M&Aの流れ!

  • 2020年2月19日
  • 2024年10月8日
  • M&A

実際にM&Aを行う際には、どのような流れで行われるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

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M&Aの流れ(売り手側)

事前準備

M&Aの売り手側は、会社や事業を譲渡するという非常に重要な決断をすることになります。どうしてM&Aをするのか、その目的は何なのか、を明確にしておきましょう。そしてその選択肢は本当に間違っていないか、冷静に判断出来ているかを検討するには、第三者の視点での意見を受けられるM&Aアドバイザーに相談することが望ましいと言われています。ここではM&Aの成立の可否や売却価格の目安、メリットとデメリット、買い手側の選定などを相談します。

M&Aアドバイザーは単なる仲介業務や専門領域のサポートだけでなく、経済状況や市場の調査、必要書類の草案作成、M&Aの候補先企業探し、交渉の調整、スケジュール管理などを総合的にサポートしてくれます。これを自社で行うと大変な負担になりますから、M&Aアドバイザーを利用するケースが多いのです。

M&Aアドバイザーとは長期間にわたって重要な業務を共にすることになりますから、知識や経験の有無はもちろん、しっかりと自社に寄り添ってくれる信頼のおける相手を選びましょう。

M&Aアドバイザーを依頼する先には、金融機関、M&A仲介会社、会計・税理士事務所、弁護士事務所、ファイナンシャルプランナーといったものがあります。

金融機関の場合は、融資を受けている銀行であれば自社の情報は詳細に分かっていますし、銀行の取引先から相手を紹介してもらえるというメリットもあります。ただ、取引のない企業の情報は弱い、M&Aの結果よりも融資の方に目を向けられやすいという点はデメリットでしょう。また、地銀ではM&Aアドバイザー業務を行っていない場合もあります。

M&A仲介会社は、文字どおり買い手企業と売り手企業の間に入ってM&Aを仲介します。手数料も両者から受け取るため公平ですし、M&Aすべての段階に関わってくれるので交渉がスムーズに進みやすいというメリットがあります。担当アドバイザーが経験豊富か、自社の業界案件を担当した事があるかなどを確認しておくといいでしょう。

公認会計士や税理士で付き合いのある事務所があれば、M&Aでも役に立ってくれます。特に事業承継では、相続性などの関係も安心して任せられるでしょう。自社の資産状況を詳しく知ってもらえていることも、メリットの一つです。ただ、M&Aの知識については事務所や担当者によって大きな差がありますから、経験や実績をしっかり確認してから選択肢の一つとして考えましょう。

弁護士事務所では、今のところ大手事務所が大規模なものを取り扱うことがほとんどですが、今後は中小弁護士事務所もM&Aアドバイザー業務に参入することが予想されています。実際に、事業承継をビジネスチャンスと見てM&A事業を受けている中小弁護士事務所も出てきているのです。法律的な実務やトラブルに迅速に対応してくれるというメリットがありますが、やはりM&Aの経験の確認が大事になってくるでしょう。

ファイナンシャルプランナーの場合は、M&Aそのものを遂行できる人は多くないので、M&Aによって生じる個人資産について相談をするという形になります。お金の問題に幅広く対応していますから、並列的に依頼するのもいいでしょう。

M&Aアドバイザーとの秘密保持契約の締結

M&Aアドバイザーを選定したら、まず秘密保持契約を結びます。M&Aを進めるにあたって、どうしても社外秘の秘密情報をM&Aアドバイザーに開示する必要が出てきますが、万一その情報が漏洩してしまった場合のルールを決めてリスクヘッジを行う必要があるのです。

特に売り手側では、M&Aを行おうとしていることが従業員や取引先、銀行などに知られてしまうと様々な弊害が出てくる恐れがあります。従業員や取引先の不安を煽ることになる場合もありますし、銀行からの融資を引き上げられる恐れもあるのです。そういったことを避けるために、M&Aの実務に進む前に秘密保持契約を締結しておきます。

自社の分析

次に、M&Aアドバイザーとの面談を基に提案資料を作成していきます。そのために、決算書や企業概要書などを用意します。これは買収する側の企業に条件を提示する際に必要になりますが、M&Aアドバイザーに相談しながら会社の全体像を正確に把握できる資料を用意しましょう。この資料は買収する企業を探す時に活用されます。また、ここでM&Aの方向性や将来の目標を明確にしていきます。

アドバイザリー契約の締結

M&Aの方向性が決まったら、M&Aアドバイザーが属するM&A仲介会社と仲介業務を依頼するアドバイザリー契約を結びます。アドバイザリー契約とは、M&Aの買い手企業を探す際に仲介会社からアドバイスや手続きの補助を受けることを目的として締結する契約のことです。

M&Aでは売り手側と買い手側の企業で利害が対立することもあるので別の仲介会社と契約するのが原則ですが、中小企業の場合は一つの仲介会社が双方と契約する場合もあります。前者をアドバイザリー方式、後者を仲介方式と呼びます。

アドバイザリー方式では、仲介会社がそれぞれの担当顧客の利益を最大化するために相手企業の選定や譲渡価格といった条件面を調整しますが、仲介方式では仲介会社は中立で、M&Aの成立までお互いのニーズを把握し、利益のバランスを考えて行われます。

