破産・倒産用語辞典

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破産と倒産

企業の売上げが長期的な不振に陥ると、やがて債務の返済が滞るようになります。先が見通せない状況だと、金融機関からも融資を拒まれ、経営活動を続けることが困難になります。

このように企業の経営活動の行き詰まりが、外部から見ても明白になったときに、その企業は倒産したという判断が下されたことになるのです。ただし、倒産という言葉は法律用語ではありません。一般的に広く使われる、ひとつの概念です。

一方で破産は、清算を目的とした整理の手段として法的に位置づけられています。したがって、企業の経営が事実上行き詰まっても、裁判所が破産手続開始の決定をするまでは、倒産であっても破産ではありません。

破産に関して手続を定め、債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、公平な清算を図ることを目的とした法律が破産法です。

破産法の規定に従って破産手続開始が決定されると、すべての資産や負債が清算されることになります。個人の破産においては、自由財産制度や免責制度が認められていますが、会社の破産は、法人格が消滅するため、これらの制度は適用されません。

破産・倒産に関しては、日常ではあまり口にすることのない様々な用語が使われます。専門用語の意味が分からないときには、ぜひこの用語集を活用してください。

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異時破産手続廃止(いじはさんてつづきはいし)

破産手続開始の決定があった後に配当可能な財産がないことが判明した場合、裁判所は破産管財人の申立てか職権によって破産手続廃止の決定をします(破産法217条1項)。

破産手続廃止決定後に破産開始手続が打ち切られるため、異時破産手続廃止、あるいは異時廃止と呼ばれます。

類似する用語として同時破産手続廃止があります。こちらは、破産手続開始決定と同時に破産手続廃止の決定をすることをいいます。

会社更生(かいしゃこうせい)

窮地に陥っているものの再建の見込みのある株式会社に対して、破産を避けて維持更生させようという手続を会社更生といいます。

経営者は原則として会社から退陣させられ、株主の権利がなくなります。

簡易配当(かんいはいとう)

簡易配当とは、配当可能金額が1,000万円に満たないなどの一定の条件を満たす場合に、手続を簡略化し迅速な配当を行う制度です(破産法204条1項)。破産管財人の申立てにより、裁判所書記官の許可を得て行われます。

ただし、中間配当を実施した場合には簡易配当は許されません。

換価(かんか)

財産を売却して現金化することを換価といいます。

破産管財人は、破産債権者のために、適当な時期に換価を行います。民事執行法における換価は裁判所の競売で行われますが、破産管財人の換価は必ずしも競売による必要はなく、原則として破産管財人の裁量によって行われます。

ただし、不動産、船舶、無体財産(権許権、意匠権、実用新案権、商標権、著作権などをいう)などの任意売却は、裁判所の許可が必要です(破産法78条2項)。なお、不動産、無体財産権の任意売却について、裁判所の許可が得られなかったときは、民事執行法で定める競売によることになります(同項1号、2号、同法184条1項)。

現存額主義(げんぞんがくしゅぎ)

破産債権額は、破産手続開始時の共同債務の現存額を基準にして決定されるとしています(破産法104条1項)。この考え方を現存額主義といいます。

破産手続開始前に一部弁済を受けた部分については、本来の債権額から一部差し引いた額が破産債権額となります。

故意否認(こいひにん)

故意否認とは、破産者が破産債権者を害することを知っていた場合に行使する否認権です。ただし、利益を受けた者が、その当時、破産債権者を害することを知らなかったときには認められません(破産法160条1項1号)。

個人再生(こじんさいせい)

個人再生とは、個人の債務者の返済負担の圧縮と返済計画の立案とを支援する手続をいいます。個人債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整することで、債務者の経済生活の再生を図ることを目的にしています。

通常の民事再生手続よりも簡略化されているので、短期間で終了できます。また、監督委員(民事再生法54条1項)や破産管財人をつけずに、申立人本人が中心となって手続を進行していくため、予納金が低く抑えられています。さらに、手続に異議のない債権者の意思表示を不要とするなど債権者の負担についても軽減されています。

個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があります。

小規模個人再生は、個人事業主や会社員のように、継続的または反復的に収入を得る見込みがあって、住宅ローンなどを除いた債務総額が5,000万円を超えない個人が利用できます。3年間(特別な事情があれば5年間)で弁済するのが原則です。再生計画の認可決定には、債権者の書面による決議が必要になります(民事再生法221条1項)。

