そもそも移転・承継させることができない場合もあり、そのような場合、完全な事業譲渡ができないデメリットがあります。

売り手のデメリット

売り手にとっては、事業譲渡をする場合、同じ事業を行うことを禁止する競業避止義務を負うことになる点や、事業譲渡で発生した売却益に法人税がかかる点がデメリットです。

買い手のデメリット

買い手にとってのデメリットとしては、株式譲渡や合併ではかからない消費税や印紙税がかかることなどがあります。

対応策を事業譲渡契約書に規定する必要がある

事業譲渡のメリット・デメリットはおおむね以上のとおりですが、事業譲渡契約書には、この事業譲渡のメリットが実現できるように規定を盛り込む必要があり、また、事業譲渡のデメリットをリスクヘッジするための規定を作って盛り込む必要もあります。

事業譲渡契約書に記載する基本的な事項

では、事業譲渡契約書にはどのようなことを記載するのか、事業譲渡契約書の記載内容について確認しましょう。

事業譲渡契約書については、弁護士法人M&A総合法律事務所のフォーマットがありますので、これに沿って解説します。その文言に沿って検討します。

契約書のタイトル

まず、契約書のタイトルを記載します。

事業譲渡契約書

柱書

事業譲渡契約書の柱書を記載します。

株式会社_____(以下「売主」という)と株式会社_____(以下「買主」という)は、売主が営む_____事業の買主に対する譲渡に関し、次のとおり事業譲渡契約(以下「本契約」という)を締結する。

事業譲渡契約書の柱書と呼ばれる部分は、契約の当事者の記載と、どちらの会社が売主・買主とするか、譲渡の対象となる事業、事業譲渡契約を締結することを記載します。

会社の正式名称をすべて事業譲渡契約書に記載するのは煩雑になるので、事業譲渡契約書の中でどのように表示するかを柱書で決めます。

事業譲渡契約書のフォーマットでは「売主」「買主」という表現をしていますが、別の事業譲渡契約書のフォーマットでは「甲」「乙」と表現をしていることも多いです。

事業の譲渡

事業譲渡契約書では事業譲渡をすることを明確にします。

第2条   (事業の譲渡)

売主は、売主の営む本件事業を、買主に譲渡し、買主は売主よりこれを譲り受ける。

この契約では事業譲渡を行なうものであることを、条文として再度確認を行います。

対象資産等

事業譲渡契約書には事業譲渡によって承継する資産を明確に規定します。

第3条   (対象資産等)

1.売主は、買主に対し、クロージング日をもって、本件事業譲渡に伴い、本件事業に関する別紙1-1「対象資産目録」記載の資産(以下「対象資産」という)を譲り渡し、買主は、これを譲り受ける。

2.売主は、クロージング日までに、対象資産を売主から買主に承継させることについて、必要となる登記、登録、引渡及び対抗要件の具備その他の一切の行為を行うものとする。買主は、かかる行為につき売主から要請があった場合は、これに協力するものとする。なお、当該手続に必要な登録免許税その他の費用は、売主の負担とする。

(別紙1-1)

対象資産目録

買主が売主から承継する資産は、本件事業に関する以下の資産とする。

(1)  現預金_____円

(2)  流動資産

製品、仕掛品、原材料、前渡金、仮払金、前払費用等に係る資産を含む全ての流動資産。但し、現預金、売掛金債権、受取手形、電子記録債権、未収入金を除く

(3)  固定資産

土地、建物、設備、構築物、機械、装置、車両運搬具、工具、器具、備品、リース資産等に係る資産を含む全ての固定資産

(4)  知的財産権

特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、営業秘密、ソフトウェア、ノウハウその他の知的財産権等

対象資産の記載の方法は様々ですが、通常事業譲渡においては非常に多くの資産を譲渡の対象とします。

そのため、この事業譲渡契約書では条文の中に全てを記載するよりも、別紙に対象資産をまとめて記載しています。

もし、対象事業で利用している資産でも譲渡の対象にしないことも可能ですので、その場合には譲渡の対象にする資産をさらに細かく特定します。

事業譲渡が実行されると、対象資産の名義変更などをして、第三者から権利を主張されないようにする状態にする必要があります。「対抗要件を具備する」必要があります。

不動産の場合には登記を移転すること、動産の場合には引渡を行なうことがこれにあたり、自動車のように登録が必要なものについては登録も行います。

そのため、対抗要件を具備する義務と、そのための費用の負担を併せて記載しています。

対象債務等

事業譲渡契約書には事業譲渡によって承継する債務・承継しない債務を明確に規定します。

第4条   (対象債務等)

1.売主は、買主に対し、クロージング日をもって、本件事業譲渡に伴い、本件事業に関する別紙1-2「対象債務目録」記載の債務(以下「対象債務」という)を承継させ、買主は、これを免責的に引き受ける。

2.売主は、クロージング日までに、対象債務を買主に承継させることについて、債権者の承諾を取得する。買主は、かかる行為につき売主から要請があった場合は、これに協力するものとする。

3.買主は、対象債務のほか、クロージング日において既に発生している債務及びクロージング日前の原因に基づき発生する債務(簿外債務及び偶発債務を含む)については、一切これを承継せず、売主がその履行について責任を有するものとする。

(別紙1-2)

