M&Aアドバイザリーとは?役割や業務内容、M&A仲介会社との違い、必要なスキルを解説

  • 2015年5月30日
  • 2024年10月27日
  • M&A

M&Aを成功させるには、「M&Aアドバイザリー」と呼ばれる専門家にサポートを依頼するのが効果的です。この記事では、M&Aアドバイザリーの役割、依頼するメリット・デメリット、業務内容や手数料、M&AアドバイザリーとM&A仲介会社の違い、M&Aアドバイザリーを選ぶときのポイントを解説します。実際にM&Aアドバイザリーを選ぶ際にぜひ参考にしてください。

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目次

M&Aアドバイザリーとは

M&Aアドバイザリーとは、M&Aについて助言を行い、遂行をサポートする専門家です。具体的には、M&Aを行うのに必要な一連の手続きを一元管理してM&Aを取りまとめます。

英単語の「advisory」には「助言を与える」という意味があり、転じて「アドバイザリー」は「助言を与える業務・人」という意味合いで使われています。金融業界では、M&Aアドバイザリーは「ファイナンシャルアドバイザー(FA)」とも呼ばれています。

M&AになぜM&Aアドバイザリーが必要なのか

M&Aにおいては、M&Aアドバイザリーなどの専門家が依頼者をサポートするケースが大半です。それでは、なぜM&Aアドバイザリーが必要とされ、どのような役割を担っているのでしょうか。

M&AアドバイザリーなしでM&Aを行うことは難しい

M&Aアドバイザリーという専門職が存在する理由のひとつに、経営者がM&Aを独力で行うのが困難である点が挙げられます。

M&A自体は、売主・買主間の合意と資金があれば成立します。しかし、M&Aをより良いものにしたいなら、シナジー効果が高い相手企業とのマッチングが不可欠であり、その選定には独自のコネクションや専門的な知識が必要です。

また、M&Aは必ず成功するものではなく、失敗に終わることもあります。なかでも、売却を持ちかけてきた相手が、実は会社を売る権利を持っていなかった等の、詐欺まがいの事態に巻き込まれる可能性もあります。そうならないよう、相手企業の査定に不可欠なのがデューデリジェンス(DD)と呼ばれる企業審査ですが、そのプロセスにも専門知識が求められます。

その他、相手企業との交渉や複雑な書類の作成など、M&Aに関する一連の手続きには専門知識と実務能力が必要であり、経営者が独力で行うのは困難です。M&Aが失敗すれば、従業員や取引先、地域など影響を受ける関係者が多く、単なる投資と考えずに慎重に遂行する必要があります。

M&Aアドバイザリーの役割とは

経営者が独力で行うのが困難なM&Aを、専門家としてサポートし成功に導くのがM&Aアドバイザリーです。さらに一歩進んで、M&Aがもたらす利益をできるだけ最大化させるのが、M&Aアドバイザリーが担う役割となります。

依頼者(売主)の利益を最大化させる

依頼者が売主の場合、M&Aアドバイザリーの役割は、次の点に注力してM&Aによる利益を最大化させることです。

  • 売却金額をできるだけ高く
  • 売却金額だけではなく、税引き後の手取り金額にも留意
  • 売却後に希望する条件を実現

売主には、会社をできるだけ高く売りたいという希望があります。M&Aアドバイザリーは、最もシナジー効果を訴求できるマッチングを組むなどして、できるだけ高く買い取ってくれる買主を提案します。売却金額が高くても税金を多く引かれては実際の受取金額が少なくなるため、税金が高くなりすぎない売却スキームの選択も重要です。

また、従業員の雇用維持など、売却後に希望する条件を話し合える買主を探し、交渉を円滑に進めるのもM&Aアドバイザリーの大切な役割です。

依頼者(買主)の利益を最大化させる

一方、依頼者が買主の場合は、M&Aアドバイザリーは次の点に注力して、利益最大化の役割を果たします。

  • 適正な買収金額
  • シナジー効果を高める相手企業を選定
  • 妥当な買収条件

買主にとっては、予算内かつ適正な買収金額でM&Aを行うことが重要です。M&Aアドバイザリーは売主が提案する価格を鵜呑みにせず、市場価格や過去の実績、相手先の企業価値や事業計画などから、買主に適正な金額を助言します。

