独占取引や独占仕入を強要されたら公正取引委員会に告発しよう!

  • 2021年8月9日
  • 2024年10月8日
  • M&A

大会社が中小企業などと取引するときに「我が社のライバルと取引しないでくださいね」と圧力をかけるケースがあります。

大きな会社と中小企業の取引では、大きな会社の方が優位な立場になり、中小企業の方が弱い立場に置かれます。立場を利用して大きな会社が自社に都合の良い取引を要求するわけです。

このような取引は法律で禁止されている「排他条件付取引」に該当する可能性があります。

排他条件付取引の実例や特約店契約などとの違い、排他条件付取引を要求されたときの対処法について解説します。

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禁止されている「排他条件付取引」とは?

日本には公正な取引を守るための法律「独占禁止法」が定められています。独占禁止法は取引の公平さと自由な意思決定、会社間の自由で公平な競争を守ることが目的に法律です。

独占禁止法では不公正な取引を禁止しています。

たとえば、不当に高い価格で購入し市場操作するような取引や、誇大広告による取引などは公正な取引とはいえません。よって、不公正な取引として禁止されています。排他条件付取引も禁止される不公正な取引のひとつです。

(排他条件付取引)

11 不当に、相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること。

不公正取引とは有利な立場の者(大企業など)が立場の弱い者(中小企業など)に、有利な立場を利用して「他の者(自社の競争相手など)と取引するな」と条件をつける取引になります。

このような取引条件をつけることで自社のライバル企業の取引機会を奪うことや、ライバル企業を排除しようとすることは、とうてい公正な競争や取引とは言えません。ライバル会社側の立場から見れば取引の妨害であり排除です。よって、排他条件付取引(相手を排除する条件を付ける取引)として禁止されています。

排他条件付取引のわかりやすい事例

事例を見るとより排他条件付取引を理解しやすいはずです。実例から排他条件付取引に該当する可能性のあるケースを見てみましょう。

事例①A社(大企業)が立場を利用して契約と取引の制限を求めたケース

A社は自社で製造する部品の改良に悩んでいました。A社は該当部品について老舗であり、業界のシェアもトップになっています。業界シェアは70%です。A社は自社製品である部品を改良できればシェアはさらに伸びるのではないかと考えていました。

A社は部品の改良についてB社に契約を持ちかけます。B社は別業界の中小企業で、契約においてはA社よりも弱い立場でした。そして、A社が求める部品の改良技術はB社しか持っていない技術でもありました。

B社はA社の相談に応じ、部品改良の契約を結ぶつもりでしたが、A社の契約条件を確認して困ってしまいます。A社の契約条件の中に「自社(A社)の競争相手になる会社とは取引しないこと」とあったのです。つまり、A社のライバル会社や業界へ新規参入しA社の競争相手になるような会社には技術提供するなという条件をつけられたのです。

この条件にB社は困ってしまいました。A社の条件をのまないと、大きな会社であるA社に圧力をかけられたり、取引チャンスを逃したりする可能性があります。A社の有利な立場の前には、なかなか「その条件だとちょっと・・・」とは言えません。

A社の契約条件はB社にとって他会社との取引機会を奪うものであり、有利な立場を利用したもので、とうてい公正な取引とは言えないはずです。また、A社のライバル会社や業界に新規参入する会社にとっても不公正な排除と言えるのではないでしょうか。回り回って、消費者にとっても商品の流通や価格という点で不利益になる恐れがあります。

事例②C社(特殊な部品製造販売会社)が競争相手の商品を販売するなと要求したケース

C社は多種類の部品を扱っている大きな企業です。中でもよく知られているのは特殊な部品の製造と販売になります。この特殊部品は製造が難しく、業界では2社しか製造販売していません。C社の他にはD社が扱っているだけでした。

C社は特殊部品の契約に際して取引先の会社に「当社の部品を販売する代わりにD社とは取引するな」「D社と取引するなら当社は特殊部品を販売しない」という条件をつけました。契約している中小企業は特殊部品を売ってもらえないと商品製造に関わるため、渋々承諾するしかありませんでした。

ここで困ったのはD社です。D社は使っている素材の関係で、C社よりやや低い価格で特殊部品を製造販売していました。特殊部品を使っている中小企業に取引を持ちかけると価格に興味を示しながらも、「C社に契約を切られるから取引できない」と言います。C社が「D社と取引すれば特殊部品を売らない」と条件を付けているからです。

結果、D社は業界から締め出されるようなかたちになってしまいました。特殊部品の販売に関してD社は取引先を見つけることすら困難な状況です。

特約店契約や専売店制などは排他条件付取引に該当しないのか

排他条件付取引を簡単に説明すると「他と取引するな」と排除することです。しかしこの排除に似たようなことは、一般的によく行われています。特約店契約や専売店制、一手販売契約、一地域一専売店制などです。

特約店契約などと排他条件付取引は違うのか、ルール違反にならないのかが問題になります。

特約店契約

特約店契約とは、販売店とメーカーが結ぶ契約のことです。販売店はメーカーから卸してもらった商品を特約店として積極的に販売し、メーカーは積極的に商品を納入するという契約になります。

専売店制

専売店制も販売店とメーカーが結ぶ契約になります。特約店契約が契約メーカーの商品を積極的に販売する契約内容であるのに対して、専売店制とはそのメーカーの商品だけをさらに積極的に販売するケースです。メーカー側も自社製品だけを強力に販売し、ライバル社など他社製品の取り扱いをしないという契約のもとで商品を納品します。

