倒産と廃業の違いとは?手続きの流れ、メリット・デメリットを解説

経営者として事業を進めていた中で、何らかの理由によって事業をたたむことを検討した場合に、倒産(本記事では、特に断り書きのない限り「経営破綻」の状態をさします)や廃業といった状況において経営者が会社の事業をやめることがあります。

そこで本記事では、倒産や廃業を検討している経営者の方に向けて、倒産と廃業の違い、それぞれのメリットや手続きの流れ、倒産と廃業件数の最新動向、倒産を回避し廃業する方法などを幅広く解説します。

⇒法人破産をしっかり行いたい方はこちら!

倒産と廃業の違い

世間的にいわれている倒産は、会社が負っている債務を払えなくなったり、会社が債務を超過してしまったりしたことで、その会社が手掛けている事業を辞めざるを得なくなった状態のことです。これに対して、廃業は単に会社が自社の手掛けている事業をやめることです。

以上のことを踏まえると、事業活動を停止するにあたって、その会社が倒産の手続や債務整理の手続を用いなければならない状況にあるのか、廃業の手続を用いれば足りる状況にあるのかは、以下の基準によって判断することが可能です。

  • 経営者が任意に事業を終了しているかどうか
  • その会社が債務を完済できる経済状況にあるかどうか

会社の事業をやめるにあたって、債務を完済できる経済状況にない会社では、そのままの状態で廃業の手続を用いることはできません。こうした状況にある会社では、破産などの倒産手続を用いるほか、債務整理の手続を経たうえで廃業の手続を進めるのが一般的です。

休眠、解散、清算、破産との違い

倒産や廃業といった言葉と類似する言葉として、休眠、解散、清算、破産などの言葉が挙げられます。廃業を検討している場合は、これらの言葉が持つ意味も理解しておきましょう。

休眠

休眠とは、会社が休業していることを意味し、会社の登記はされているものの長い期間にわたり事業活動が停止している状態のことです。休眠状態にある会社では、一定の手続きを経ることで、事業を再開させられます。

事業活動を一時的に停止している会社を休眠会社と呼びますが、登記の放置により自動的に休眠会社として扱われる場合は登記上、休眠として扱われます。会社法第472条によると、最後に登記を行った日から12年以上経過している株式会社は、休眠会社とされます。

前述のとおり、事業活動を一時的に停止すれば会社を休眠させられますが、税務署など6つの行政機関に対して所定の手続きを行うことで、その会社はこれらの行政機関から休眠会社として扱われます。会社を自主的に休眠の状態にさせるためには、税務署をはじめとする6つの行政機関に書類を提出する必要があります(書類の提出にあたり、基本的に費用は発生しません)。このうち、会社を休眠させるうえで税務署への提出が求められる書類は、異動届出書(休業する旨を記載)および、給与支払事務所の開設・移転・廃止届出書(廃止の欄の休業にチェックを入れる)です。

休眠状態にある会社は、存続している会社として扱われるため、確定申告が必要です。厳密にいうと、休眠会社にも法人税・法人住民税・固定資産税の納税義務があります。しかし、休眠会社では営業活動による収益獲得がなく、事務所家賃等の維持費のみが発生するため、基本的には課税所得は生じません。ただし、法人住民税の均等割は会社の所得に関係なく課される税金であるため、休眠会社であっても一定額の納付が求められます。

解散

解散とは、会社が現在行っている通常の営業活動をすべて中止し、それまでに発生した債権債務を整理する活動に入ることをさし、会社を消滅させる為の準備期間に入ったことを意味する言葉です。通常、会社は株主総会や社員総会の決議により解散するケースが多いですが、定款に会社の存続期間を定めていたような場合、その期間が満了することによって当然に解散したことになります。

清算

清算(通常清算)とは、会社が解散した後、それまでに発生した債権債務などを整理する活動を意味する言葉です。会社の清算では、具体的に不動産や有価証券などの現金化(換価処分)、買掛金など債権の回収、売掛金その他債務の返済などが行われます。そして、会社の清算を行った結果、会社に資産(残余財産)が残る場合、原則として株主(社員)に対して出資割合に応じて分配します。

破産(法人破産)

会社における破産(法人破産)とは、会社が債務超過や支払不能に陥った場合に、裁判所が債務者の財産を処分し、これをすべての債権者に平等に配当して公平な清算を図るとともに、債務者の経済生活の再生を図ることを目的とする手続のことです。