また、買主が持つ技術やノウハウを考慮して、よりシナジー効果が高まるマッチング相手を提案します。さらに、買収条件が妥当なものに収まるような交渉や、リスクを減らすための表明保証の確認なども重要な役割です。

M&Aアドバイザリーに依頼するメリット・デメリット

このように、M&Aがもたらす利益の最大化は、M&Aアドバイザリーに依頼するうえでの大きなメリットとなります。ほかには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

M&Aアドバイザリーに依頼するメリット

M&Aアドバイザリーに依頼するメリットとして、次の点が挙げられます。

  • M&Aがもたらす利益の最大化
  • M&Aの成功率上昇
  • M&Aにかかる期間の短縮

M&AアドバイザリーというM&Aの専門家に依頼することで、利益最大化のほかにも、成功率上昇や期間の短縮など、M&Aがもたらすパフォーマンスが上昇します。

M&Aを成功させるためには、相手先の選定が重要です。しかし、M&Aの経験やコネクションがないオーナーが、シナジー効果が生まれるような相手を独力で探すのは困難です。M&Aアドバイザリーは、独自のコネクションや豊富な実務経験から、好条件の相手とのマッチングを行うことで、M&Aの成功率を上げることができます。

マッチングが上手くいっても、交渉の過程でM&Aが不成立に終わるケースもあります。M&Aアドバイザリーは難しい交渉においても、戦略を立案して巧みにコミュニケーションを取り、依頼者が希望する条件を成立させるよう尽力します。

また、M&Aを構成するのはいくつもの複雑なプロセスです。オーナーの独力では、書類ひとつを作成するのにも膨大な時間がかかりかねません。M&Aアドバイザリーと契約すれば、煩雑な事務作業をすべて一任でき、大幅な時間を節約できます。

M&Aアドバイザリーに依頼するデメリット

M&Aアドバイザリーへの依頼によって、M&Aがもたらすパフォーマンスが最大化されるのは大きなメリットです。一方、デメリットとしては、あえて挙げれば次の点があります。

  • 依頼しない場合と比べて手数料がかかる
  • よく選ばないと、成功報酬目当ての業者にあたる可能性も

M&Aアドバイザリーへの依頼には手数料がかかるため、資金の用意が必要です。しかし、前述したように依頼によってM&Aのパフォーマンスが最大化されるため、支払う費用をM&Aがもたらす利益が上回ることが予想されます。

注意したいのは、M&Aアドバイザリーは厳選する必要がある点です。なかには稀に、成功報酬目当てにたとえマッチングの相性が悪くても相手先を強引に勧めてくる業者も存在します。M&Aアドバイザリーを選ぶ際にはどのような点に気をつければよいかは後述します。

M&Aアドバイザリーの業務内容とM&Aの流れ

M&Aアドバイザリーの業務内容は多岐に渡り、専門的な知識やスキルが必要とされます。M&Aの流れに沿って、業務内容を解説します。

M&Aの戦略・スケジュールを立案

M&Aの案件が発生すると、M&Aアドバイザリーは依頼先のオーナーと同じ全社的な視点から、そもそもM&Aの実施が有効かどうかをまず評価し、有効であればM&Aの戦略を立てます。有効でなければ、他の方法を提案してくる可能性もあります。M&Aの実施に伴って、全体スケジュールを作成し、プロジェクトの進行を管理します。

売主または買主の選定

M&Aの要となるのは、どのような相手企業をマッチングで見つけられるかです。M&Aアドバイザリーは、自社に蓄積されたリストや独自に持つネットワークから、依頼先とのシナジー効果が大きい候補先を選定・打診し、秘密保持契約の締結などを行います。

