サービサーとの債務減額の交渉方法!

借入金の返済ができない場合、債権者が借入金債権をサービサーに売却することがあります。サービサーは債権回収のプロです。債務者からあの手この手で債権を回収しようとします。なすすべもなく、成り行きで対応していたら、サービサーに最後の毛の一本まで取られてしまうでしょう。

サービサーの言うままに借金を払い続けると、債務者が返済に窮し、経営破綻せざるを得なくなるケースも少なくありません。サービサーは「返済が難しい債権(不良債権)」を債権者から買い取ったわけであり、それは投資として不良債権を買い取ったわけですので、投資のリターンを稼ぐべく全力を尽くします。

債務者としても、返済できるお金があればもともとの債権者(銀行など)にしっかり返済していたでしょうから、債務者としては「返済額を可能な限り減らしたい」「返済額が減らないとしても分割にしたい」ところです。

この点、債務者としては、サービサー側の事情を理解して交渉することで、債務減額又は分割払いにできる可能性が十分にあります。弁護士がサービサー側の事情や債務減額又は分割払いにしたいときの交渉術について解説します。

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「サービサー(債権回収会社)」とはどのような会社か

サービサーとは債権回収会社のことです。

金融機関(銀行など)から「返済してくれない債権」や「回収が困難な債権」などの不良債権を買い取り、管理や回収を行う会社になります。不良債権に対して投資をする投資家とも言えます。

たとえば、皆様が金融機関(銀行など)からお金を借りた場合、借りた分は債権者である金融機関(銀行など)に返済するのが基本です。金融機関は返済をしっかりしてくれるのであれば、自分たちで回収や管理をしても特に問題ありません。しかし、中には返済が困難になってしまう債権者のケースもあります。いわゆる不良債権です。

不良債権は回収も管理も労力がかかります。最終的には全額回収できないかもしれません。そのため金融機関(銀行など)は不良債権を早く処分したいと考えるのです。そこで登場するのが債権回収会社であるサービサーになります。金融機関(銀行など)の不良債権をサービサーが安い価格で買い取り、今度はサービサーの方で債務者から債権を回収するわけです。

ただ、サービサーはどのような不良債権でも買い取りするわけではありません。以下のような債権がサービサーの買い取り対象になります。

  • ・金融機関や貸付業者が有していた債権
  • ・リースやクレジット債権
  • ・法的倒産手続き中の者が有している債権
  • ・保証会社や金融機関が有する求償債権
  • ・特定目的会社が流動化対象資産として有する債権
  • ・その他、政令指定などで定める特定金銭債権

上記のようなサービサーが買い取りできる債権を「特定金銭債権」といいます。

交渉のために知っておきたいサービサーの事情

サービサーと債務減額や分割払いの交渉をする際はサービサー側の事情を知っておくことが成功の秘訣になります。

債務者が、サービサーに対して、ただ「債務を減額してください」とお願いしても、サービサー側の事情に沿っていなければ交渉が決裂する可能性が高くなるからです。

サービサーとの債務減額又は分割払いの交渉を成功させるためにも、サービサー側の3つの事情を理解しておきましょう。

サービサーは法務大臣の認可を受けた業者である

債権回収業者と言われると怖い印象を受けるかもしれません。たしかに、サービサーは怖い会社です。どの程度怖いかと言いますと、金融機関(銀行など)と比較すると10倍くらい怖いと思います。金融機関(銀行など)は、ソフトに対応してきてくれることが一般的かと思いますが、サービサーは、強面(こわもて)で迫ってきます。

ただ、サービサーは法務大臣の認可を受けた業者です。法務大臣が認可しているわけですから、交渉時に必要以上に怖がる必要はありません。

サービサーは闇金のような違法な取り立てをすることや、交渉時の脅しなどをすることも基本的にないのです。ですから、サービサー側の事情を理解したうえで交渉すれば話が通じないわけではありません。むしろ、減額して回収することや分割払いに応じることに利があると判断すれば交渉には応じてくれます。

