企業法務における顧問弁護士の役割とは?必要性やメリットについて解説!
企業経営において、法務は避けて通れない重要な要素です。しかし、法律の専門家である弁護士を何かしらの問題が起きるたびに毎回1から探して雇用するわけにもいかず、必要なときに必要なアドバイスを受けるために顧問弁護士を依頼する企業が多くなっています。顧問弁護士は、企業のリーガルコンプライアンスを確保し、法律リスクを予防することに貢献します。本記事では、顧問弁護士の役割や必要性、メリット・デメリットについて解説します。
企業法務に関わる弁護士の種類
企業法務に関わる弁護士には、主に顧問弁護士と企業内弁護士が存在します。顧問弁護士は、企業に外部から法務アドバイスを提供する専門家であり、企業全体の法務を担当します。一方、企業内弁護士は、企業内に所属している法律の専門家であり、企業の内部で法務業務を行います。顧問弁護士と企業内弁護士の違いは、契約形態や業務範囲にあります。企業の規模や業務内容に応じて、どちらか一方や両方を活用することが求められます。企業法務において、顧問弁護士と企業内弁護士とはどういったものかについてより詳しく見ていきましょう。
顧問弁護士とは
企業法務における顧問弁護士とは、企業が日常的に抱える法律問題やトラブルに対応し、予防策を提案するための弁護士のことを指します。
顧問弁護士は、企業のビジネスにおける法的側面を熟知し、法令や判例を踏まえたアドバイスを提供します。具体的には、契約書の作成やレビュー、訴訟のリスク回避策の提案、労働法や知的財産法などの専門分野に関するアドバイスなどがあります。また、顧問弁護士は、企業が事業を展開する上で適切な法的手続きを踏むことができるように支援することも重要な役割です。
顧問弁護士は、企業にとって重要なビジネスパートナーの一人となっており、企業に対して適切な法的アドバイスを提供することで、企業のリスク回避や成長をサポートしています。また、顧問弁護士として長期的な信頼関係を築くことで、企業にとってより効果的なアドバイスを提供することができます。
ただし、顧問弁護士にはコストがかかることがあります。そのため、企業はコストとリターンを考慮し、顧問弁護士を選定する必要があります。顧問弁護士との契約形態や料金体系なども検討し、最適な顧問弁護士を選択することが求められます。
企業内弁護士とは
企業法務における企業内弁護士とは、企業が直接雇用し、内部で法律問題に対応するために配置される弁護士のことを指します。
企業内弁護士は、顧問弁護士と同じように、企業のビジネスにおける法的側面を熟知し、企業が取り組むビジネス活動に対して適切な法的アドバイスを提供し、契約書の作成やレビュー、訴訟リスクの回避策の提案、企業規則の作成、知的財産権の管理などを行います。ただそれだけでなく、企業内弁護士は、企業に雇用されている従業員の1人として、社員教育やリスクマネジメントの推進など、企業内で法的なプロセスや文化を浸透させるための役割も担います。
企業内弁護士は、企業にとって重要なリソースとなり、企業の法務部門において重要なポジションを占めます。企業内弁護士が企業の内部にいることで、外部の弁護士とは異なるメリットがあります。例えば、企業内弁護士は企業の内部事情に詳しく、企業の文化や重要な会議などに参加することができます。また、外部の弁護士に比べ、企業内弁護士は法的な問題に対して迅速かつ柔軟な対応が可能です。
一方で、企業内弁護士には限界もあります。例えば、特定の問題に対して専門的な知識や経験が必要な場合は、外部の専門家に依頼する必要があることもあります。また、企業内弁護士による法的アドバイスが、あくまで企業の利益を守ることが目的であるため、客観的な判断が求められるときに別途第三者の弁護士を探さなければならないこともあります。
以上のように、企業内弁護士は、企業にとって重要な法務の専門家であり、企業内で法的なプロセスや文化を浸透させることで、企業のリスク回避や成長をサポートしています。
企業法務における弁護士の役割
