役員従業員に関する表明保証|株式譲渡契約書を逐条解説!

株式譲渡契約書の逐条解説:役員従業員の表明保証

M&A総合法律事務所のM&A契約書類のフォーマットはメガバンクや大手M&A会社においても、頻繁に使用されています。
ここにM&A総合法律事務所の株式譲渡契約書のフォーマットを掲載しています。
M&Aを検討中の経営者の皆様でしたらご自由にご利用いただいて問題ございません。
ただし、M&A案件は個別具体的であり、このまま使用すると事故が起きるものと思われ、実際のM&A案件の際には、M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。
また、このフォーマットはM&A総合法律事務所のフォーマットのうちもっとも簡潔化させたフォーマットですので、実際のM&A取引において、これより内容の薄いDRAFTが出てきた場合は、なにか重要な欠落があると考えてよいと思われますので、やはり、実際のM&A案件の際には、M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。

⇒M&Aトラブル・表明保証違反・コベナンツ違反・M&Aの損害でお困りの方はこちら!

なお、詳細な解説につきましては、以下の弊所書籍「事業承継M&Aの実務」をご覧ください。

株式譲渡契約書の逐条解説:役員従業員の表明保証

■■■別紙1第3第7号■■■■■■■■■■

7.           役員

対象会社と役員との間には、契約・合意(ただし、任用契約として一般的に合意される内容を除く)は存在しない。対象会社と役員との間には、本件株式の譲渡を条件として対象会社に重大な支払義務を負わせる契約(口頭によるものも含む)も存在しない。

第7号は、役員に関する表明保証である。

(1) 特別役員報酬に関して

事業承継M&Aの対象会社は、中小企業、零細企業であることが多く、役員の報酬などについて明らかでない場合や、取締役会の決議が適切に行われていないことが多い。

そのような会社においては、どのような際に、どのような理由で、役員に対して、報酬や賞与が支給されることになっているのか不明であり、想定外の事由により役員に対して報酬や賞与が支給されるようでは、買主からすると、それは対象会社の企業価値の毀損原因であり、株式譲渡価格の前提を崩す事由である。

したがって、事業承継M&Aにおいては、株式譲渡契約書において、役員に対する報酬や賞与の支給その他の待遇などについて、想定外の事由が存在しないことについて、売主に表明保証して頂く必要がある。

(2) 特別退職慰労金に関して

また、事業承継M&Aにおいては、事業承継M&Aに伴い、役員が特別に収益を得られるようになっていることもある。すなわち、事業承継M&Aにより対象会社が売却され、対象会社の役員を入れ替える場合、その役員の辞任に伴い、多額の役員退職慰労金その他の金銭などがその役員などに支給されることとされていることがあるのである。いわゆるゴールデン・パラシュート(黄金のパラシュート(多額の役員退職慰労金)をもらって役員が会社を退職することにより会社の企業価値を毀損すること)である。

事業承継M&Aに伴い、対象会社からそのような想定外の役員退職慰労金等の資金の流出が行われるのであれば、買主からすると、それは対象会社の企業価値の毀損であり、株式譲渡価格の前提を崩す事由である。

そこで、事業承継M&Aにおいては、株式譲渡契約書において、その事業承継M&Aが原因で、役員に多額の役員退職慰労金等の支給が行われることがないことについて、売主に表明保証して頂く必要がある。

(3) 役員退職慰労金の支払義務に関して

なお、この点、役員の報酬や賞与、役員退職慰労金については、株主総会決議事項であることから、特に、役員退職慰労金については、役員との間で契約や合意(口約束を含む)が存在していたとしても、支給義務は存在しないのであるから、対象会社の企業価値の毀損にはならないのではないかとも思える。

しかし、対象会社と役員との間で契約や合意(口約束を含む)が存在していたのであれば、株主総会決議が存在しない結果、役員退職慰労金の支給義務はないとしても、少なくとも債務不履行にはなるのであり、対象会社からその役員に対する損害賠償責任は認められる可能性はある。

