衝撃的逆転裁判ネタ2(大平ゴルフ事件(仮称))

  • 2017年8月19日
  • 2024年10月9日
  • M&A
訴訟紛争裁判には偽造証拠が蔓延っており、
偽造証拠を発見すれば逆転裁判を実現することができるが、
偽造証拠を発見できなければそのまま完敗することとなる。
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大平ゴルフ事件(仮称)

これも、ある会社支配権争奪裁判でのこと、

被告(弊職Client)と原告(元番頭)との株式の所有をめぐる争いです。

被告(弊職Client)は、創業オーナーの子息で、大平ゴルフの株式を相続している。

創業オーナーはすでに10年くらい前に亡くなっている。

しかし、大平ゴルフは、原告(元番頭)が支配し経営している。

大平ゴルフは、その名前と異なり、貸金業者(ヤミ金)である。

創業オーナーである被告(弊職Client)の父親はかなりの人物であったようだ。

大平ゴルフは貸金業者(ヤミ金)だからいろいろなところに債権を持っており、

被告(弊職Client)の家族もその地位を乱用し、大平ゴルフの資金を自由に使っていた。

原告(元番頭)は創業オーナーに対して暦年の恨みがあり、

その子息である被告(弊職Client)を攻撃する手段として、

大平ゴルフの被告(弊職Client)に対する巨額の債権を請求しようと大平ゴルフのオーナー株主であると主張している。

原告(元番頭)によると創業オーナーから昭和50年頃に大平ゴルフの株式をもらっていたとのこと。

にわかには信じられず、

他方、とはいえ、創業オーナーはたくさんの会社を経営していたため、一つくらい、譲っているかもしれない。

最近のことならともかく、そこまで昔のことはよくわからない。。

しかし、原告(元番頭)が創業オーナーから株式を譲り受けた証拠は特段存在しない。

そういう状態だからこそ、

もし仮に原告(元番頭)が大平ゴルフのオーナーだと認定されたら大変なことであるが、

まさかそんなことはないと思い、訴訟活動を行って、2年ほどたち、訴訟は終盤に差し掛かった。

日本の訴訟は平均1年半程度であり、

まず当事者同士で主張と証拠による立証を繰り返して、論点を減らしたうえで、

最後に残った論点についてだけ、証人尋問を行う。

その証人尋問の段階に移行した。

その時である。

原告(元番頭)から「ようやく見つかりました」とのことで、

創業オーナーから昭和50年前後にもらったという大平ゴルフの株券が証拠提出された。

厚さは2cmくらいの立派な株券である!

しかもかなりの年数がたっているらしく、やや古ぼけている!!

創業オーナーは原告(元番頭)に大平ゴルフを譲っていたのか!??

ここではたまた我々は、楽勝だと思っていた裁判の流れが急に変わり、

絶望の淵に追い込まれることとなった。

そんなはずはない。

証人尋問まであと3ヶ月である。

証人尋問が終わると、裁判所は心証を形成し、判決が下りるか、そうでなくても敗訴的な和解になってしまう。

我々弁護団は、こういうこともあるさ!ということで敗色濃厚、絶望放念状態であった。

私は諦めきれず秘書に「東京都港区の全て文房具屋を訪問し、株券台紙を全種類一枚ずつあつめてくるように」と指示した。

ほとんどやぶれかぶれであった。

他の弁護士から、秘書をそんな無益なことに使うなと言われた。

しかし、1ヶ月ほどしたところ、秘書から「同じ模様の株券台紙」がありましたと報告が来た。

株券は、株券台紙というものがあり、かなりの厚紙であるが、

それをプリンター用紙として、プリンターで会社名や株数を印字して作成することが多い。

文房具屋にはその株券台紙が売ってあるのである。

その株券台紙には、1万円札のような透かしや複雑な模様が入っており、

ある株券台紙が、原告(元番頭)が創業オーナーからもらったという株券に描かれていたのである。

しかしよく見るとその複雑な模様は、色遣いが異なっていた。

形は全く同じなのだが、色遣いが違うのである。

7色の色が薄く付いているが、その順番が違うのである。

我々はその株券台紙の製造メーカーを調べた。

日本には株券台紙の製造メーカーは4社しかおらず、4社の製造メーカーが複数の種類の株券台紙を製造しているとのこと。

我々はその株券メーカーに問い合わせをした。

 

原告(元番頭)が創業オーナーからもらったという株券の台紙は、確かにその製造メーカーが製造したもののようだった。

それだけでは原告(元番頭)が創業オーナーからもらったという株券を否定する理由にならない。

あせった。

しっかりした製造メーカーが製造した株券だということになってしまう。

そこで、株券台紙の模様の色づかいが異なっていることについて直接問い合わせを行った。

その製造メーカーによると「株券台紙の色遣いは3年おきにモデルチェンジしている」

「原告(元番頭)が創業オーナーからもらったという株券は、6年前のモデルである」

なんと!昭和50年前後の株券ではないことが確定した!!!

原告(元番頭)は創業オーナーからもらったとして株券を「偽造」していたのである。

なんとまた「偽造証拠!」

証人尋問の際に原告(元番頭)が「昭和50年くらいに創業オーナーからもらった!」と証言するので、

株券台紙の製造メーカーの報告書を証拠提出したら、原告(元番頭)はタジタジになり、

一気に裁判の流れが変わり、劇的な逆転裁判。

私の裁判は毎回毎回、ドラマよりもドラマチックである。アメリカの法廷ドラマも目じゃない。

ただ、こう考えると、私が担当する裁判では毎回毎回「偽造証拠」が提出されているということであり、

毎回毎回、私が「偽造証拠」を暴くという構造が定着したようである。

偽造証拠を発見することは、逆転裁判につながる。

「偽造証拠を発見すること」が私の趣味である以上、次々と「偽造証拠」を発見することは楽しくて仕方がないが、

裁判にここまで偽造証拠が提出されているというのは、

私がナメられているのか、これが人間の性というものなのか。

これ以降も、私はつぎつぎと偽造証拠を発見することとなるのですが、

すでに今年も何件か偽造証拠を発見しています。

完全に時効になったと思われるものから、

おもしろいネタとして随時デフォルメしつつ紹介することとします。

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