企業法務における弁護士の役割は、企業が取り扱う法的な問題に対して、適切な法的アドバイスを提供することです。具体的には、契約書の作成やレビュー、訴訟リスクの回避策の提案、知的財産権の管理などがあります。また、企業のビジネス活動における法的なリスクを回避するためのアドバイスや、法的なトラブルが発生した場合には訴訟や交渉の代理人として活躍することもあります。弁護士は、企業の法的な問題を解決するために不可欠な存在であり、企業の成長や安定に寄与する重要な役割を担っています。
顧問弁護士の役割
企業法務における顧問弁護士の役割は、企業の法務全般を担当し、企業のビジネス活動における法的リスクを最小限に抑えるためのアドバイスを提供することです。
顧問弁護士は、企業内部の法務チームと密に連携し、企業が法的なトラブルに巻き込まれないように、また法的な問題が発生した場合には迅速に対処するためのサポートを行います。顧問弁護士は、企業が将来にわたって安定的にビジネスを行うために、法的な問題に対して的確なアドバイスを提供することが求められます。
また、顧問弁護士は、企業のビジネス活動に深く関与するため、企業のビジネスのニーズや戦略に合わせた法的なアドバイスを提供することが重要です。顧問弁護士は、企業の発展に寄与するために、企業の内部において法的な問題に対する意識を高める教育的な役割も果たすことがあります。
顧問弁護士は、企業とともに歩み、企業の成長と安定に貢献することが求められます。そのため、顧問弁護士は、企業の長期的な戦略に合わせた法的なアドバイスを提供し、企業の発展に欠かせない存在となっています。
企業内弁護士の役割
企業法務において、企業内弁護士は、顧問弁護士とは異なり、企業の内部に所属する弁護士のことを指します。企業内弁護士は、企業において発生する法律的な問題に対して、常に企業側に立ち、法的なアドバイスや解決策を提供することが主な役割となります。企業内弁護士は、企業の法務部門に所属することが一般的であり、企業内の法的問題の解決策を提供するだけでなく、企業のコンプライアンスの維持や法的リスク管理、契約書の作成や交渉などの業務も担当します。また、外部の弁護士事務所と協力し、必要に応じて外部の専門家を巻き込み、企業の法的問題を解決することもあります。企業内弁護士は、企業の機密情報に精通しており、企業のビジネス戦略に密接に関わっているため、企業内弁護士は企業の信頼性が高く、重要な役割を担っています。
弁護士とのやり取りを全て社内で完結させてしまいたいと考えている企業は、この企業内弁護士という選択をするべきでしょう。
顧問弁護士に企業法務を依頼するメリット
では、次に顧問弁護士に企業法務を依頼するメリットについて紹介します。メリットには以下のようなものが挙げられます。
- 客観的な立場から相談に乗ってもらえる
- いつでも相談することができる
- トラブルを予防できる
- セカンドオピニオンを利用できる
それぞれ詳しく解説します。
客観的な立場から相談に乗ってもらえる
顧問弁護士に企業法務を依頼するメリットの1つ目は、客観的な立場から相談に乗ってもらえることです。企業はビジネスを行う上で様々なリスクを抱えていますが、社内で解決できない問題や、専門的な知識が必要な問題が発生することもあります。その際に顧問弁護士に相談することで、弁護士は企業の立場に立ちながらも客観的な目線でアドバイスを行うことができます。顧問弁護士は、基本的に1社のみから依頼を受けるのではなく、複数の企業や個人から常に依頼を受けているため、企業内部の話し合いでは生まれてこなかった視点からアドバイスや指摘を受けることが期待できます。
また、顧問弁護士は企業の機密情報を知っているため、社外の人間に相談することができない場合でも、顧問弁護士に相談することができます。企業にとって、第三者からの客観的なアドバイスを受けることで、リスクを軽減することができます。
いつでも相談することができる
顧問弁護士に企業法務を依頼するメリットの2つ目は、いつでも相談することができることです。顧問弁護士とは、長期的な契約を結ぶことが一般的であり、契約期間中は企業が抱えるあらゆる問題に対して、いつでも相談することができます。このため、問題が発生してから対応するのではなく、事前に相談することでトラブルを未然に防ぐことができます。また、顧問弁護士は企業のビジネスに詳しいため、企業が抱える問題について、迅速かつ的確に対応することができます。
