特別清算とは?破産との違いやメリット・デメリット、流れを徹底解説

会社の経営が苦しい、今後会社の継続が難しい等の理由により、会社をたたもうと考える経営者は多いのではないでしょうか。

会社をたたむ際に弁済できない債務がある場合、清算型の倒産手続きをとることがあります。

この記事では、清算型の倒産手続きの1つである特別清算について解説します。

破産との違いやメリット・デメリット、手続きの流れ等も説明しますので是非参考にしてください。

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特別清算とは

特別清算とは、清算型の倒産手続きの1つで、債務超過に陥った法人を清算する手続きのことを言います。

具体的に言うと、会社の債権者の同意を得たうえで、選任された清算人が会社の資産を換価処分して債権者に分配する方法です。

通常会社を消滅させる際は、資産の換価等を行い債権者に債務を完済しますが、債務超過に陥った会社は完済できないため、裁判所の監督のもとで清算手続きを行うのです。

特別清算と破産の違い

清算型の倒産手続きには、特別清算のほかに「破産」があります。

ただ、特別清算と破産には以下3点の違いがあります。

  • 利用できる会社
  • 手続きを行う人
  • 債権者の同意の有無

それぞれの違いについて解説します。

利用できる会社

まず特別清算と破産は、利用できる会社が異なります。

破産は、法人・個人を問わず利用できますが、特別清算は法人のみ利用できます。

また破産は会社形態を問わず利用できますが、特別清算は株式会社しか利用できません。

手続きを行う人

特別清算と破産は、手続きを進める人物が異なります。

破産手続きは裁判所が選任した破産管財人によって進められる一方、特別清算手続きは特別清算人によって進められます。

破産管財人には会社と無関係の弁護士が就任しますが、特別清算人は、弁護士に限らず会社が選任した清算人が就任します。

債権者の同意の有無

破産するのに会社の債権者の同意は不要ですが、特別清算を利用するには債権者の同意が必要です。

破産の場合は、例え債権者が反対しても要件を満たしていれば利用できます。

一方、特別清算の場合は、債権者集会で過半数の債権者が出席し、かつ出席した債権者の議決権の3分の2以上の同意を得なければ利用することができません。

なので大口債権者からの同意を得られる場合は、特別清算手続きを検討すると良いでしょう。

また、特別清算は親会社が業績不振の子会社を清算する場合にも利用されます。

何故なら、債権者は弁済されなかった残債権を貸倒損失として計上できるからです。

親会社が子会社の特別清算手続きを行う際に、親会社が子会社の債権者から子会社に対する債権を買い取ります。そして弁済されなかった残債権を親会社の貸倒損失として計上し、親会社の法人税を軽減することができるのです。

特別清算のメリット

特別清算のメリットは以下の3つです。

  • 費用が安い
  • 期間が短い
  • 自社で清算人を選任できる

ここからは、それぞれのメリットについて解説します。

費用が安い

詳しくは後述しますが、特別清算は破産に比べて費用が安く済みます。

破産と特別清算は、いずれも裁判所に予納金を納めなければなりません。事案にもよりますが、特別清算の予納金は破産に比べて安く、費用面のメリットがあるのです。

手続きを進めるには弁護士報酬等の費用も生じるので、予納金が安く済むのは大きなメリットと言えるでしょう。

期間が短い

特別清算は、破産に比べて時間がかかりません。

特別清算は破産ほど手続きが複雑ではないため、短期間で手続きを完了することができるのです。

会社の規模や債務の額等にもよりますが、破産手続きの終結までに6カ月以上かかるのに対して、特別清算は最短2カ月程度で終結できます。

自社で清算人を選任できる

特別清算人を自社で選任できるのもメリットの一つです。

破産の場合、裁判所が破産管財人を選任するため、全く知らない弁護士が手続きを進めることになります。

一方、特別清算では、会社の事情等を熟知した経営者や信頼をおける弁護士を特別清算人に就任させることができます。そのため、より安心して清算手続きを任せることができるでしょう。

特別清算のデメリット

特別清算のデメリットは以下の2つです。

  • 株主や債権者の同意が必要
  • 利用できる場合が限られる

ここからは、それぞれのデメリットについて解説します。

株主や債権者の同意が必要

先述しましたが、特別清算を利用するには債権者の同意が必要です。

債権者集会において、債権者の過半数が出席し、かつ出席した債権者の議決権の3分の2以上の同意がなければ利用できません。

経営者の意思だけで手続きを進められない点はデメリットの1つと言えるでしょう。

利用できる場合が限られる

特別清算を利用できるのは、法人かつ株式会社に限られます。

なので、個人や合同会社・合資会社・有限会社等の形態の法人、その他医療法人や学校法人等は利用できません。

また特別清算を利用するには、会社に債務超過の疑いがあること、または清算手続きに著しい支障をきたす事情があることのいずれかの要件を満たす必要があります。

債務超過とは、会社の負債額が資産の総額を超えている状態のことを言いますが、その可能性がなければ特別清算手続きを利用できません。

清算手続きに著しい支障をきたす事情があることとは、会社の債権者が多数存在し、その利害関係が複雑である場合や、会社の債権債務等の処理に長い年月がかかる場合等を言いますが、このような事情があると認められなければ特別清算を利用できません。