対象負債目録

買主が売主から承継する負債は、本件事業に関する以下の負債とする。

(1)  流動負債

未払賞与、未払費用、リース債務、未払金等に係る債務を含む全ての流動負債。但し、借入金債務その他の有利子負債、買掛金債務、支払手形、及び預り金に係る債務を除く

(2)  固定負債

保証金債務、リース債務、長期未払金等に係る債務を含む全ての固定負債。但し、借入金債務その他の有利子負債、退職給付債務及び資産除去債務を除く

事業譲渡のメリットの一つが、不要な債務を承継しなくてもよいことです。

ただ、対象事業に関連する債務がある場合には、債務を承継することが一般的です。

ですので、この事業譲渡契約書では、対象事業に関する債務は承継する、という内容になっています。

この事業譲渡契約書では、1項で承継する債務を別紙にまとめて記載し、3項でそれ以外の債務については承継しないことを明記する、という記載の仕方をしています。

また、対象債務を承継するため、とくに売主が責任を負わなくなる形での債務の承継(免責的債務引受)をするには、債権者の同意が必要です。

そのため、債権者の同意を得るための協力義務を2項で規定しています。

債権者が同意をしない場合には、売主がそのまま債務者の地位を有しながら、買主も連帯して債務者となる、重畳的債務引受という方法にならざるを得ません。

対象契約等

事業譲渡契約書には事業譲渡によって承継する契約を明確に規定します。

第5条   (対象契約等)

1.売主は、クロージング日をもって、本件事業譲渡に伴い、本件事業に関する別紙1-3「対象契約目録」記載の契約及びこれに付随する一切の契約(以下「対象契約」という)における売主の地位(クロージング日において既に発生している金銭債権及び金銭債務並びにクロージング日前の原因に基づき発生する金銭債権及び金銭債務を除く)を、買主に移転し、買主は売主からこれを承継する。

2.売主は、クロージング日までに、対象契約の売主の契約上の地位を買主に譲渡することについて、当該契約相手方当事者の承諾書を取得する。買主は、かかる行為につき売主から要請があった場合は、これに協力するものとする。

3.売主が、クロージング日までに、前項に定める承諾書を取得することが困難な場合には、売主は、速やかに、買主に対して報告するものとし、またその後の対応につき、買主と誠実に協議するものとする。

(別紙1-3)

対象契約目録

買主が売主から承継する契約上の地位は、本件事業に関する以下の契約とする。

株式会社____と株式会社____との平成  年 月 日付け売買基本契約書

株式会社____と株式会社____との平成  年 月 日付け売買基本契約書

株式会社____と株式会社____との平成  年 月 日付け売買基本契約書

株式会社____と株式会社____との平成  年 月 日付け取引基本契約書

株式会社____と株式会社____との平成  年 月 日付け取引基本契約書

株式会社____と株式会社____との平成  年 月 日付け業務委託契約書

株式会社____と株式会社____との平成  年 月 日付け業務委託契約書

たとえば、製造工場の事業譲渡をする場合、その工場の電力供給に関する契約をしていたり、部品をつくるための原材料についての継続的な供給に関する契約を結んでいます。

対象事業に関する契約も、どれを引き継いでどれを引き継がないか明確に記載します。

対象契約は、別紙にあるように、契約当事者と契約日・契約内容を記載して特定を行います。

併せて、買主に契約を承継するための承諾を書面で取り付ける義務を2項で、承諾を書面で取り付けることが困難である場合に誠実に協議する義務を3項で規定しています。

対象従業員等

事業譲渡契約書には事業譲渡によって承継する従業員を明確に規定します。

第6条   (対象従業員等)

1.売主は、本件事業に関する別紙1-4「対象従業員目録」記載の従業員(以下「対象従業員」という)を、クロージング日付けで退職させ、買主は、同日付けで、対象従業員を、売主における処遇(給与水準及び退職金の水準を含む)と同等の条件で雇用するものとし(以下「転籍」という)、懲戒事由が無い限り、当面は、不利益に変更しないものとする。雇用する。

2.売主は、クロージング日までに、対象従業員の転籍について、対象従業員の同意を取得する。買主は、かかる行為につき売主から要請があった場合は、これに協力するものとする。

3.売主が、クロージング日までに、前項に定める同意を取得することが困難な場合には、売主は、速やかに、買主に対して報告するものとし、またその後の対応につき、買主と誠実に協議するものとする。

4.買主は、対象従業員の賃金(未払残業代及び退職金を含む)支払債務については、一切これを承継せず、売主がその履行について責任を有するものとする。

(別紙1-4)

対象従業員目録

買主が売主から承継する従業員は、本件事業に関する以下の従業員とする。

甲野 太郎

乙野 次郎

丙野 三郎

亥野 四郎

春野 花子

夏川  緑

秋沢 果子

冬野 雪子

事業譲渡によって対象事業に関する資産のみを譲り受けても、従業員が居なければ、事業の継続が困難です。

そのため、事業を継続するのに不可欠な従業員には、譲渡先に転籍してもらう必要があります。

ただし、事業譲渡契約がされたからといって、自動的に対象従業員が、買主に転籍になるわけではなく、対象従業員の同意を得る必要があります。

事業譲渡の交渉の中で対象従業員を決定し、売主が新しい会社に転籍するための同意を得る義務を規定しています。

なお、その際に従業員の給与やボーナスなどの処遇・新しい会社での取扱についても決定し、決定した内容は契約書に規定します。

この事業譲渡契約書では、別紙で従業員の特定を行っています。

事業譲渡及び譲渡方法

事業譲渡契約書には事業譲渡の具体的手続きを明記します。

第7条   (事業譲渡及び譲渡方法)

