少数株主・非上場株式問題への対応方法!

少数株主対策の実務について

敵対的少数株主問題とは?

「少数」株主といってもそんなに少ないわけではなく、20%ぐらい保有している人がもめるケースが多いのが現状である。「少数株主問題」と一般的に言われ、「敵対的」という文言はあくまで便宜上の呼称である。敵対関係の例を挙げると、創業家と番頭家がある。これは一緒に会社を設立したものの、対立するに至った場合、又は息子や孫の代において家同士で対立し、対等合併したものの、結局両家が対立するに至った場合、その他孫同士、曾孫同士などさまざまなパターンがある。

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典型的ケース

6ページ目以降で、典型的ケースを図にしている。
7ページ目(典型的ケース2)は、番頭と創業家の対立。25%ずつファミリーが株式を持っていたが、子供の代が対立している。
8ページ目(典型的ケース3)は、長男家と、次男・三男・長女の1対3で対立している。長男は、社長の座を子供に早々に譲っており、このビジネスはうちのファミリーのものであると示そうとしている。
9ページ目(典型的ケース4)のように、代替わりがあると煩雑となる。兄弟で仲良く経営していたつもりが、子供が社長になり、叔父・叔母を排除しようとしている事例である。
10ページ目(典型的ケース5)は、非常に複雑である。長男が死亡しその妻が相続、妻と三男・長女・四男の対立である。妻のような外部の者が入ると骨肉の争いになりがちである。
11ページ目(典型的ケース6)は、対等合併したが、専務の会社B社は企業規模が小さいので40%株主でいいとし、A社は60%株主になった。しかしながら子供の代になった途端、60%保有しているため、A社は自己の会社だと主張している。専務の子供を追い出そうと」いうケースである。
12ページ目(典型的ケース7)は、孫の代である。現理事長と平理事はうまくやっているが、それなりの規模であるため相続税が多額となる。相続税は最高税率50%であるので、10億円の持分を持っていたら約5億円の税金がかかることになる。本ケースでは平理事の子供は払えないため、医療法人の経営を実質的におさえている現理事長が、相続税を肩代わりすると申し出ている。昨年4月から始まった相続税納税猶予制度、相続税納付猶予の申請をすることで相続税を払わず済む。ただ、経営を承継しない平理事の子供は相続税を払わなければならず、そのためには持分を売って現金を手に入れなければならない。このように、少数株主は売らざるを得ない状況となり、排除され、社長の支配が強まる構造になりがちである。
13ページ目(典型的ケース8)は、とばします。
14ページ目(典型的ケース9)は、会長が元社長を追い出した上に、元社長の株は名義株なので、社長自身は100%株主だと主張している。
15ページ目(典型的ケース10)は、会長が雇われ社長を排除しようとクビにした事例である。ただ、雇われ社長は20%持っているためどうすべきか、である。

典型的ケースについて

・ 特別支配株主(90%以上)は存在しない。
・ 長男が微妙に多数株主になっている。
・ 社長家と他株主はこれまでも争ってきた(民事調停又は役員退職慰労金請求訴訟は経験済み)。
・ 他株主は社長に利益を与えたくない。長年、社長に抑圧されてきた。
・ 社長は他株主に利益を与えたくない。社長は他株主は無能との意識。
・ 兄弟個人ではなくファミリー同士のいがみ合いになっている。
・ ファミリーの長は70−80代。この問題を子孫に残したくない。
→ 現金は持っていないが、株だけ5億円と高額評価されていたりする。
・ 社長がワンマンである。他株主は冷遇されている。北朝鮮?山〇会長?
→ 以前は「北朝鮮」と言っていたが、昨年からは「山根会長」と言う人が多い
・ 家制度が色濃く残っている地域で対立が激しい。
→ 地方では田分けしてはいけないということで、長男がすべて相続する傾向がある。米どころ、愛知・静岡・群馬・新潟・富山の方からの相談が多い。
・ 社長は息子に会社を承継させたい。兄弟を排除したい。
・ 社長も他株主も現金はあまり持っていない。
→ 現金を持っていないため、誰も買い取ることができない。長年経営しており会社の貯金は多い。BSが厚くPLが薄いという、会社だけはやたら現金を持っているものの、最近は儲かっていないケースが多い。
・ 会社には現金が多く、BSが厚く、PLが薄い。
・ 戦後まもなく創業の会社が多く、戦前創業多い(現預金巨大。土地含み益過大。保険も)。
・ 保有株式の簿価純資産額は1~3億円が多いが、10億円以上のものもあり、2~3,000万円程度のものもある。
→ 決算書のBS、貸借対照表の右下、資本の部が簿価純資産ですから、それにクライアントが保有するパーセンテージを掛け合わせることで、簿価純資産価額を計算できる。意外に多額になる会社が多く、24歳の女性が300億円持っていたり、30歳で結婚したばかりの人が500億円持っていたことがある。そういった場合は、名の知れている会社である。このようなファミリー対立に介入すると、相手方が巨大法律事務所のため非常に煩雑である。先ほど申し上げたとおり、当事者は現金をそこまで持っていないので、あまり受任しない。

敵対的少数株主から株式を買い取るべきか?

