第三者責任不存在の表明保証|株式譲渡契約書を逐条解説!

  • 2019年5月13日
  • 2024年11月6日
  • M&A

株式譲渡契約書の逐条解説 第三者責任の表明保証

弁護士法人M&A総合法律事務所のM&A契約書類のフォーマットはメガバンクや大手M&A会社においても、頻繁に使用されています。
ここに弁護士法人M&A総合法律事務所の株式譲渡契約書のフォーマットを掲載しています。
M&Aを検討中の経営者の皆様でしたらご自由にご利用いただいて問題ございません。
ただし、M&A案件は個別具体的であり、このまま使用すると事故が起きるものと思われ、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。
また、このフォーマットは弁護士法人M&A総合法律事務所のフォーマットのうちもっとも簡潔化させたフォーマットですので、実際のM&A取引において、これより内容の薄いDRAFTが出てきた場合は、なにか重要な欠落があると考えてよいと思われますので、やはり、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。

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なお、詳細な解説につきましては、以下の弊所書籍「事業承継M&Aの実務」をご覧ください。

株式譲渡契約書の逐条解説 第三者責任の表明保証

■■■別紙1第3第11号■■■■■■■■■■

11.         製造物責任

対象会社が顧客に提供した製品に関して、瑕疵担保責任、瑕疵修補責任、製造物責任及びその他名称の如何を問わずこれらに類する責任並びにそれらの原因となるべき事由は、存在していない。

第11号は、製造物責任の不存在に関する表明保証である。

製造物責任の不存在に関する表明保証について

事業承継M&Aでは、対象会社が製造業である場合も多く、製造物に欠陥があり、その結果、第三者に損害を与えた場合、その責任は非常に大きなものとなる。また、対象会社が製造業でなくても、製品を仕入れ・販売している場合、その製品に欠陥があった場合、多くの取引先や消費者に損害を与えることとなる。

特に、対象会社が取り扱う製品が部品であり、最終製品の中の非常に小さなもの、重要性の乏しいもの、金額的に小さいものであったとしても、その製品に欠陥があり、最終的に、最終製品に欠陥が生じてしまった場合、その最終製品をひとつひとつ分解して対象会社の製品である部品を呼応関するわけにもゆかないことが多く、その最終製品を廃棄する必要が生じる可能性もあり、その場合の取引先の損害は著しく大きなものになる可能性がある。

すなわち、製造物責任は、対象会社の製品の欠陥の程度と比べて、非常に大きなものになる可能性があるのである。

そういう意味でも、事業承継M&Aにおいて、製造物責任の存否は、非常に重要である。

製造物に関する責任といっても、欠陥のある製品を提供したということで、一般的には、取引先に対する債務不履行責任・瑕疵担保責任・瑕疵収保責任などが発生することが多いものの、これらの責任は、「故意・過失」があった場合に直接の取引先に対して損害賠償責任を負うものである。これに対して、製造物責任法上の製造物責任のように、製造物の欠陥により他人に損害を与えた場合は、「無過失」の場合であっても損害賠償責任を負うとするものであり、不法行為責任や製造物責任法上の製造物責任は、直接の取引先のみならず、直接の取引関係のない最終消費者などに対しても責任を負うものとされており、対象会社が、仮に製品に欠陥を有していた場合の責任は、かなり広くかつ高額になる可能性があるのである。

したがって、事業承継M&Aにおいては、買主としては、売主に、製造物責任の不存在について、表明保証して頂く必要がある。

製造物責任を転嫁できているか否かについて

なお、対象会社に製造物責任が存在するからと言っても、必ずしも対象会社が最終的に責任を負うわけではない。

製造業や製造業でなくても、今日のバリューチェーンは複雑に繋がっている。

例えば、対象会社が、製造業者から欠陥製品を仕入れてそれを使用して中間製品を製造して取引先に卸している場合、対象会社としては結果として欠陥製品を製造しているわけであるため最終的に責任を負いかねないものの、その欠陥の原因は、川上の製造業者が製造した欠陥製品であり、対象会社がその川上の製造業者に対して製造物責任を転嫁できるような取引契約になっているのであれば、対象会社が取引先や最終消費者から製造物責任を追及されたとしても、その川上の製造業者に対して製造物責任を追及することにより、自己の責任を最小化することが可能である。