給与所得者等再生は、会社員のように、給与などの定期的な収入が見込め、その金額の変動幅が少なく、債務総額が5,000万円を超えない個人であれば利用できます。この手続では、 2年分の可処分所得以上の額を3年間で弁済するのが原則です。可処分所得というのは、収入額から生活維持費の額を差し引いた額のことです。再生計画の認可決定に債権者の決議は不要です(同法239条1項)。

固定主義(こていしゅぎ)

破産手続開始後に破産者が取得した財産は、破産財団に帰属しないという考え方のことを固定主義といいます。日本の破産法は、固定主義を採用しています。

対義語は膨張主義で、破産者が破産手続開始後に取得した財産を破産財団に帰属させる考え方です。フランスでは、膨張主義による破産法を立法しています。

債権者委員会(さいけんしゃいいんかい)

債権者委員会は、破産債権者が任意に設置する組織で、裁判所の承認により破産手続への関与が認められます(破産法144条1項)。破産管財人の活動に関する情報を収集し、破産管財人や裁判所に意見を述べることができます(同法144条3項、145条2項、146条)。

債権者集会(さいけんしゃしゅうかい)

債権者集会は、破産手続開始決定後に破産裁判所が債権者を招集して開催する会議のことをいいます。破産管財人などが破産手続について債権者に報告や説明を行うことと、破産手続に破産債権者の意見を反映させるために破産債権者の議決を行うことを目的として開催されます。

招集は、申立権のある破産管財人、債権者委員会や法定要件を満たした債権者の申立てがあった場合に行われます(破産法135条1項)。また申立てがない場合でも、相当と認めるときは、裁判所が職権で債権者集会を招集することができます(同条2項)。

債権調査(さいけんちょうさ)

破産手続を迅速に進めるため、破産債権については、関係者の意見を裁判所が集め、その債権の存在を破産管財人が認め、破産債権者および破産者からの異議がなければ確定するという方法が取られます。この手続を債権調査といいます。

手続の効率性を高めるため調査期間内に書面によって調査を進めていくことを原則としています(破産法116条1項)。

債権調査期間(さいけんちょうさきかん)

債権調査期間とは、破産債権の調査をするための期間のことです(破産法116条1項)。破産手続開始決定の際に同時に決定されます(同法31条1項3号)。

債権届出期間の満了後に行われる債権調査の期間を一般調査期間といいます。この期間内に破産管財人は届けられた債権の額などについて認否書を作成して裁判所に提出します。一方で、破産債権者は、書面によって異議を述べることができます。破産者も破産債権の額については、書面で異議を述べることが認められています。

一般調査期間とは別に、必要に応じて後から加入してきた債権のための調査期間も開かれます。これを特別調査期間といいます。一般調査期間も特別調査期間も債権調査の手続内容に変わりはありませんが、特別調査期間開催の費用は届出期間を遅滞した債権者の負担となります(同法119条3項)。

債権調査期日(さいけんちょうさきじつ)

債権調査期間における書面方式の調査の例外措置として、裁判所が必要と認めたときは、期日を指定して口頭の陳述で調査が行われます(破産法116条2項)。この期日を債権調査期日といいます。破産裁判所の主催で、破産管財人、破産者本人および届出債権者が出席して開かれます(同法121条)。

債権届出期間経過後に届けられた破産債権については、裁判所が必要と認めた場合に特別調査期日が設けられます。

債権届出(さいけんとどけで)

債権届出とは、債権者が、公告や通知により取引相手が破産手続開始の決定を受けたことを知ったときに、破産者に対する債権について破産手続で配当を受けたい旨を破産裁判所に対して申し出る届出です。

破産債権の届出期間は、破産手続開始決定時に同時決定されます(破産法31条1項1号)。

最後配当(さいごはいとう)

破産財団に属する財産の全部の換価が終わった後に行われる配当を最後配当といいます(破産法195条)。

財団債権(ざいだんさいけん)

配当に向けたさまざまな手続を経ることなく、破産財団から直接弁済を受ける権利を有する法定債権の一団を財団債権といいます(破産法第2条7項)。また、財団債権を有している債権者を財団債権者といいます(同条8項)。