(依頼者が買主の場合)買収金額・スキームについて助言<

依頼者が買主の場合、相手先の企業価値算定は重要なプロセスです。計算の前提となる条件が少し違っただけでも、計算結果は大きく変わってきます。特に、上場企業が買主の場合には、企業価値に見合わない高額で買収してしまうと、善管注意義務違反などで株主から損害賠償を起こされかねません。そのため、相手先の企業価値算定や買収金額に対する助言は、M&Aアドバイザリーの業務のなかでも重要なものとなります。

また、買主においては、買収金額だけではなく買収スキームも重要です。どのスキームを選ぶかで税務・会計に影響が出るほか、株式市場やステークホルダーの反応、資金調達の難易度にも関わってきます。たとえば、買収スキームが合併や株式交換なら資金調達が不要なケースもありますが、株式譲渡や事業譲渡なら多額の資金調達が必要です。M&Aアドバイザリーは多面的な視点から買収スキームの助言を行います。

(依頼者が買主の場合)デューデリジェンス(DD)をサポート

M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)とは、買主側が買収の対象となる企業の事前調査を行い、財務・会計・法務・事業面など様々な視点から、対象企業が買収に適しているかを分折するプロセスです。

デューデリジェンス(DD)は、公認会計士や税理士、弁護士など複数の専門家に依頼する必要があります。M&Aアドバイザリーは、各専門家の斡旋や全体のスケジュール調整など、デューデリジェンス(DD)全体をコーディネイトして円滑に進行させます。また、デューデリジェンス(DD)による分折結果をもとに、相手先と交渉するうえでのポイント整理も行います。

条件交渉への助言

M&Aの交渉自体は、売主・買主といった当事者間で行われるのが原則であり、弁護士以外の者が依頼を受けて交渉を行えば、非弁行為に該当するという考え方もあります。この点は、たとえば当社のように弁護士がM&Aアドバイザリー業務を行っている場合は当然ながら問題になりません。一般的には、M&Aアドバイザリーは依頼者の利益を最大化するべく、交渉における戦略立案やサポート、買収金額への助言や情報収集などを行います。

契約締結(クロージング)

M&Aアドバイザリーは、弁護士など各専門家と連携して、基本合意書や最終契約書に記載される条項への助言やドラフト作成などを行います。特に、契約締結のための前提条件や表明保証についての条項は、M&A成立後のリスクを漏れなく潰せるように助言できるかが、M&Aアドバイザリーの腕の見せ所でもあります。

依頼者が買主の場合は、M&A取引の執行段階で買収資金の調達方法への助言、依頼者が上場企業の場合にはIR・株主総会への対応など、契約締結までに生じる一連の業務に対するサポートを行います。

M&Aアドバイザリーの手数料

M&Aアドバイザリーが業務を行えば、報酬が発生します。M&Aアドバイザリーの報酬体系は、会社によって全く異なるのが実情です。

M&Aにかかる手数料の種類

ここでは、一般的なM&A仲介会社への依頼で生じる可能性のある手数料の例を挙げます。

たとえば相談料など、例として挙げてはいますが、会社によっては無料のものもあります。たとえば、当社のように成功報酬のみ支払えばよい、費用対効果の大きなM&Aアドバイザリーも存在します。

相談料

相談料とは、正式にM&Aを依頼する前に相談を受けた際に支払う費用です。相談料は無料の会社も多いですが、相談前に料金を確認しておいた方がよいでしょう。

着手金

着手金とは、正式にM&Aを依頼した時点で支払う費用です。無料または100〜200万円ほどかかるケースに分かれます。M&Aが成立しなかった場合でも、着手金は返金されない点に注意しましょう。

中間金

中間金とは、M&Aのプロセスがある程度進んだ時点、よくあるのが基本合意書の締結時点で支払う費用です。無料、100万円ほどの報酬金、成功報酬の10〜20%程度がかかるケースに分かれます。中間金も着手金と同じく、基本合意書以降のプロセスでM&Aが不成立に終わっても返金されません。

デューデリジェンス(DD)の費用

デューデリジェンス(DD)は、買主が買収前に実施する相手企業の審査です。つまり、買主側に費用がかかります。M&A仲介会社に支払う費用ではなく、買主がデューデリジェンス(DD)を専門家に依頼する場合に、その専門家に対して支払います。200万円程度の支払いを見込んでおいた方がよいでしょう。