休眠ではなく廃業を選ぶべきケース

会社の置かれた状況によっては、経営者・オーナーが会社を休眠状態にさせておくにとどまらず廃業を選択すべき場合がありますが、こうした中で廃業を選択することが妥当と考えられるケースは、事業活動の停止の原因が一時的なものではなく今後も継続すると想定される場合(具体的には、以下2つのようなケース)が挙げられます。

  • 休眠期間が想定できない会社のケース
  • 事業承継の目途が立たない会社のケース

例えば、事業不振が続いており、経営環境が改善されない限り事業の再開の目途が立たないなど休眠期間が長期に渡る可能性がある会社や、再開しないかもしれないような会社では、一時的に休眠させて将来的に事業を再開させられる状態を維持しておくのではなく、廃業の選択が妥当であると考えられます。休眠会社であっても会社自体は存続するため税務申告が毎年必要となるほか、会社が不動産を所有している場合は固定資産税も発生します。

つまり、会社の休眠期間でも費用や手間がまったくかからないというわけではないため、将来的に事業の再開を想定できないような会社では、廃業によってリセットした方が妥当であると考えるのが一般的な意見です。

また、経営者自身の健康状態の悪化や高齢化に伴い、事業承継を考えている会社において、事業承継をしたいものの経営者の子供に会社を継ぐ意思がなかったり、従業員も高齢で事業承継が難しかったりするケースでは、現時点で会社を休眠させても、将来的な結果として廃業せざるを得ない状況に陥ることがあります。将来的にも事業承継の実現が困難であると判断した会社では、将来の事業承継のために一時的に休眠させておくのではなく、廃業が妥当な選択肢であるといえます。

⇒資金繰りをしっかり改善したい方はこちら!

倒産とは

倒産とは、世間的には、企業が債務の支払不能に陥ったり、経済活動を続けることが困難になったりした状態をさす言葉です。倒産の手続は法的倒産と私的倒産の2つに大別され、法的倒産では再建型の会社更生法と民事再生法、清算型の破産と特別清算に4つに分類されます。これに対して、私的倒産は、銀行取引停止と内整理の2つに分けられます。

倒産には、法律上の倒産と呼ばれる言葉も存在します。法律上の倒産とは、破産手続・特別清算手続・民事再生手続・会社更生手続などの法的整理手続において、倒産状態にあると認められた場合を意味する言葉です。倒産は、世間的に捉えられている定義と法律上の定義が若干異なる点に注意しましょう。

倒産が決まるタイミング

廃業前あるいは廃業後に債務を完済できないことがわかった会社では、倒産ということになり、破産や特別生産など倒産の手続を済ませないと会社を清算できません。

会社資産で税金や社会保険料などを含むすべての債権を支払うことができない場合、通常の清算手続ではなく倒産手続で会社を清算します。

債務完済の可能性を確認する方法

基本的には、下記の方法が用いられます。

  1. 会社の資産を実際に売却・回収可能であろう金額(評価額)に修正する。
  2. 賃借物件の敷金・保証金については、契約書で解約予告期間など解約条件を確認するとともに、明渡費用(内部の物の廃棄費用や原状回復費用)の金額を予測し、返還されるであろう金額に変更する。
  3. 会社を閉める場合に現実化する債務を勘定する。借入金、仕入債務などの通常の債務のほか、退職金規程がある場合は退職金を計算し、清算終了までの税金・社会保険料も予測する。
  4. 廃業によって何らかの違約金が発生しそうな場合、その金額も計上する。
  5. 賃借している施設の明渡費用が敷金・保証金では不足しそうな場合、予想不足額を会社の債務として勘定する。直ちに廃業する予定の場合、敷金・保証金から解約予告期間分の賃料を差し引いて計算する。
  6. 残リース料等を計上する。そのほか、思いつく限りの債務をすべて勘定する。
  7. 資産評価額と債務の合計額を比較する。
  8. 資産評価額が債務合計額以上の金額であれば、倒産せずに通常の清算手続で会社を廃業できる。​