弁済の全額について最優先の支払いが保証され、債権届出や債権調査などの破産手続を経ることもなく、随時破産管財人から直接支払いを受けます。

財団債権とされるものはあらかじめ法律で定められています(同法148条、54条2項)。

債務超過(さいむちょうか)

法人が有する現金、有価証券、動産、不動産などの財産を資産といいます。この全資産額よりも債務額などの負債の総額が上回ることを債務超過といいます。

支払い能力が会社資産しかない法人において、債務超過が発生すれば債務を完済できないため、支払不能であることを意味します。そのため債務超過は、法人固有の破産手続開始原因とされています(破産法16条1項)。

詐害行為の否認(さがいこういのひにん)

典型的な詐害行為は、財産状況が悪化した時期に、倒産者が財産の剥奪を見越して財産を友人などに贈与したり、不当に安値で売却したりするような行為です。詐害行為を見過ごすと、本来事業の再建のために使われるべき財産が減少し、倒産債権者の利益が害される結果になります。こうした場合に行使する否認権が詐害行為の否認です(破産法160条1項2号)。

行使される否認権は、民法の詐害行為取消権よりも、無資力要件や詐害意思要件が著しく緩和されています。

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差押禁止財産(さしおさえきんしざいさん)

個人の倒産において、債務者やその家族が生活していく上で必要不可欠な財産や必要最低限度の財産などについては、差し押さえが禁止されています(民事執行法131条、152条)。これを差押禁止財産といいます。

破産手続開始時に破産者が有する財産でも、差押えが禁止された財産は破産財団に帰属せず、自由財産とされます(破産法34条3項2号)。ただし、申立てによって、差押禁止財産の一部について破産財団への帰属が認められることがあります(破産法34条3項2号ただし書)。

残額責任主義(ざんがくせきにんしゅぎ)

担保権を実行した者が、債権の全額返済に満たなかった場合は、不足額についてのみ、破産債権として配当を受け取ることができます。これを残額責任主義といいます。

担保権を実行しようとする者は、弁済を受けることができないと見込まれる金額を見積もり、破産裁判所に破産債権を届け出ることができます(破産法111条2項2号)。

自己破産(じこはさん)

破産の申立てができるのは、原則として、債権者と債務者です。債務者自身が、破産の申立てをすることを自己破産といいます。

自己破産といえば、一般的に個人の破産をさしますが、債務者である会社の代表者が破産の申立てをする場合も自己破産です。

個人の債務者が破産の申立てをした場合、その際に免責の申立てをしたものとみなされます。ただし、会社の破産に伴い経営者個人が自己破産する場合は、事案によっては、免責不許可になることがあります。

自己破産をしようとする債務者には、すでにめぼしい財産が残っていないのが一般的です。そのため、個人の自己破産では、ほぼ破産手続開始決定と同時に破産手続が終結する同時廃止になります。

自然人(しぜんじん)

自然人とは、権利や義務の主体となる個人のことです。法人に対する用語として使われます。破産法では、原則として、すべての自然人に破産者の資格を認めています。

私的整理(してきせいり)

営業継続困難な倒産企業の債権債務の整理を経営者と債権者の話し合いと合意に基づき進めることを私的整理といいます。

私的整理は、債権者が債権の一部しか戻らないことを納得したうえで、残りの債権を猶予したり放棄したりすることが論点になります。私的整理を成立させるには、すべての債権者の同意が必要です。債権者の一人でも債権の放棄や免除に合意しなければ、私的整理は成立しません。

支払停止(しはらいていし)

破産法では、破産手続は債務者が支払不能にあるときに開始されるとしています(破産法15条1項)。しかし、外部の者が支払不能の判断をすることは極めて困難です。そのため同法では、支払停止という具体的な指標を設けて、支払停止という外形的な事実があれば、債務者は支払い不能という状態にあると推定することとしました(同条2項)。

支払停止に該当するものとしては、次のようなものがあります。

  • 2回目の手形の不渡り
  • 債務者の夜逃げ・失踪
  • 債務者自身による支払い停止宣言

支払不能(しはらいふのう)

債務の支払いが客観的に不可能な状態に陥ることをいいます。債務者が支払不能にあるときは、裁判所は破産手続を開始します(破産法15条1項)。

自由財産(じゆうざいさん)

破産者の生活や経済的再生のために留保される財産は、破産財団に属さず、処分の対象とはなりません。破産者が自由に利用・処分できる財産なので、自由財産と呼ばれています。