また特別清算手続きを利用するには、債権者に対して負債額の一部を弁済できる必要があります。つまり税金等を支払った後、資金が底をついてしまい債権者に全く弁済できない会社は利用できないので注意が必要です。

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特別清算手続きの流れ

実際に特別清算を利用する場合、どのような手続きをとればよいのでしょうか。

ここからは、特別清算手続きの流れを詳しく解説します。

弁護士に相談する

通常、特別清算を利用する場合は弁護士に相談します。

特別清算と破産のいずれも、弁護士に依頼せずに手続きを進めるのは現実的に困難です。

まずは弁護士に相談し、特別清算を利用できるのか、どのような手続きを行う必要があるのか等を理解した上で判断することが重要です。

また早期解決のためにも、会社の存続が危ういと判断したらなるべく早い段階で相談することをお勧めします。

会社を解散し、清算人を選任する

特別清算を行うには、会社を解散する必要があります。

会社を解散するには、株主総会で議決権の半数以上を有する株主が出席し、かつ出席した株主の議決権の3分の2以上の同意が必要です。

そして解散と同時に特別清算人を選任し、法務局で解散と特別清算人の登記を行います。

財産目録の承認を受ける

解散後、特別清算人は、解散時における財産目録と貸借対照表を作成します。

財産目録とは、会社の預貯金や有価証券等の財産と借入金や買掛金等の負債を、区分・種類ごとに一覧にし財産状況を明らかにしたものです。

貸借対照表とは、決算の際に作成する財務諸表で、会社の資産と負債をまとめ、財務状況を表したものです。

これらを作成し、株主総会で承認を受けます。

債権者に対して官報公告する

特別清算人は、債権者に対して一定期間内に債権を申し出る旨を官報公告します。

官報とは国が発行する機関紙であり、各都道府県の官報販売所やウェブサイト等で購入・閲覧することが可能です。

この官報公告は、会社の債権者からどれくらいの債権を有しているのかを届け出てもらい、会社の債務を把握する目的で行われます。

なお、事前に把握している債権者に対しては個別に通知して催告を行います。

特別清算を申し立てる

特別清算の申し立てを行います。

裁判所に予納金を納め、必要書類を全て提出します。そして会社に債務超過の疑いがある、または清算手続きに著しい支障をきたす事情があると判断されると、特別清算の開始命令が出されます。

特別清算が開始することで、会社の財産に対する強制執行や保全処分等が失効します。

清算業務を行う

特別清算には協定型と個別和解型の2種類があり、いずれかの方法で清算業務を実施します。

まず協定とは、会社は債務の一部または全部を免除された上で、債権者へ残債務を弁済する必要があるのですが、その取り決めのことをいいます。

協定型の場合、これらの取り決めを記載した協定案を裁判所に提出します。

会社と債権者は協議した上で債権者への弁済額や弁済期限等を取り決め、特別清算人が協定案を作成し裁判所に提出します。

会社の債権者が少数の場合は、個別和解型の方法をとります。

個別和解型は、あらかじめ和解案を債権者と裁判所に提示し、債権者との間で個別に和解する方法です。一般的に協定型よりも迅速な処理が可能であり、早いと2カ月程度で手続きが終結します。