クロージング日は平成  年 月 日又は売主及び買主が別途合意する日とし、本件事業の譲渡は、売主が、買主に対し、クロージング日において、次条に定める譲渡代金全額の支払と引換えに、対象資産を引き渡すとともに、以下に定める書類の全てを引き渡す方法によりこれを行うものとする。

①   売主の商業登記簿謄本(本契約締結日から1ヶ月以内に発行されたもの)

②   売主の印鑑証明書原本(本契約締結日から1ヶ月以内に発行されたもの)

③   本件事業譲渡に係る売主の株主総会議事録(原本証明付き写し)

④   対象資産の所有権その他対象資産に関する権利を証する書類(原本)

⑤   対象資産の譲渡及び対抗要件具備を証する書類(原本)

⑥   対象契約の契約書原本及び対象契約の売主の契約上の地位を買主に譲渡することについての当該契約相手方当事者の承諾書(原本証明付き写し)

⑦ 対象従業員の転籍についての同意書(原本証明付き写し)

事業譲渡では、資産・債務・契約・従業員を承継しますので、その手続きのために必要な書類やその手続きを完了したことを証する書類が規定されています。

譲渡代金及び支払方法

事業譲渡契約書には譲渡代金とその支払方法を規定します。

第8条   (譲渡代金及び支払方法)

1.本件事業の譲渡代金は、以下の通りとする。

金_____円也(消費税及び地方消費税別途)

2.買主は、クロージング日において、対象資産の引き渡し及び第3条の各号に定める書類の全ての交付と引換えに、売主に対し、前項に定める譲渡代金全額を支払うものとする。なお、譲渡代金の支払は、下記売主銀行口座に振り込む方法によるものとする(振込に伴い発生する銀行手数料は、買主が負担するものとする)。

売主銀行口座

___銀行 本店 普通預金 口座番号:____ 口座名義:____

3売主は、買主に対して、前項の規定により譲渡代金が振り込まれたことを確認した後、直ちに譲渡代金の領収証を発行し、交付するものとする。

譲渡代金の額を記載します。事業譲渡では消費税も生じますので、税別であることも明記します。

クロージングの前提条件

事業譲渡契約書にはクロージングのための前提条件を規定します。

第9条   (クロージングの前提条件)

1.売主は、クロージング日において、以下の各号の事由が全て充足されていることを条件として、第3条に定める買主に対する義務(本件事業の譲渡義務)を履行するものとする。

(1)  第○条に規定する買主の表明保証の全てが、クロージング日に、真実かつ正確であること

(2)  買主が本契約上の義務について違反をしていないこと

2.買主は、クロージング日において以下の各号の事由が全て充足されていることを条件として、第4条第2項に定める買主の義務(譲渡代金の支払義務)を履行するものとする。

(1)  第○条に規定する売主の表明保証の全てが、クロージング日に、真実かつ正確であること

(2)  売主が本契約上の義務について違反をしていないこと

(3)  買主において、本件事業の遂行に必要な許認可の取得や官公庁への届出等の手続(もしあれば)が完了していること

事業譲渡契約書に規定する表明保証(レプワラ)の内容が真実であり正確であることや、クロージングまでに必要な遵守義務(コベナンツ)を履行していることなどを、事業譲渡の実行の前提条件としています。

前提条件を満たしていないと判断できる場合には、買主は譲渡代金の支払いを拒むことができ、売主は対象資産等の承継を拒むことが可能です。

売主の表明保証

事業譲渡契約書には売主の表明保証(レプワラ)に関する規定をします。

表明保証とは、対象会社等に関する事項が真実かつ正確であることを表明し保証することをいいます。

表明保証が真実かつ正確ではないということとなると、前提条件を満たさないこととなり事業譲渡の実行がなされなくなり買主が事業譲渡代金を払う必要がなくなります。また、買主がそれにより損害を被った場合には補償する義務が生じたり、買主が事業譲渡契約を解除することができることとなります。

第10条 (売主の表明保証)

1.売主は、買主に対して、本契約締結日及びクロージング日において、別紙2記載の各事項が真実かつ正確であることを表明し、保証する。

2.本条において売主が表明保証した事項に関する買主の認識又は認識可能性は、これらの表明保証の効力又はこれらに関する補償又は救済手段の行使又は効力に影響を及ぼさないものとする。

(別紙2)

【対象事業に関する表明保証】

1.財務諸表

(1) 売主から買主に提出された本件事業に関する貸借対照表、損益計算書及びその他の財務書類は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されたものであり、本件事業の財務状況及びその変化を、正確かつ公正に表示している。

(2) 本件事業には、①貸借対照表、損益計算書及びその他の財務書類に表示されている債務、②通常の業務の過程において発生する債務以外には、債務(偶発的債務及び潜在的債務を含む)は存在しない。売主は、本件事業に関して、保証債務及び保証類似債務を負担しておらず、第三者の債務を負担・保証・補填・担保していない。