トラブルを予防できる
顧問弁護士に企業法務を依頼するメリットの3つ目は、トラブルを予防できることです。顧問弁護士は、企業が抱えるリスクを把握し、法的に許容される範囲内で対処策を提案します。また、顧問弁護士は、企業が行っている事業や契約に関する法的問題について、事前にアドバイスを行うことができます。これにより、法的リスクを事前に予測して対策を講じることができ、トラブルを未然に防ぐことができます。例えば、契約書の不備や解釈の誤り、法律違反の可能性がある取引など、様々な事象に対して、顧問弁護士が法的なリスク評価を行い、予防策を提案することで、企業の法的トラブルを未然に防止することができます。
セカンドオピニオンを利用できる
顧問弁護士に企業法務を依頼するメリットの4つ目は、セカンドオピニオンを利用できる点が挙げられます。顧問弁護士を請け負っている弁護士は、多くの企業の法務を担当しているため、様々な分野に精通しています。そのため、「ある弁護士はAと言うが、他の弁護士はBと言う」といったように一つの問題について別の見解を持っていることがあります。このような場合、セカンドオピニオンを利用することで、より正確かつ適切な判断を下すことができます。また、別の弁護士に依頼することによって、問題解決に向けた新たなアプローチや手段を提案してもらえることもあります。
顧問弁護士に企業法務を依頼するデメリット
一方、顧問弁護士に企業法務を依頼するにはデメリットも存在します。デメリットには以下のようなものが挙げられます。
- 費用がかかってしまう
- 考え方に偏りが出てしまう可能性がある
それぞれ詳しく解説します。
費用がかかってしまう
顧問弁護士に法務を依頼する際には、弁護士に支払う報酬が必要となります。そのため、その費用が企業にとって負担となる場合があります。また、依頼内容や時間によっては、その費用が高額になることも考えられます。そのため、企業が顧問弁護士を選ぶ際には、費用についても慎重に検討する必要があります。
考え方に偏りが出てしまう可能性がある
顧問弁護士には、その弁護士の専門分野や考え方によって、アドバイス内容が変わる場合があります。そのため、一人の弁護士にすべてを任せてしまうと、その弁護士の考え方に偏りが出てしまう可能性があります。また、新しい視点や知見を得ることができない場合もあります。そのため、企業が顧問弁護士を選ぶ際には、複数の弁護士から意見を聞くことも検討する必要があります。
企業の規模による顧問弁護士の違い
企業の規模次第で顧問弁護士の仕事の内容や顧問弁護士の人数などに違いはあるのでしょうか?大企業・中小企業・個人事業主それぞれにおいて解説します。
大企業の場合
大企業の場合、複数の法律事務所と契約を行い、事案に応じて使い分けるという方法が採用されることが増えてきています。膨大な量の契約書類や紛争処理など、多岐にわたる法的問題を扱うため、企業法務部と密接に連携し、専門分野に精通した複数の弁護士が求められるからです。海外に進出している場合は、海外法務にも精通している弁護士が必要となる場合があります。
また、大企業の場合は法律リスクが大きいため、企業内部にリスク管理部門を設置し、顧問弁護士との緊密な連携で、事前にリスクを回避できるよう努めることが求められます。
中小企業の場合
中小企業の場合、顧問弁護士は1人から数人の法律アドバイザーを雇用することが一般的です。業務規模が大企業に比べ小さいため、企業法務部が存在しない場合が多く、総務部門などとの密接な連携が必要となります。また、予算の制約もあるため、必要最低限の法的アドバイスを受けることが一般的です。中小企業にとっては、事業の規模に見合った費用対効果を重視した顧問弁護士の選択が必要となります。
個人事業主の場合
個人事業主の場合、一般的には大企業や中小企業と比較して規模が小さいため、顧問弁護士を雇うことは少ない傾向にあります。しかしながら、個人事業主でも弁護士を雇うことで、法的トラブルに巻き込まれたときに迅速に対処することができ、またビジネスにおいて法的なアドバイスを受けることができるというメリットがあります。個人事業主の場合、顧問弁護士として法律事務所を利用することが多く、契約書の作成や法的アドバイスを受けることができます。また、顧問弁護士がいることで、事業展開に際して法的リスクを最小限に抑えることができるため、ビジネスの安定につながるといえます。