また、対象会社とその役員との間で契約や合意(口約束を含む)が存在していない場合であっても、実質的に、そのような約束が存在したと同視できるような場合や、諸般の事情を総合考慮して、役員退職慰労金を支給しないことが信義則に反するような場合は、役員退職慰労金相当額の支払いが求められることもある。また、何よりも、役員退職慰労金請求訴訟が提起された場合は、裁判所が、裁判所が、対象会社に対して、大なり小なり役員退職慰労金を支給することを働きかけ、多くの事例では、対象会社が役員退職慰労金を支給する和解が成立しているようであるので、対象会社としては、株主総会決議が存在しないと言っても安心してはいられないということとなり、買主といても、対象会社の企業価値の毀損の可能性のリスクから解放されないということとなる。

■■■別紙1第3第8号■■■■■■■■■■

8.           従業員

(1)対象会社と従業員との間には、就業規則、給与規定、退職金規程以外に、契約又は合意(口頭によるものも含み、雇用契約として一般的に合意される内容を除く)は存在しない。対象会社と従業員との間には、本件株式の譲渡を条件として対象会社に重大な支払義務を負わせる契約(口頭によるものも含む)は存在しない。(2)対象会社が事業の遂行の観点から主要又は重要な従業員の中で、対象会社から退職又は他社への転籍を表明している者は存在しない。

第8号は、従業員に関する表明保証である。

(1) 従業員の労働条件に関して

この点、(1)については、従業員の労働条件に関する表明保証である。

事業承継M&Aの対象会社は、中小企業、零細企業であることが多く、従業員の労働条件について、必ずしも明らかになっていない場合も存在する。

ただ、最近では、多くの会社が、就業規則、給与規定、退職金規程くらいは作成し、かつ労働基準監督署に届出を行っているように見受けられる。

また、これ以外に、事業承継M&Aの対象会社である中小企業、零細企業においても、多くの会社が、従業員との間で雇用契約を締結している。

このような状況であれば、第7号の役員の場合とは異なり、どのような際に、どのような理由で、従業員に対して、どの程度の給与や賞与・退職金が支給されることになっているのかは明らかであり、想定外の事由により従業員に対して給与や賞与・退職金が支給されるかは、通常は明らかである。

(2) 従業員の特別な労働条件に関して

事業承継M&Aにおいて問題になるのは、就業規則、給与規定、退職金規程に規定されていない給与や賞与・退職金を支給する旨の合意が存在していた場合である。

すなわち、事業承継M&Aの対象会社である中小企業、零細企業では、特定の従業員との間で、ほかの従業員と異なった労働条件の合意をしているケースがまま存在する。また、就業規則、給与規定、退職金規程とは全く異なった給与や賞与・退職金の支給を約束している事例もまま存在する。

すなわち、中小企業、零細企業では、事業の運営が特定の従業員の力量に依存していたり、特定の従業員との力関係で、社長が場当たり的にボーナスの合意をしていたり、近似の人手不足の労働環境下において社長が特定の従業員の引き留めのためにほかの従業員とは異なった給与体系の合意をしていることが多いのである。

事業承継M&Aにおいて、買主は、デューデリジェンスの過程で、その通常と異なった労働条件について調査を行うのであるが、社長が場当たり的に特別な労働条件について合意していた場合などは、必ずしもすべてを解明できるとも限らない。

このような特別な労働条件は、買主の想定外の事由により従業員に対して給与や賞与・退職金が支給されるようでは、買主からすると、それは対象会社の企業価値の毀損であり、株式譲渡価格の前提を崩す事由である。

したがって、事業承継M&Aにおいては、株式譲渡契約書において、従業員に対する給与や賞与・退職金の支給その他の待遇などについて、想定外の事由が存在しないことについて、売主に表明保証して頂く必要がある。