成功報酬

成功報酬とは、M&Aの成立後つまり最終契約を締結した時点で支払う費用です。M&Aアドバイザリーのなかには、成功報酬のみ支払えばよい会社もあります。着手金や中間金のようなM&Aが不成立の場合も返金されない費用とは異なり、成立後に支払えばよいため安心感を感じられます。成功報酬の計算方法は、リテイナーフィーの説明後に解説します。

リテイナーフィー

リテイナーフィーとは、ある時点で支払う費用ではなく、毎月一定の金額を支払う手数料です。リテイナーフィーは発生しない会社もあれば、月額数十万円、大型案件なら月額1,000万円以上発生する会社など様々です。一部では、タイムチャージ形式で請求される会社もあります。リテイナーフィーは契約期間中は継続して支払う必要があるため、発生する会社と契約する際にはよく検討した方がよいでしょう。

成功報酬の計算方法

ここまで、M&Aの過程で発生する手数料の種類について解説してきました。様々な手数料が存在しますが、依頼するM&Aアドバイザリーを厳選すれば、成功報酬の支払いのみで済ませることも可能です。

成功報酬は、レーマン方式と呼ばれる計算式で算出されるのが一般的です。レーマン方式は、買収金額によって次のように成功報酬率が変化します。

買収金額が5億円以下の部分5%
5億円超〜10億円以下の部分4%
10億円超〜50億円以下の部分3%
50億円超〜100億円以下の部分2%
100億円超の部分1%

具体的な計算例は、次のようになります。

買収金額が2億円:

2億円×5%=1,000万円(5億円以下の部分)

 

買収金額が22億円:

5億円×5%=2,500万円(5億円以下の部分)

5億円×4%=2,000万円(5億円超〜10億円以下の部分)

12億円×3%=3,600万円(10億超〜50億円以下の部分)

計 8,100万円

中小企業などの小型案件では、買収金額が5億円に満たずに、成功報酬は買収金額の5%となるケースが多いです。

成功報酬のベースとなる買収金額の計算方法

成功報酬のベースとなる買収金額の計算方法は、次の2通りがあります。

  • 株式価格をベースとする計算方法
  • 移動総資産をベースとする計算方法

株式価格をベースとする計算方法は、株式の売買価額をもとに成功報酬を算出します。これに対して、移動総資産をベースとする計算方法では、株式の売買価額に負債総額を加算します。負債総額を加算するのは、たとえば事業規模が大きくても負債の割合が高い企業では、同じ規模の企業に比べて売買価額が低めに算出されるため、公平性を保つために負債総額を加算すると説明されています。

つまり、株式価格よりも移動総資産をベースとする方が成功報酬は高く算出されるため、M&Aアドバイザリーがどちらの計算方法を採用しているかで、成功報酬の金額は大きく変わってきます。M&Aアドバイザリーに依頼する際には、成功報酬の算出方法を必ず確認しましょう。

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M&Aアドバイザリーに必要な資質やスキルとは

M&Aアドバイザリーには、一般的にどのような資質やスキルが必要なのかを簡単に解説します。

M&Aアドバイザリーに必要な経験

優れたM&Aアドバイザリーは、豊富な実務経験を積んでいます。実際に、M&Aアドバイザリーの採用に求められるのは、M&A業務を実際に遂行した経験があるかどうかです。具体的には、M&Aに関するプロジェクト管理や中期計画策定、デューデリジェンス(DD)の経験などが挙げられます。

M&Aアドバイザリーに必要なスキル

財務面では、デューデリジェンス(DD)や財務モデリングなどを遂行できるスキルが求められます。M&Aにおける財務モデリングとは、対象となる会社や事業のシナリオごとに事業計画を作成して、M&Aがもたらす影響のシミュレーションを行うことです。

