反対株主の株式買取請求権で株式を最高値で売却する方法!

少数株主が、会社から相場よりも明らかに低い価格での株式の売却を迫られている、または、会社が非常に低い価格でないと株式を買い取ってくれない、そのような問題でお悩みの方も多いでしょう。

少数株主が、株式を確実に高値で会社に売却するほぼ唯一の権利として、「反対株主による株式買取請求権」が挙げられます。

この記事では、株式買取請求権とは何か、反対株主に株式買取請求権が認められるケース、反対株主に必要な要件、株式買取請求権を行使する流れ、失敗例や判例などを解説します。

非上場会社の少数株主こそ、反対株主の株式買取請求権をしっかり活用して欲しいですので、少数株主は株式をできるだけ高く売却するため是非参考にしてください。

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株式買取請求権とは

株式買取請求権とは、株主がもっている株式を、会社側に買い取るよう請求する権利を指します。

しかし、株主が、通常時に、株式買取請求権を行使できるわけではありません。株式は市場で売買するのが原則であり、株主の都合で会社側に買取を請求できるようでは、会社の経営に支障をきたしてしまうからです。

株式買取請求権は、ある特定の議案に反対している株主(反対株主)に対してのみ、例外として認められます。

反対株主に株式買取請求権が認められるケース

株式買取請求権は、会社側の次のような行為に反対する反対株主に対してのみ認められます。

・合併や会社分割、株式交換や株式移転(会社法785条・797条・806条)

・事業譲渡(会社法469条)

・株式併合による少数株主の締め出し(スクイーズアウト)(会社法182条)

・株式の譲渡制限に関する定款変更、株式の併合・分割、無償割当て等(会社法116条)

合併や事業譲渡は、会社を根本から変える可能性を含む行為であり、株主にとっては、株式を持ち続ける理由が消滅する恐れがあります。また、株式の譲渡制限や無償割当は、株式を自由に譲渡できなくなる、株式の価値が下がるなどの大きな影響を株主に与えます。そのため、このような行為に限定し、反対株主による株式買取請求権が認められているのです。

非上場会社の少数株主こそ、反対株主による株式買取請求権を活用してほしい理由

非上場会社では、従業員や取引先に株式を分け与えるケースがあります。

オーナーの相続税対策や、上場のため持株会を作るなどして株式を分散したが、上場が取り止めになったなどのケースにも株式が分散します。

またもともと創業者や関係者のみが株式を保有していたものの、相続を重ねた結果、同族株主が増えてしまったケースにおいても、株式が分散しています。

そのため、非上場会社の少数株主は、従業員や取引先であったために、義理や付き合いなどの消極的な理由で株式を保有している、またはたまたま相続したために株式を保有しているというのが実態です。

さらに、少数株式を相続した場合は、義理や付き合いなどの消極的な理由は薄くなり、もう保有を継続する理由などほとんどなくなってきていることでしょう。

そのような非上場会社の少数株主が、会社経営への関与といった株主の権利を行使するのは、実際問題として困難です。株主総会や同族会議に参加しても、意見を無視されたり軽んじられることもあります。

またそもそも、非上場会社の少数株式をもてあます最大の理由は、株式を適切な価格で自由に売ることが難しいからです。

上場会社と異なり、非上場会社の株式は市場で売却できません。さらに、会社経営への関与や売買がやりにくい、非上場会社の少数株式を取得するメリットは少ないことから、買い手を見つけるのも困難です。

結果として、会社側か、大株主や経営陣などを相手に株式を売却するのが通常ですが、大株主や経営陣に買い取りません!と言われれば終わりです。株式を売却できそうになっても、こうした背景を見透かされて、株式買取価格交渉で不利になります。

このように、非上場会社の少数株式は買い手がいないために、非常に低い価格で会社に譲渡せざるを得なくなるという現状があります。

そんななか、反対株主の株式買取請求権は、少数株主にとっては、株式を最も高い価格で確実に会社に売却できる唯一の権利といってよいでしょう。

これ以降では、この権利を確実に行使するために必要な要件を解説していきます。

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反対株主として認められるには、「2回の反対」とその証明が必要