また、交渉の前提として、サービサーは以下の条件を満たして法務大臣の認可を受けていることを確認しておきましょう。

・資本金が5億円以上の株式会社

・暴力団員や暴力団をやめてから5年以内の者が従事していない

・禁固以上の刑に処されて5年を経過しない者が従事していない

・破産者で復権していない者が従事していない

・成年被後見人が従事していない

・常務に従事する取締役の1人以上が弁護士である

サービサーについては1999年に施行された「サービサー法」が規定しています。

映画やドラマなどから不良債権の取り立ては恐ろしいもの、そして違法で乱暴なものという印象があるかもしれません。

サービサーは設立の条件が法律で定められており、なおかつ認可を得なければならない会社です。ドラマや映画のような違法かつ乱暴な取り立てをするような会社ではありません。

サービサーは債権を低額で大量に購入している

サービサーはひとりの債務者の債権だけ指定して金融機関(銀行など)から買い取るわけではありません。大量の不良債権を安く一気にまとめて買い取りします。買い物でいう「まとめ買い」のようなものです。

店での買い物を想像してみてください。まとめ買いをすると、その分だけ価格が安くなるはずです。サービサーも同じで大量に購入するからこそ、各不良債権は額面よりもかなり安価で購入するという特徴があります。

安く買っている。この点はサービサーとの交渉時に重要ですので覚えておいてください。

サービサーは意外と少額でももとが取れてしまう

サービサーは債権を安く大量に買っているからこそ、債務者から少額でも返済を受ければ投資元本のもとが取れてしまうという事情があります。あるいは、別の債務者何人かがある程度の返済をするとサービサー側は投資元本のもとが取れてしまうのです。

つまり、サービサーは「減額したい」という交渉に応じて減じた額を債務者から受け取っても特に損することがない可能性があるのです。むしろ、多く返済することで損をするのは債務者の方です。

サービサーは減額交渉をしても特に損をせず買い取り分のもとを取れるわけですから「返してもらえないより、早く回収できた方がいい」と考え、上手く交渉することによって債務減額又は分割払い交渉に応じる可能性があります。

ただし、法律的には、買い取った債権は、もともと全額回収してもよいのですから、サービサー側としては「たくさん払って欲しい」「たくさん回収したい」というのが本音です。よって、サービサーは債権をより多く回収しようとするのです。

他方、サービサーとしても、不良債権については、一定の債務者は高い確率で経営破綻し、全額の債権回収は困難になるのですから、回収できるところからは徹底的に回収しておかなければ、投資でリターンを上げることができないという事情もあります。

ですので、回収できるところからは徹底的に回収をしようとするのです。債務者に隙があると徹底的に回収されてしまいます。

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サービサーとの減額交渉の流れと債務減額交渉術

サービサーとの減額交渉の流れはシンプルです。

金融機関(銀行など)が債権者だった債権がサービサーに渡り、返済を迫られます。この際に状況を確認して、返済すべき債権額よりも減額して欲しい旨をサービサー側に申し入れるという流れです。サービサー側と交渉がまとまれば減額した債権をサービサーが回収し(債務者が返済し)ます。あとは債務者の生活を再建するという流れです。

ただ、サービサーは債権回収のプロであり、債権にまつわる法律も熟知しています。そのため、債務者が個人で交渉しようとしてもサービサー側が減額交渉に応じない可能性があるのです。債務者に隙があると徹底的に回収されてしまうのです。

ですので、サービサーとの債務減額交渉をまとめるためには経験とノウハウが必要になります。

サービサーとの債務減額交渉術(交渉のコツ)

サービサー側との交渉のコツは「サービサー側の事情を理解して交渉を進めること」「返済が苦しく時間がかかること」をしっかり伝えることです。また、交渉時は、個人で債務減額交渉・分割払い交渉をするのではなく「弁護士に交渉を任せること」もコツになります。

たとえばサービサーが請求する額を返済する余力がないため、返済には時間がかかるとします。返済に時間がかかるとサービサー側は債権買い取りのもとさえ取れず損することになるわけです。だからこそ「このままだとサービサー側が損する」「減額交渉に応じて払ってもらう方が得だ」と思わせることが重要になります。