倒産の手続きと流れ

清算型の倒産手続である破産の手続は、基本的に下記の流れで進められます。

  1. 経営者が弁護士に相談する。弁護士は、その会社の経営者から会社の資産や負債状況を聴き取り、適切な債務整理の方法を助言する。経営者が会社の破産申立を依頼する。
  2. 会社が事業をやめ、従業員を解雇する。
  3. 代理人弁護士が債権者や取引先に対して、破産申立の予定である旨の通知を発送する。
  4. 必要な提出書類および予納金を準備し、代理人弁護士が管轄の裁判所に破産申立を行う。
  5. 裁判所が破産手続開始決定を発令し、同時に破産管財人(破産法の破産手続において、破産財団に属する財産の管理および処分をする権利を有する者)を選任する。
  6. 裁判所で債権者集会(裁判所による指揮のもとに破産債権者に対して破産手続の進行や破産者の財産状況等について情報を提供するとともに、破産管財人が行う管財業務に関わる重要事項について意思決定をするため、破産管財人・破産者・破産債権者が一堂に会して開催される集会)が開催される。
  7. 破産管財人が会社の資産を売却・回収し、債権者からの債権届出内容を調査したうえで、債権者への配当を実施する。
  8. 裁判所が破産手続終結の決定を下し、会社が完全に消滅する。
  9. 裁判所が破産手続終結の登記を行う。

⇒企業再建して難局を乗り切る方法を見る!

廃業とは

廃業とは、単に会社が自社の手掛けている事業をやめることで、一般的には経営者の判断によって自主的に事業をやめる「自主廃業」の意味で使われることの多い言葉です。

廃業を検討する理由

経営者が廃業を検討する理由として代表的な6つをピックアップし順番に解説します。

手元に資金を残しておきたい

事業を継続する場合とは違い、廃業する場合、その会社にはこれまで分割で支払っていた債務の一括弁済や廃業に伴って現実化する債務の支払いなどが求められるため、資金面で相当な余力のある時期に廃業を決断することが大切です。

会社の廃業にあたって一括弁済等を要する債務の一例を以下に列挙しました。

  • 借入金の残金
  • 退職金(退職金規定のあるケース)
  • 残リース
  • 賃貸事務所の明渡費用

会社の廃業にあたって、その会社の経営者が退職慰労金等を受け取れるケースは、業績が良好であるうえに、借入金がない(少ない)ケースであることがほとんどです。このような会社が自社の事業をやめることを検討した場合、資金面で余裕のあるタイミングで廃業を決断するのが一般的です。

可能な限り債権者に迷惑をかけたくない

何期にもわたって売上減少が続いてしまっている会社では、業績を回復させることは難しくなっていきます。また、売上減少によって資金が不足した会社では、新たな融資を検討する必要もでてきますが、こうした状況下で無理に融資を受けて事業を継続してしまうと、最終的に倒産してしまうケースも珍しくありません。

こうした会社では、倒産することで取引先や従業員に迷惑をかけるよりも、ある程度余力のある時に廃業する経営者が多いです。これを実現するために、会社は自社の事業の今後を見定めたうえで、将来的な業績の改善が見込めないようであれば、早期の廃業を検討することも取るべき選択肢の1つです。

事業の将来性に不安がある

業界の将来性を見据えると経営が厳しくなることが想定されるため、積極的な後継者探しをせずに廃業を選ぶ会社もあります。

資金繰りが困難になる予測がある

今後の売上予測などから資金繰りが困難になると想定される会社では、資金不足に陥る前に廃業について弁護士などの専門家に相談することが望ましいです。

とはいえ、資金ショートが目前に迫らないとなかなか廃業を決断できない経営者の方も多くいます。しかし、資金がショートしてから慌てて相談する弁護士を探しても、時間がないために適任者を見つけられなかったり、相談の予約が取れなかったり、弁護士の準備が間に合わなかったりして、月末の未払発生時に経営者や社員が債権者の対応に苦慮するという事態に陥るおそれがあります。こうした事態を避けるためにも、支払困難が予測される時期よりも前に廃業を検討することが望ましいです。

すでに資金繰りが厳しい

すでに買掛金などの支払いが遅れてしまっているような会社では、今後の売上や入金について確かな見とおしがない限り、速やかに廃業を検討することが大切だといえます。特に税金や社会保険料の滞納額が大きいケースでは事業の継続が困難なことが多いため、早期に廃業すべき場合が多いと思われます。

事業承継問題が生じている

後継者が見つからないことを理由に廃業を検討する会社もあります。親族内で後継者を探そうとした場合、子どもなどにも職業選択の自由があるため、簡単に後継者になってもらえるとは限りません。

後継者として適任となる従業員がいないような中小企業の場合、そもそも親族外で後継者を見つけることは困難です。黒字であるにもかかわらず、後継者問題を抱えている企業であれば、積極的にM&Aによる第三者への事業承継も検討すると良いでしょう。