また、多数の関係者との交渉を進める対人コミュニケーション能力や、複雑な工程を円滑に進行するマネジメント能力も必要とされます。

M&Aアドバイザリーに必要な資格

M&Aアドバイザリーという職種自体には、資格は必須ではありません。しかし、M&Aアドバイザリーとして業務を行うには、国内外の金融機関やBig4会計事務所などに入社する必要があり、就職の際に公認会計士(日本または米国)や税理士、中小企業診断士やMBAなどの資格を持っていると優遇されます。

M&Aアドバイザリーに必要な英語力

海外企業を対象とするクロスボーダーM&Aを扱うファームでは英語力が不可欠です。最低でもTOEIC730点以上が求められ、さらにTOEIC900点超え、留学や駐在などの海外経験があると就職に有利とされます。

M&Aアドバイザリーと経営コンサルタントの違い

M&Aアドバイザリーへの依頼を検討する際に、他の候補先として、経営コンサルタントやM&A仲介会社との違いを理解しておきたい方も多いでしょう。まず、M&Aアドバイザリーと経営コンサルタントの違いを簡単に解説します。

経営コンサルタントの業務は経営全般の課題解決ですが、M&Aアドバイザリーの業務はM&Aに特化しています。M&Aの成功率を上げたいなら、M&Aに特化して深い専門知識と業務経験を持つM&Aアドバイザリーに依頼するのが最適です。

M&Aアドバイザリー契約とコンサルティング契約の違い

M&Aアドバイザリーと経営コンサルタントは、契約面でも違いがあります。

M&Aアドバイザリー契約は、企業などの組織全体に対して、M&Aの実施を含めたアプローチを提供する契約です。これに対して、コンサルティング契約は、ITなどある特定の課題解決に対するアプローチを提供する契約になります。

M&AアドバイザリーとM&A仲介会社との違い

M&Aを仲介・サポートする存在として、M&Aアドバイザリーのほかには「M&A仲介会社」があります。M&AアドバイザリーとM&A仲介会社にはどのような違いがあるのでしょうか。

M&Aアドバイザリーは依頼者の利益を最大化する

M&Aアドバイザリーは、依頼者の利益を最大化するためにM&Aの交渉を行います。つまり、依頼者が売主なら売主側、買主なら買主側の利益を最大化するのです。相手先を探す際にも、依頼者の利益を最大化するための相手を探します。

このように、M&Aアドバイザリーは売主か買主のどちらか一方につくため、報酬もどちらか一方から受け取ります。顧客利益の最大化に努めるため報酬はやや割高となり、上場企業など大会社のM&Aを手掛けることが多いです。

M&A仲介会社は売主と買主の間を取りもつ

M&A仲介会社は、仲介役として売主と買主のマッチングを行い、両者の間を取りもつ形でM&Aを行います。M&Aアドバイザリーは依頼者について利益を最大化するよう働きかけますが、M&A仲介会社が売主・買主のどちらかについて同じことを行うと利益相反になるため、中立的な立場が求められます。

M&A仲介会社は、売主と買主を取りもつため、どちらからも報酬を受け取ります。仲介役に徹するため報酬はM&Aアドバイザリーより割安となり、中小企業のM&Aを仲介することが多いです。

M&Aアドバイザリー契約とM&A仲介契約の違い

M&AアドバイザリーとM&A仲介会社は、契約面でも大きな違いがあります。

M&Aアドバイザリー契約は、依頼者(売主・買主のどちらか)とのみ契約します。これに対して、M&A仲介契約は、売主と買主を取りもつ性質上、売主・買主のどちらとも契約します。

つまり、両者の大きな違いは、業務委託契約を一方とのみ結ぶのか、両方と結ぶのかという点です。M&A仲介契約は売主と買主の両方と契約を結ぶため、売主と買主の利害が対立することには関与できず、プロセスの調整程度しか関われなくなってしまいがちです。そのため、M&Aがもたらす利益を最大限に享受したいのなら、M&Aアドバイザリーに依頼するのが最適といえるでしょう。