ただし、自由財産が認められるのは個人の破産の場合であり、法人は認められません。

受継申立(じゅけいもうしたて)

破産管財人や訴訟の相手方からなされる中断した訴訟の再開を求める裁判所への申立を受継申立といいます。

破産手続開始決定によって、破産財団に関する継続中の訴訟は、その進行を停止します(破産法44条1項)。破産手続開始決定のときに破産者が自身の権利義務に関する訴訟が係属していれば、破産者はその訴訟を自ら行うことができなります。破産管財人など破産者に代わって訴訟通行権を有する者が、新たな当事者としてこれらの訴訟を承継します。この際、訴訟は、新当事者が訴訟に加入するのを待つ必要があるためいったん進行が止められます。そして、訴訟当事者の地位を承継した新当事者が手続の引継ぎと中断した訴訟の進行を裁判所に求めれば訴訟は新当事者のもとで再開されます。

相殺適状(そうさいてきじょう)

二人が互いに金銭など同種の債権を有し、双方の債務が弁済期にあるときは、相殺によって債務を免れることができます(民法505条1項)。このように、対立する二つの債権が相殺に適した状況にあることを相殺適状といいます。

破産手続という状況においては、債権者の相殺に対する期待は一般の取引における状況よりも高いため、破産法上の相殺権の要件は、民法上の相殺の要件よりも緩和されたものとなっています。

破産債権が物品であったとしても、金銭見積りが可能であれば、相殺権の自働債権となります(破産法68条1項、103条2項)。また自働債権および受働債権の弁済期が到来していなくても、債権者は相殺権を行使することができます(破産法67条2項)。

双方未履行双務契約(そうほうみりこうそうむけいやく)

双方未履行双務契約とは、破産手続開始時において、破産者との双務契約で、双方の債務の履行が完了していない契約をいいます。

破産手続開始後も、破産者が締結した既存の契約は存続するのが原則です。しかし、破産手続は、破産者の財産と負債を清算する手続なので、無益な契約は解消して早期に清算したいところです。

たとえば、破産者が、破産前に部品の製造を下請業者に委託し、納品も代金の支払いも完了していなかった場合、契約を存続させて部品を手に入れても、事業を停止している状況であれば、まったく無意味です。

そのため、双方未履行双務契約については、契約の相手方の利益にも配慮しつつ、破産管財人に解除権を認める制度になっています。

破産管財人は、双方未履行双務契約を解除することも履行を選択することもできます。解除を選択した場合、契約の相手方の損害賠償請求権は破産債権となり、プラス要因は配当の可能性のみになります。ただし、契約に基づいて破産者に引き渡した物などが破産財団にあるときは、相手方は取り戻すことができます。

一方、履行を選択した場合、契約の相手方の債権は、双務契約における公平性を考慮して、財団債権となり、破産債権に優先して弁済を受けることができます。

破産管財人が解除か履行を選択しないときは、契約の相手方は、相当期間を定めて催告することができます。それでも選択しないときは、破産手続は清算が目的であることから、解除したものとみなします。

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同意配当(どういはいとう)

届出をした破産債権者の全員が、破産管財人が定めた配当表、配当額、配当の時期及び方法について同意している場合に、配当手続を簡易配当よりも簡略化することができます。これを同意配当といいます(破産法208条)。

中間配当をした場合でも、同意を行うことは許されます(同法207条)。

同時処分(どうじしょぶん)

裁判所は、破産手続を開始するにあたって、その後の破産手続に不可欠ないくつかの事柄を共に決定をしなければなりません。それらは、破産手続開始決定と同時になされ、同じ決定書に記載されるので同時処分とよばれています(破産法31条1項)。

次の4項目が、同時処分によって決められます。

  • 破産管財人の選任(破産法31条1項)
  • 債権届出の期間(同項1号)
  • 債権者集会の期日(同項2号)
  • 債権調査期間(同項3号)

同時破産手続廃止(どうじはさんてつづきはいし)

破産者に配当に値するような見るべき財産がないことが、破産手続開始時に明らかなであれば、破産管財人を選任して配当に向けた準備を行うことは、まったく意味がありません。この場合、裁判所は破産手続開始決定をすると同時に、破産手続を終結する旨の宣言を行います。これを同時破産手続廃止といいます(破産法216条1項)。

取戻権(とりもどしけん)