顧問弁護士に企業法務を依頼する場合の費用
顧問弁護士に依頼する場合、費用は大きく2つのタイプに分かれます。
1つ目は「月額制」で、契約を締結し、毎月固定の金額を支払う形式です。月額制は、企業にとって予算をあらかじめ決めることができ、コスト管理がしやすいメリットがあります。また、法務に関する問題が発生した際に迅速な対応が可能となるため、リスクヘッジにもつながります。
企業の規模や業務内容に応じて契約内容が異なるため、具体的な費用は契約内容によって異なります。規模が小さい個人事業主などでは5万円以下で契約することができますが、大企業になると10万を超えることが多くなります。
2つ目は「スポット料金」で、必要に応じて顧問弁護士に依頼する形式です。顧問弁護士に依頼する頻度が少なく、不定期に依頼する企業には、スポット料金が向いています。ただし、料金が不透明であるため、費用が予測しにくいというデメリットがあります。また、急な問題が発生した場合には、スポット料金の場合は対応に時間や費用がかかることがあるため、注意が必要です。
スポット料金の具体例としては、契約書の作成代行を1万円でお願いするといったような料金体系です。弁護士に割く予算があまり多くない企業では採用を検討しても良いかもしれません。
多くの法律事務所では、月額制を採用しつつ、通常業務以上の依頼を受ける際にはスポット料金としていくらか請求するという制度を採用しています。
顧問弁護士に企業法務を依頼していないと困るケース
顧問弁護士に企業法務を依頼しないことによって以下のような弊害が生じてしまうこともあります。
1.トラブルが起きてからの対応
2.法改正への対応
3.法律相談に予約等が必要
それぞれ解説します。
トラブルが起きてからの対応
企業が顧問弁護士に依頼していない場合、トラブル発生時に適切な対応をすることができず、その結果損失が拡大する可能性があります。トラブルが起きてから弁護士探しを行い、依頼や対応といった手順を踏むと、どうしても対応のスピード感が欠けてしまいます。
一方で顧問弁護士に企業法務を依頼している場合、定期的な顧問弁護士とのやり取りの中で、事前にトラブルを防ぐことや、注意喚起をしてもらうことができます。例えば、契約上の紛争や労働問題などが発生した場合には、弁護士に依頼することで、迅速かつ適切な解決策を見出すことができます。また、トラブルを未然に防ぐためのリスクマネジメントについても、弁護士が企業に対して提言することができます。
法改正への対応
法改正が行われた場合、企業は適切な対応を行う必要があります。しかし、法改正について情報を入手し、必要な対応を行うためには時間がかかることがあります。顧問弁護士に依頼していない場合、法改正に対応するために必要な情報を入手するのに時間がかかってしまうことや、そもそも法改正を見逃してしまう可能性すらあります。その結果法令違反につながることがあります。
一方で、顧問弁護士に依頼することで、最新の情報を常に得ることができ、法改正に適切に対応することができます。
法律相談に予約等が必要
法律相談を受けるには、弁護士事務所に予約をする必要があり、相談日時を調整する必要があります。また、自社の業務内容や運営方針に合った弁護士かどうかを見極めなければならず、いくつもの法律事務所に相談をしなければならないということも考えられます。
一方、顧問弁護士に依頼している場合は、常にアドバイスを受けることができます。また、顧問弁護士は企業の業務内容や法務の状況を把握しているため、法律相談に際しての説明や資料の準備が簡単になる場合があります。
まとめ
企業法務において、顧問弁護士は重要な役割を担っています。企業の法務全般についてアドバイスを行い、トラブルを未然に防ぐことができます。また、トラブルが発生した場合には迅速かつ的確な対応を行うことができ、企業の損失を最小限に抑えることができます。企業の規模や業種に合わせて、最適な顧問弁護士を選び、安心して事業活動を行うことができるようにしていきましょう。