アドバイザリー契約には、依頼したM&A仲介会社とのみ契約を行う「専任契約」と、複数のM&A仲介会社と契約する「非専任契約」があります。

専任契約では情報漏洩のリスクが軽減できる、買い手側の企業に複数のM&A仲介会社から売り手企業として紹介されることで経営難を推測されて忌避されてしまうことを避けられる、一社とのやり取りで済むので負担が少ない、といった三つのメリットがあります。

それに対して非専任契約では、複数のM&A仲介会社から買い手側の候補先起業を紹介されるのでより良い相手を見つけられる可能性が高まる、という点がメリットに挙げられます。

アドバイザリー契約では、M&Aアドバイザーの業務内容・範囲、報酬、面積等に関連する事項などを規定します。

企業価値評価の実施と企業概要書の作成

会社概要資料や決算資料、資金繰り表、事業計画書などの資料やその企業の競合優位性などを総合的に評価し、客観的な企業価値を算出するために企業価値評価を行います。この評価結果が、譲渡価格を決定する土台となります。

中小企業のM&Aでは、「時価純資産価格法」や「EBITDAマルチプル法」などと呼ばれる手法で企業株価評価を行うことが一般的で、これに無形資産であるのれん代を上乗せして実際の譲渡価格が決まります。

企業概要書は、業界の環境や会社概要、事業内容、財務状況、自社の強みや弱みといったものをまとめたものです。これをM&Aアドバイザーと作成していきますが、これは買い手企業がM&Aの可否の判断材料とするものになりますから非常に大切な資料と言えます。

買い手へのアプローチ

次に譲渡先になりそうな企業をリストアップしていき、条件に合う候補を絞り込みます。M&Aアドバイザーが売り手企業の希望条件や買い手企業の事業内容、財務状況、企業規模などから判断し、ノンネームシートを開示していきます。ノンネームシートとは自社を特定できない範囲でM&Aを検討する際に必要な情報をまとめたものです。ここでも情報漏洩を避けるために細心の注意を払います。

そうしてノンネームシートを見て興味を持った買収希望企業から詳細な情報を求められた場合に企業概要書を提示しますが、これをネームクリアと言います。ネームクリアの前にその企業と秘密保持契約を締結します。この段階で公開する情報と公開しない情報を、M&Aアドバイザーと明確にしておきましょう。

条件交渉

M&Aの候補となる企業が絞られてきたら、まずは経営者同士でトップ面談を行います。ここではお互いの経営に対する価値観やビジョン、譲渡後の方向性や将来性といった大まかな部分を話し合い、お互いに対する信頼や理解を醸成します。ここで見栄を張ったり不利な情報を隠したりすると信頼関係を築くことはできませんから、M&Aを成約させるためにも真摯に接することが大切です。売り手側企業と買い手側企業の経営者同士が顔を合わせて話をするのは、基本的な流れの中ではこの一度だけだと考えてください。

トップ面談によってM&Aを行いたい企業が絞られたら、条件交渉を行います。ここでは経営者や役員、従業員などの処遇や最終契約までの手順、順守されるべき秘密事項や守秘義務について固めていき、その後に細かい条件を詰めていきます。この条件交渉が、M&Aの手続きの中でとても重要な部分となります。

基本合意

条件交渉によってM&Aを行いたい相手となる譲受企業が絞られたら、基本合意を締結します。これはM&Aを行うための仮契約のようなものになります。具体的には買収する側の企業から「意向表明書」を受け取り、それに合意したら「基本合意契約書」を作成する手続きを始めます。

基本合意契約書には、M&Aの買収・売却価格、買収・売却方法、M&Aの時期、独占交渉権の付与などが記載されます。この中でも独占交渉権の付与は、買収する側の企業が他社と競合せずにM&Aを実施するのに必要なものですから、とても重要になります。

この基本合意契約書に両社が同意したら、基本合意契約の手続きが完了します。

デューデリジェンス(DD)(買収監査)

デューデリジェンス(DD)とは、買収する側の公認会計士や弁護士が売り手側の企業の調査を行うことです。これは基本的に買収する側の企業が行いますが、売り手側も情報提供を求められればそれを提示する義務があります。もちろん、ここでも都合の悪い情報を隠したりすると後々トラブルになりますから誠実に対応しましょう。

最終的な条件交渉

デューデリジェンス(DD)等に問題がなければ、「最終譲渡契約書」の締結手続きに進みます。ここでM&Aを実施するか否かの最終決定を行いますが、取締役会や株主総会での承認が必要な場合もあるため、自社内でもその準備を行っておきましょう。

M&A成立

最終譲渡契約書に売り手側、買い手側両者の記名、捺印を行い、それと同時に決済を行ってM&Aが成立しますが、不慮の事態が起こった時に契約を解除できるチェンジオブコントロール条項が含まれている場合は、契約締結から決済までに一定期間が空けられる場合もあります。こうしてM&Aの諸手続きをすべて完了させることを「クロージング」と言います。

