不動産の共有者が行方不明の場合の問題解決方法!

不動産は一人で単独所有とすることもできますが、複数人で共有することも可能です。

共有はあまりお勧めできる所有形態ではありませんが、相続などを機に望まずに共有状態となることもあります。

不動産の共有は色々と弊害をもたらすことになりますが、本章では不動産の共有者が行方不明となった場合に発生する問題と、その解決方法について解説していきます。

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■共有者が行方不明の場合どんな問題が生じるのか?

不動産の共有者の行方が分からない場合、利活用の面で相当面倒な問題が生じます。

例えば不動産の売却は共有者全員の合意がなければなりませんから、売却したくても話を進めることができません。

また人に貸して賃料を得ようとする場合でも、賃貸する行為は少なくとも持ち分の過半数の同意が必要ですので、ケースによってはこうした行為もできなくなります。

■不明共有者の捜索方法

そこでまずは行方不明となっている共有者の捜索を考えることになりますが、登記簿に記載された住所が最初の手掛かりになります。

この住所から住民票をたどって対象者の捜索をしてくことになります。

住民票はだれでも取れるわけではありませんが、自己の権利の行使や義務の履行のために必要性がある人は、他人の住民票の調査が可能です。

役所で必要な手続きを取ることで、不動産の共有者について住民票の調査が可能になります。

対象者が転居等で元の住所にいなかった場合、住民票の除票などを手掛かりにして追跡が可能です。

追跡の結果、もし対象者が死亡していた場合は厄介です。

死亡によって相続が起きたわけですから、対象者が持つ不動産の共有持ち分も相続人に引き継がれることになります。

従って相続人の調査が必要になり、相続人が複数人になる場合は調査に多くの労力を必要とします。

相続人が判明したら、不動産の共有問題を解決するために、共有持ち分の買い取りなどの交渉を行うことになります。

ただ、当初の行方不明者である共有者の調査段階において、調査が続けられなくなることもあります。

住民票の除票は一定の保存期限があり、期限を過ぎると追跡が難しくなってしまうのです。

どうしても共有者の行方がつかめない場合は、別の手立てを考えなくてはなりません。

手立てはいくつか考えられるので、次の項から見ていきます。

■共有不動産の不在者財産管理人の選任

共有者の行方がどうしてもつかめない場合、不在者財産管理人の選任手続きを裁判所に対して行うことが考えられます。

不在者財産管理人は、行方が分からない共有者に代わって、対象不動産に関する保存行為や利用・改良行為を行う権限を持ちます。

イメージとしては、行方不明の共有者の代わりになる、代理人を立てるということです。

ただし本人ではないので、権限が制限されます。

上記不在者財産管理人の権利の中に不動産を売却する行為は含まれないので、もし対象不動産を売却したいということであれば、別途裁判所に対して、権限外行為について許可を得る手続きを取らなければなりません。

不在者財産管理人の選任手続きには、申立書の他に以下のような資料が必要になります。

・行方不明となっている不在者の戸籍謄本

・同不在者の戸籍の附票

・不在の事実を称する資料

・不在者の財産に関する資料(不動産の登記簿等)

・財産管理人候補者の住民票または戸籍の附票

・利害関係人が申し立てを行う場合は、利害関係を証する資料

実際の申し立ての際には事前に裁判所に問い合わせをして、具体的なケースごとに必要な資料は何か確認するようにしてください。

財産管理人の候補者については申立人が任意の人物を推薦することができますが、裁判所はこれに拘束されませんので、推薦人以外の人物(第三者の弁護士など)が選任されることがあります。

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■共有者の失踪宣告

一定期間共有者の所在が分からず生死が不明である場合、失踪宣告の手続きを取ることも可能です。

失踪宣告というのは、生死不明で連絡がつかない相手がいる場合、一定の手続きを取ることで、その生死不明者を法律上死亡したとみなすことができるものです。

死亡とみなすことによって、手続き上膠着した状態を次に進めることができるようになります。

死亡=相続が発生するわけですから、失踪宣告を受けた者に相続人がいる場合、不動産の共有持ち分の権利も相続人に引き継がれます。

ですから当該相続人と共有持ち分の譲渡交渉などを行うことができるようになります。

譲渡交渉が難航する場合は別途法的手続きを考える必要性も出てきます。

もし失踪者に相続人がいない場合は、共有持ち分は他の共有者に帰属することになります。

共有者が自分とその失踪者だけであれば自分一人で不動産を売却することができるようになりますし、他にも持ち分権者がいる場合はその者らの合意を取れていれば売却が可能です。

失踪宣告は普通失踪と特別失踪の二つのパターンがあります。

特別失踪は戦争や船舶の沈没、震災など特別な危難に遭遇し、その危難が去った後、生死が1年間明らかでない場合に適用があるもので、適用ケースはかなり限られるでしょう。

普通失踪はそのような特別な事情がなく、単に7年間生死が明らかでない場合に適用できます。

不動産の共有者など利害関係のある者は失踪宣告の申立人になることができるので、必要な資料をそろえて裁判所に申し立てを行います。

必要になる主な資料を確認します。

・申立書

・失踪者の戸籍謄本

・失踪者の戸籍の附票

・失踪を証する資料

・申立人との利害関係を証する資料(不動産の共有を示す不動産登記簿など)

申し立てをするとすぐに失踪宣告の効果が発生するわけではなく、一定期間裁判所の掲示板や官報などで告知を行います。

すなわち、失踪者に対しては生存を確認できるように届け出を行うことや、失踪者の行方を知っている者は申し出をするようにお知らせを行うわけです。

一定の期間に申し出がない場合は、失踪宣告の効果によって法律上死亡したとみなされることになります。

■共有者の持ち分を売却する方法もある

不在者財産管理人の選任や失踪宣告は、一定の法律上の手続きを踏まなければなりませんが、不動産を売却して現金を得るのが目的である場合は、その不動産にかかる自分の持ち分だけを売却するという方法も考えられます。

不動産の持ち分は単体で譲渡が可能で、他の共有者の同意などは不要です。

しかし、持ち分だけを買い取っても対象不動産を完全に自由に利活用できないので、買い取りに応じる業者はあまりいません。

ただ、中には持ち分専門で買い取りに応じる業者もいます。

こうした業者に買い取りをお願いすることもできますが、買い値は相当安くなることを覚悟しなければなりません。

というのも、業者側も結局買い取った後には、他の共有者の合意を取るために法的手続きを踏んだり、行方不明者の捜索のために手間と費用をかけなければならないからです。

スピード重視で現金化するのであれば持ち分の売却も選択肢になりますが、金銭的なデメリットは甘受しなければなりません。

■まとめ

本章では不動産の共有者が行方不明の場合に起きる問題とその解決方法について見てきました。

不動産の積極的な利活用は基本的に他の共有者と意思の疎通を図りながらでないと進めることができないため、その相手が行方不明の場合は相談もできないので話を前に進めることができません。

考えられる法的手続きには不在者財産管理人を選任したり、失踪宣告の手続きを取る方法があります。

現金調達が目的の場合は持ち分の売却という方法もありますが、金銭面ではかなりのロスがでると考えておきましょう。

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