破産手続開始時に破産者が有する財産は、破産管財人の占有に移されます。しかし、破産手続開始時に破産者が所持していた財産は、必ずしも破産者が所有権を有していたものとはかぎりません。たとえば、他人から預かっていたものや担保として占有していたものなど、他人に所有権があるものが含まれている可能性があります。

破産者以外の者が所有する財産を配当に供することは許されないので、本来の権利者からこれらの財産の返還請求があった場合には、その財産を返還しなければなりません。このように、実体上の権利に基づいて財産の取戻しを求める権利を取戻権といいます(破産法62条)。

配当(はいとう)

破産財団の財産が現金化ざれ、適宜破産債権者に分配されることを配当といいます。配当は破産管財人が行います。債権者への現金の交付は、破産管財人が職務を行うところに破産債権者が出向いて直接受け取るのが原則です(破産法193条2項)。

配当は各破産債権者に公平に分けられるのが原則ですが、破産債権の中にはその性質上他の債権よりも優先的に配当を受けたり、反対に劣後した扱いを受けたりするものがあります。

他の破産債権よりも破産財団から優先的に配当を受けるものを優先的破産債権、他の破産債権よりも配当において劣後するものを劣後的破産債権といいます。またこのような優先または劣後の地位にない通常の破産債権を一般的破産債権といいます。

優先的破産債権や劣後的破産債権の中では、さらに配当に順位がつけられることがあります(民法329条、306条など)。

配当表(はいとうひょう)

破産管財人は、現実の金銭の交付に際して、どの債権者にいくらの金額を配当するかを一覧表にして作成します(破産法196条)。法で定められた全債権者に対する配当と合わせて破産債権者ごとの個別金額が記載されています。

配当表は、破産裁判所に提出されるとともに、公告し、届出をした破産債権者に通知しなければなりません(同法197条)。その後、配当内容について関係者から異議が申し立てられなければ、配当表どおりに破産財団の財産分配が行われることが確定します(同法200条1項、201条)。

破産管財人(はさんかんざいにん)

破産管財人とは、破産財団を管理し債権者に対して公平な配当をする職務を破産裁判所から命じられた者をいいます(破産法2条12項)。

破産管財人の破産手続における役割は非常に重要です。破産手続が、債権者に配当して無事に終結できるかどうかは、破産管財人の能力にかかっているといっても過言ではありません。

そのため、破産法は破産管財人に対して非常に強大な権限を付与しています。一方でこれらの権限が適切に行使されるかどうかについて、破産管財人を監督する手段をも講じています。

破産管財人の資格は、自然人に限られるということ以外に法律上はとくに制限はありません。しかし、現実には、破産管財人の職務を行うにあたって法律や訴訟の知識が不可欠であることや高度の職業倫理的公正さが必要とされることから、ほとんどのケースで弁護士が選任されます。

破産管財人は一人である必要はなく、事案の複雑性に応じて複数の破産管財人が選任されることがあります(同法31条1項)。

破産管財人は、破産手続開始決定と同時に破産裁判所により選任されます(同法74条)。裁判所の選任に対してその者が同意することにより、破産管財人が正式に就任することになります。

破産管財人の任期は破産手続の終結時までですが、任期途中であっても、一定の条件のもと、自ら職を辞したり破産裁判所により解任されたりすることがあります。

破産管財人の職務の根本は、破産者財産を債権者に公平に分配することです。破産管財人のほとんどの職務や権限は、この目的を達成するためのものです。破産財団を適切に管理・維持し、不当に流出したり弁済されたりした財産を破産財団に取り戻し、あるいはそのための訴訟を追行すること、そして最終的な配当を実施することが、破産管財人の中心的な職務です(同法195条I項、193条2項)。

一方で破産管財人には債権者のための職務だけではなく、破産者の再起についても一定の職責が負わされています(同法36条、 250条)。

破産債権(はさんさいけん)

破産債権とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権で、財団債権に該当しないものをいいます(破産法2条5項)。

破産手続開始決定がなされると、破産者に対して債権を有している債権者は個別に権利行使をすることができなくなります。債権者は、破産手続を通じて破産財団から配当を受けることが唯一の手立てとなります(同法100条1項)。

この破産手続に加入して破産財団から配当を受ける資格をもつ債権のことを破産債権といいます。

破産債権者表(はさんさいけんしゃひょう)