【1】

・ 弁護士は「買い取る必要はない!!」「放置すればよい!!」と言うが。。。
・ 社長の悩みNo.1は、
・「株主が株式の買取を求めてくるのではないか・・・」
→ 会社側からも相談があるが、普通の弁護士の場合は、社長に対して「買い取る必要はありません、放置すればいいです。」と言う。少数株主であるから、それはたしかに一理ある。しかし社長の悩みはそこではなく、「株主が株式の買い取りを求めてくるのではないか」それ自体が悩みである。
・「株式を高値で買い取る必要があるのではないか・・・」
→ 株式を高値で買い取る必要があるのではないか、せっかくの収益をそんなことに使わなければいけないのかという悩みである。
・「株主総会のことを考えると鬱である・・・」
→ 株主総会において、少数株主が大騒ぎし社長を罵倒するのがイヤだという悩みである。
・「株式買取資金がない・・・」(←このケースは少ない)
→ 株式が高く資金が足りないのではないかと思いがちであるが、実は会社側には現金はある。もし足りない場合であっても、ファンドから資金を注入してもらえばよいだけのことである。資金があっても、そんな無能な兄弟に払うつもりはない、払いたくないというのが本音である。

・他方、敵対的少数株主はかなりの「敵意」を有している。
→ 買え、買わないを何年も続けていると、相当仲が悪く敵意を有していることが多い。逆に、まだ請求していないが請求したいという相談もるが、まずは請求してどうしようもなかったら相談に来てくださいとお答えし、お帰りいただいている。まずは、請求しなければ何も始まらない。

・社長としては「放置すればよい!!」と言われても悩みは解決しない。。。

【2】【株式を買い取らなかった場合どうなるのか】

1 特段何も起きない
→ だいたいは何も起きません。
2 親族との関係が悪化する
3 兄弟からしつこく買い取りを要求される
4 何かあるたびに買い取りを要求される
→ ことあるごとに話題にされ、「検討します」と答えると、しつこく返答を催促される。何も進展していなくても、弁護士は通知書を出し続けた方がよい。
5 訴訟の提起(民事調停申立・役員退職慰労金請求訴訟・遺産分割調停など)
6 株主総会が荒れる
7 株主が自宅に押し掛けてくる
8 第三者に株式を譲渡されてしまう
→ これはあまりない

【3】【株式を買い取らずに放置した場合のデメリット】

1 ストレスがたまる
2 株主間の政治にエネルギーが費消される
3 事業承継・事業再編が困難になる(後継者が嫌がる)
→ 親同士が対立していると、子供は会社を継ぎたがらない。親同士であればまだしも、前妻などであれば、さらに問題である
4 M&Aが困難になる(買主が嫌がる)
→ 買ったらまたもめてしまうので、買主も買いたがらない。
5 第三者に株式が譲渡されてしまう。相続でさらに散逸してしまう。
※ 1・2の場合、のらりくらり対応するか、排除するか。
→ 自分では対応せず、弁護士に依頼して対応してもらうべきである。
※ 3・4・5の場合、否応なく敵対的少数株主排除が必要。

【4】【敵対的少数株主に相続が発生した場合、株式はどうなるのか。】

0 株式が散逸してしまう。
1 多額の相続税が発生する。
→ 相続税を払えずに、相続放棄せざるをえないこともある。
2 相続税を支払うため株式の売却に迫られる。
3 株式を買い取るのは会社しかいない!
4 会社が株式を買い取ると「みなし配当課税」となる。
→ 株式譲渡に対する税金は、20%である。ただ、その株式を発行している会社に譲渡する場合は、20%は適用にならず、みなし配当課税として配当扱いになる。その場合は、事業所得や給与所得と同じく、最高税率55%(住民税とあわせて)です。第三者に譲渡すれば20%であるのに、会社が買い取る場合は55%と手元に残る現金はごく少なくなり、それでは売る意味がない。ただ、相続がすでに発生している場合は、相続税を払った上でみなし配当課税も払うので、現金はほとんどなくなってしまうこととなる。
5 社長に株式がさらに集中する!
6 社長は相続税納税猶予制度が適用される。
→ 昨年4月に要件が緩和され、かなり幅広く適用できるようになった。
取締役を相続する場合、事業承継する取締役だけに適用される制度です。少数株主には適用がされない。
7 社長に株式がさらに集中する!
→ 会社側は、「相続税を全部肩代わりしてあげるから株式を全部渡しなさい」と言ってくることになる。55%を払うから100%の株を渡せというのはおかしい。相続によって会社側に安く買いたたかれてしまうということが、世間的に起こっている。また、相続により、いわば偶発的に手に入れた株式であるので、会社に思い入れのない子供は安く売ってしまう。本当はもっと価値があるから適切な価格で売りたいと、70代80代の親は思っている。

【5】

同じようなことを言っていますので、とばします。

「長生き競争」とは?