また、すでにお話ししましたが、サービサー側は債権をかなりの安価で購入しているのです。だからこそ減額してもある程度はもとが取れてしまいます。ただ、業者ですから、利益のためにも可能な限り多く取ろうと考えます。債権の管理を長期間行うのは手間ですから、早く回収したいとも考えるのです。サービサーが買い取った債権は不良債権ですので、一定の債務者は高い確率で経営破綻し、全額の債権回収は困難になるのですから、回収できるところからは徹底的に回収しておかなければ、投資でリターンを上げることができないという事情もあります。

減額すれば早く回収できるケース、減額しても買い取り金のもとより少し多めに回収できるケースなどは、「その方がサービサー側にメリットがある」「その方が短期間かつスムーズに回収できる」と判断して債務減額交渉に応じる可能性が高くなります。事情やサービサー側のメリットをしっかり分かるよう交渉時に伝えることが重要です。

サービサーと債務削減交渉や分割払い交渉をする際には、こちらの提案に応じれば、短期間で回収できることや、もとが取れる(投資に対するリターンがそれなりに発生する)ことを強調することもポイントになります。

サービサーは債権回収や債権関係の法律のプロでもありますから、個人で交渉すると債務減額どころか、満額の支払いを約束させられたり、毎月の支払額の銀行自動引き落とし書類に押印させられてしまったり、14.6%の遅延損害金も大量に支払わされたり、個人資産の状況や不動産の状況を申告させられ担保に取られてしまうなど、不利になってしまうケースもあります。

債務減額又は分割払いの交渉は個人で行わずサービサーとの交渉に慣れた弁護士に一任することもポイントになります。プロにはプロをぶつけた方が交渉もスムーズであり、サービサー側も交渉内容を承諾しやすくなるのです。

サービサーにわざと債権を買い取ってもらうという再建方法もある

債権がサービサーに買い取られたときに減額交渉をするという流れを債務者が利用する方法もあります。

たとえば金融機関(銀行など)に自社の債務が多くあったとします。このようなケースにおいて、金融機関(銀行など)に対して、サービサーへの債権の売却を促し、サービサーがその債権を買い取った後で自ら又は関係者にて安く買い取ってしまうのです。

サービサーに債権を買い取ってもらい自ら安く買い取る。そのうえで会社再建をはかるという流れになります。基本的な方法と流れは以下の通りです。

・金融機関(銀行など)と債務の返済について「今後どのように返済するのか」話し合う

・金融機関(銀行など)が債権をサービサーに売却する(1~5%程度で売却する場合もあります)

・金融機関(銀行など)がサービサーに債権を売却してから、予めコミュニケーションをしておくなどして、速やかに交渉し、債権を買い戻す

このケースでも、サービサーは金融機関(銀行など)から債権を安価で買い取っています。1~5%とほぼ二束三文で購入しているようなケースもあることがあるのです。

サービサーに会社の債務が渡ってから、速やかに債権を買い戻すのです。なおこの際、債権者又はその関係者としては、サービサーに対して、サービサーの投資額よりそれなりに高い額での買い戻しを提案するほかありません。サービサーを儲けさせてあげないといけないのです。実際によく使われている会社再建方法です。

最後に

サービサーは金融機関(銀行など)から債権を安価で買い取っているため、その買取価格よりも高額で債権を買い取ってあげれば利益が出ることから、債務減額交渉に応じる可能性があります。

また、サービサーはより短期で払ってもらった方が投資効率が高まるため良いわけであり、かつ確実に払ってもらった方が投資成功確率が上がるわけですから、スムーズかつ確実に回収できる(すぐ払う。確実に払う)という点を強調できれば、サービサーが債務削減交渉に応じる可能性があるのです。

サービサーは債権回収のプロです。これらのサービサーの個別具体的な事情をよく把握しつつ、経験とノウハウに基づいて粘り強く交渉をするためにも、経験とノウハウを有する弁護士に交渉を一任することをお薦めします。

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ABOUT US
弁護士土屋勝裕
弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士。長島・大野・常松法律事務所、ペンシルバニア大学ウォートン校留学、上海市大成律師事務所執務などを経て事務所設立。400件程度のM&Aに関与。米国トランプ大統領の娘イヴァンカさんと同級生。現在、M&A業務・M&A法務・M&A裁判・事業承継トラブル・少数株主トラブル・株主間会社紛争・取締役強制退任・役員退職慰労金トラブル・事業再生・企業再建に主として対応
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