最終譲渡契約を締結する成約式において、売り手企業と買い手企業、仲介会社によるセレモニーが行われることもあります。売り手企業の経営者からすれば、ここで肩の荷を降ろしたように感じられるでしょう。

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M&Aの流れ(買い手側)

次に、買い手側からのM&Aの流れを見ていきましょう。

M&Aアドバイザーによる買い手の選定(買い手による検討)

最初の流れとしては、M&Aアドバイザーが買い手企業に対してM&Aの提案を行うことが多くなります。M&Aアドバイザーは売り手の希望に合致する可能性の高い企業に対して、企業を特定できない範囲の情報が掲載されているノンネームシートを用いて提案を行い、感触を探ります。

良い感触が得られた場合、売り手側にネームクリアの確認を行います。これは、買い手側に企業の経営における重要な資料を渡しても良いかを確認することです。

この場合は買い手が受け身になりますが、反対に買収したい企業の条件を登録して売り手を探す場合もあります。

アドバイザリー契約の締結

M&Aアドバイザーの提案、ネームクリアの確認が終わり、双方納得がいくようであれば秘密保持契約とアドバイザリー契約を締結します。

条件交渉

買い手側が買収に前向きになり、双方が契約を進めたいということになるとトップ面談が行われます。そこで互いに納得出来れば、M&Aアドバイザーが間に立って条件の調整を行います。これと並行して、買い手側は「意向表明書」を提出します。

意向表明書は、買い手企業が売り手企業に「譲り受けを具体的に検討したい」という思いを伝える書類になります。意向表明書には、買い手企業の企業概要や考えられるシナジー効果、その時点でのM&Aのスケジュール、譲渡額などが記載されています。ただし、ここでの譲渡額は後のデューデリジェンス(DD)によって調整される事もあります。また、意向表明相はM&Aの交渉をしている企業が自社だけの場合は省略することも少なくありません。

意向表明書には法的拘束力を持たせないことが一般的ですが、その記載内容はM&Aのその後の交渉に活用されますから一方的に撤回されることはほとんどありません。

基本合意

売り手が意向表明書に合意した場合、基本合意契約書を締結します。基本合意契約書には譲渡金額、M&Aの買収・売却方法、実施時期、独占交渉権の付与などが記載されます。

中でも独占交渉権を獲得することは、買い手側にとって基本合意契約書を締結する大きなメリットと言えるでしょう。独占交渉権とは、売り手企業が買い手企業に一定期間「排他的な交渉権」を与えることです。独占交渉権を獲得すると、売り手企業は独占交渉期間中は他の候補先との接触を禁止されます。買い手企業はライバル会社を排斥できるので、とても大きなメリットとなるのです。独占交渉期間は、一般的には2~6か月程度です。

デューデリジェンス(DD)の実施

基本合意契約書が締結されたら、買い手企業は公認会計士や弁護士などによってデューデリジェンス(DD)を行います。このデューデリジェンス(DD)が、買い手企業にとっての最後にして最大の関門といえるでしょう。

デューデリジェンス(DD)は、最終契約に先立って行う売り手企業の将来性や買収後のリスクなどに関する調査です。そのために売り手企業の経営環境や事業内容などの実態を、財務・税務・法務などの観点から調査して資産価値を計ります。この調査によって買い手企業はM&Aの基本的な構想を検討したり、譲渡価格の見直しや問題が見つかった場合の対処方法の取り決めを行ったりといった対応を行います。

また、デューデリジェンス(DD)を行うことでステークホルダーに対してM&Aを行うことのメリットの説明などができるようになります。さらに、デューデリジェンス(DD)によって統合後の作業をスムーズにするための客観的な情報を収集することもできるのです。もちろん、ここで大きな問題が見つかればM&A自体がなくなることもあり得ます。

デューデリジェンス(DD)の作業自体は、中小規模のM&Aであれば数日で行われます。デューデリジェンス(DD)はM&Aが成立するかどうかを決めるほどの重要な調査なので、時間をかけて行うと思われる方も多いでしょう。ですが、売り手企業にとっても買い手企業にとってもスピーディな経営戦略の実施もM&Aのメリットの一つですから、必要な資料を事前に揃えたうえで実際の調査はそれほど時間をかけません。ただデューデリジェンス(DD)の準備には長い時間をかけていますが、これは売り手企業が行います。

デューデリジェンス(DD)の手順は、買い手企業の請求による売り手企業の資料開示、その資料を基にした分析、売り手企業のマネジメント層にヒアリングを行うマネジメントインタビューの三段階になっています。マネジメントインタビューでは、経営者の考え方や企業理念など書面に表れにくい項目を直接質問することで、具体的に買収後のシナジーやリスクを発見します。

デューデリジェンス(DD)の調査項目は、主要なものだけでも事業、財務、税務、法務、人事、ITの6種類と多岐にわたります。

最終譲渡契約書の締結

ここまでの作業が終了し、取締役会や株主総会での承認が得られ、双方ともにM&Aの実行が決定すれば最終的な条件や内容を取り決めた最終譲渡契約書を締結し、クロージングを行います。クロージングには、譲渡対価の決済や株券、会社代表印の引き渡しなどが含まれます。

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