(3) 本件事業は、直近決算期日以降、本件事業の資産・負債・財政状態・経営成績に、悪影響又は変動若しくはその原因となる事実は何ら生じていない。

2.資産の所有及び使用権限等

(1)売主が所有している対象事業を継続するために必要な資産は、本契約別紙1-1「対象資産目録」記載の資産で全てであり、その他には存在しない。(2)売主は、本件事業を遂行するために使用している資産を適法に所有し、賃借し、又はその他の方法で使用する権利及び権限を有している。(3)かかる資産には、質権、譲渡担保権等の担保権は設定されておらず、その他何らの負担も存しない。(4)かかる資産については適切に保守と整備がなされており、良好な稼動状態にある。

3.契約の継続性

(1)売主が締結している対象事業を継続するために必要な取引先等との契約は、本契約別紙1-3「対象契約目録」記載の契約で全てであり、その他には存在しない。(2)売主は、本件事業を継続するために必要な取引先等との契約を適法かつ有効に締結しており、契約継続・取引条件の維持に影響を与える事由はなく、また、そのおそれもない。(3)売主が、本件事業に関して締結している取引先等との契約は、本契約に基づく取引が行われても、いずれかの解約若しくは変更又は期限の利益の喪失を招く結果とならない。(4)本契約に基づく取引は、事業継続において必要な取引先等との契約や条件の継続及び維持を妨げるものではない。(5)売主の本件事業に関するする契約において、事業領域の制限その他事業活動の制約は存在せず、また、本件事業に関して競業避止義務は存在しない。

4.知的財産権の侵害

売主は、本件事業に関して、第三者の特許権、意匠権、商標権、著作権その他の知的財産権を侵害しておらず、またそのおそれもない。

5.情報システム

売主が本件事業を行うにあたり稼働しているシステムは、良好な稼働状態にあり、売主は、これを維持するために必要な保守と整備を自ら行うために必要な人員を確保しており、又は、有効な契約に基づき第三者に委託している。

6.従業員

(1)対象事業を継続するために必要な従業員は、本契約別紙1-4「対象従業員目録」記載の従業員で全てであり、その他には存在しない。(2)対象事業の遂行の観点から主要又は重要な従業員の中で、退職又は他社への転籍を表明している者は存在しない。

7.労使紛争等の不存在

売主には、対象従業員に関して、労働争議は存在せず、また、労働組合は存在しない。

8.環境

売主は、本件事業に関して、環境問題に関する法令等の違反はなく、行政機関等による調査手続、クレーム、及び損害賠償等の責任も存在せず、それらが発生する原因となる事実も存在しない。

9.法令の遵守

売主は、本件事業に関して、関連法令等を遵守しており、関係法令等に基づく関係官署からの指導、処分を受ける事由は存在しない。

10.訴訟又は紛争

売主は、本件事業に関して、訴訟その他の争訟は係属しておらず、また、本件事業の事業、資産又は財務状況に悪影響を及ぼす可能性のある紛争は存在せず、またそのおそれもない。

11.財務状態等

対象事業の資産、負債、財務状態、事業収益性又は営業に悪影響を及ぼすと認められる事由は生じておらず、将来、かかる事由が生じることを合理的に推認させる事実も存在しない。

12.情報開示の正確性・網羅性

売主が本件の交渉の過程及び買収監査の過程で買主に対して開示した本件事業に関する情報はいずれも真実かつ正確であり、かかる資料又は情報について誤解を生ぜしめ又は不正確にならしめるような事実の省略はなされていない。

売主側の表明保証に関する条項です。

表明保証をすべき事項について、別紙で規定しています。表明保証の基準日は契約締結日及びクロージング日です。

買主から見て、事業譲渡前の段階で判明していなかった事実が、事業譲渡後に判明するものもあります。

例えば、建物に瑕疵があったり、従業員に残業代を払っていなかったり、工場の機械が壊れていたり、決算書が間違っていたりして、事業譲渡価格はもっと安く見積もるべきだったという場合です。そのような場合は、表明保証が真実かつ正確ではなかったということになりますので、事業譲渡前であれば、買主は事業譲渡代金を払う必要がなくなりますし、事業譲渡契約を解除することもできるようになりますし、事業譲渡後であっても、買主はその損害の補償を請求できることとなります。

なお、売主が表明保証違反を認識していなかった、認識する可能性がなかった場合であっても、表明保証が真実かつ正確ではなかったのであれば表明保証違反となり、補償義務などを負うことを2項で規定しています。

買主の表明保証

事業譲渡契約書には買主の表明保証(レプワラ)に関する規定もします。

第11条 (買主の表明保証)

1.買主は、売主に対して、本契約締結日及びクロージング日において、別紙3記載の各事項が真実かつ正確であることを表明し、保証する。

2.本条において買主が表明保証した事項に関する売主の認識又は認識可能性は、これらの表明保証の効力又はこれらに関する補償又は救済手段の行使又は効力に影響を及ぼさないものとする。

(別紙3)

【買主の表明保証】

1.買主は、日本法に基づき適法かつ有効に設立され、かつ存続する株式会社であり、現在行っている事業を行うために必要な権限及び権能を有している。

2.買主は、本契約を締結・履行するために必要な権限・権能を有しており、本契約の締結・履行はその目的の範囲内であり、本契約を締結・履行するために必要な内部手続を完了している。