株式買取請求権は、前述したように、特定の議案に反対する反対株主に対して認められます。ただし、反対するといっても「反対だ」と心で思っているだけでは適用されません。次の「2回の反対」が必要であると会社法に明記されています。

1.株主総会の前に、会社に対して反対の旨を通知する

2.株主総会で、反対票を投じる

かつ、次のような手段で「2回の反対」の行使を証明することも必要です。

1.反対の旨の通知を、内容証明郵便等にて送付する

2.会社から、株主総会で反対票を投じたという証明書をもらう

「2回の反対」を満たしていなければ、反対株主の株式買取請求権に応じる義務は会社側に発生せず、会社が株式の買い取りに応じたとしてもそれは「任意の買取」とみなされてしまいます。注意したいのは、任意の買取と反対株主の株式買取請求権では、株式買取価格を決定する株式価値評価の方法が異なりますので、任意の買取の場合の株式買取価格は、大幅に安くなる傾向があるのです。

反対株主の株式買取請求権では、究極的には、裁判所に株式買取価格の決定申立(株価決定裁判)を行い、最終的に、裁判所が株式買取価格を決定します。

任意の買取において、会社側が提示してくる株式買取価格は非常に低額なのが一般的です。これに対して、裁判所が提示する株式買取価格は公正な価格という概念が採用されるため、不当な金額になることは少ないのです。

さらに、反対株主の株式買取請求権における株式買取価格としては、少数株式であっても、大株主と同じ株価算定方法が採用されます。要するに、配当還元法が採用されることはなく、通常通り、収益還元法や純資産法が適用されることが、セイコーフレッシュフーズ事件最高裁判所決定及び旧カネボウ事件東京高裁・東京地裁決定で決定されていますので、少数株式であっても、驚くべき高値になることが多いのです。

そのため、しっかり「2回の反対」を行い、かつ、行使を証明する手段を用意して、確実に反対株主の株式買取請求権を行使できるように心がけましょう。

セイコーフレッシュフーズ事件とは

非上場会社の合併時に、反対株主による株式買取請求権が行使されたケースの判例には、セイコーフレッシュフーズ事件があります。この判例のポイントは、裁判所が、株式の買取価格算定に収益還元法を用いた場合、当該株式には市場性がないという理由で行う減価(非流動性ディスカウント)の可否が争われた点です。

収益還元法とは、株式の価値を評価する手法のひとつです。将来的に期待される純利益を、一定の「資本還元率」という数値で割ることで、将来価値を現在価値に置き換えます。この手法には、市場における類似株式との取引価格の比較といった要素は含まれていません。

合併などの、会社に本質的な変更をもたらす行為であっても、会社側は株主総会で多数決を得られれば実行できます。そのため、株主の保護という観点から、反対株主に株式買取請求権の行使を認めることで、株主に会社から退出できる機会と企業価値の適切な分配を保証しているのです。

そのような主旨に基づき、収益還元法により算定された株式価格については、収益還元法が要素として含まない、類似株式の市場価格との比較による減価(非流動性ディスカウント)をすべきではないと最高裁判所が判断したのがこの判例となります。

反対株主による株式買取請求権を行使する流れ

反対株主の株式買取請求権の行使は、次のような流れに沿って行います。

1.会社が、反対株主による株式買取請求権が認められる行為を行う場合、効力発生日の20日前までに株主に通知、または公告

2.株主は、効力発生日の20日前から前日まで、会社に反対通知を送付、かつ、株主総会で反対議決権の行使、かつ、会社に株式買取請求通知の通知書を提出(通知書には、株式買取請求権を行使する株式の数と種類を記載)

3.株主は会社に、株式買取請求の対象となる株券を提出

4.会社と株主とで、株式の買取価格を話し合う

5.株式買取価格交渉が成立すればその価格に決定、不成立なら裁判所に買取価格の決定を申し立てを行う

反対株主の株式買取請求権を行使できる期間は、合併や定款変更などの効力発生日の20日前から、効力発生日の前日までです。また、株式は効力発生日に会社側に移転するとみなされます。

