取締役の辞任届に関する商業登記規則の改正

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取締役の辞任届の取扱いに関するメインのページです。本ページは、商業登記規則の改正により押印の要否が変わった点を、M&Aの決済の書類の整え方とあわせてご説明します。議事録の押印は別のページをご参照ください。

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本記事は、株式譲渡によるM&Aのクロージングで、売主側の役員の辞任届を準備するご担当者の方に向けたものです。辞任届を受け取る買主側のご担当者の方にもお読みいただけます。

登記所に印鑑を提出している代表取締役の辞任届には、会社実印を押印するか、個人の実印を押印して印鑑証明書を添付する必要があり、その他の取締役及び監査役の辞任届は認印で足ります。また、辞任により役員の員数を欠くと辞任の登記ができないため、新任役員の就任と同じ日に辞任させる日程の管理が必要です。

取締役の辞任に伴う登記手続を進めている担当者の方が、商業登記規則の改正によって辞任届の取扱いがどう変わったのかが分からず悩んでいる場面を想定しています。

改正の内容を把握しないまま従来どおりの書類のみで登記申請を行うと、申請が受理されず、手続がやり直しになるおそれがあります。

そこで本記事では、取締役の辞任届に関する商業登記規則の改正の内容について説明します。

取締役の辞任届に関する商業登記規則の改正について

平成27年2月27日に施行された商業登記規則の改正により、登記所に印鑑を提出している代表取締役等の辞任による変更の登記の申請書には、当該代表取締役等が辞任を証する書面に押印した印鑑につき市区町村長が作成した証明書を添付しなければならないこととされました。ただし、当該印鑑が登記所に提出している印鑑(いわゆる会社実印)と同一であるときは、印鑑証明書の添付を要しません(商業登記規則第61条第8項)。

代表取締役の「辞任届」について、「会社の実印」ではなく、代表取締役「個人の実印」と「個人の印鑑証明書の添付」でも大丈夫です。

そこで、M&A株式譲渡のクロージングに際しては、クロージング書類として、単に「役員の辞任届」とするのではなく、①代表取締役については、「辞任届(住所記載・会社実印押印)及び会社の印鑑証明書」の引渡を求める必要があります。

なお、その他の取締役・監査役の「辞任届」については、個人の認印でも可であり、添付書類も不要で、取り扱いは変わりません。

近時、ほとんどの会社において、取締役・監査役が就任する際に、就任承諾書に実印を押印するものと思いますが、その場合であっても、取締役・監査役の「辞任届」については、実印での押印は必要ありません。

東京法務局の担当官によると、すなわち、「就任承諾書に実印を押印したとしても、辞任の際は、認印でかまいません。なぜなら、辞任の際に押印すべき印鑑の種類に規定がないから」とのことです。

また、同東京法務局の担当官によると、「役員就任の際は、就任承諾書について、取締役会非設置会社など会社の形態によって実印を押印する必要がある場合があります(取締役会設置会社の場合は認印でよい)ので、特に注意をしてくださいとのことでした。

商業登記規則第61条第8項

代表取締役若しくは代表執行役又は取締役若しくは執行役(登記所に印鑑を提出した者に限る。以下この項において「代表取締役等」という。)の辞任による変更の登記の申請書には、当該代表取締役等が辞任を証する書面に押印した印鑑につき市区町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と当該代表取締役等が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。

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整理 辞任届に求められる押印

登記所に印鑑を提出している代表取締役等が辞任する場合、辞任届については次のいずれかによることとなります。

第一に、登記所に提出している印鑑(会社実印)を押印する方法です。この場合、印鑑証明書の添付を要しません。

第二に、個人の実印を押印し、市区町村長が作成した印鑑証明書を添付する方法です。

他方、登記所に印鑑を提出していない取締役及び監査役の辞任届については、商業登記規則第61条第8項の適用がありませんので、認印による押印で足り、印鑑証明書の添付も要しません。

M&Aのクロージング書類としての整え方

株式譲渡によるM&Aでは、クロージングと同時に売主側の役員が全員辞任することが通例です。この場面で、クロージング書類の一覧に「役員の辞任届」とのみ記載していると、代表取締役の辞任届について押印及び添付書類の不足が生じます。

実務上は、次のとおり区別して準備を求めるのが確実です。

代表取締役については、辞任届に会社実印を押印したもの及び会社の印鑑証明書。又は、辞任届に個人の実印を押印したもの及び当該個人の印鑑証明書。

その他の取締役及び監査役については、辞任届(認印で足ります)。

なお、就任の場面と辞任の場面とでは求められる押印が異なります。就任承諾書については、取締役会を設置していない株式会社の取締役、及び取締役会設置会社の代表取締役について、市区町村長が作成した印鑑証明書の添付を要する場合があります(商業登記規則第61条第4項及び第5項)。再任の場合は要しません。

辞任の効力と登記の関係

辞任は、会社に対する一方的な意思表示によって効力を生じます。もっとも、辞任により法律又は定款で定めた役員の員数を欠くこととなる場合には、辞任した役員は、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有します(会社法第346条第1項)。この場合、辞任の登記のみを申請することはできません。

M&Aのクロージングにおいては、旧役員の辞任と新役員の就任とを同一の日に行い、員数を欠く状態が生じないように設計することが通例です。売主側の役員が先に辞任し、買主側の役員の就任が遅れると、この規律により辞任の登記ができない事態が生じますので、日程の管理が必要です。

また、登記の申請は、変更が生じた日から2週間以内に行わなければなりません(会社法第915条第1項)。この期間を徒過すると過料の対象となり得ます。

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執筆者

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会所属 登録番号26775)

長島・大野・常松法律事務所に在籍の後、慶應義塾大学ビジネス・スクール及びペンシルベニア大学ウォートン校に留学し、ファイナンス理論並びにM&A及び不動産を専攻いたしました。不動産投資信託の上場案件に関与し、平成23年には最高裁判所において株式買取請求権に関する裁判において逆転判決を得ております。主として取り扱う分野は、M&A、株式買取請求権、非上場株式の価格の決定、企業価値評価、事業承継及び企業法務であります。詳しくは執筆者紹介を御覧ください。

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