債権者集会による決議

協定案について決議するために債権者集会を行います。

先述しましたが、協定案が可決されるには、過半数の債権者が出席し、かつ出席した債権者の議決権の3分の2以上の同意が必要です。

可決されれば、会社は裁判所に協定の認可を申し立てます。裁判所が認可したら、会社は協定の内容に従って債権者に弁済を行います。

なお、和解の場合は、債権者集会を行うのではなく債権者と個別に和解します。

特別清算終結登記を行う

協定または和解の内容に従い債権者への弁済を全て終えると、特別清算手続きは終了となります。

裁判所で官報公告し、官報公告の日から2週間以内に即時抗告が無ければ終結が決定します。そして特別清算終結の登記を行い、法人格が消滅します。

特別精算を行うことによる影響

特別清算をした場合、会社の従業員等にどのような影響が生じるのでしょうか。

まず特別清算は清算型の倒産手続きなので、手続きの終結とともに会社の法人格が消滅します。なので会社の従業員や取引先に大きな影響を与えることになるでしょう。

当然会社の従業員との雇用関係も消滅するので、殆どの場合は会社を解散させる前に従業員との雇用契約を終了させます。

なお、給料や退職金については、優先債権として適宜弁済を受けることが可能となります。

特別清算にかかる費用

先述しましたが、特別清算を申し立てるには裁判所に費用を納める必要があります。

下記は東京地方裁判所の場合ですが、特別清算を申し立てる際に裁判所に納める費用です。

申立手数料・・20,000円

予納郵券・・・協定型の場合 624円

和解型の場合 1,532円

予納金・・・・協定型の場合 50,000円

和解型の場合 9,458円

また弁護士に依頼し、清算手続き等の業務を行ってもらう場合は、その分費用もかかってくると思われます。

専門家でない方が特別清算手続きを進めるのは難しいため、弁護士に依頼することをお勧めします。

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特別清算の具体事例

実際、どのような企業が特別清算を利用したのでしょうか。

ここからは、過去にあった具体事例を5つ紹介します。

株式会社ホテルニューヒロデン

記憶に新しい事例ですと、2021年6月の広島県の株式会社ホテルニューヒロデンの特別清算が挙げられます。

ホテルニューヒロデンは、広島電鉄株式会社の子会社で、ホテルニューヒロデンの運営を行う会社でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、ホテルの利用者数が激減しました。

さらに感染拡大の長期化により回復の見通しが立たず、2021年3月に解散し特別清算の開始決定を受けました。

東京商事

こちらも2021年の事例ですが、4月22日付で東京商事が特別清算の開始決定を受けました。

東京商事は、リゾートホテルを運営する安達事業グループの1つで、ホテルや施設の運営を手がけていましたが、一部ホテル運営をグループ会社に移管したことで売上が落ち、さらに不動産購入や不良債権等によって債務超過に陥りました。

そして東京商事は他社に事業譲渡した後、2020年11月に解散の決議をしました。負債総額は1004億8300万円で、令和に入って最大の倒産と言われています。

CGC管理株式会社

少し前の事例ですと、2018年に中京テレビ放送の子会社で、ゴルフ場の運営を手がけるCGC管理株式会社が特別清算の開始決定を受けました。

CGC管理株式会社は、愛知県でゴルフ場を経営しており、最盛期は約10億円の売上を維持していましたが、リーマンショックや若年層のゴルフ離れ等の影響を受け業績が悪化しました。その後改善の見込みがないと判断され、ゴルフ場事業をリソルホールディングスグループに譲渡し、2018年3月に解散の決議をしました。

広電ストア

こちらも広島電鉄株式会社の子会社となりますが、スーパーを経営する株式会社広電ストアが、2019年1月11日に特別清算の開始決定を受けました。

ピーク時には約171億円もの売上がありましたが、大手商業施設や量販店の進出等の影響で売上が低迷し、債務超過の状態が続きました。

そして親会社の経営基盤の安定のために、2018年にスーパー事業をイオングループに譲渡しました。その後、株主総会で解散を決議し、特別清算を行うこととなりました。

パナソニックプラズマディスプレイ

少し前の事例ですが、2016年にパナソニックの連結子会社であるパナソニックプラズマディスプレイが特別清算を行いました。

プラズマディスプレイパネルの生産・販売を行っていましたが、液晶との競争激化や市場価格の下落等で事業継続が厳しくなり、2014年3月で事業を停止し、2016年に解散・特別清算の申立てを行いました。

この倒産は製造業で過去最大と言われており、パナソニックはパナソニックプラズマディスプレイに対する債権5,000億円を放棄しました。

まとめ

特別清算と破産は、いずれも清算型の倒産手続きですが、利用できる会社や債権者の同意の要否等の違いがあります。また特別清算は費用や時間面のメリットがある一方、利用できる場合が限られる等のデメリットも存在します。

今回は特別清算について解説しましたが、会社の経営が悪化した場合は、どのような方法をとるべきかの判断が重要です。

まずは弁護士に相談し、それぞれの手続きのメリットやデメリット等を理解した上で、自社にとって最適な手続きを選択されることをお勧めします。

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    弁護士土屋勝裕
    弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士。長島・大野・常松法律事務所、ペンシルバニア大学ウォートン校留学、上海市大成律師事務所執務などを経て事務所設立。400件程度のM&Aに関与。米国トランプ大統領の娘イヴァンカさんと同級生。現在、M&A業務・M&A法務・M&A裁判・事業承継トラブル・少数株主トラブル・株主間会社紛争・取締役強制退任・役員退職慰労金トラブル・事業再生・企業再建に主として対応
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