中小企業の後継者問題に絡めたニュースなどで「M&A」という言葉がよくクローズアップされるようになりました。
M&Aとは、会社の合併や買収のことです。合併や買収にはいろいろな手法があり、そのすべての手法をまとめてM&Aと呼びます。
この記事では、M&Aの動向や件数などをM&A弁護士が解説します。M&Aを検討している中小企業の経営者は、決断の際の参考になさってください。
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M&Aの動向:中小企業が抱える3つの課題
日本の中小企業は3つの課題を抱えていると指摘されています。
中小企業が抱える課題の解決策のひとつがM&Aです。中小企業が課題を解決しようと動くと、M&Aの動向にも影響を与えます。
M&Aの動向を見るための基礎知識として、簡単に中小企業が抱える3つの課題を知っておきましょう。
中小企業が抱える3つの課題は次の通りです。
- 中小企業の後継者不足の課題
- 中小企業の働き手不足の課題
- 会社施設や設備への投資の課題
中小企業の後継者不足はニュースなどでも度々取り上げられています。後継者問題を抱えている中小企業は全体の約66%と、高い数値になっています。
中小企業の経営者が高齢になるなどの事情から経営を続けられず、廃業に追い込まれるケースもあるのです。また、少子高齢化の影響により、働き手の不足も指摘されています。
自社の抱える会社設備が老朽化していても、今後の先行き不安から設備投資に踏み切れないという課題もあります。加えて、新しい業界に打って出ようと思っても、同じく先行き不透明なところがあるため、投資に踏み出せない中小企業もあるのです。
M&Aにはいろいろな手法があるため、それぞれの中小企業の抱える事情やニーズにあわせて手法を選ぶことで、中小企業が抱える課題を解決可能です。経済産業省などもガイドラインを策定し、M&Aを推進しています。
M&Aの動向:増加傾向!
もともと日本はM&Aにマイナスの印象を抱いているケースが少なくありませんでした。
M&Aとは合併や買収の総称です。合併は自社が飲み込まれるような印象があり、よく思わない経営者がいました。買収も同じで、買収には会社乗っ取りのような印象を持っている経営者がいます。
しかし、それはあくまで印象の話です。M&Aは必ず強制的かつ敵対的におこなわれるわけではありません。
日本のM&Aにおいては、買う側と売る側の会社、そして合併する会社同士が自社の課題解決に向けて話し合い、適切なM&A手法で解決をはかるケースがほとんどです。海外のドラマのように、敵対的な会社の乗っ取りケースは稀になっています。
日本政府も中小企業が抱える課題解決のためにM&Aを活用することを推奨しているため、M&Aの印象も少しずつ変化を見せています。中小企業でもM&Aは積極的に使われており、件数も増加傾向にあるのが現状です。
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M&A全体の件数の動向
日本企業が関わるM&Aの件数は、年々増えています。2019年には4,000件を突破し、4,088件にも上りました。前年比で約6%の増加になり、3年連続M&A件数の最多を更新し続けている状況です。
M&Aが増加しはじめたのは、2000年代になってからです。
1990年代までの日本のM&A件数は、年間500~1,000件ほどでした。しかし、2,000年代になるとM&Aの件数が増加し、2008年のリーマンショックの前までは年間2,700件ほどのM&Aがおこなわれていました。
リーマンショックの影響でM&Aは一時的に件数を減らしましたが、近年は毎年増加しており、最多を更新し続けているという結果です。
なお、2020年も四半期で1,000件ものM&Aが成立している状況ですが、新型コロナの影響が懸念されるため、2019年までと単純に比較して件数の増減が判断できない状況になっています。
四半期で1,000件だと、単純計算で年間4,000件です。単純に比較することはできませんが、コロナを抜きにして考えると、2019年と同じくらいか、それ以上になっていたのではないでしょうか。
M&A件数が増加している理由
M&Aの件数が増加している理由はふたつあります。
- 中小企業が後継者不足などの問題解決にM&Aを使っているから
- 大企業が海外進出する際の足がかりとしてM&Aを使っているから
中小企業は後継者不足や人手不足などの課題を抱えているとお話ししました。M&Aを使うことにより後継者不足や人手不足など、中小企業の課題解決に繋がります。
たとえば、高齢の中小企業経営者が、後継者がいないことを悩んでいたとします。このままでは会社の継ぎ手がいないため、廃業するしかありません。しかし、M&Aを使って自社を引き継いでくれる買い手を見つければ、後継者問題は解決します。
人手不足や他業種への参入などもM&Aを使えば解決可能です。会社設備や技術についても、会社を買ったり売ったり、合併するなど適切な方法を使えば、事情にあわせて解決できます。
後継者問題や人手不足などに直面していない大企業の場合も、M&Aを使うことにメリットがあります。
たとえば、海外に日本の大企業が打って出る場合、自社だけでおこなえば、海外に拠点や取引ルートを築くところからはじめなければいけません。しかし、海外や特定の国に強い基盤や取引ルートを持つ会社をM&Aで買収すれば、その会社の持つ取引ルートや基盤、拠点などを手に入れることが可能です。大企業が海外に打って出るときも、M&Aは有効な方法になります。
以上のような理由から、日本企業のM&A件数は増加しているのです。
M&A全体の金額の動向!
M&Aの金額は、2019年で約18兆円という結果です。ただ、2018年と2019年を比較すれば、M&A全体の金額は低くなっています。2018年が数千億を超える大企業のM&Aがあったため、2018年は金額が大きくなっているのです。
2018年の大型M&A案件としては、武田薬品が海外企業とおこなった約7兆円の案件などが有名です。日本企業としては最大規模の案件としてネットでも大きく取り上げられました。
2019年は2018年よりM&A件数自体は多く、金額は少ないという結果です。大型案件になると金額も数千万から兆円になるため、金額の動向は大型案件の有無によってかなり変わってきます。
最後に
M&Aは年々増加傾向にあり、ここ3年は毎年件数を更新している状況です。
M&Aはかつてマイナスのイメージがありました。ですが、近年は政府が推進していることや、中小企業などの問題解決に使われることから、印象がかなり変わってきています。
後継者や人手不足で悩んでいる中小企業の経営者は、この機会にM&Aを検討してみてはいかがでしょう。