銀行口座を売却・譲渡したら逮捕されるのか?!

「短時間で簡単に高収入が得られます」「誰でも簡単にお小遣いをゲット」などの誘い文句に乗ってしまい、銀行口座の通帳やキャッシュカードを他人に譲ってしまう人がいます。

通帳やキャッシュカードを売ったり譲ったりする行為は「口座売買」と呼ばれ、売った人も処罰される可能性がある犯罪行為です。

当然警察に逮捕されることもありますし、裁判で有罪になり収監されてしまう恐れのある大変危険な行為なのですが、目先のお金に目がくらんで取引に応じてしまう人がいて大きな問題になっています。

本章では口座売買をしてしまった場合どんな罪に問われるのかケースごとに解説し、逮捕や裁判のリスクをできるだけ避ける方法についてもお伝えしていきますので、ぜひ参考になさってください。

■口座売買はどんな犯罪行為となるのか?

口座売買は口座を買った人だけでなく売った側も刑事責任を問われますが、売った側の責任については取引の態様によって適用される犯罪の種類が変わってきます。

これによって仮に有罪判決を受けた場合の刑の重さも変わってくるので、口座売買の中身を少し掘り下げて細かく見ていきます。

実際に口座売買を持ちかけられるシーンでは、闇金などから次のように誘われることが多いでしょう。

①「使っていない口座があったら買い取るよ。楽に儲けられるよ」

②「〇〇銀行の口座は高く買い取れるから、一つ作って売ってくれないか?」

①はすでに開設済みの口座で、手元に預金通帳やキャッシュカードがあって、それを売買するものです。

②は新規に口座を作って、これを売ろうというものですね。

どちらも口座を売ることに違いはないのですが、どちらになるかで当該行為を取り締まる法律や罰則の内容が変わってきます。

次の項からはその違いを見ていきます。

■手元にある口座を売却・譲渡した場合

まずはすでに開設済みの既存の口座を売ったり譲ったりした場合です。

こちらを取り締まるのは「犯罪収益移転防止法」という法律です。

反社会勢力などが犯罪によって稼いだお金をマネーロンダリング(資金洗浄)する行為を防ぐために作られた法律です。

こちらに該当する場合、口座を売ったり譲ったり、あるいは貸したりするだけでも犯罪行為となり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金、もしくはそれらの併科(懲役と罰金どちらも適用される)となります。

もう少し深掘りすると、どのような理由で売買等をしたのかによって適用される条項内容が変わってきます。

まず、他人が自分に成りすましてその口座を利用すると認識しながら取引に応じた場合、犯罪収益移転防止法28条2項の前段に該当します。

もし他人が自分の口座をどのように使うのか知らなかったとしても、その取引が通常の商取引や金融取引とは言えないものである時や、正当な理由がないのに有償で売ったり貸したりすると、同法28条2項後段の定めに該当し、やはり犯罪となってしまいます。

どちらの行為も1年以下の懲役または100万円以下の罰金、もしくはそれらの併科で変わりはありませんが、犯罪となる構成要件が若干異なるということです。

■新しく作った口座を売却・譲渡した場合

次に、新規に口座を開設して売買、譲渡等をした場合です。

闇金等の流通の中では人気の高い金融機関の口座が重宝されるようで、「〇〇銀行の口座を作れ」と指示されることもあります。

その指示に従って新しく口座を開設して売るというようなパターンです。

この行為は刑法の詐欺罪に該当する行為で、1ヶ月以上10年以下の懲役という罰が待っています。

なぜ詐欺なのかというと、売買等の取引当事者の相手方を騙すということではなく、口座を作る金融機関を騙して通帳やキャッシュカードを発行させた、つまり金融機関を騙して財物を奪い取ったという図式になるからです。

通常、口座を開設する際にはその目的を聞かれますが、「他人に売るため」と答えれば口座の開設を拒否されます。

適当な嘘を言って手続きを進めることになるでしょうから、これが金融機関を騙すことになるわけです。

本当は他人に口座を売ることを考えていながら、これを隠して嘘を言い通帳やカードなどの財物をだまし取ることで詐欺罪が成立します。

■闇金の口車に乗せられて犯罪者になってしまうことも

闇金はもっともらしい理由を付けて通帳やキャッシュカードを送るように仕向けることがあるので、ここに注意が求められます。

加えて、お金がなくて少しでもいいから借りたいと願う人は、正常な判断力を失っていることも多く、こうした説明を疑いなく信じてしまうことも多いです。

ここでは実際にあった事例を一つご紹介します。

Yさんは借金がかさみ、金融ブラック状態で消費者金融などからの借り入れもできなくなっています。

そこに闇金からのダイレクトメールが舞い込み、誰でも融資を受けられるとありました。

連絡を取ると、「融資はできるが、あなたには今信用がない。確実な返済を担保するためにキャッシュカードを送ってほしい。貸した金を返してもらえればキャッシュカードは返す」と相手に言われました。

