私的整理のメリットとデメリットと手続の流れと債務削減方法!

資金繰りが悪化し、事業の継続が困難となれば、その会社は「倒産状態」となります。

ただし、「倒産=会社の破綻」と捉える方もいらっしゃいますが、実際はそうとは限りません。

「倒産」という言葉は非常に幅広い概念であり、破産手続や民事再生手続といった事業を清算・再建するための「倒産手続き」も倒産状態に含まれます

また、破産手続や民事再生手続などの裁判所を介す「法的手続き」だけでなく、債権者と協議をし、再建の方法を模索する『私的整理』も倒産手続きの一つです。

私的整理は、本来不透明な部分が多く、債権者にとって優先順位がつきやすい企業再建手段だったのですが、近年では私的整理手続のいくつかがルール化(準則化)されたこともあり、多くの不安要素が払拭されました。

そのため、今では有効な手続として社会に大きく浸透しているのです。

そこでこの記事では、そんな私的整理の内容やメリット・デメリット、手続の流れ、債務削減方法などの情報を弁護士が徹底解説していきます。

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・私的整理とは?

『私的整理』とは、事業者が経営破たんする、または破綻しそうになっている場合に、法的手続きのように裁判所の監督下で進めるのではなく、当事者である会社などの債権者と債務者同士で協議し、事業再建を図ることをいいます。

ただし、私的整理も倒産と同様で、明確な定義のない幅の広い概念であり、一般的には「法的整理手続以外の事業再建手続を幅広く含むもの」と考えられます。

  • 法的ルールは定められていない

法的手続きを取る場合、法律で定められたルールに則って事業再建を図っていきます。

しかし、私的整理の場合は、法律で定められた明確なルールがあるわけではありません。

よって、その手続と最も深い関係にある機関が定める一定の指針(ガイドライン、準則)に則り、またその進め方について、関係者が一定の共通認識を持った上で私的整理を図っていくケースが多くなっています。

・私的整理と破産との違い。私的整理と民事再生との違い。

私的整理と民事再生との違い

私的整理と民事再生は、どちらも「事業を再生させる」という共通の目的があります。

しかし、裁判所を介して再建を図っていく民事再生とは異なり、私的整理の場合は公的な機関の力を借りず、(ただし、弁護士の力を借りることは可能です)自社が自ら債権者と協議していかなくてはいけません。

よって、私的整理は自助努力で再建を目指すこととなりますが、公に知られる可能性が低いため、「事業への影響が生じにくい」という民事再生にはないメリットがあります。(事業価値への毀損が生じにくい)

また、リスケジュール(全額返済)から債権カットまで、柔軟な設計が可能な私的整理は、民事再生を行う会社と比較すると再建の見通しが立ちやすい傾向にあります。

私的整理と破産との違い

『破産』とは、清算を目的とした債務整理手段の一つです。

たとえば、債務超過などが原因で事業の継続が困難となった場合には、破産手続きを行うことにより、原則的にすべての資産・負債が清算されます。

また、破産手続きを行うと、裁判所によって選任された破産管財人が会社の所有する全財産を現金化し、それを債権者へ分配しなくてはいけません。

よって、会社の従業員は全て解雇、資産も全て手放すこととなります。

『私的整理』の場合は、そもそもの目的が会社の清算ではなく、会社(事業)の再建です。

ですので、会社の資産を全て手放すのではなく、債務者と協議し再生計画の同意を得ることで、事業再建を目指していきます。

・私的整理のメリット・デメリット

私的整理には多数のメリットがあります。しかし、少なからずデメリットがあるのも事実です。

どちらも私的整理を活用する上で抑えておくべき情報であるため、しっかりと確認しておきましょう。

【私的整理のメリット】

①事業価値の毀損を最大限避けることができる

会社として、「会社が経営難に陥っている」という事実が知れ渡ってしまうことは大きなダメージです。

当然、イメージや信頼性は低下してしまうでしょうし、経営破綻に陥っているようなリスクの高い会社とは誰も取引を行おうとは思いません。

また、場合によっては金融機関との取引が停止してしまう可能性もあります。これでは、とてもじゃないですが、経営再建どころではなくなってしまいます。

民事再生や破産といった手続きは、裁判所に監督してもらう必要があります。

さらには、取引先を含め、すべての債権者を対象として手続を進め債権の免除等を受けることなるため、経営難という事実が知れ渡る可能性が非常に高いのです。

その反面私的整理の場合は、基本的に特定の相手方と非公開に協議や手続を進めていくため、「倒産企業」というレッテルを貼られることなく事業価値の毀損を最大限避けながら事業再建を目指すことが可能となります。