届出があった破産債権は、裁判所書記官によって、一覧表が作成されます(破産法115条)。この一覧表を破産債者表といいます。

破産債権者表は、破産管財人に渡されるとともに、関係者の閲覧に供されます(同法11条)。

破産財団(はさんざいだん)

破産手続開始決定がなされると、破産者が保有していた財産はすべて破産管財人の管理下に置かれることになります。この破産管財人が管理する債務者財産の一団を破産財団といいます(破産法2条14項、34条1項)。

破産財団に属する財産を管理・処分することができるのは、破産管財人だけです(破産法78条1項)。

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破産裁判所(はさんさいばんしょ)

破産手続開始の申立てを提出するべき裁判所で、破産手続を主宰する裁判所を破産裁判所といいます。債務者の営業所や住所地を管轄する地方裁判所が、破産裁判所となります(破産法2条3項、5条1項、2項)。

破産者(はさんしゃ)

破産者とは、債務者で、破産手続開始の決定がされている者をいいます(破産法2条4項)。破産者になった事実は、官報に公告されます(破産法32条、10条1項)。

破産者になれば、破産者等の説明義務(同法40条)や重要財産開示義務(同法41条)とともにさまざまな行動制限が課せられます。

たとえば、各種資格のいる職業について、破産者となったことが解任事由や欠格事由とされていれば、職務に就くことはできません。

通信の秘密も制限されます(同法81条1項、82条1項)。破産管財人は、破産者に関する財産を適切に管理するために、破産者宛ての郵便物をチェックする必要があります。そのため破産者宛ての郵便物が破産管財人に転送されるよう、裁判所が郵便事業者に転送を依頼するのです。また裁判所の許可を得なければ、破産者は居住地を離れることができません(同法37条1項)。

破産手続開始時に有していた財産は、破産者自身が管理することはできず、すべて破産管財人に委ねなければなりません(同法78条1項)。

破産者の財産のうち、現金や貴金属などの動産はすべて破産管財人に引き渡され、破産管財人が直接これらを占有します。在庫商品などのように量が多くて、破産管財人が直接占有できないものについては、裁判所による封印を行います(同法155条1項)。預貯金に代表される債権については、債券証書や通帳、印鑑などを破産管財人に引き渡さなければなりません。

不動産についても、破産管財人にその占有が移転されます。破産者は自己の財産の管理処分権を失うため、破産手続開始の決定前から有する不動産を売却したり賃貸に出したりすることは許されません。たとえそのような行為がなされても、相手方はその取引の有効性を主張できません(同法47条1項)。

一方で裁判所の付随処分として破産登記が行われているため、破産者による勝手な処分のおそれがなく、財産価値が目減りする可能性も低いことから、不動産が売却されるまでは破産者に現実の使用が許されるのが一般的です。この場合、破産者は破産管財人の占有代理人として不動産を占有することになります。

ただし、破産者とはいえ、破産手続開始決定によって権利能力や行為能力を失うわけではありません。選挙権や被選挙権などの公民権はそのまま行使できます。破産手続開始後に得た財産の管理・処分についても完全な行為能力者として法律行為を行うことができます。

破産手続開始の申立て(はさんてつづきかいしのもうしたて)

破産開始手続原因がある場合、債権者やその他の関係者が裁判所に破産手続の開始を求めなければなりません。この申立てを破産手続開始の申立てといいます。

ただし、公益法人の破産など特別なケースでは、破産開始の申立てがなくても、裁判所が特権で破産手続開始決定を行うことがあります。

破産手続開始の申立ては書面で行います(破産法20条)。申立てができるのは、次の者です。

①債権者(同法18条1項)

②債務者本人(同上)

③準債務者(同法19条1項、2項)……法人の理事や取締役などの立場上債務者に準ずる地位や職務にある者

債権者が申立てを行う場合、債務者に破産手続開始原因が存在することと申立人が破産者に対する債権を有していることを疎明(そめい)しなければなりません(同法18条2項)。疎明とは、推測の範囲において事実であるという心証を裁判官に抱かせることをいいます。

破産手続開始後の登記・登録(はさんてつづきかいしごのとうきとうろく)

登記・登録が破産手続開始後に破産者との間でなされた場合でも、取引自体は破産手続開始前に行われていて、破産者の取引相手が登記のときに破産手続開始決定について知らなかった場合、この登記は有効とされます(破産法49条1項ただし書)。