確かに、今の自分は借金だらけで信用がないから、仕方ないと思ってキャッシュカードや暗証番号を記したメモを相手に郵送してしまいました。

その後闇金からの融資(という名目の金銭の交付)はなく、融資を受けられないどころか、Yさんのキャッシュカードは振込詐欺に使われていたことが判明し、Yさんは警察に逮捕され、裁判所は詐欺罪の成立を認めました。

Yさんとしては、単に自分の信用が薄いことで借りられないのだから、相手を安心させようとキャッシュカードを渡しただけと思われますが、それでも裁判所は犯罪を認定したのです。

その理由として、今回のYさんの行為は犯罪収益移転防止法28条後段にあたるからだと言います。

すなわち、友人や知人など知った相手ならともかく、闇金のように正確な名前も住所も知らない素性が知れない相手にキャッシュカードを交付する行為について正当な理由がなく、通常の商取引や金融取引とも言えないと判断したのです。

この判決ではまた、キャッシュカードを交付することと融資を受ける行為について対価性を認め、有償で売り渡したのと同じ効果を認めることも示されました。

特別反社会的な行為をしている自覚が無くても、このように犯罪者となってしまうことがあるので注意が必要です。

■警察の取り調べに一人で対処するのは危険

もし警察に逮捕されてしまうと、取調官の誘導で本来犯罪ではないのに犯罪とされてしまう危険があるので要注意です。

どういうことかというと、これまで見てきた犯罪収益移転防止法や刑法で裁くには、それぞれの犯罪の構成要件を満たさなければならないのですが、本来要件を満たしていない事案も少なくありません。

新規に口座を作って誰かに売るというパターンであれば、他人に売ったり譲渡したりしようという認識は口座を作る時点で持っていないと構成要件を満たしません。

例えば「振込手数料が安くなるから△△銀行で口座を作ってください」と言われて、これを信じて口座を作った場合、詐欺罪は成立しません。

例えその後相手の説明が変化して、理由を付けて通帳やキャッシュカードを送るように言われてこれに従ったとしても、口座開設時点で売却等の意思がなければ同様に詐欺罪は成立しません。

しかし警察の取り調べでは「口座の売買がいずれ実施されることはあなたも分かっていたのだろう?」などと誘導することが考えられ、安易に認めてしまうとこれが調書となって裁判で不利になる可能性が高くなります。

■弁護士は依頼人が不利にならないように最善を尽くします

弁護士が付いていれば、前項のような警察の誘導に引っかからないように法律的な観点からアドバイスができるので、依頼人の方は少しでも自身に不利にならないように立ち回ることができます。

また警察による身柄拘束が可能な事件では、できるだけ身体拘束が起きないよう、拘束されたとしても短期間で済むように弁護士が関係者と調整します。

逮捕後72時間は家族とも連絡が取れない状況になり、面会できるのは弁護士だけです。

逮捕される前に弁護士に相談できれば上記のように誘導に負けないアドバイスを事前に知れますが、そうでない場合は取り調べがされる前に弁護士に接見し、どのように受け答えすべきかを共有しなければ取り調べで不当な誘導に流されてしまう恐れがあります。

身柄を拘束されても、家族のサポートがあり逃亡の恐れがないことを弁護士が証明することで、早期の釈放が可能になることもあります。

裁判にかけられるかどうかは警察ではなく検察が判断しますが、ここでも弁護士は本人が反省していることや家族の支えで二度と同じ過ちを繰り返さないことを説明することで、不起訴となるように全力を尽くします。

口座売買をした事実があるのならば、もしもに備えて事前に弁護士に相談に、どれくらいの深刻性がある事案なのかを知ったうえで、今後どのようにすべきか相談しておくことを強くお勧めします。