②柔軟かつ迅速な対応が可能

裁判所を介す法的手続きは、監督委員や管財人が主導権を持って進んでいきます。

そのため当然ですが、スケジュールは法的に定められたもので進行していきますし、全ての債権者を平等に扱う必要があるため、柔軟な対応を取ることは難しくなっています。

しかし私的整理の場合は、法的なスケジュールに縛られることなく、債権者と債務者同士の合意さえあればいくらでも柔軟なスケジュールを組んでいくことが可能です。

また、返済方法や条件、設定なども、債権者と債務者同士の合意次第で柔軟に定めることが可能であるため、事業規模や実態に合わせて手続きを変更したり、簡素化したりすることもできます。(たとえば、特定の債権者のみと協議を行い、残りの債権者とは返済のリスケジュールや債権カットを保留にしておくなど)

いずれにしても、全ては債権者と債務者の合意次第となるため、スムーズに合意が取れればそれだけ迅速な事業再建を行うことができるようになります。

③法的手続きよりもコストを抑えることができる

民事再生や破産などの法的手続きを取る場合、裁判所に予納金を納めなくてはいけません。

予納金の金額は各裁判所や負債総額によって異なってきますが、おおよそ「数百万円~1,000万円強」が必要となってきます。

大手企業ならまだしも、元々資金に余裕のない中小企業にとってはとても厳しいコストです。

その反面私的再生は、法的手続きのように裁判所を介すことなく事業再建を図っていくことが可能です。

よって、当然予納金の支払は必要ありません。

ただし、私的整理は弁護士のような専門家のアドバイスを受けながら進めていくケースが多いため、その場合は弁護士費用などのコストが必要となります。

しかしそれを踏まえましても、民事再生よりも私的整理の方が、コストを抑えることができる可能性は高いのです。

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【私的整理のデメリット】

①透明性等の確保が難しい

私的整理は、特定の相手方と非公開に手続を進めることが可能です。

それは、「事業の価値が毀損しにくい」「柔軟な対応を取ることができる」などといったメリットを生みますが、その反面「透明性等の確保が難しい」というデメリットも発生してしまいます。

たとえば、民事再生は債権者を平等に扱うことが前提で進んでいきます。よって、債権者としては透明性が非常に高いため安心できるのです。

しかし私的再生の場合は、当事者同士の合意さえあれば、ある程度債務者(経営者)の意向に沿って再建計画を進めることが可能ですが、それは一部の債権者の扱いが不公平になってしまう可能性が生まれてしまうことにもなるのです。

その結果、透明性等の確保が難しくなってしまうため、私的整理を遂行するためには債権者が十分に納得できる再建計画を策定することが必須となっています。

②協議を要請する債権者全員の同意が必要

私的整理は、協議を要請する債権者全員の同意が必要となります。よって、一部でも債権者が再生計画に反対すれば、私的整理を行うことはできないのです。

また、それ以外にも私的整理にはリスクがあります。

たとえば、一部の債権者が手続きの不透明感を危惧し、再生計画に反発したらどうなるでしょうか?

当然ながら再生計画は実行できなくなりますし、場合によっては債権者からの法的手続きの要求があり、民事再生に移行してしまう可能性もあります。

そのようなリスクを回避するためにも、私的整理を行う場合は専門家である弁護士へ予め依頼しておき、アドバイスを受けながら、しっかりと債権者の同意が得られる、透明性と平等性が伴っている再生計画を策定するケースが多くなっています。

③担保権を止めることは不可能

私的整理とは、基本的に金融機関を対象に実行するものです。

そのため、「担保権を止めることは不可能」という点には注意しなくてはいけません。

担保権とは、債務者が万一その債務を履行できなくなった場合を想定し、あらかじめ債権者がその債権を担保するために設定する権利のことです。

たとえば、民事再生や破産などの法的手続きを行う場合、手続きが開始されれば、仮に銀行が担保にとっている資産であっても、差し押さえや処分を中止することができるようになっています。