M&AアドバイザリーやM&A仲介会社の類型

M&AアドバイザリーやM&A仲介会社は、次のように大きく4つに分類されます。

  • 外資系投資銀行
  • 証券会社
  • 銀行(メガバンク)
  • 独立系M&A業者

外資系投資銀行

外資系投資銀行は、海外企業を対象とするクロスボーダーM&Aや1000億円以上もの超大型案件を担うケースが多いです。M&Aアドバイザリー業務だけではなく、株式・債権の引受などの証券業務も提供可能です。手数料は数十億円に上るケースもあります。

証券会社

証券会社は上場企業を対象とするM&Aに携わることが多く、手数料はこちらも数億円と高額になる傾向があります。

銀行(メガバンク)

メガバンクは、大企業を対象とするM&A、なかでも自らをメインバンクとする会社同士のM&Aを扱います。銀行の本業は融資業務であるため、他の銀行をメインバンクとしている会社が、自行をメインバンクとする会社を買収した結果、メインバンクの地位を失っては本末転倒だからです。手数料は数千万円を最低ラインに設定している銀行が多いようです。

独立系M&A業者

独立系M&A業者は、母体である税理士事務所や会計事務所、経営コンサルティング会社などが提供するサービスを強みにする業者や、営業を主体としたM&Aのマッチングを強みにする業者など様々です。中小企業を対象としたM&Aを主に扱い、手数料は数百万円〜数千万円程度となります。

M&AアドバイザリーやM&A仲介会社の具体例

たとえば、証券会社や銀行はファイナンシャルアドバイザー(FA・M&Aアドバイザリーの同義語)に分類されます。また、GCAは完全独立型のM&Aアドバイザリーファームとして知られています。

M&A仲介会社の例としては、上場会社では日本M&AセンターやM&Aキャピタルパートナーズ、ストライクなどが挙げられます。そのほか、小規模な業者については、実際に依頼する際に実態をよく観察しないと分類が難しいのが実情です。

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M&Aアドバイザリーを選ぶときのポイント・注意点

実際にM&Aアドバイザリーを選ぶときには、前述したように成功報酬目当ての業者に引っかからないよう厳選する必要がありますが、注意すべきポイントは次の点です。

  • 目的に合ったM&Aアドバイザリーか
  • 担当のM&Aアドバイザリーが十分な経験を積んでいるか
  • 費用対効果を感じられるか
  • 情報管理が徹底されているか
  • 最も大切なのは、M&Aアドバイザリーとの相性

目的に合ったM&Aアドバイザリーか

M&Aを成功させるためには、M&Aの目的に合ったM&Aアドバイザリーを選ぶことが重要です。たとえば、M&Aの規模ひとつ取っても、上場企業の大型案件を得意とするのは外資系の投資銀行や証券会社、中小企業の小型案件なら独立系M&A業者といったように、M&Aアドバイザリーごとに得意とする案件の規模は異なります。

日頃から取引がある証券会社や銀行にそのまま依頼するオーナーが見られますが、証券会社や銀行は主に上場企業の案件を扱っており、中小企業が依頼するとミスマッチになる可能性があります。まずは、取引がある証券会社や銀行にM&Aの概要を説明して、適切なM&Aアドバイザリーを知らないか、意見を求めてみるのがよいでしょう。

また、自社が属する業界に精通しているか、類似会社のM&A経験があるかなども大切なポイントです。M&Aアドバイザリーにどんなサービスを求めるかによっても選択が変わってきます。たとえば、財務面での助言が必要なら、会計事務所や税理士事務所を母体とするM&Aアドバイザリーを選ぶのが適切です。

担当のM&Aアドバイザリーが十分な経験を積んでいるか

大手のM&A仲介会社への依頼を検討する際に、「大手だからしっかりしているはず」と良い方向に想像するかもしれません。

しかし、大手会社では一人のM&AアドバイザリーがM&Aの全プロセスを担当するのではなく、プロセスごとに担当者が異なるケースもあります。つまり、一部のプロセスしか経験がない、担当によっては入社1〜2年程度で年1〜2件の実績しかないM&Aアドバイザリーも存在します。また、大手会社ではどうしても売主・買主の候補企業とは面談も少なく、データベース上の付き合いに終始しがちです。