廃業の手続きと流れ

会社の廃業にあたって通常の清算手続を行う際は、基本的に以下の流れで進められます。

  1. 株主総会の特別決議、清算人の選定
  2. 会社の解散と解散登記手続・清算人登記
  3. 従業員の解雇
  4. 解散時の確定申告
  5. 官報公告、債権者への通知
  6. 売掛金等の債権の回収と在庫等の資産の売却
  7. 税金等を含むすべての債務の支払い(債務を支払いきれない場合は倒産手続へ)
  8. 残余財産の株主への分配
  9. 株主総会による決算報告の承認
  10. 清算結了
  11. 清算結了登記、清算時の確定申告
  12. 税務署など、清算の届出

上記プロセスの中で、官報での公告期間として、最低でも2カ月間の期間が求められます。そのため、廃業の手続は最短でも2カ月+手続に係る期間の時間が必要です。弁護士など専門家のサポートを得ながら、効率よく手続を進めていくことをおすすめします。

倒産(法人破産)と廃業のメリット

倒産(本章では「法人破産」の手続に限定して記載)と廃業を行う会社に期待されるメリットについて順番に解説します。

倒産(法人破産)と廃業に共通するメリット

法人破産と廃業に共通して期待できる代表的なメリットは、経営者・オーナーとしての苦労や不安などから解消されることです。

これは事業承継でも同様に期待されるメリットですが、事業承継では後継者の育成や統合プロセスなど、経営者オーナーが長期間にわたって多くの手続きをこなさなければなりません。経営者オーナーの健康問題を理由に事業を辞めたい場合、事業承継では負担が重すぎるケースがあります。

経営者としての苦労や将来性の不安に関しても、事業承継で会社を存続させる場合、経営者が会社の心配をしてしまうケースもあります。健康問題や不安からの解消を理由に引退する場合は、事業承継よりも法人破産や廃業の方がメリットの大きい場合があるといえます。

倒産(法人破産)のメリット

次に、廃業と比較した場合に、法人破産に期待されるメリットとして、代表的な2つをピックアップし順番に解説します。

債権者の取立てから解放される

会社の債務や負債が膨れ上がり、その支払いを滞らせてしまった場合、債権者から厳しい取立てや請求を受けることがあります。こうした会社では、債権者からの厳しい取立てを受け続けていると、常に追い詰められるというような状態になって新たなスタートを始める準備がままならないことがあります。

破産手続が開始されると、破産債権者(破産者に対して破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に該当しない請求権を有する者)からの個別の取立てはすべて禁止されるので、債権者からの取立てが停止されます。債権者からの取立てが停止されることで、破産手続を開始した会社の経営者からすると精神的な平穏を得られて、再出発をするための準備を始められる可能性があります。

法的に清算を完了させられる

会社の破産手続は、破産法に基づく裁判手続です。単純な廃業とは異なり、法的な手続きによって会社を清算できます。

単純に会社を廃業しただけでは、負債や法的な負担がなくなるわけではありません。その点、破産手続であれば会社は無くなってしまうとはいえ、借金・負債・契約関係・法的な負担・責任などを法的に消滅させられます。

破産手続を完了させることで、法的な区切り・けじめをつけられることは、法人破産を行うメリットの1つといえます。

廃業のメリット

続いて、法人破産と比較した場合に、廃業に期待されるメリットとして、代表的な2つをピックアップし順番に解説します。

債権者に損害を与えずに済む

経営者が廃業を行う大きなメリットとして、倒産(法人破産)と比べて取引先や債権者などへの迷惑が倒産に比べて少なくなりやすいことが挙げられます。

法人破産が決定した会社の場合、現場は非常に混乱した状態となります。解雇される従業員はもちろん、債権が貸し倒れとなってしまう取引先や債権者などにも影響が出てしまうためです。

これに対して、廃業では、基本的に債務を返済した状態で事業を終了させるため、取引先への影響は最小限に抑えることが可能です。「取引先に迷惑をかけたくない」という経営者ほど、経営が本当の窮地に立たされるまで事業を継続してしまう傾向がありますが、会社が法人破産の事態に陥ってしまうことを避けるため、戦略的に廃業を決断することも時には必要です。

再出発資金・老後資金が残る可能性

もともと収益を上げていた会社が最近になって業績を悪化させたという場合、会社の資産がある程度残っている段階で廃業すれば、債務を完済した後の残金で役員の退職慰労金や株主への分配金を支払える可能性があります。

もしも廃業をした会社の経営者が退職慰労金や残余財産分配金を取得できれば、新たに事業を始める場合の資金や今後の生活のための資金に充てることが可能です。

⇒法人破産をしっかり行いたい方はこちら!