■口座が凍結されると人生が大きく狂ってしまいます。

仮に逮捕されることは無かったとしても、口座売買をするとその後の人生を大きく狂わせてしまう危険があります。

口座売買で闇金に渡った口座は、振り込め詐欺などの犯罪に利用されますから、そこで別の被害者が発生します。

これを食い止めるために、警察や弁護士などは金融機関と連携し、犯罪に使用されていると認められる口座を凍結できる仕組みが整えられています。

その口座に残っている資金は、一定のルールに従って犯罪の被害に合った人の救済金に充てられることになっています。

問題は、凍結された口座の名義人が犯罪者の一味として認識されてしまうことです。

口座の名義がAさんであれば、Aさんが犯罪をしていると認識されるのはごく当然です。

そこで警察が捜査して逮捕されることもありますし、逮捕はされなくてもその通帳を発行した金融機関で二度と口座を利用できなくなります。

それだけでなく、この事実は金融機関同士の情報網で共有されるため「Aという人物は危険だから、口座を使わせてはいけませんよ」という認識が全国の金融機関で共有されます。

つまり、Aさんは日本国内で自分の口座を持つことができなくなるということです。

これがどれだけ深刻なことなのかは実際に経験しないと実感が持てないかもしれません。

例えば就職する時などに給料振り込みの口座を聞かれるでしょう。

もし「口座を持てない」と言えば、信用性に欠ける人物として採用を見送られるかもしれません。

口座を持てないと、他にも生活する上で様々な支障が出ることが予想されます。

「口座が一つだけ使えなくなる」という単純なことではないことがお分かりになったでしょうか?

■口座凍結の解除は非常に困難

一旦口座が凍結されてしまえば、これを解除するのは容易ではありません。

このようなことになってしまったことの経緯を丁寧に説明したところで、リスクのありそうな相手には口座開設を認めない自由も金融機関側にあります。

本当に悪意が無かったのかどうかの証明は当事者の本人には難しいですし、本当に悪意はなかったとしても、それでも凍結解除に応じなくても金融機関側は困りません。

一人や二人の口座開設を認めなくたって経営には全く影響はありませんし、逆に犯罪に利用されるリスクが高まるだけです。

犯罪者と疑われた本人が金融機関と掛け合っても、口座の凍結解除に応じてくれることはまずありません。

可能性があるとすれば弁護士が間に入り、当人は本当に騙されただけで悪気はなく、今後はこのような事態が二度と起きないようにすることを真摯に説明し、これを分かってもらえた時だけです。

弁護士が間に入っても交渉に相当時間がかかることは覚悟が必要ですが、凍結解除を目指すならば闇金問題に明るい弁護士に相談する必要があります。

■闇金はどのように口座売買を持ちかけるのか?

口座売買がどのように行われるかはケースバイケースですが、大きく分けると闇金の利用者側がお金欲しさに自発的に取引を進めるケースと、闇金に弱みを握られて受動的に取引に応じてしまうケースの二つに分かれます。

前者の場合、お金に困っているがもうどこも貸してくれない、売れる物は全部売ってもう何も残っていないという時に、「簡単に短時間で稼げます」などの宣伝に引っかかってしまうものです。

連絡を取ると口座売買を持ちかけられ、数万円程度の目先のお金欲しさに取引に応じてしまいます。

後者は、すでに闇金と取引があって返済が追い付かず首が回らない状態で、闇金から口座売買を持ちかけられるようなパターンです。

「口座を売れば利息分をチャラにしてやるよ。嫌なら今すぐ全額返済しろ!」などと脅されて、取引に応じてしまいます。

前者の場合、口座売買という行為が重い犯罪行為に当たるのだという認識を強く持つことが必要です。

後者の場合すでに闇金に毒されている状態ですから悠長なことは言っていられません。

すぐに弁護士に相談し、闇金と手を切るための手はずを整えなければいけません。

■まとめ

本章では口座売買をしてしまうとどんな罪に問われるのか、逮捕や裁判のリスクだけでなく、口座凍結の危険性などについても見てきました。

口座売買は自身が警察に逮捕されたり、裁判で有罪となり収監されてしまう恐れのある非常に危険な行為です。

どんな理由があっても、また魅力のある誘い文句を言われても絶対に応じることのないようにしてください。

もし口座売買をしてまった場合、今後警察に事情を聴かれたり、身体拘束を受ける危険がありますから、その前に弁護士に相談し、適切な身の振り方を検討すべきです。

場合によっては自首することも選択肢になりますが、弁護士のサポートの元で自身に悪質性がないことを証明できれば、それ以上の追及を受けずに済むかもしれません。

すでに銀行や警察から連絡が来て、話を聞かせてほしいと言われているのであれば、事態はひっ迫していますから、今すぐ金融問題に詳しい弁護士に連絡を取る必要があります。

当事務所では闇金や金融犯罪に絡む相談を多く受けておりますので、ご心配な方は当事務所にご相談頂ければと思います。

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