3.本契約は、買主により適法かつ有効に締結され、法的拘束力を有し、強制執行が可能である。

4.買主による本契約の締結・履行は、(i)買主の定款、(ii)売主が当事者となっている契約書等、又は(iii)買主に適用される法律等に違反・抵触しない。

5.買主に対して倒産手続の開始・申立はなく、その開始原因も存在しない。買主は、債務超過、支払不能又は支払停止の状態になく、また、そのおそれもない。

6.買主は、本契約の締結にあたり、債権者又は第三者に対する、詐害意図、財産の隠匿等の処分意思又はその他不法な意図を有さない。

7.買主は、反社会的勢力に属したことはなく、また、反社会的勢力との間で、いかなる合意又はこれに類する関係(書面であるか否かを問わない)を有していない。

クロージングまでの遵守義務

事業譲渡契約書にはクロージングまでの遵守義務(コベナンツ)を規定します。

クロージングとは、事業譲渡の実行を行うことを言います。

第12条 (クロージングまでの遵守義務(コベナンツ))

1.売主は、本契約締結日以降、クロージングまでの間、本件事業について、善良なる管理者の注意をもって、本契約締結日以前と実質的に同一かつ通常の業務の方法により、業務の執行及び財産の管理・運営を行うものとし、買主の事前の書面による承諾のある場合を除き、通常の業務以外の重要な業務執行を一切行ってはならないものとする。

2.売主は、本契約締結日以降、クロージングまでの間、本件事業に関して、訴訟、法令違反、その他事業、資産、負債、財務状態、経営成績、キャッシュフロー又は将来の収益計画に重大な悪影響を及ぼすおそれのある事由又は事象が生じた可能性を認識した場合には、直ちに買主に対してその報告を行うものとする。

クロージングまでに売主が行ってはならない事項について規定しています。

例えば、売主が重要な業務執行をクロージングまでに行なうと、事業の価値に影響することから、原則として禁止しています。

クロージングまでは、事業は売主が管理しているので、買主に損失を与えないために規定されています。

社内手続きの履行義務

事業譲渡契約書には事業譲渡の社内手続きの履行義務を規定します。

第13条  (社内手続きの履行義務)

売主は、クロージング日までに、本件事業譲渡の実行に関し、法令、定款その他売主の内部規則において必要とされる手続きをすべて行うものとする。

事業の譲渡にあたり、売主の内部的な手続きや、法令による手続きが必要な場合には、それらの承認を得ておくように規定しています。

許認可の取得等の義務

事業譲渡契約書には許認可の取得等の義務について規定します。

第14条  (許認可の取得等の義務)

売主は、買主が本件事業の遂行に必要な許認可の取得や官公庁への届出等の手続を行う必要が生じた場合、必要な協力を行うものとする。

事業の運営には許認可を取得する必要があるものがあります。

事業譲渡をする場合には、買主があらためて許認可を取得する必要があるので、許認可取得のための協力を義務付けます。

引継ぎ義務

事業譲渡契約書には業務の引継ぎ義務について規定します。

第15条  (引継ぎ義務)

売主は、クロージング後、買主が本件事業を円滑に遂行することができるよう、買主が要請する事項につき、合理的な協力をするものとする。

事業譲渡後、買主がすぐに事業を始めようと思っても、すぐにスムーズに事業を始められるとは限りません。

買主が譲渡を受けた事業を円滑に遂行できるように、売主に合理的な範囲で業務の引継ぎを行う義務を規定しています。

名称の使用継続に関する義務

事業譲渡契約書には名称の使用継続について規定します。

第16条 (名称の使用継続に関する義務)

1.売主は、買主が、本件事業の名称として、名称「______」(以下「本名称」という)を使用することに同意し、これに異議を述べない。

2.買主は、クロージング日以降、遅滞なく、会社法第22条2項の定めに従い、買主が売主の債務を弁済する責任を負わない旨の登記を行うものとする。

3.売主は、クロージング日以降、本名称を使用しないものとする。

名称は単に事業の識別のために用いられるだけではなく、ブランドとして価値があるものです。

事業譲渡ではその価値もあわせて購入・売却の対象になるので、名称についても規定しています。

買主が名称を使用できることを1項で、売主が名称を使用しないことを3項で規定しています。

なお、取引先は事業の名称を信頼して取引をすることもあることから、会社法22条1項で名称を引き継ぐ場合には譲受人が債務の弁済をする責任があることが規定されています。

この責任を免れるためには、会社法22条2項で、債務の支払義務がないことを登記しておく必要があり、その登記義務を2項で規定しています。

精算義務

事業譲渡契約書には精算義務について規定します。

第17条  (精算義務)

売主及び買主は、クロージング後、相手方が負担すべき債務を履行等した場合及び債務の履行等を受けた場合、相手方との間で、直ちにこれを精算するものとする。

事業譲渡の実行後に、取引先が本来の権利者や義務者ではない者に支払ったり請求をしたりすることがあり、これに応じることがあります。そのような場合に、本来の権利者や義務者が精算することを規定しています。

公租公課等の負担及び精算義務

事業譲渡契約書には公租公課等の負担や精算について規定します。

第18条 (公租公課等の負担及び精算義務)

1.対象資産にかかる公租公課、保険料、賃料、水道光熱費等の公共料金その他の諸費用等(以下「諸費用等」という)については、日割計算の方法により、売主がクロージング日の前日までの分を負担し、買主がクロージング日以後の分を負担するものとする。