手販売契約

一手販売契約とは、いわゆる全量購入契約のことです。取引の際に買主になる側が、販売する商品に関して全量(すべて)を買取ります。すべて買い取るため、他の人や会社、店などに一切商品を販売させないタイプの契約です。

地域一専売店制

メーカー側が一地域につき一店としか取引しない契約です。たとえば各自治体の中の1店としか契約しない場合、他の店が契約したいと言ってきても契約はしません。ひとつの地域につき一店舗だけの契約だからです。メーカー側が商品の供給を続ける限りは基本的に店側もライバル会社とは取引しません。

特約店契約などの内容は排他条件付取引に該当するように見えるはずです。メーカー側と「他の会社と取引するな」「自社製品だけ強く販売する」などの内容の契約を結ぶわけですから。

特約店契約などは排他条件付取引の側面を持っています。しかし、ただちに排他条件付取引として禁止されるわけではありません

上記で説明した特約店契約などは実際によく使われています。たとえば証券会社が証券仲介業者と契約して自社に株式などを発注させることなども特約店契約です。特約店契約が即座に禁止されると、世の中の証券会社は基本的に違反状態になってしまいます。

特約店契約などには販売店や中小企業側のメリットもあります。特約店契約などを結ぶことにより商品が安定供給され、ブランド力を高めることが可能です。販路も強化され、仕入れのコストダウンも期待できることでしょう。

契約を結ぶ販売店や中小企業側にもこのようなメリットがあるわけですから、特約店契約などを即座に排他条件付取引だと判断して禁止すれば、販売店や中小企業側のメリットも失われてしまいます。

排他条件付取引として禁止されるケースもあれば、許容されるケースもあります。ケースバイケースです。特約店契約などを結んでいる会社は排他条件付取引に該当しないだろうというラインを見極めて契約内容を定めているわけです。一定のラインを超えてしまうと、特約店契約などは排他条件付取引になります。

特約店契約や専売店制などが排他条件付取引に該当するケースとは

特約店契約などは一定のラインを超えてしまうと排他条件付取引に該当する可能性があると説明しました。では、どのくらいのラインを超えるとルール違反になる可能性があるのかが問題です。

禁止ラインに触れる可能性があるのは、以下のようなケースになります。

  • 業界の大きな企業(市場シェア50%が目安ライン)のケース
  • 特定の商品シェアがおおむね20%を超えているケース
  • 特約店契約などによりライバル会社が取引先を見つけることが困難になるケース

業界の大きな企業が「ライバル企業と取引するな」と条件をつけてしまうと、競争相手の他企業が取引先を見つけられず困難な状況に追い込まれる可能性があります。業界に新規参入しようとしている会社があっても参入を阻む要素になってしまうはずです。市場シェアが大きい企業が専売店制の契約を結んだ場合は、排他条件付取引として違反に問われる可能性があります。

また、特定の商品シェアが大きい会社が店や中小企業などの他会社との取引を制限するような契約を結んでしまうと、他の会社の商品取販売や契約の機会を潰してしまうため、同じく排他条件付取引として違反に問われる可能性があるのです。

排他条件付取引として違反になるかどうかは、あくまでケースごとに判断されます。商品シェアが20%を超えているからといって一概に違反になるとは断定できません。

あくまで「判断される可能性がある」に留まります。ただ、排他条件付取引としてルール違反になるかどうかは市場シェアや商品シェアの大きさが判断材料として重要です。50%や20%をひとつの目安(ライン)として考えてみてください。

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排他条件付取引など不公正な取引を求められたときの対処法

取引先の企業に独占取引や独占仕入を強要されてしまったらどうすればいいのでしょうか。実際に厳しい条件を付けられてしまった場合にどのような対処をするかが問題です。

不公正な取引を持ちかけられた、あるいは強要されている場合は3つの対処法があります。

取引先に契約内容の変更を求める

他会社と一切取引するな等の条件をつけられて困っている場合は、条件を付けている会社側に取引・契約の内容を変更してくれるようにお願いするという方法があります。取引相手を説得できれば不公正な取引内容で契約を結ばずに済むはずです。

ただ、排他条件付取引に該当するような契約を求められる場合、条件を付けた側の立場が強いため、契約内容の変更や訂正をお願いすることは容易ではありません。「この内容で契約は結べない」「困る」と言える立場なら、最初から困ることなどありません。不公正な取引だと悩む前に相手に伝えていることでしょう。

仮に勇気を出して伝えても、結果的に自社に圧力をかけられて苦しい立場に追い込まれる可能性もあります。対処法としては現実的とは言えません。

公正取引委員会に相談や告発をする

排他条件付取引を強要されたときは公正取引委員会に相談や告発をするという方法もあります。公正取引委員会は違反がないか、公正な取引が行われているか監視する組織ですから、現実に違反の可能性がある場合は相談や告発が可能です。

弁護士に相談して必要な対処をする

中小企業などが強い立場である企業のことで相談や告発をすることには勇気が必要ではないでしょうか。取引相手に知られたら大変だとも思うかもしれません。

相談のタイミングをはかりたい。告発を迅速に行いたい。相談すべきか迷っている。このようなケースでは、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談することで、告発するときはスムーズな対処が可能です。取引の内容について違反ラインなのかどうかを判断するときも弁護士への相談が有効です。

最後に

優位な立場を利用して独占取引や独占仕入などを強要された場合、排他条件付取引として取引のルール違反に該当する可能性があります。

ルールに反するかどうかはケースバイケースで判断されます。仮に違反している場合は公正取引委員会に相談や告発も可能です。

判断に迷う場合や告発の勇気が出ない場合などは、行き詰まって頭を抱えてしまう前に弁護士へと相談することをおすすめします。

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