M&Aアドバイザリーを選ぶ際には、会社全体の実績だけではなく、実際に担当するM&Aアドバイザリーがどれだけ経験を積んでいるのかを必ず確認しましょう。

費用対効果を感じられるか

前述したように、M&Aアドバイザリーによっては、さまざまな手数料に加えてリテイナーフィーという月額料金まで支払う必要が生じてきます。これに対して、成功報酬のみ支払えばよい会社も存在します。

もちろん、M&Aにかける費用を全て惜しんで、専門家に依頼せずにM&Aを頓挫させるのは本末転倒です。M&Aアドバイザリーに支払う手数料を投資コストと考え、それに見合う利益をM&Aによって生み出せるか、出口戦略を考えて費用対効果を感じられるM&Aアドバイザリーを探すことが大切です。

同じ手数料を支払うのでも納得して払えるよう、M&Aアドバイザリーへの依頼を検討する際には、料金体系をしっかりと確認しておきましょう。着手金や中間金など、M&Aの不成立時でも返金されない費用の支払いには、その費用を支払ってもいいほどM&Aの成功率が高い会社であるなど、納得できるような理由が心理的にも必要です。

情報管理が徹底されているか

M&Aを実施する際には、情報漏洩には細心の注意を払う必要があります。売主にとっては、M&Aの成立前に自社の売却予定が従業員や取引先などに漏れてしまうと、従業員の退職などによる組織崩壊や企業価値の低下につながりかねません。

しかし、M&Aに際して特に売主側は、売却価格の算出のため、自社の技術やノウハウなど企業秘密も含めてM&Aアドバイザリーに情報を開示する必要があります。情報漏洩を防ぐためには、M&Aアドバイザリーと機密保持契約を結ぶのは当然として、M&Aアドバイザリー側の情報管理が徹底されているか、信頼の置けるM&Aアドバイザリーであるかを見極めることが重要です。

最も大切なのは、M&Aアドバイザリーとの相性

M&Aが具体的な局面に進んできたら、M&Aアドバイザリーとは一日に何度も連絡を取り合うようになります。同じ対話でも、言葉が通じやすい、こちらの意図をすぐ理解してくれる、意思疎通が図りやすい相手とそうでない相手がいます。M&Aアドバイザリーは、コミュニケーション上の相性が良い相手でないと、連絡を交わすプロセス自体が苦痛になりかねません。

M&Aがもたらす利益を最大化するには、こちらが望んでいる条件をM&Aアドバイザリーに伝えて理解してもらい、適切な提案をもらうことが重要です。このような意思疎通のプロセスにおいて、コミュニケーションに齟齬が生じるような相性の悪い相手がM&AアドバイザリーだとM&Aも上手く進みません。大事な局面で誤解や行き違いが生まれ、相手企業との条件交渉に支障が生じることも起こり得ます。

M&Aアドバイザリーを選ぶ観点として、目的に合っている・十分な経験・費用対効果・行き届いた情報管理という点はもちろん大切ですが、最終的な決め手は「相性が合うか」が、見落としやすいけれど最も大切なポイントといえるでしょう。

まとめ

M&Aアドバイザリーの役割は、M&Aがもたらす利益の最大化です。そのほか、M&Aアドバイザリーに依頼するメリットとしては、M&Aの成功率上昇や期間短縮など、M&Aのパフォーマンスを最大化できる点が挙げられます。

M&Aアドバイザリーの業務内容は、M&Aに関する助言を行い、一連の手続きを一元管理して推し進めることです。具体的には、スケジュールの作成・管理、候補先の選定、買収金額やスキーム、条件交渉への助言、デューデリジェンス(DD)や契約締結の支援などがあります。

また、M&AアドバイザリーとM&A仲介会社の大きな違いは、業務委託契約を売主・買主の一方、または両方と結ぶのかという点です。M&A仲介会社は両方と契約を結ぶため、利益相反にならないよう、M&Aアドバイザリーのような顧客の利益最大化はできなくなります。そのため、M&Aがもたらす利益を最大化したいのなら、M&Aアドバイザリーに依頼するのが最適といえるでしょう。

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