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M&Aに伴って役員が交代することになった担当者の方が、株主総会議事録に新旧いずれの役員が署名押印すべきなのかが分からず悩んでいる場面を想定しています。
署名押印の主体を誤ると、後の登記手続において議事録の真正性が疑われ、登記申請が受理されないおそれがあります。
そこで本記事では、M&Aに伴う役員交代の株主総会議事録について説明します。
M&Aと株主総会議事録
Q M&Aのクロージング時に行う役員交代の株主総会議事録に新旧役員双方が署名押印すべき理由
株主総会議事録は、取締役会・監査役会・監査等委員会・指名委員会等の議事録と異なり、その記載に特別の法的効果が生ずるわけではなく、単なる記録・証拠の意味を有するにとどまるため、法律上議事録の署名に関する規制はなく、定款で別段の規定がない限り、議事録作成を行った取締役の氏名のみの記載でよいことになっています。
但し、例外的な場合として、代表取締役を株主総会で選定する場合には、出席役員の署名押印が必要とされています。
さらに、取締役会非設置会社で、役員の欠員の補欠や増員として選任された場合等、そのままでは定足数を満たさなくなることから、就任承諾の意思表示によって直ちに役員就任の効果が発生すべき場合であって、かつ、新任役員の就任登記のために、株主総会議事録を就任承諾書として援用する場合にも、登記手続との関係上、株主総会議事録に新任役員の署名押印が必要とされています。
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署名押印が必要となる場面の整理
本文に述べたとおり、株主総会議事録については、会社法上、出席した役員の署名又は記名押印は求められておりません(会社法第318条、会社法施行規則第72条第3項)。したがって、原則としては議事録を作成した取締役の氏名を記載すれば足ります。
もっとも、登記の申請に用いる場合には、次の場面において署名押印が必要となります。
代表取締役を株主総会で選定した場合
取締役会を設置していない株式会社において、株主総会の決議により代表取締役を選定した場合には、当該株主総会議事録について、議長及び出席した取締役が押印した印鑑につき市区町村長が作成した証明書を添付しなければなりません(商業登記規則第61条第6項)。ただし、変更前の代表取締役等が登記所に提出している印鑑を押印しているときは、添付を要しません。
株主総会議事録を就任承諾書として援用する場合
新任役員が株主総会の席上で就任を承諾し、その旨が議事録に記載されている場合には、当該議事録を就任承諾書として援用することができます。この場合、就任承諾の意思表示の主体を明らかにするため、新任役員の署名押印が必要となります。
なお、援用する場合であっても、就任承諾書に押印した印鑑につき印鑑証明書の添付を要する場面(商業登記規則第61条第4項及び第5項)においては、当該印鑑証明書の添付が必要です。
M&Aのクロージングにおける実務
株式譲渡によるM&Aでは、クロージング当日に、売主側の役員が全員辞任し、買主側の役員が就任することが通例です。この場面では、次の書類を同時に整えることとなります。
第一に、新任役員を選任する株主総会議事録です。株式の名義書換えを了した後の新株主が議決権を行使する必要がありますので、株主名簿の書換えとの前後関係を確認してください。
第二に、代表取締役を選定する取締役会議事録又は株主総会議事録です。前記のとおり印鑑証明書の要否が問題となります。
第三に、旧役員の辞任届です。登記所に印鑑を提出している代表取締役等の辞任届については、会社実印の押印又は個人の実印の押印及び印鑑証明書の添付を要します(商業登記規則第61条第8項)。
第四に、新任役員の就任承諾書及び本人確認証明書です。
新旧双方の役員の署名押印を求めておくべき理由は、法律上の要請にとどまりません。クロージング後に売主側の協力を得ることは事実上困難となりますので、当日のうちに必要な書類をすべて受領しておくことが、登記手続を確実に行うための実務上の要諦です。不足があった場合、登記が遅れ、許認可の名義変更、金融機関への届出、取引先への通知にも影響が及びます。
クロージング書類の一覧を作成する段階で、司法書士に必要書類を確認し、印鑑証明書の有効期限(作成後3か月以内であることを要する場合があります)についても確認しておくことをお勧めいたします。
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