2.前項の規定に拘らず、売主及び買主は、相手方が負担すべき諸費用等を自ら負担したときは、相手方との間で、遅滞なく、これを精算するものとする。

公租公課、保険料、賃料、水道光熱費等の公共料金などについて、日割計算の方法により、売主と買主の間で負担し、本来の権利者や義務者ではない者が対応した場合の精算が規定されています。

競業避止義務

事業譲渡契約書には売主の競業避止義務を規定します。

第19条 (競業避止義務)

1.売主は、買主が事前に承諾した場合を除き、本件事業又はこれに類似する事業を、その関与形態を問わず、直接又は間接に行ってはならない。売主は、売主の株主及び役員をして、買主が事前に承諾した場合及び対象事業にて職務を遂行する場合を除き、対象事業又はこれに類似する事業を、その関与形態を問わず、直接又は間接に行わせてはならない。

2.売主は、その形態を問わず、直接又は間接、本件事業の従業員に対して、その他の従業員等となることを勧誘してはならない。売主は、売主の株主及び役員をして、その形態を問わず、直接又は間接、対象会社の従業員に対して、その他の従業員等となることを勧誘させてはならない。

売主の競業避止義務を規定しています。

事業譲渡における競業避止義務については、会社法21条に規定されています。

会社法21条の競業避止義務は「同一の事業」を自ら行なうことのみであり十分ではありませんので、売主の株主や役員などにも同様の競業避止義務を規定しています。

あわせて、従業員の引き抜き禁止についても2項で規定しています。

秘密保持義務

事業譲渡契約書には秘密保持義務を規定します。

第20条 (秘密保持義務)

1.売主及び買主は、①本契約の交渉過程に関する情報、②買収監査の過程に関する情報、及び③本契約の当事者に関する情報、又は④対象事業に関する情報を、___氏が買主の顧問を退任した後3年が経過するまでの間、自ら依頼した弁護士、司法書士、監査法人、公認会計士、税理士、フィナンシャルアドバイザー等の本条と同等の秘密保持義務を負担する外部専門家以外の第三者に開示してはならない。ただし、次の各号に定める情報については、この限りではない。

(1)  相手方から提供を受けた時点に既に保有していた情報

(2)  相手方から提供を受けた時点で既に公知となっていた情報

(3)  正当な権利を有する第三者から守秘義務を負うことなく合法的に取得した情報

(4)  法令により開示が義務付けられた情報

(5)  行政機関、司法機関又は証券取引所から開示を要請された情報

(6)  第三者に開示することについてあらかじめ文書により相手方の承諾を得た情報

2.前項の規定にかかわらず、クロージング日以降は、対象事業に関する情報は買主の保有する情報とみなされ、売主は、秘密保持義務を負担するとともに、買主は、秘密保持義務を解除される。

3.本条における義務は、解除・失効等の原因の如何を問わず、本契約の効力が失われた後も有効に存続する。

対外公表に関する義務

事業譲渡契約書には対外公表(秘密保持義務の例外)について規定します。

第21条  (対外公表に関する義務)

売主及び買主は、公表の時期及び内容について事前に合意することにより、本契約の締結の事実及びその内容を公表することができる。ただし、金融商品取引法、証券取引所規則等により必要とされる場合において、あらかじめ相手方に時期・内容・方法を通知した上で、合理的な範囲内で公表を行う場合は、この限りではない。

事業譲渡をする場合には、プレスリリースなどで外部的な公表をすることがあります。その際のルールを記載しておきます。

補償条項

事業譲渡契約書には補償条項について規定します。

第22条 (補償条項)

1.売主及び買主が本契約に定める義務に違反し、又は表明・保証に違反した場合、違反した当事者は、相手方がかかる違反から被った損害、損失、負担、支出(合理的な範囲の弁護士費用を含む)、不利益等(以下「損害等」という)について、クロージング日から_____年以内に賠償又は補償を請求する旨の書面が相手方から送付された場合は、相手方に対して損害等を賠償又は補償するものとする。

2.本条に基づき売主が負担する賠償額及び補償額については、売主が受領した本件事業譲渡代金の_____%相当する額を超えないものとし、また、かかる賠償又は補償の請求は、単一の事実に基づく請求の額が金_____万円を超えたものに限り、行うことができるものとする。

3.本契約に商法第526条は適用されないものとする。

4.本契約に関連して当事者に生じる損害等の相手方に対する賠償又は補償の請求は、本条の規定に従ってのみ可能であり、本条の規定に基づく請求を除き、債務不履行、瑕疵担保責任、不法行為責任、その他法律構成の如何を問わず、各当事者は、相手方に対して、損害等の賠償又は補償を請求することはできないものとする。

補償義務について規定をしています。

表明保証(レプワラ)違反があったり、遵守義務(コベナンツ)違反があった場合、買主に損害が発生するわけですので、売主はその損害の補償義務を負います。

ただ、補償の期間や補償額の上限を設定することがよくあります。

解除

事業譲渡契約書には事業譲渡契約の解除について規定します。

第23条  (解除)

売主及び買主は、相手方に重大な表明保証違反があることが判明し、その結果本契約を維持することが困難になった場合、相手方に本契約上の重大な義務の違反があり、当該当事者に対する書面による催告後その違反が是正される見込みがない場合、又は相手方について、破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特別清算開始その他これらに類する法的倒産手続きの申し立てがなされた場合には、クロージング日前に限り、相手方に対して書面で通知して本契約を解除することができる。