亡くなった人は相続税を払うために、株を手放さざるをえない。そして、生きていれば、相続税を課税されずにその株を自分のものにできます。とにかく長生きをして、他の株主が亡くなるのを待つという意味で、長生き競争と言われていたが、納税納付猶予制度の要件緩和により社長だけがトクをする構造になった。要件緩和制度は始まったばかりであるので今後の予測は難しい。

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敵対的少数株主の取り得る方策

1 反感を募らせる
2 株主総会での株主権の行使
→ なんでも反対し、イヤな質問ばかりするようになる
3 株式の買取の申し入れ(退職慰労金請求・遺産分割の申し入れ)
4 営業秘密の持ち出し、顧客の奪取、残業代の請求
→ 従業員であった場合である。
5 経営者貸付金債権回収訴訟提起
→ 取締役をしていると会社にお金を貸していることが多くあるので、回収訴訟を提起する。多くの場合は返還してもらえることになる。
6 会計帳簿閲覧請求仮処分申立
7 未払残業代請求労働審判・労働裁判
8 退職慰労金請求訴訟提起
→ 従業員ではなく役員であることが多く、その場合は、退職慰労金のみである。ただ、退職慰労金は、株主総会で承認されなければ法律上の権利として成立しないので、限界のある請求方法である。
9 遺産分割調停・遺留分減殺請求調停申立
10 株券発行裁判訴訟提起
11 株式譲渡承認請求・株式譲渡価格決定申立
→ 譲渡先がなければできない請求であるから、その場合は12の株主代表訴訟を申し立てる。
12 株主代表訴訟
13 民事調停
→ 少数株主はなかなか裁判をすることができない。株式買取請求権は存在しないのである。合併や譲渡制限導入の定款変更、合併、分割、株式交換、株式移転などの組織再編、または事業譲渡や重要な子会社売却の事業譲渡類似取引でなければ、反対株式買取請求権を行使できないのである。裁判をとにかく申し立てて、その中において株式に関しても一括解決をさせる、和解狙いの解決方法しか実は存在しないのだ。しかも、裁判も申立ができなければ意味がなく、裁判所に係属させることができないため、何らか裁判ができる方法として、この手段を取るしかない。そしてこのような手段が全くない少数株主については、強制力がなく相手方が出頭してこなければ終了する、民事調停を申し立てるしか道が無いのである。

単独株主権・少数株主権

単独株主権:定款閲覧謄写請求権

株主は、いつでも定款を閲覧謄写することができる。会社は拒絶することができない

単独株主権:株主名簿閲覧謄写請求権

請求の理由を明らかにしなければならない(2項)。拒否事由が限定列挙されている(3項)。

単独株主権:計算書類等閲覧謄写請求権

「計算書類」とは、いわゆる決算書である。BS、PL、事業報告、附属明細書は、株主総会で配布する必要がある。会計帳簿とはまた異なり、計算書類は一般的なものであるので閲覧請求権の要件は緩い。備え置いて、株主はいつでも閲覧することができる。

単独株主権:株主総会議事録閲覧謄写請求権

株主であれば株主総会に出席しているわけであるから、当然閲覧の要件は緩い。

単独株主権:取締役会議事録閲覧謄写請求権

→ 取締役会議事録は、要件が厳格である。
・ 3 監査役設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株式会社の営業時間内は、いつでも」とあるのは、「裁判所の許可を得て」とする。
→ いつでも請求はできるが、監査役設置会社などは、裁判所の許可を得なければならない。
・ 6 裁判所は、第3項において読み替えて適用する第二項各号に掲げる請求又は第四項の請求に係る閲覧又は謄写をすることにより、当該取締役会設置会社又はその親会社若しくは子会社に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、第3項において読み替えて適用する第2項の許可又は第4項の許可をすることができない。
→ 著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、許可されないと定めている

単独株主権:違法行為等差止請求権、34ページ・単独株主権:取締役会招集請求権

とばします。

単独株主権:募集株式発行等差止請求権

あまり活用されていない。

単独株主権:株主総会等決議取消の訴え

裁量棄却されることがある。

単独株主権:募集株式の発行等無効の訴え

6ヶ月以内に無効確認の訴えができる。

単独株主権:株主代表訴訟提起権

60日以内に会社が訴えなかった場合にできる。

少数株主権:株主提案権

非上場会社ではあまりやることがないが、株主総会において株主提案ができる。

少数株主権:株主提案権(株主総会)

招集通知への記載を請求できます。記載しなければ議案にできない。

少数株主権:検査役選任権(株主総会招集手続き)

株主総会招集手続きが適切にされているかについて、検査役の選任の申立てができる。

少数株主権:検査役選任権(業務執行)

株主総会招集手続きよりこちらの方が重要である。業務執行が適切に行われているかという点について、検査役を選任することができる権利である。

少数株主権:株主総会招集請求権、少数株主権:役員解任の訴え提起権

とばします。

少数株主権:会計帳簿閲覧謄写請求権

→ 3%以上株式を保有していれば、理由を明らかにして請求することができる。
・ 2 一 当該請求を行う請求者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
→ 少数株主の株主権行使のための制度ですので、それ以外の目的であれば全て認められない。
・ 二 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
→ 開示することによって共同の利益を害してはならない。
・ 三 請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。
→ 競業他社に就職している場合などは請求ができない。

少数株主権:会社解散請求権

このまま経営していても、会社の財産にとって意味がなくむしろマイナスである場合に請求できる。

敵対的少数株主から訴えられたらどうすればよいか?