第三者が破産手続開始決定の事実を知らずに登記を行った場合にも取引の効力が否定されるのは、あまりにも酷であることから、このような保護規定が設けられています。

ただし、破産手続開始前になされた取引行為自体が、債権者間の不公平をきたすものであれば、破産管財人が否認権を行使して取引自体を取り消すことになります。

破産手続開始後の弁済(はさんてつづきかいしごのべんさい)

破産手続開始決定により、破産者が有する債権は破産財団に移転するため、破産者は自分が有する債権を行使することも許されなくなります。

したがって、破産者からみた債務者は、本来破産管財人に返済をすべきですから、破産管財人が改めて弁済を求めれば、その債務者は拒むことができません。しかし、その債務者が、破産手続開始決定を知らなかったのであれば、二重払いを余儀なくされるのは、あまりにも酷です。

そのため、破産手続開始後の破産者に対する弁済行為は、弁済した債務者が事実を知らなかった場合には、これを有効としています(破産法50条1項)。

否認権(ひにんけん)

破産手続開始前であっても詐害的な処分行為や不公平な弁済行為などが行われた場合、破産管財人の求めに応じて、裁判上でその行為による効果を否定して、財産を破産財団に取り戻すことが認められています(破産法160条)。

否認権は、破産法の主要な機能とひとつとされています。これを行使できるのは破産管財人のみです(破産法173条1項)。破産債権者や破産者は否認権を行使することはできませんが、破産管財人の追行する否認訴訟に補助参加することができます。

否認権は、裁判において、訴えを提起するか、否認の請求または抗弁として主張するかによって行使します(破産法173条1項)。

費用の予納(ひようのよのう)

破産手続開始の申立てをするときは、申立人は、破産手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければなりません(破産法22条)。

破産手続を進めていくうえで、破産管財人への報酬を始め、関係者への通知や売却など、さまざまな費用が発生します。これらの破産手続費用は、最終的に破産者本人が負担すべきものですが、手続の進行中に支出が必要なことから、債権者、債務者の別なく、すべての申立人に破産手続の費用を裁判所に一括納付させるものです。この破産費用を立替納付することを費用の予納といいます。

予納した費用については、破産手続の中で優先的に回収されることになっています(同法148条1項1号、151条)。

予納費用額は、裁判所や債務額によって異なります。また管財人の専任の有無によって、大きく異なってきます。管財人を選任する場合、20万円~50万円、管財人を選任しない場合で2万円程度となるのが一般的です。

普及主義(ふきゅうしゅぎ)

普及主義とは、破産者の有する財産である限り、日本国内にある財産か外国にある財産かを問わず破産財産とするという考えのことです。破産法では、破産財団とすべき、破産者が破産手続開始のときにおいて有する一切の財産は、日本国内にあるかどうかを問わないとしており(同法34条1項)、普及主義の立場です。

旧破産法においては、外国財産は破産財団に含まれないという、属地主義の立場でした。

復権(ふっけん)

破産手続開始決定と共に、破産者にはその自由や資格について各種の制限が課せられます。居住制限、通信の秘密の制限、職業資格などの制限などです。こうした制限が回復することを復権といいます。

居住制限や通信の秘密の制限などは、破産手続上の要請による制限なので、その自由は破産手続の終了と共に回復されます(破産法255条1項1号)。

一方で、各種職業資格等の制限は、破産者の財産管理能力を疑わせる事実があったという根拠によってなされるものなので、破産手続が終わったら自動的に回復するという性質のものではありません。破産者が全破産債務について、弁済や免除などでその責任を免れたときに、破産裁判所の決定による復権を申し立てます(破産法256条1項)。

別除権(べつじょけん)

破産手続開始時において破産財団に属する財産に特別の先取特権、質権、抵当権を有する者がこれらの権利を行使する場合、その債権者は破産手続にかかわることなく権利を行使することができます(破産法2条9号)。これを別除権といいます。

偏頗行為の否認(へんぱこういのひにん)

偏頗行為とは、特定のものに偏った不公平な行為をいいます。偏頗行為否認とは、破産者が特定の債権者に利益を与えた場合、その行為の効力を否定して、財産を破産財団に回復させる破産管財人の権能のことをいいます(破産法162条)。