また、対象会社が取引先との取引契約の中で製造物責任を負担しない旨の契約になっているのであれば、対象会社は取引先に対して製造物責任を負わない結果、製造物責任法上の製造物責任や不法行為責任を追及される可能性は残るものの、自己の責任を最小化できていると評価することができる。

すなわち、全体としては、川下の取引先や最終消費者から製造物責任を追及されたとしても、川上の製造業者へ製造物責任を転嫁できる契約になっているのであれば、対象会社は実質的に製造物責任のリスクを負っていないものと評価することができるのである。

そのためには、このような川上の製造業者や川下の取引先や最終消費者との取引契約は、製造物責任に関する規定としては、全く同じ規定が入っている必要がある。すなわち、全く同じ規定が入っているからこそ、川下の取引先や最終消費者から製造物責任を、川上の製造業者へ転嫁できるのである。この川上の製造業者や川下の取引先や最終消費者との取引契約における製造物責任の規定が全くの「パラレル」になっており、製造物責任のリスクが全くの「パススルー」になっているケースは、事業承継M&Aにおける対象会社においては、ほとんど存在せず、すくなくとも他所なりとも異なっているか、大きく異なっている場合ばかりであり、そのような場合は、何らかの製造物責任(の一部)が対象会社に残ってしまうのである。

製造物責任保険に関して

また、対象会社に製造物責任が残ってしまった場合、対象会社としては、適切な製造物責任保険に加入している必要がある。

製造物責任保険では、通常、対象会社の想定される販売量や推定される製造物責任の損害額などに基づき保険会社のコンサルティングの下、適切な製造物責任が設計され、対象会社としてはそういう保険に加入していることが多い。また、保険契約上、保険期間を徒過してしまうとその期間に生じた損害は保険の対象にならないため、保険契約を失念することなく継続していく必要がある。実際には、保険会社がそのような契約更新を失念することなどありえないものと思われるが、対象会社としても、留意して保険を継続しておく必要がある。

■■■別紙1第3第12号■■■■■■■■■■

12.         保険

対象会社は、事業の遂行に必要な保険に加入しており、当該保険に係る保険料の支払その他の義務を、全て適切に履行している。

第12号は、保険の存在に関する表明保証である。

中小企業、零細企業の事業においては、非常に多くのリスクに取り囲まれており、最終的にヘッジできないリスクも存在する。そのようなリスクは、何らかの方法でカバーするか、又は損害保険などでカバーすることが一般的である。

また、中小企業、零細企業の事業において、今日では、保険会社から非常に幅広い保険商品が販売されており、通常、中小企業、零細企業の事業であれば加入しているような保険であれば、事業承継M&Aの対象会社においても加入していることが、通常期待されるところであり、事業承継M&Aの買主においても、当然、対象会社は、一般的な会社が加入している程度の保険には加入していることを前提として、事業承継M&Aに取り組んでいる。

他方、もし仮に、対象会社がそのような保険に加入しておらず、もし仮に何らかの保険事故が発生した場合、対象会社の企業価値は毀損し、事業承継M&Aの買主の想定する株式譲渡価格はその前提を失うこととなる。

そこで、事業承継M&Aにおいては、売主に、対象会社が必要な保険に加入していることに関する表明保証をして頂く必要がある。

なお、本号において、主として検討されるのは損害保険である。

事業承継M&Aにおいて、よく検出される保険は、火災保険、動産保険、賠償責任保険、製造物責任保険などである。

対象会社が事業に供する資産に付保する保険や対象会社が晒されている損害賠償責任の負担に対応するための保険などが存在する。対象会社においては、事業に供する資産に保険事故が生じても、損害賠償請求されるなどの保険事故が生じても、事業の円滑な運営は妨げられ、対象会社の企業価値が毀損されるのである。