敵対的少数株主の攻撃方法

【敵対的少数株主の訴訟提起方法】
・ 株主総会出席
・ 任意交渉
・ 会計帳簿閲覧謄写請求(仮処分)
・ 役員貸付金返還請求(訴訟)
・ 役員退職慰労金請求(訴訟)
・ 遺産分割調停・遺留分請求調停(調停)
・ 共有物分割訴訟(訴訟)
→不動産を共有している場合は、可能である。
・ 株券発行請求訴訟(訴訟)
・ 株主代表訴訟(訴訟)
・ 反対株主株式買取請求・株式買取価格決定申立(非訟)
・ 株式譲渡承認請求・株式買取請求・株式売買価格決定申立(非訟)
・ 民事調停(調停)

敵対的少数株主から訴えられた場合

とばします。

株式譲渡承認請求・買取請求

1  【会社法第136条から138条】

・ 株主が、会社に対して、第三者に株式を譲渡承認することについて、単独で、株式譲渡承認請求(及び買取請求)を行う。
→ 譲渡承認請求とは、株式を買い取る人を株主自身が見つけてきてその人に譲渡したい場合に、会社に対して譲渡承認を請求する。
・ 株主から株式を譲り受けた第三者から、会社に対して、株主と連名で、株式譲渡承認請求(及び買取請求)を行うことも可能である。
→ 譲り受けた人からも承認請求ができます。譲り渡す株主と連名で、会社に対して譲渡承認請求及び買取請求をする。
※ 第三者の氏名又は名称を明示することが必要。
→ 買い取る人がいない場合は、本請求権は行使することはできない。
※ 株式譲渡承認請求書に株式譲渡承認拒否した場合、株式を会社又は指定買取人にて買い取るべき旨請求することが必要。
→ 譲渡承認だけを請求することもできるが、拒否されてしまったらそこで終わりである。譲渡承認を拒否するのであれば、会社が買い取ってくださいという請求もしていれば、どちらかの方法で無事解決できるのである。

2 【会社法第139条、第145条】

・ 会社の取締役会にて、株式譲渡承認請求につき審査が行われる。
・ 株式譲渡が承認された場合は、第三者が株主になることができる。会社の取締役会にて、株式譲渡が不承認になることも多い。
・ 会社は、株式譲渡承認請求を受けてから2週間以内に、譲渡承認請求者(株主又は第三者)に対して、株式譲渡を承認または拒否する旨の通知をしない場合、会社法に基づき、その株式譲渡を承認したものとみなされる(みなし承認)。
→ 譲渡承認請求を受けたら、会社は2週間以内に承認か拒否かの返答をしなければならない。返答をしなければ、みなし承認をしたとして、承認されてしまうことになるのである。

3 【会社法第140条・141条】

・ 会社は、株式譲渡承認拒否した場合、株式買取義務が発生する。
・ 会社が株式を買い取る場合、譲渡承認請求者(株主又は第三者)に対して、株式を買い取る旨を通知(株式買取通知)をする必要がある。
・ 会社は、株主総会を開催し、株式を買い取る旨の承認決議を行うこととなる。その場合、株主に対しては、株主総会の招集通知が送付され、かつ株主総会終了後に株主に株主総会決議通知が送付される。そして、会社は、譲渡承認請求者(株主又は第三者)に対して、株式を買い取る旨を通知(株式買取通知)を送付することとなる。
・ 他方、会社ではなく、指定買取人が株式を買い取る場合は、株主総会を開催することは必要ではない。
→ 拒否した場合は、会社に買取義務が発生する。指定買取人の場合は別であるが、会社にとっては自己株買いであるので、まず、株主総会を開催し買い取る旨の承認決議を行う。その上で買取通知を発送するので、1ヶ月程度かかることになる。

4  【会社法第141条・142条・145条】

・ 会社から譲渡承認請求者(株主又は第三者)に対して、株式の買い取りの通知(株式買取通知)を送付する。
・ 会社は、株式買取通知と共に、暫定株式譲渡価格を供託したことを証する書面(供託書)も、株主に対して送付する必要があることに留意する必要がある。
・ 暫定株式買取価格は、簿価純資産方式で決定される価格である。
→ 買取通知と共に、簿価純資産方式で決定される暫定株式譲渡価格を供託しなければならない。決算書の貸借対照表の右下に書いてある資本の部全部なので大変である。このような会社は戦前に設立され、内部留保が多く、無借金経営かつ簿価純資産は非常に巨大なのである。そのぐらいの現金は持っており供託はできるが、会社としては供託さえもしたくないのである。
供託をしたくない場合に会社側の多くがとる方策としては、譲渡承認をしてし、弁護士を雇い、紛争に持ち込むのである。
・ 会社の譲渡承認拒否通知から40日以内に、会社から譲渡承認請求者(株主又は第三者)に対して、株式買取通知(供託書同封)を送付しなかった場合、会社法に基づき、会社は株式譲渡を承認したものとみなされる(みなし承認)。
→ 譲渡承認拒否通知から40日以内に買取通知を送付しなければ、みなし承認とされてしまう。供託も40日以内である。
・ 他方、指定買取人が株式を買取る場合は、譲渡不承認通知から10日以内にこの通知が必要となる。