事業譲渡契約の解除について規定しています。

事業譲渡については、事業譲渡「前」に限定して解除を認める契約にすることが一般的ですが、M&Aトラブルが多くなっている現在、事業譲渡「後」でも解除を認める契約にすることも多くなってきています。

一般条項

以下、一般条項です。

第24条  (費用)

本契約にかかる印紙税は売主及び買主が折半で負担するものとし、その他本契約に係る諸費用(弁護士、公認会計士その他のアドバイザーに係る費用を含む)は、本契約に別途規定した場合及び別途合意した場合を除き、売主及び買主の各々が支出した金額を各自で負担するものとする。

第25条 (不可抗力)

1.地震、台風、津波その他の天変地災、戦争、暴動、内乱、テロ行為、政府、重大な疾病、省令・規則の制定・改廃、地方公共団体等公権力の命令規制・処分その他政府による行為、争議行為、輸送機関・通信回線等の事故、その他当事者の責に帰すことのできない事情により本契約の全部又は一部(金銭債務を除く)の履行遅滞又は履行不能については、いずれの当事者もその責任を負わない。

2.前項に定める事由が生じ、本契約の目的を達成することが困難であると認めるに足りる合理的な理由が有る場合には、売主及び買主協議の上、本契約の全部又は一部を解除できる。

第26条  (譲渡禁止)

本契約において別段の定めがある場合を除き、売主及び買主は、本契約上の権利又は本契約上の地位の全部若しくは一部を、相手方当事者の書面による事前の同意なしに、第三者に譲渡、移転、担保権の設定その他の方法により処分してはならない。

第27条  (通知)

本契約に基づく通知は、以下の住所(又は本条の方式に従い通知された住所)宛てに書面又はファクシミリにより通知された場合に限り有効な通知とする。

(1)  売主に対する通知

所在地 東京都______________

会社名 株式会社_____________

担当者 _________________

FAX  _________________

(2) 買主に対する通知

所在地 東京都______________

会社名 株式会社_____________

担当者 _________________

FAX  _________________

第28条  (完全合意)

本契約は、本契約の対象事項に関する当事者間の完全な合意及び了解を構成するものであり、書面によるか口頭によるかを問わず、かかる対象事項に関する当事者間の本契約締結前の全ての合意及び了解に取って代わる。

第29条  (準拠法)

本契約は、日本法に準拠し、これに従って解釈されるものとする。

第30条  (専属的合意管轄)

売主及び買主は、本契約に関する争いについて、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることにあらかじめ合意する。

第31条  (誠実協議)

本契約に定めのない事項及び本契約の各条項の解釈に疑義が生じたときは、法令・慣習に従い、誠意をもって、売主及び買主が協議の上、解決を図るものとする。

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事業譲渡契約書を作成する場合の注意点

事業譲渡契約書を作成する場合には次のような注意が必要です。

対象事業・対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員の特定は明確に行う

事業譲渡契約については、事業譲渡契約書に規定された事業・資産・債務・契約・従業員しか承継されませんので、売主から買主に承継すべきものについては、事業譲渡契約書に漏れなく記載する必要があります。

事業・資産・債務・契約・従業員以外にも許認可や情報など買主に承継すべきものがある場合はそれも記載しなければ、譲渡の効力が発生しません。会社を一体として譲渡する株式譲渡とは異なり、複数の事業で使用している資産・債務・契約・従業員などもあり、どの事業に属するのか不明な資産・債務・契約・従業員もあり、事業の範囲は明確に決まっているものではありませんので、事業譲渡契約書に明記しないと譲渡の対象にならないのです。

譲渡の対象となる資産・債務・契約・従業員を漏れなく記載するため、決算書の勘定科目内訳書や固定資産台帳等の該当部分をそのまま記載する必要があるかもしれません。

他方、事業の範囲が明確なのであれば、「〇〇事業に属する資産・債務・契約・従業員」とだけ書けば十分な場合もあると思われます。

 対象資産・対象債務・対象契約・対象従業員ごとに価格設定が必要

事業とは、資産・債務・契約・従業員などが有機的一体となった組織であり、事業譲渡はそれら資産・債務・契約・従業員などの権利義務の有機的一体の状態での承継です。あくまで、個々の資産・債務・契約・従業員などの譲渡なのです。

会社の決算書には、特に資産については簿価というものが記載されており、会社が資産を売却するとその譲渡価格によっては譲渡益や譲渡損が発生します。譲渡益が発生した場合は、法人税が発生することとなります。

ですので、事業譲渡においては、個々の譲渡価格は売主の簿価のままとすることが一般的ですが、そうすると、事業譲渡代金が売主の当該事業の簿価を上回った場合、のれんが発生することとなります。のれんが発生する場合、事業譲渡価格が事業の簿価を上回るわけですので法人税が発生しますし、のれん自体には消費税も発生します。

すなわち、事業譲渡を構成する個々の資産・債務・契約・従業員などの譲渡について、個々の譲渡価格を設定する必要があり、多くの場合は、個々の譲渡価格としては売主の簿価を採用しますが、事業譲渡価格又は別途合意に基づき個々の譲渡価格を設定する必要があります。

消費税の計算が複雑

事業譲渡における消費税は、事業譲渡価格に10%を掛ければ算出できるものではありません。

前述の通り、事業譲渡は、あくまで、個々の資産・債務・契約・従業員などの譲渡なのです。すなわち、事業を構成する資産・債務については、消費税が発生する課税資産もあれば発生しない非課税資産もあるのです。建物は課税資産ですが、土地は非課税資産です。のれんは課税資産ですが有価証券は非課税資産ですし、債務も非課税です。

