私的整理と企業再建とM&A

破産手続きや民事再生・会社更生などの法的手続きの他に、私的整理という方法もあります。

法的整理であれば、過剰な債務を裁判所で強制的に削減することができますが、そもそも手続きが複雑で時間もかかりますし、銀行などの金融機関だけではなく取引先等への債務も削減対象となることとなり、債務の削減は実現したとても、取引先との信頼関係が失われ今後の取引の継続はままならなくこともあります。また、法的整理であれば、取引先や従業員を含む債権者全員の債権を公平に扱わなければならず、すべてが債務の削減の対象となりますので、会社が経営不振であることが全ての関係者に知れ渡りますし、そのような関係者の債権を削減し、関係者との信頼関係が失われた場合、実際に企業再建を実現できるのかという問題に直面します。

債権の削減の対象を銀行などの金融機関だけに限定し、銀行などの金融機関だけと交渉することで、企業再建を実現できるとしたら、取引先や従業員に会社が経営不振であることを知られず、また取引先や従業員の債権を削減し、迷惑をかけることなく、銀行などの金融機関だけに迷惑をかけることで企業再建を実現することができるとしたら、どれだけよいことでしょうか。

私的整理手続きとは?

私的整理手続きとは、法的手続きによらずに相対での交渉により債務の返済期限の延長(リスケジューリング)又は債務の削減(債権カット)し、企業再建を実現する手続きです。

任意の手続きですので、決まった手続きというものはありませんが、銀行一行一行と相対で交渉をする場合と、銀行全部を相手にまとめてバンクミーティングを開いて交渉をする方法とがあります。

ただ、銀行としては、①債務の返済期限の延長(リスケジューリング)はともかく、②債務の削減(債権カット)をした場合、それが税務上の損金となるか否かは大きな違いです。税務上の損金となるのであれば、債務の削減(債権カット)の結果発生した損失は、国が負担してくれることとなりますが、税務上の損金とならないのであれば、それは自らの負担となって跳ね返ってきます。

税務上の損金になるか否かの基準として、「私的整理ガイドライン」が定められ適正な私的整理手続きにより適正な要件を満たすことが要件となっていますが、適正な私的整理になっているのかはいつも明確ではありません。

事業再生ADR、地域経済活性化支援機構、中小企業再生支援協議会を利用する!

そこで、公平中立な第三者機関によって私的整理手続きをする制度が存在しています。
事業再生ADR、地域経済活性化支援機構、中小企業再生支援協議会です。以前はRCC整理回収機構もありました。

私的整理を希望する会社は、これらの機関に対して、破産手続きや民事再生・会社更生などの法的手続きと同様に、私的整理を申立て、企業再建を目指すことができます。

いずれの機関も、手続きはおおまかに民事再生・会社更生などの法的手続きと似ていますが、いずれも裁判所ではありませんので、柔軟ではあるものの、独自の手続きが必要となります。

事業再生ADR・地域経済活性化支援機構

事業再生ADRでは、ADR事業者(事業再生実務化協会)のもと、債権者と債務者の利害調整を行っています。
ADRとは、裁判外紛争解決手続きのことですから、法的整理に比較して、柔軟な対応が可能です。

また、公平中立な第三者機関が私的整理手続きを行う制度として、地域経済活性化支援機構があります。

しかし、これらはいずれもJALやウィルコムのような大企業を対象としております。

中小企業再生支援協議会

中小企業などの場合は、中小企業再生支援協議会が同様の機能を担い、債権者と債務者の利害調整を行っています。
医療法人・社会福祉法人・学校法人などの特別法人も対象としています。

中小企業支援再生協議会とは、中小企業庁の監督を受けた公的な機関です。

公的な機関に申立を行い、公的な機関と一緒に、公的な機関の監督の下、再生計画案を策定します。公的な機関の監督のもと作成した再生計画ですから、適正な私的整理手続きにより適正な要件を満たしている適正な私的整理の内容となりますので、「私的整理ガイドライン」の要件を満たしているものとされるため、銀行などの債権カットを受け入れる債権者からしても、受け入れやすいのです。

中小企業支援再生協議会の手続きは非公開で行われ、銀行などの金融機関の債務のみを対象とした手続きですので、取引先や従業員などに知られることはなく、会社の再建を果たすことができます。 

経営者保証など経営者の債務も一体処理

また中小企業支援再生協議会は、経営者保証ガイドラインの制定に伴い、保証債務整理支援業務も行うようになっています。これは、会社の①債務の返済期限の延長(リスケジューリング)や②債務の削減(債権カット)の手続きと、並行して(又はそれとは別に単独で)、経営者保証ガイドラインに基づき経営者個人の保証債務について、①債務の返済期限の延長(リスケジューリング)や②債務の削減(債権カット)を行う手続きです。

これにより、中小企業は、中小企業支援再生協議会に申し立てることにより、会社と経営者が一体として再建を目指して手続きを行うことができます。勿論、保証債務整理支援業務は経営者保証ガイドラインに基づいて行われるものですので、経営者の自宅は華美な住宅でない限り喪失することはないということとなります。

事業再生ADR、地域経済活性化支援機構、中小企業再生支援協議会を利用する必要はない!

とはいえ、必ずしも事業再生ADR、地域経済活性化支援機構、中小企業再生支援協議会を利用する必要があるわけではありません。事業再生ADR、地域経済活性化支援機構、中小企業再生支援協議会はいずれも人員不足で、中小企業の再建まで手が回らないことが通常であり、また公的機関でもあるため申立を受理してもらうためには厳しい要件と多額の費用(事前に会社精査(デューデリジェンス(DD))の費用支出)が必要となります。

いずれにしても、対象会社が破産や民事再生を行った場合よりも、私的整理を行った場合の方が、銀行その他の金融機関の回収率が高くなりさえすれば、適正な私的整理として、銀行その他の金融機関は私的整理に協調することとなります。

すなわち、法的手続きのみならず、事業再生ADR、地域経済活性化支援機構、中小企業再生支援協議会などを利用した私的整理のいずれを採用することが最善であるのかについて、これらの諸般の事情を考慮して、検討することが重要です。

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