倒産(法人破産)と廃業のデメリット

法人破産や廃業にはさまざまなメリットが期待できる反面、デメリットも少なからず存在します。

倒産(法人破産)と廃業に共通するデメリット

まずは、法人破産と廃業に共通して発生するおそれのあるデメリットの中から、代表的な3つをピックアップし順番に解説します。

収入源がなくなる

法人破産や廃業を行うと、その会社の経営者や役員などは、役員報酬などの収入がなくなるため、事前に再就職の検討、年金やアルバイト収入による生活設計などを行っておく必要性に迫られることがあります。

社員を失職させる

法人破産や会社を行えば、これまでともに仕事をしてきた社員を失職させることになります。とりわけ中小企業では少人数で経営を行っていて、長年にわたってともに働いてきた社員と家族同然の関係を構築しているケースも多いです。こうした会社の場合、法人破産や廃業を行えば、社員だけでなく社員の家族も収入源を失ってしまいかねません。

取引先に迷惑をかける

法人破産や廃業を行うと、その会社を懇意にしていた取引先や顧客との関係もなくなってしまい、場合によっては迷惑をかけることもあります。

法人破産や廃業を行う会社では、取引先との関係について、なるべく円滑に終了できるよう準備を整えておく必要があります。突然会社を廃業して取引を終了すると、取引先に大きな迷惑をかけてしまうおそれがあるため、早い段階から徐々に取引を減らすなどしてトラブルが起こりにくい状態を作っておきましょう。

倒産(法人破産)のデメリット

続いて、廃業と比較した場合に、法人破産の手続の実施にあたって会社で生じるおそれのあるデメリットの中から代表的な3つをピックアップし、順番に解説します。

代表者や役員の経済的・職業上の信用が喪失する

法人破産の手続を行うと、その会社では金融機関からの借入れや取引先に対する買掛金などの債務が消滅するため、債権者からするとその会社から満足に債権を回収できなくなります。また、法人破産の手続を行う会社では、それまでに請け負っていた仕事を完成前に取りやめなければならないケースもあります。

そのため、法人破産の手続を行う会社では、その経営者である代表者・役員について、取引先や顧客からの経済的な信用や職業上の信用を失うことになる可能性が高いです。そうなると、その会社の代表者や役員は、その後に新たな企業に際して融資を受けることができなくなったり、関係者や同業者との取引を行えなくなったりするおそれがあります。

代表者・役員の責任が追及される

法人破産の手続を行ったという理由だけで、その会社の代表者や役員がその会社の債務について責任を負わなければならなくなるわけではありません。

しかし、代表者や役員がその会社の債務について連帯保証人になっている場合、法人破産の手続を行うと、連帯保証人である代表者や役員が代わりに支払いをしなければならなくなります。

そのほか、代表者や役員が故意または重大な過失でその会社に損害を与えていた場合や、その会社の財産を個人名義に変えていたような場合などには,破産管財人から損害賠償責任の追求や否認権を行使されるケースもあります。

連帯保証人に迷惑をかける

法人破産すると、連帯保証人が代わりに支払いをしなければならなくなります。会社の債務について連帯保証人になるのは、その会社の代表者や役員だけとは限らず、第三者や従業員などが連帯保証人となっているケースもあります。

法人破産を行うと、こうした連帯保証人になってもらっている人に迷惑をかけることになることも、デメリットの1つといえます。

倒産と廃業件数の最新動向

株式会社東京商工リサーチの調査によると、2021年の1年間において休業・廃業および解散を行った会社の数は全国で4万4,377件報告されており、過去最多を記録した2020年の4万9,698件から、1割以上減少しました。

また、コロナ禍での政府・自治体・金融機関などによる強力な資金繰り支援を背景に、2021年の1年間における企業倒産は6,030件と1964年以来、57年ぶりの低水準を記録しています。とはいえ、近年の日本では、長期的な視点で見ると休業・廃業および解散を行う会社の数が増加傾向にある状況です。

参考:東京商工リサーチ

倒産を回避し廃業する方法

もともと廃業するつもりで検討していた会社であっても、その検討を行っている途中で資金が不足するなどして、負債を全額返済しきれない状況に陥った場合には、廃業にあたって倒産の手続もしくは債務整理の手続を選ぶことを強いられます(実際には夜逃げを選択する会社もありますが、会社の借金を放置することで経営者・オーナー個人の借金となって残り続け、いつまでも督促に追われるなど、リスクが非常に大きい選択です)。