5  【会社法第144条】

・ 会社から譲渡承認請求者(株主又は第三者)に対して、株式の買い取りの通知(株式買取通知)が送付された場合、株式買取価格は、会社法に基づき、暫定株式譲渡価格(簿価純資産方式で決定される価格)で、一旦確定する。
→ 株式の買取通知が送付された場合、株式買取価格は、いったん簿価純資産価格で確定する。

6  【会社法第141条・142条】

・ 株券発行会社の場合は、譲渡承認請求者(株主又は第三者)は、会社の株式買取通知の交付から1週間以内に、株券を供託する必要がある。
→ 株券の発行を受けていない場合は供託ができず、株式売買価格決定申立に移ることもできませんので、前提として、譲渡承認請求する前に株券の発行を受けておく必要があります。株券発行会社においては、株券の交付がなければ、株式譲渡は有効ではありません。M&Aのデューディリジェンスでも、現社長が前社長から株券を譲渡されているかどうかが、重要確認事項です。

7 【会社法第144条】

・ 譲渡承認請求者(株主又は第三者)と会社の間で、株式買取価格に関する交渉が行われる。相手方の提示する買取価格に不服がある場合は、買取価格について相手方と協議を行う。
→ 価格については、基本的には交渉で決定してくださいというのが、法律の立場です。

8 【会社法第144条】

・ 株式買取価格に関する交渉が不調に終わった場合は、会社の株式買取通知から20日以内に、裁判所に株式売買価格決定の申立てをすることができる。株式買取通知から20日以内に株式売買価格決定の申立てをしない場合、株式売買価格は暫定株式譲渡価格(簿価純資産方式で決定される価格)で確定となる。
・ すなわち、株式買取価格が「簿価純資産方式で決定される価格」で不満な場合は、これに不満な当事者は、株式買取通知から20日以内に、裁判所に株式売買価格決定の申立てをする必要がある。
→ 売主か買主、どちらかによって申し立てが行われる。たとえば、株主側は、土地の含み益などが多くあり、株価が安いわけがないとして申し立てる。会社側は、バブル期に土地をたくさん購入したため含み損がたくさんあり、株はもっと安いはずだとして申し立てをする。

9 【会社法第144条】

・ 裁判所に株式売買価格決定の申立てをした場合、裁判所で審査の上、株式売買価格の最終価格が決定する(途中で和解成立すれば、和解で終了)。
・ なお、裁判所は、株式譲渡承認請求の時点における株式会社の「資産状態その他一切の事情」を考慮して、この株式買取価格を決定するものとされている。
→ 株価の決定方法は、条文には明確に書かれていない。

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反対株主株式買取請求権

・ 反対株主は、株式会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。
→ 譲渡承認請求は、売主が売りたいときに発動する制度である。逆に、反対株主株式買取請求権は、株主は売りたくないけれども、否応なく会社に株式を買ってもらう制度である。原因としては、会社が勝手に合併、株式譲渡制限の定款変更、事業譲渡、組織変更などがある。
・ 株式譲渡制限導入定款変更(会社法116条)
・ 株式無償割り当て(会社法116条)
・ 株式を引き受ける者の募集(会社法116条)
→ 全く関係ない人を株主にしようということである。
・ スクイーズアウト株式併合(会社法182条の4)
→ 株式併合して少数株主を強制的に排除することになる。
・ 事業譲渡・重要子会社売却(会社法469条)
・ 合併・会社分割・株式交換・株式移転(会社法785条・797条・806条)

2回の反対が必要!!

※ 委任状に反対と書いて提出しただけでは反対にならない?!
※ 株主総会において反対票の投票と同時に株式買取請求権の行使が必要!!
→ 株主総会の日までが、株式買取請求権の行使期間と定められることが多い。
※ 株式売買価格決定申立とは価格が異なる!
→ 株式評価方法が異なる。
※ 株式買取価格決定申立では和解で終了することが多い?!