そのため、その状況下ではある意味法律に守られているのです。

ですが前述の通り、私的整理とは裁判所を介さず債権者と債務者同士が行うものであるため、法的な制約はなくなります。

よって、担保権を止めることは不可能となるのです。

もし仮に、金融機関が私的再生に反発し担保の差し押さえを実行するような展開になってしまうと、それを中止させることは非常に困難となるため、その点は予め留意しておかなくてはいけません。

・私的整理で債務削減する手続きの流れ

私的整理には、法的手続きのように決まった手続きの流れというものは定められていません。

私的整理はあくまで債権者と債務者での話し合いがメインで進行していくため、会社の具体的事情によっては、流れが大きく変更されるケースもあります。

しかし基本的には、私的整理は債務者が債権者に対して「元本弁済猶予等の要請」「スケジュール感の提案」などを提示し、話し合うところからがスターとラインとなります。

またその後は、再生計画の提示や金融支援の要請などと段階を踏んでいき、債権者と債務者の当事者同士で計画合意が得られるまで話し合いが行われていきます。

契約合意を得られるまでの期間

前述の通り、私的整理は決まった手続きの流れというものが定められていません。よって、計画合意が得られるまで、数ヶ月から1年以上といった期間がかかる可能性もあります。

ただし、私的整理を行う場合、通常財務や事業の調査に時間を要するため、少なくとも計画合意を得るための期間は「4か月から半年程度はかかる」と考慮しておくべきです。

また、これはあくまで一般的なケースであるため、たとえば粉飾をしていた企業や、過剰債務があり多額の債権カットが必要な企業、第二会社方式等を採用する予定のある企業などは、「さらに時間がかかる可能性が高い」ということを留意しておきましょう。

弁護士を介して手続きを行うケースが多い

私的整理は、債権者と債務者同士の任意で進められていきます。

しかし、少しでも多く、そしてできるだけ早く弁済を行ってほしいという思惑がある債権者と、事業再建のために弁済猶予がほしいと考える債務者とでは、中々話し合いが進まないことも珍しくありません。

また、私的整理の際に立案する再生計画は債権者全員の同意を得られるほどの完成度の高さが必要となりますが、専門的な知識を持っていない個人が債権者全員を納得させるだけの再生計画を策定するということは、当然ながら容易なことではないです。

そのため、通常私的整理を行う場合は、弁護士などの協力を得て、アドバイスを受けながら手続きを進めていくケースが多くなっています。

弁護士は事業再生のプロフェッショナルであるため、再生計画の策定や、債権者との交渉を有利に進めるアドバイスなどを受けることが可能です。

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・私的整理を会社が行う場合の社長個人の債務の削減方法は?

会社が私的整理を行う場合、金融機関からの借入債務に対し、社長個人が連帯保証を行っているケースがあります。

たとえば、会社が事業再生ADR等の私的整理手続を申請した場合、債権者に対して、債務免除を伴う再生計画案への同意を求める際に債権者は、連帯保証人に対して保証債務の履行請求を行うのが一般的です。

また、準則化された私的整理手続を活用しない場合でも、債務免除を伴う再生計画案に同意をする条件として、債権者が保証人である社長個人に対し、債務免除部分について債務引受を求めてくるケースもあります。(私的整理においては保証債務の付従性が維持されているため、金融機関などの債権者は、主債務の一部を免除することによって、保証債務が消滅してしまうことを回避したいという思惑がある)

よって、会社の借入債務に対する保証人は、保証債務をどのように処理するか、その方針について検討していかなくてはいけないのです。

債務の削減方法

社長個人(会社の借入債務の保証人)の債務の削減方法としましては、以下のような方法があります。

【債務の削減方法】

自己破産や民事再生などの法的整理手続き

自己破産や民事再生などの法的整理手続きならば債務免除を受けることが可能であり、さらには、「債権者全員の同意が不要」というメリットもあります。

ただし、自己破産や民事再生によって債務免除を受けた場合には、法的整理手続を行ったことが官報に掲載されてしまいます。

その結果、信用情報登録機関に登録されてしまうため、以後5~10年間は借入等ができなくなるデメリットがあります。

任意整理

任意整理は、免責不許可事由がある場合や、中小企業の経営者でなくとも利用することができます。

ただし、自己破産や民事再生と同様で、信用情報登録機関(いわゆるブラックリスト)に登録されるため、5~10年間借入等ができなくなります。

また、全金融機関から同意を受けることができなければ、債務免除はされません。

  • 法的整理手続以外の中立的な第三者が関与する手続き(事業再生ADRや特定調停等の手続き、中小企業再生支援協議会や地域経済活性化支援機構(REVIC)による再生支援スキーム)