いずれの保険も、通常、対象会社の事業において適切な保険に加入している必要があるものの、多くのケースでは、保険会社のコンサルティングの下、適切な保険商品が設計され、対象会社としてはそういう保険に加入していることが多く、事業承継M&Aの対象会社にも、その通常程度の保険に加入していることが期待される。

また、保険契約上、保険期間を徒過してしまうとその期間に生じた損害は保険の対象にならないため、保険契約を失念することなく継続していく必要がある。この点、保険会社の営業マンの営業は熾烈なところがあり、保険会社がそのような契約更新を失念することなどありえないものと思われるが、対象会社としても、留意して保険を継続しておく必要がある。

■■■別紙1第3第13号■■■■■■■■■■

13.         環境

対象会社は、環境問題に関する法令等の重大な違反はなく、行政機関等による調査手続、クレーム、及び損害賠償等の重大な責任も存在せず、それらが発生する原因となる事実も存在しない。

第13号は、環境問題の不存在に関する表明保証である。

環境問題の不存在に関する表明保証について

今日では、対象会社の事業に及ぼす環境問題のウェイトは大きく、対象会社に重要な環境問題が発覚した場合は、その金銭的負担の大きさから、事業承継M&Aが取り止め(ディールブレーク)になることもまま存在する。

すなわち、事業承継M&Aの対象会社としては、製造業であることも多く、そのような場合、製造の過程で産出される廃棄物や有害物質をどのように処理していたのか、取り扱っていたのかによっては、工場の敷地などの土壌汚染の可能性が高く、地下水などの水質汚濁も発生している可能性も存在する。特に、土壌汚染や水質汚濁が存在した場合、対象会社がその発生源であった場合などは、対象会社にその撤去義務が課されることとなるが、汚染物質撤去に係る費用がとかく多額になりがちである。

また、製造業や不動産業においては、工場や建物において、アスベストを使用していたり、PCBなどを使用するものを保管していたりすることもある。アスベストは、飛散防止の固定化費用や撤去費用も高額になり、また、PCBなどにおいては無害化処理費用が多額であるのみならず、自然環境に流出しないよう専門的な処理をして保管することが求められており、その保管費用も高額になる。

すなわち、対象会社に環境問題が存在していた場合、対象会社の企業価値を毀損する大きな原因になり、その大きさ故に、事後的に、売主から、損失を賠償又は補償してもらうだけでは、買主の損害が原状回復すらできない可能性もあり、事業承継M&Aが取り止め(ディールブレーク)になることもまま存在するのである。

したがって、事業承継M&Aにおいては、買主としては、売主に、対象会社に環境問題が存在しないことについて表明保証をして頂く必要がある。

環境デューデリジェンス(DD)について

なお、M&Aにおいて、このような、土壌汚染や水質汚濁などの可能性を認識した場合、専門の業者に依頼して環境調査をしてもらうことが多い。すなわち、そのような場合に、直ちに、全面的な環境調査を依頼することは、その環境調査自体、非常に費用も高額であることから、行わず、一次調査(書面調査・聞き取り調査など)を行い、その結果、環境汚染の可能性が高い場合、二次調査(初期的現地調査)を行い、その結果、環境汚染の可能性が高い場合、三次調査(採掘調査)を行うとするなど、段階的に調査を行うことが多い。

環境デューデリジェンス(DD)を実施しない場合

また、事業承継M&Aにおいては、環境問題の調査をそもそも行わないことも多い。対象会社の敷地において、事業承継M&A後においても、引き続き、対象会社が、同じ事業を継続するのであり、そうである以上、環境問題の存否に係らず、特段の問題もなく事業を継続することが可能であるからである。すなわち、一般の不動産取引のように、工場を売却し、そこを更地化して、マンションを建築するなどの取引とは異なり、環境問題があった場合、買主がマンションを建築できなくなってしまうというわけではないのである。

ただ、勿論、対象会社が、当面、事業を継続しようとしても、事業に行き詰まり廃業することはあり、その場合、環境問題を解決することなく、対象会社の敷地などを売却できなくなってしまうリスクは残ることとなる。

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