【会社法第116条2項】

・ 「反対株主」とは、次の各号に掲げる場合における当該各号に定める株主をいう。
一 株主総会の決議を要する場合 次に掲げる株主
イ①当該株主総会に先立って当該行為に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、②当該株主総会において当該行為に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
→ 総会に出席して反対しただけの人が多い。出席前に事前に通知し、当日反対するというように2回反対することが必要である。
ロ 当該株主総会において議決権を行使することができない株主
二 前号に規定する場合以外の場合 すべての株主

【会社法第116条3項4項】

・ 株式会社は、効力発生日の20日前までに、株主に対し、当該行為をする旨を通知(又は公告)しなければならない。
→ 会社としては、合併をする前は株主総会をすればよいとして、株主総会の招集通知を1週間前までに発送して終わらせてしまうことがある。株主通知を忘れている、もしくは株主通知を20日前までに発送していないことが多くある。

【会社法第116条5項】

・ 株式買取請求は、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数を明らかにしてしなければならない。
→ 株主総会の翌日に、合併の効力発生日を設定することができる。当日でもよいのか?その場合、総会の日までに反対株主株式買取請求権を行使しなければならない。株主としては、2回反対し、やっと反対株主株式買取請求権を行使しようとしたところ、期間が経過してしまっていることがある。

【会社法第116条6項】

・ 株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは、当該株式の株主は、株式会社に対し、当該株式に係る株券を提出しなければならない。
→ 供託しなければならないわけではないので、期間の定めはありません。
株券発行会社でない場合は、株券提出は不要である。
株式譲渡承認請求の場合は、株券を発行されていなくても供託しなければならず、状況が異なる。

【会社法第117条1項2項】

・ 株式買取請求があった場合において、株式の価格の決定について、株主と株式会社との間に協議が調ったときは、株式会社は、効力発生日から60日以内にその支払をしなければならない。
・ 株式の価格の決定について、効力発生日から30日以内に協議が調わないときは、株主又は株式会社は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。

事務的な条文ですので、とばします。

【会社法第117条6項】

・ 株式買取請求に係る株式の買取りは、効力発生日に、その効力を生ずる。

株式を買い取る方法

1 任意交渉(株式譲渡)
2 民事調停(株式譲渡)
3 特別支配株主の株式売渡請求権
4 相続人に対する株式売渡請求権
5 現金対価株式交換(現金対価合併)
6 スクイーズアウト株式併合
※ 任意交渉するかどうかの見極めが案件を大きく左右すると思われる。任意交渉を先行すると、敵対的少数株主が「交渉の余地あり!」と考える可能性がある。
→ 会社が株式を買い取る方法として、よく話題に上がるのが、5の現金対価株式交換と6のスクイーズアウト株式併合である。

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とばします。

スクイーズアウト

以前は、全部取得条項付株式を発行して株式を全部取得した上で、特定の株主にだけ株券を発行する。端株になる人には現金を払って終わりにする制度が流行っていた。その後、条文が整備され、現金対価株式交換と株式併合の2つが現在は、よい方法ではないかと言われている。いずれも、株主総会の特別決議で行うことができる。事前開示書類および事後開示書類の備置が必要である。株主通知も20日前までに行わなければならない。

反対株主株式買取請求権もあり、20日前から行使できます。価格決定申立も60日以内に行うことができます。2つの方法はほとんど同じですが、98ページの税金だけ異なります。

現金対価株式交換は非適格株式交換なので、簿価ではなく対象会社の方を洗い替えしなければならない。簿価を時価に修正する。課税関係も異なる。株式交換の場合は、賛成した場合は譲渡益課税の20%、反対した場合は会社が買い取りますのでみなし課税になりますので、そこが問題である。株式併合の場合は、その点は税法で調整されており、みなし配当課税の適用が除外されている。いずれの場合も20%になり、株式併合の方が問題なく使いやすい制度である。
たとえば、100株発行している会社で、長男が51株、次男が49株保有しているとする。株式併合の結果、100株が2株になった。すると51%の長男は1株もらえるが、49%の次男は端株になり、株券がもらえないので、代わりに現金を与えることになる。現金対価株式交換も同じである。2株と交換する場合、長男は1株もらえるが、次男は端株になるので、代わりに現金が与えられることになる。価格決定申立を行う場合に裁判所の許可が必要になる。
株式交換の場合は、株券ではなく現金を与えれば済むので、端株といった問題が発生することなく、親会社が株式を取得することができる。また、株式交換は会社を買収するという形をとることができる。株式併合はどうしても端株にして追い出す形になるので、見え方としては、株式交換の方が無難である。ただ、税制の関係上、株式併合の方が容易である。

とばします。

株式価値評価の方法(株式売買価格決定申立事件)

【136ページ】

【国税庁方式(相続税評価額)】
税理士に依頼
1 純資産法&類似業種批准法
2 配当還元法(国税庁方式(10倍))
【会社法上の株価(株式譲渡売買価格決定申立)】
1 時価純資産法?&収益還元法?
2 配当還元法?
【会社法上の株価(反対株主株式買取価格決定申立) 】
1 時価純資産法?&収益還元法?
2 配当還元法?
【ファイナンス理論に基づく株式価値評価】
公認会計士や金融機関に依頼
1 時価純資産法&収益還元法
2 配当還元法(ゴードンモデル法・標準配当性向法)
→ 株式買取請求権や株式譲渡承認の場合に採用されるのは、国税庁方式(相続税評価額)、ファイナンス理論に基づく株式価値評価どちらでもなく、これらを修正したような内容である。