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反対株主による株式買取請求権における失敗例

反対株主の株式買取請求権は、行使の期限が約20日間と短く、期限内に「2つの反対」と通知書の提出、かつ、そのすべての行使の証明が必要です。基本的な流れはシンプルですが、ポイントを押さえなければ失敗してしまいます。実際に多いのは、次のような失敗事例です。

1.株主総会前に、反対通知を送付しなかった

反対株主として認められるためには、株主総会で反対票を投じるだけではなく、総会前に内容証明郵便等による反対通知の送付が必要です。ただし、内容証明郵便は受取拒否が可能なため、拒否されて再送した結果、期限が過ぎてしまうという可能性があります。そのため、受取拒否ができない速達郵便やレターパック等を併用した方がよいでしょう。

2.委任状のみ送付し、反対通知を送付しなかった

委任状に「反対」と書くのみでは、実際の投票では賛成票を入れる可能性があるため、「2回の反対」としてみなされない可能性があります。そのため、安全策を取りたい場合は、委任状とは別に、反対通知を送付するのが確実です。

しかし、委任状が反対通知として有効かどうかは、専門家においても解釈が分かれます。当事務所はこの論点に精通しておりますので、委任状のみ送付したケースで悩んでいる場合にはぜひご相談ください。

3.株式買取請求通知書を、期限内に送付できなかった

株式買取請求権の期限は約20日と短いため、株式買取請求通知書は、株主総会に持参してその場で提出するのがよいでしょう。

4.裁判所に、株式買取価格決定の申立を、期限内にできなかった

株式の買取価格について、効力発生日から30日以内に、会社と株主間の話し合いがまとまらなかった場合は、期間満了後から30日以内であれば、裁判所に買取価格を決定するよう申し立てできます。この申立は準備に時間がかかる難しいものであるため、余裕のあるスケジュールで弁護士に依頼するのがポイントです。

5.会社からの通知がなく、株式買取請求権を行使するタイミングを逃した

株式買取請求権の流れで説明したように、会社は、反対株主に株式買取請求権が生じる行為を行う際には、株主に通知または公告する義務があります。しかし、実際にはやっていなかったり、通知自体を知らなかったりする会社が多いのが実態です。

会社が通知や公告を行わないのは明らかに会社法違反であり、合併などの行為は無効となります。ただし、無効を主張するには、6カ月以内に訴訟を起こす必要があります。6カ月を過ぎた場合でも、通知や公告を行わないのは、反対株主の株式買取請求権という権利を侵害した不法行為であるという考え方に基づいて、損害賠償請求を起こす方法もあります。このケースで悩んでいるなら、当事務所にぜひご相談ください。この場合の時効は、知ったときから3年となります。

まとめ

少数株主にとって、少数株式を確実に高値で売却できないのは切実な悩みです。

そうした悩みを解決できる唯一の機会が、反対株主の株式買取請求権といってもいいでしょう。

しかし、反対株主の株式買取請求権については、会社側が「あなたは講師の要件を満たしていないので行使できない!」と主張するため、泣く泣く株式買取請求権の行使を諦める少数株主がいるというのが現実です。ですが、そのような場合であっても、実際には、権利を行使できる場合がほとんどなのです。

会社側は、反対株主の株式買取請求権を行使されると、株式を確実に高値で買い取らなければいけなくなるため、それを分かっているため、少数株主に、株式買取請求権の行使自体を諦めさせたいのです。

少数株式を手放したいのに手放せない、いわゆる「塩漬け」状態にしないためには、「2回の反対」などの実務ポイントを押さえた上で、反対株主の株式買取請求権を行使することが非常に重要です。この機会を逃したら、あなたの少数株式は、永久に高値で売却することができないかもしれません。

少数株式については、株式買取請求権の経験と実務に精通している弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談ください。

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