(3) 従業員の退職金に関して

また、事業承継M&Aにおいては、事業承継M&Aに伴い、従業員が特別に収益を得られるようになっていることもある。すなわち、事業承継M&Aにより対象会社が売却され、対象会社の従業員を解雇などする場合、その従業員の解雇などに伴い、その従業員に対して多額の退職金その他の金銭などが支給されることとされていることがあるのである。いわゆるゴールデン・パラシュート(黄金のパラシュート(多額の退職金)をもらって従業員が会社を退職することにより会社の企業価値を毀損すること)である。

事業承継M&Aに伴い、対象会社からそのような想定外の退職金等の資金の流出が行われるのであれば、買主からすると、それは対象会社の企業価値の毀損であり、株式譲渡価格の前提を崩す事由である。

そこで、事業承継M&Aにおいては、株式譲渡契約書において、その事業承継M&Aが原因で、従業員に就業規則、給与規定、退職金規程で想定していない多額の退職金等の支給が行われることがないことについて、売主に表明保証して頂く必要がある。

(4) 重要な従業員(キーマン)に関して

次に、(2)については、重要な従業員(キーマン)に関する表明保証である。

事業承継M&Aの対象会社は中小企業、零細企業であり、その事業の運営は、従業員の中でも特定の者、すなわち、重要な従業員(キーマン)が大きな役割を占めていることが多い。中小企業、零細企業においては、事業の運営のノウハウやネットワークは、必ずしも社内で共有されておらず、重要な従業員(キーマン)に固有のものとなっていたり、暗黙知のままになっていることが多く、この重要な従業員(キーマン)が退職してしまうと、対象会社の事業の運営が円滑に進まなかったり、そもそもその事業が継続困難になったり、少なくとも重要な従業員(キーマン)の補充のため複数の従業員が必要になるなど大幅なコスト増要因になることが多く、すわわち、対象会社の企業価値を毀損することとなるのである。

この問題については、事業承継M&Aの実行後、買主主導で、その重要な従業員(キーマン)が保有するノウハウやネットワークを組織共有化する組織改革を行う必要があるものの、事業承継M&Aを、対象会社の企業価値を毀損することなく無事に完遂するためには、まずは、この重要な従業員(キーマン)が、対象会社を退職しないことが前提となる。

したがって、事業承継M&Aにおいては、株式譲渡契約書において、重要な従業員(キーマン)が対象会社を退職する予定ではないことについて、売主に表明保証して頂く必要がある。

■■■別紙1第3第9号■■■■■■■■■■

9.           労使紛争等の不存在

(1)対象会社には、重大な労働争議は存在せず、また、労働組合は存在しない。(2)従業員に関して、支払期限が到来した未払賃金・退職金その他の報酬、又は社会保険料は存在しない。(3)対象会社は、労働関連法規(労働基準法及び労働者災害補償保険法を含むがこれに限らない)を、遵守している。

第9号(1)は、労使紛争等の不存在に関する表明保証である。

■■■別紙1第3第10号■■■■■■■■■■

10.         年金及び保険等

対象会社は、社会保険料その他の保険料・年金掛金等について、期限までに適法に支払われている。対象会社は、加入する社会保険組合や年金基に積立不足など存在せず、保険料・年金掛金等について、特別掛金他の追加資金拠出義務が発生することもない。

第10号は、年金及び保険等に関する表明保証である。

⇒M&Aトラブル・表明保証違反・コベナンツ違反・M&Aの損害を解決する方法を見る!

お問い合わせ   

この記事に関連するお問い合わせは、弁護士法人M&A総合法律事務所にいつにてもお問い合わせください。ご不明な点等ございましたら、いつにてもお問い合わせいただけましたら幸いです。

    ■対象金額目安

    ■弁護士相談料【必須】

    ■アンケート

    >お気軽にお問い合わせください!!

    お気軽にお問い合わせください!!

    M&A相談・株式譲渡契約書・事業譲渡契約書・会社分割契約書・デューデリジェンスDD・表明保証違反・損害賠償請求・M&A裁判訴訟紛争トラブル対応に特化した弁護士法人M&A総合法律事務所が、全力でご協力いたします!!

    CTR IMG