ですので、事業譲渡における消費税として、事業譲渡価格に10%を掛けた額を支払った場合は、支払いすぎになるのです。

資産・債務・契約・従業員ごとに多様な承継方法があり適切な承継方法を採用する必要がある

前述の通り、事業譲渡は、あくまで、個々の資産・債務・契約・従業員などの譲渡なのです。資産・債務・契約・従業員などの承継方法は一つだけではなく、多種多様な方法があります。

その資産ごとに決められている承継方法がある場合や、債務などについては免責的債務引受や重畳的債務引受など目的により複数の方法があり、契約(従業員の雇用契約を含む)についても、取引先や従業員を含めた三社契約で従前の契約をそのまま承継する方法もあれば、潜在債務を承継しないよう、売主がいったん契約を解除し、買主が取引先や従業員と新規に契約を締結する場合もあります。

これらの方法のいずれを採用するかについては、売主及び買主においてどのような目的で事業譲渡をするかと関連しており、その目的が実現できる方法で承継をする必要があります。

表明保証(レプワラ)や遵守条項(コベナンツ)は案件ごとに違う

弁護士法人M&A総合法律事務所の事業譲渡契約書フォーマットはあくまでたたき台としての一般的なものであり、これを実務においてそのまま使用するべきではありません。

特に、表明保証(レプワラ)と遵守条項(コベナンツ)は、個別具体的であり、事業譲渡契約書フォーマットに記載されたものがすべてではありません。

表明保証(レプワラ)と遵守条項(コベナンツ)は、売主及び買主においてどのような目的で事業譲渡をするかと関連しており、その目的が実現できる方法で承継をする必要があり、表明保証(レプワラ)と遵守条項(コベナンツ)についても、事業譲渡の目的が実現できるよう、個別具体的案件において、当事者が良く思案して考え、事業譲渡契約書に盛り込み規定すべきものです。

事業譲渡契約書だけでは、単に、事業を譲渡することだけしか規定していません。事業譲渡の当事者としては、事業譲渡に伴って実現したい目的があったはずです。それは事業の譲渡だけで実現できるものではなく、一定の条件を付けなければ実現できないものであることが多く、適切な表明保証(レプワラ)と遵守条項(コベナンツ)が入っていなかったため、事業譲渡をしたけど本来の目的を達成することができなかったということとなりかねません。

補償条項や解除条項も案件により異なる

補償条項や解除条項も案件により異なります。

補償条項は、表明保証(レプワラ)と遵守条項(コベナンツ)に違反があり、損害が発生した場合に、その損害の補償をしてもらう規定ですが、補償条項の規定が適切ではなかったため、いざ補償を求めようとしても補償してもらえない場合や裁判になってしまうような場合も多くあります。

特に、補償条項のもととなる表明保証(レプワラ)と遵守条項(コベナンツ)が明快ではなかったり漏れがあったりする場合が多くなっています。

また、表明保証(レプワラ)については、買主が表明保証(レプワラ)違反であることを認識していた場合や認識可能性があった場合は、補償義務は生じないという裁判が多く出ており、すなわち、そのような買主は知っていたのだから保護する必要はないと裁判所は考えている傾向があり、補償条項を規定するだけでは効力を有さないことが多いのです。そこで、近時は、特別補償条項といって、買主の認識や認識可能性に関係なく、一定の事実があった場合は補償義務が発生する規定を規定することが多くなっています。

解除条項についても、これまでは、いったん譲渡した事業は買主の一部になってしまうのだから解除されて売主に戻ってきても原状回復にならないということで、事業譲渡実行「後」は解除できないとする解除条項が大半でしたが、補償条項だけでは買主の損失を回復できないようなM&Aトラブル事例も多く、事業譲渡実行「後」も解除することができる事業譲渡契約書にするケースも見かけます。

印紙税の納付は収入印紙を貼り付けておこなう

作成した事業譲渡契約書には、印紙税法の定めによって収入印紙を貼付する必要があります。

印紙税額は次のとおりです。

契約書に記載された譲渡金額印紙代
1万円未満なし
1万円~10万円以下200円
10万円~50万円以下400円
50万円~100万円以下1,000円
100万円~500万円以下2,000円
500万円~1,000万円以下10,000円
1,000万円~5,000万円以下20,000円
5,000万円~1億円以下60,000円
1億円~5億円以下100,000円
5億円~10億円以下200,000円
10億円~50億円以下400,000円
50億円以上600,000円

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 まとめ

この記事では、事業譲渡契約書に記載される基本的な事項と注意点についてお伝えしました。

事業とは、資産・債務・契約・従業員などが有機的一体となった組織であり、事業譲渡はそれら資産・債務・契約・従業員などの権利義務の有機的一体の状態での承継です。あくまで、個々の資産・債務・契約・従業員などの譲渡なのです。事業譲渡契約書では、この各々についてすべてを規定することとなりますので、M&A契約書の中でも難易度が高く複雑かつ分量が多い契約書になります。

事業譲渡契約書フォーマットを安易に使用しても事業譲渡の目的を達成することはできない可能性が高く、必ず弁護士に相談しながら作成をする必要があります。

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