経営者保証ガイドラインの適用がある場合、破産手続における自由財産よりも多くの財産を残すことができる可能性があります。

たとえば、破産手続きでは「99万円以下の現金」が自由財産に該当しますが、経営者保証ガイドラインの適用がある場合、従来の自由財産「99万円以下の現金」に加え、年齢等に応じて「約100~360万円の現金」を残すこともできます。

また、手続きを行うにあたって、保証人の情報が公開されるリスクもありません。

ただし、経営者保証ガイドラインは、中小企業の経営者の保証債務にしか適用されません。

よって、中小企業でない社長個人や、経営者に保証債務以外の債務(消費者金融からの借入等)がある場合などは利用することが困難となります。

また、経営者保証ガイドラインも任意整理と同様で、全金融機関から同意を得ることができなければ債務免除を受けることは不可能です。

・私的整理における裁判所、弁護士費用

私的整理は、裁判所を介す必要のない事業再建方法です。よって、裁判所への予納金や収入印紙、郵券などの費用は不要です。

ただし、私的整理を行う場合、ほとんどのケースで弁護士を介すこととなります。

それは、たとえば、債権者全員の同意を得る再生計画を策定するためには、専門家である弁護士のアドバイスを受けることが効果的であり、また弁護士へ依頼することにより、債権者との話し合いがこじれて、法的再生への強硬的な移行や訴訟などに発展してしまうリスクを軽減することができるためです。

よって、私的整理を行うためには、以下のような弁護士費用がかかってくることを想定しておく必要があります。

ただし、弁護士費用は事務所によっても異なってくるため、その点はご留意下さい。

【私的整理における弁護士費用】

着手金

私的整理や任意整理を弁護士へ依頼する場合、まずは弁護士への着手金が必要となります。

弁護士は、民事再生の申立代理人と、監督委員の双方の業務の類似業務を行うため、そのための費用がかかってくる可能性があります。

成功報酬

成功報酬とは、精算や債務の減免、履行期限の猶予、または企業継続等により終了したときに発生する弁護士への報酬金です。

また、報酬金額は、債務の弁済に供すべき金員または、代物弁済に供すべき資産の価額を基準として算定されます。

以下は、その算定基準の一例です。

弁護士が再建取立,資産売却等により集めた配当原資額につき
5,000,000円以下の部分15.0%
5,000,000円を超え10,000,000円以下の部分10.0%
10,000,000円を超え50,000,000円以下の部分8.0%
50,000,000円を超え100,000,000円以下の部分6.0%
100,000,000円を超える部分5.0%
依頼者及び依頼者に準ずる者から任意提供を受けた配当原資額につき
5,000,000円以下の部分3.0%
5,000,000円を超え100,000,000円以下の部分2.0%
100,000,000円を超える部分1.0%

その他の費用について

上記以外にも以下のような状況にある場合は、別途報酬や日当などの弁護士費用がかかってくる可能性があります。

○私的整理や任意整理に関して、債務者やその他の者に対し、起訴、民事保全、民事執行事件の申立を行う必要がある場合

○債権者や、その他の者から起訴の定期があった場合

○交渉案件である場合、また交渉案件に至らない債権者との直接の交渉や、その他の折衝を要する場合

・まとめ

私的整理は、「事業価値の毀損の回避」「スケジュールや返済方法、条件など、柔軟な設定が可能」「法的手続きよりもローコスト」など、メリットが大変豊富な事業再建方法です。

勿論、必ずしも私的整理を選択することが正しいとは限らないですが、柔軟かつ迅速に事業再建を目指したいならば、私的整理は選択肢の一つとして捉えておくべきでしょう。

ただし、私的整理にも「債権者全てからの同意が必要」などというようなデメリットもあるため、円滑に事業再建を図っていくためにも、専門家である弁護士へ相談することを検討していただきたいところです。

また、私的整理を行う過程で資金繰りが破綻してしまえば事業再建も叶わなくなるため、できるだけ早く弁護士へ相談することをおすすめします。

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