弁済期が到来している債務の履行や、契約上の義務に基づく担保提供であっても、客観的に不公平だと認められれば否認の対象になります。

この偏頗行為の否認は、その根拠となる支払不能または破産手続開始申立てに基づいて破産手続開始決定がなされた場合にのみ認められます。

保全処分(ほぜんしょぶん)

破産手続開始決定の前であれば、破産者は自由に自分の財産を処分することができます。破産手続開始の申立てから破産手続開始決定までには、一定の日時を要することから、その間に債務者が財産の処分を行ってしまうと、債権者に分配する財産がないという事態にもなりかねません。

そのため、裁判所は、破産手続開始の申立てがなされた場合に、債務者に財産の処分禁止の仮処分その他の必要な保全処分を命じることができるようになっています(破産法28条1項)。これを破産開始手続前の保全処分といいます。関係者の申立てや裁判所の職権によってなされます。

保全管理命令が発令されると、債務者はすべての財産について管理処分権を剥奪されます。財産の管理・保全は、裁判所により選任された保全管理人(同法2条13項)が行います。

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民事再生(みんじさいせい)

債務者の事業を再生するために、裁判所の監督の下で債権者の権利行使を制約しつつ、再生計画の成立・遂行を図る手続です。破産や会社更生とは異なり、原則として債務者が財産の管理処分権を持ったまま再生手続を行っていきます。なお、民事再生は、株式会社以外の形態の会社でも個人でも利用することができます。個人を対象にしたものは、個人再生と呼ばれます。

無償否認(むしょうひにん)

破産者が支払の停止等があった前後6カ月にした無償行為は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができます(破産法160条3項)。これを無償否認といいます。債務者が事実上の倒産状態に陥った場合に、財産を無償で譲渡する行為は、より詐害性が高いと考えられるため、適用要件が緩和されています

免責(めんせき)

破産法では、破産手続の終了を一つの区切りとして、一定の要件のもとで残債務についての責任を免除することを認めています。これを免責といいます。

個人である債務者が破産手続開始の申立てをした場合、反対の意思を表示していない限り開始の申立てと同時に免責許可の申立てをしたものとみなされます(破産法248条4項)。

免責の決定が確定すると、配当後残っていた債務についての破産者の責任が消滅します。ただし、破産者の故意に基づく不法行為による損害賠償責任など、責任を免除するのが相当とはいえない一部の種類の債務については、引き続き履行責任が残ります(破産法253条1項ただし書各号)。

免責は破産者の責任に関する限りのものであり、連帯債務者や保証人などの責任に影響することはありません。また、後に免責を不相当とする事情が判明したときは、免責決定が取り消され、破産者の責任が復活することもあります(破産法254条1項)。

免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)

法に掲げる事項に該当すると免責は認められません(破産法252条1項)。たとえば、次のような行為があれば、免責不許可事由に該当します。

  • 破産者が意図的に破産債権者の利益を害する行為をした場合……財産の隠匿など
  • 破産手続上の義務の履行を怠り、手続の進行を妨害する行為……破産管財人の業務遂行を妨害
  • 7年以内に免責許可の申立てがあった……繰り返し免責をうけることによる信用失墜

申立権者(もうしたてけんじゃ)

破産手続開始の申立てができる権限のある者を申立権者といいます。次の者が該当します。

  • 債権者(破産法18条1項)
  • 債務者本人(同上)
  • 準債務者

準債務者とは、債務者本人ではないが、立場上債務者に準ずる地位や職務にある者をいいます。法人の理事や取締役などがその例です(同法9条1項、2項)。代表権を有していない取締役や理事についても、政策上とくに独自の立場から破産手続開始の申立ての資格を認めることにしたのが準債務者の趣旨です。債務者本人による破産手続開始の申立ては、一般的に自己破産と呼ばれていますが、準債務者が破産を申し立てた場合は自己破産には当たりません。

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    弁護士土屋勝裕
    弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士。長島・大野・常松法律事務所、ペンシルバニア大学ウォートン校留学、上海市大成律師事務所執務などを経て事務所設立。400件程度のM&Aに関与。米国トランプ大統領の娘イヴァンカさんと同級生。現在、M&A業務・M&A法務・M&A裁判・事業承継トラブル・少数株主トラブル・株主間会社紛争・取締役強制退任・役員退職慰労金トラブル・事業再生・企業再建に主として対応
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