【ミカサ事件】

2 本件会社の株式価格の評価は、DCF方式またはゴードン・モデル方式によって算定することが一応相当であるが、本件は、会社法の株式の売買価格を決定するものであるから、売り手、買い手双方対等の立場で評価すべきであり、売り手の立場から最も合理的な評価方法である配当還元方式と、買い手の立場からのDCF方式を1対1で加重平均する方式をとるべきこととなる。
→ ミカサ事件は、株式譲渡承認請求事件である。譲渡承認請求は強制的に売主が株券を取り上げられてしまうわけではなく、売りたい少数株主が会社に買わせる制度であるので、売主と買主は対等の関係である。
売り手の立場、買い手の立場それぞれにおいて、株式価格をまずは計算し、それらを1対1で加重(単純)平均する。売り手側は、最も金額が安くなる、配当還元法で計算する。買い手側は、最も金額が高くなるDCF法である。将来収益まで見込んで事業計画を作成し、それに基づいて計算する。

【吉本興業事件】

【判示事項】株式売買価格決定申立事件において,売買価格を収益還元法を80%、配当還元法を20%の割合で加重平均した価格とした事例
→ なぜこのような割合に決定したのか。

・ 申立人は、相手方大成土地の株式を36万2900株、発行済株式総数の約18.9%保有。この持株比率からすると、経営権を握っているとはいえない。配当還元法にウェイトをおくのが一般的である。他の株主も決定的な支配権を保有しているといえるほどの持株比率ではない。議案によっては申立人が他のグループと協調して議案の賛否を左右する可能性を残す程度である。また、申立人の代表取締役である甲野春彦がかつて相手方大成土地の役員であった。
・ 以上からすると、申立人を、相手方大成土地に対する発言力が全くない単なる少数株主と位置づけるのは適切ではない。ある程度経営に影響力がある株主として評価すべきである。
→ 申立人は少数株主(18.9%保有)ですが、経営に影響力を与える余地も残されている。

・ 本件のように同じ歩調の行動を取るとするならば、両者の議決権割合は合計で約57.46%になり過半数に達する。相手方吉本興業と乙山夏夫の親族グループは、相手方大成土地の経営に対して強い影響力を持っているので、一般的にいえば、支配権を持つ株主としての評価をすることになる。また、相手方大成土地自身が買い取る株式については、支配権を持つ株主と同じ立場で考えざるを得ない。
→ 57.46%、支配権を持つ株主と同じ立場である。

・ 単純な少数株主にとっての株式の価値は、配当還元法による1株300円である。他方、完全な支配権を保有している株主にとっての株式の価値は、収益還元法による1株3500円を基礎とするべきである。
・以上の検討を総合的に勘案すると、申立人は外形的には少数株主であるが、経営に影響を与える可能性も残されているから、配当還元法による評価額1株300円に20%、収益還元法による評価額1株3000円に80%のウェイトを置いて評価するのが適切である。そうすると、本件株式の平成22年7月1日現在の評価額は1株2460円(300×0.2+3000×0.8)となる。
→ ある程度有力な少数株主ですので、20対80として、収益還元法に重きを置いている。どういった売主と買主かということを考慮してウェイトを決定している。

【東京都観光汽船事件】

・ 【判決要旨】譲渡制限のある株式30万株の譲渡の承認を求めた株主とその承認を拒絶した会社の指定した買取人とがそれぞれ裁判所に決定を申し立てた売買価格について、判示の事実関係の下では、DCF法、純資産法、配当還元法による株式価格を加重平均して、1株当たり693円と決定するのが相当である。
→ 加重平均している。

・ 平成24年1月22日時点における東京都観光汽船の発行済み株式総数は123万株であった(自己株式数は1000株)。議決権を有する株主は11名であり、申立人らの保有株式に係る議決権比率は24.4%であった。東京都観光汽船の代表取締役である甲野夏彦の保有株式に係る議決権比率は39.1%であり、その親族であり東京都観光汽船の取締役である乙山秋子の保有株式に係る議決権比率を併せると、総議決権の過半数を超える52.9%となる。
→ 24.4%と52.9%という吉本興業事件と似た割合ですので、配当還元法を軽く、ほかの方法のウェイトを重くしている。

【トーフレ事件】

・ 【判示事項】1 株式譲渡制限のある株式会社の株式の譲渡の承認に係る売買価格決定の申立てにおいて、配当還元法による評価方法が採用された事例
2 株式譲渡制限のあるものとみなされる特例有限会社の株式の譲渡の承認に係る売買価格決定の申立てにおいて、純資産法による評価方法が採用された事例
→ 配当還元法による評価方法が採用されている。2は純資産法であるが、こちらは子会社のことである。

・ トーフレの主要な株主は、トーフレ企画(持株数3万7660株、議決権比率23.4%)
グレイシア(持株数2万8060株、議決権比率17.4%)
トーフレ従業員持株会(持株数2万3500株、議決権比率14.6%)
丁田(持株数2万0800株、議決権比率12.9%)
→ グレイシアは子会社である。
・  利害関係参加人は、かつてトーフレの取締役及び監査役を務めていた、トーフレの株主である。利害関係参加人は、譲渡承認請求をした平成25年11月16日の時点において、トーフレ株式3500株(持分比率1.79%、議決権比率2.17%)を保有していた。
→ 少数株主が、利害関係参加人であるケースである。68%(主要な株主の合計)対2.17%だったので、配当還元法で決定されていた。
株式譲渡制限の株価決定方法は、売主と買主各々で株価を計算し、株主の有力者度合いによってそれらを加重平均していることがほとんどである。ただ、裁判所によっては、この法則に従わず、混乱したような判例も多く見られる。