例えば、資産の評価額が間違っており、想定以下の金額で売却せざるを得ないような場合が考えられます。また、廃業を検討する会社では、事業の終了に一斉に退職する従業員に対する退職金の金額や、事業の終了に伴い違約金が発生する契約なども見落としやすいです。

上記のようなポイントをチェックしたうえで、廃業を検討しており、なおかつ倒産を回避したいという会社では、廃業の手続を進める前に債務が完済できるかどうかをチェックしておくことが大切だといえます。

債務の完済が重要

廃業を検討する会社では、実際に廃業する前に、自社の債務が完済できるかどうか、資金の状況や廃業時に必要になる費用も含めて計算しておくことが大切です。このとき、大雑把な勘定では、後々に予想外の出費が発生したことで、結果的に完済できなくなったというケースも考えられます。

また、廃業を検討する際は、債務の返済だけでなく、事業を終了するためにかかる実費も考慮しなければなりません。

会社を廃業する際は、例えば、これまで借りていた事務所や施設の退去にかかるお金、不良在庫の処分にかかる費用、専門家に依頼する場合の費用などが発生することがあります。

こうした費用をすべて計算し、債務よりも資産の方が大きな金額になれば、廃業するにあたって倒産の選択肢を免れて、廃業することが可能です。

倒産と廃業の回避にはM&Aによる第三者承継も有効

倒産および廃業を回避したいという会社の場合、M&Aによる第三者への事業承継も有効な選択肢の1つとなり得ます。M&Aによる第三者への事業承継は、とりわけ会社の資金面や業績面に問題がなく、後継者問題を理由に廃業を考えている会社の場合、最良の選択となる可能性があります。

M&Aによる第三者への事業承継とは、M&Aの手法を用いて親族や会社の従業員以外の人物または会社に自社の事業を引き継ぐことです。

一般的に、M&Aによる第三者への事業承継は、株式や事業を相手側に売却する形で事業承継を行うため、会社の経営者からすると、資産を処分価格で現金化する廃業よりも多くの利益を獲得できる可能性があるうえに、経営者の個人保証が解除される可能性もあります。

⇒資金繰りをしっかり改善したい方はこちら!

まとめ

一般的に、倒産とは、会社が負っている債務を払えなくなったり、会社が債務を超過してしまったりしたことで、その会社が手掛けている事業を辞めざるを得なくなった状態をさすのに対して、廃業は単に会社が自社の手掛けている事業をやめることをさす点で、両者の言葉の持つ意味は明確に違います。

事業活動の停止にあたって、倒産や廃業、M&Aによる事業承継という3つの手法のうち、いずれを行うべきかは、会社の状況次第で変わります。しかし、一度廃業の手続きを済ませてしまうと後には戻れないことから、廃業や倒産を検討している会社では、これらを決断する前にM&Aを検討することで、選択肢の幅を広げることをおすすめします。

お問い合わせ

この記事に関連するお問い合わせは、弁護士法人M&A総合法律事務所にいつにてもお問い合わせください。ご不明な点等ございましたら、いつにてもお問い合わせいただけましたら幸いです。

    ■対象金額目安

    ■弁護士相談料【必須】

    ■アンケート

     

    無料診断フォーム

    こちらのフォームから、請求可能性や解決可能性に関する無料診断が可能です(ベータ版)。いくつかの質問に回答することによりご自身のご状況が分かります。ご活用ください。

    弁護士法人M&A総合法律事務所メールマガジン

    M&Aの最新情報や弁護士法人M&A総合法律事務所のセミナー情報が届きます。
    メールアドレスを入力してお申込みください。

    セミナー情報と書籍・電子書籍の謹呈

    ABOUT US
    弁護士土屋勝裕
    弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士。長島・大野・常松法律事務所、ペンシルバニア大学ウォートン校留学、上海市大成律師事務所執務などを経て事務所設立。400件程度のM&Aに関与。米国トランプ大統領の娘イヴァンカさんと同級生。現在、M&A業務・M&A法務・M&A裁判・事業承継トラブル・少数株主トラブル・株主間会社紛争・取締役強制退任・役員退職慰労金トラブル・事業再生・企業再建に主として対応
    お問い合わせ 03-6435-8418