181〜200ページ・株式価値評価の方法(反対株主の株式買取請求権)

【181ページ・道東セイコーフレッシュフーズ事件最高裁】

・ 【判決要旨】非上場会社において会社法785条1項に基づく株式買取請求がされ、裁判所が収益還元法を用いて株式の買取価格を決定する場合に、非流動性ディスカウント(当該会社の株式には市場性がないことを理由とする減価)を行うことはできない。

【182ページ】

・ 吸収合併等に反対する株主に公正な価格での株式買取請求権が付与された趣旨が,吸収合併等という会社組織の基礎に本質的変更をもたらす行為を株主総会の多数決により可能とする反面,それに反対する株主に会社からの退出の機会を与えるとともに,退出を選択した株主には企業価値を適切に分配するものであることをも念頭に置くと,収益還元法によって算定された株式の価格について,同評価手法に要素として含まれていない市場における取引価格との比較により更に減価を行うことは,相当でないというべきである。
・ したがって,非上場会社において会社法785条1項に基づく株式買取請求がされ,裁判所が収益還元法を用いて株式の買取価格を決定する場合に,非流動性ディスカウントを行うことはできないと解するのが相当である。
→ 反対株主の株式買取請求権の趣旨である。少数株主の計算方法は配当還元法であるといったことは、関係がない。会社の全体の企業価値は収益還元法やDCF法といった高い金額で計算されているので、それらで均等に割った上で配分するのが反対株主の株式買取請求権である、としている。判例には、採用すべき計算方法が収益還元法やDCF法であるとは明示されていないが、読んでいるとそれらが前提であることがわかる。
非流動性ディスカウント、非上場会社の株式は流動性が低く、スムーズに売却ができないので、価格算定においては、ディスカウントが必要であるという議論である。謂わば破産の際の清算価格のようなものである。収益還元法やDCF法を採用した場合には、非流動性ディスカウントは採用しない旨、最高裁で決定している。
支配株主側にとっては、会社を処分するわけではないので、流動性があってもなくても株式価値は同じである。一方少数株主側にとっては、株式を急いで処分する場合には流動性が少ない分、本来であれば、非流動性ディスカウント後の価格でなければ誰も買い取ってくれない。
一方で、株式譲渡承認請求にもとづく株価決定申立の方では、非流動性ディスカウントを認めている。反対株主の株式買取請求権においては非流動性ディスカウントを認めない、という最高裁判決である。

【カネボウ事件高裁】

・ 本件の株式買取請求権は、少数派の反対株主としては株式を手放したくないにもかかわらずそれ以上不利益を被らないため株式を手放さざるを得ない事態に追い込まれることに対する補償措置として位置付けられるものであるから、マイノリティ・ディスカウント(非支配株式であることを理由とした減価)や非流動性ディスカウント(市場価格のないことを理由とした減価)を本件株式価値の評価に当たって行うことは相当でないというべきである。
→ 株式買取請求権は少数株主保護の法制度であると言っている。マイノリティ・ディスカウントとは、多数派の支配株主と比べると少数株主は会社を自由にはできないので、ディスカウントが必要であるというものである。高裁では、このディスカウントは許様より許さない旨の判決を出している。エコノミックスの話ではなく、支配株主と同じように計算すべきと言っている。

・ 本件鑑定(回答書14頁)によれば,本件鑑定人は,スモール・リスク・プレミアムは売買当事者が価格交渉で使用する調整事項であって,客観的根拠があるわけではない。このため、鑑定の客観性を担保する観点からこれを採用しなかったことが認められる。
以上のような本件鑑定人の判断は,専門的学識と経験に基づき行った判断として十分合理性があり,本件鑑定に不合理な点はないというべきである。よって,この点に関する相手方の上記主張は理由がない。
→ スモール・ビジネス・プレミアムとは、小さい会社はリスクが高いということであるが、実際は、小さいからといってリスクが高いとは限らない。会社規模の大小は関係ない。

【会社法上の株価(株式譲渡売買価格決定申立) 】

1 売主の株価と買主の株価との平均
2 支配株主は時価純資産法&収益還元法、第三者は配当還元法
3 会社自身や指定買取人は支配株主との評価
4 関係者性と第三者性を踏まえ加重平均
5 ディスカウントは認められる

【会社法上の株価(反対株主株式買取価格決定申立) 】

1 買主の株価を採用
2 時価純資産法&収益還元法
3 ほとんどが収益還元法
4 配当還元法を採用した事例はほとんどない
5 ディスカウントは認められない
※ 株式売渡請求権も同理論が適用されると思われる
→ それぞれの価格決定方法をまとめてあります。
(以上)

190115_所内勉強会第6回目

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