M&Aの各種スキームの特徴とメリット!

  • 2020年2月12日
  • 2023年5月3日
  • M&A

M&Aによるメリットを考える場合、M&A手法(スキーム)ごとの検証を欠かすことはできません。ここでは、M&A手法ごとにどのようなメリットが生じるのかについて解説をしていきましょう。

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M&Aの手法(スキーム)にはどんなものがあるのか

まずM&A手法(スキーム)には、どのようなものがあるのかを押さえておきましょう。

合併

合併は複数の企業が組織的に一体化するものです。最も強固な企業結合方式だといえます。会社を承継する主体により「吸収合併」と「新設合併」の2種類に分類することができます。

しかし、新設合併の場合、新たな会社の設立になるため、手続きや費用の面で不利になることから、実際には、ほとんどが吸収合併で行われています。

株式交換・移転

株式交換・移転は、子会社となる企業の発行済の株式をすべて完全親会社となる企業の株式と強制的に交換するものです。子会社化する企業は、従来の企業形態が維持されます。

株式譲渡

株式譲渡は、 売り手企業がすべての保有株式を買い手に売却して、会社の経営権を譲り渡すものです。手続きが簡易なために非上場の中小企業では、最も多く用いられる手法です。

ただし、上場会社の場合はTOB(株式公開買付け)が必要になることがあります。

共同特殊会社方式による経営統合

共同特殊会社方式による経営統合は、経営統合を行う複数の企業が、共同特殊会社を新設するものです。それぞれの企業の株主は、新設された共同特殊会社の株式と交換をします。これにより共同特殊会社は、それぞれの企業の親会社という立場になります。

近年「〇〇ホールディングス」とか「△△グループ」という会社をよく耳にすることがありますが、ほとんどはこの共同特殊会社の名称です。

共同特殊会社方式は、この株式の交換による方法の他に「会社分割と株式交換併用による経営統合」と「会社分割・ぬけ殻合併方式による経営統合」があります。

「会社分割と株式交換併用による経営統合」は、経営統合を目指すA社とB社のうちA社の方を会社分割して、新会社A-a社を設立するというものです。従来からあったA社を共同特殊会社に変貌させて、それまでの事業自体は新会社A-a社が引き継ぎます。

「会社分割・ぬけ殻合併方式による経営統合」は、まずA社とB社がそれぞれ会社分割をして、新会社A-a社とB-b社を設立します、そのうえで新会社に従来の事業を移転させます。その後A社とB社が合併をして、共同特殊会社に変貌させるというものです。

事業譲受

事業譲受は不採算部門を分割して別会社に譲渡するものです。

事業譲受は「事業全部の譲渡、譲受、賃貸」「事業の重要な一部の譲渡」「事後設立」に分類できます。この場合の「事業」は、有形の動産及び不動産、債券、債務、特許権、ノウハウ、取引先との関係性、人材等を含む包括的なものが該当します。したがって、単なる財産の譲渡や債務の引継ぎは、事業譲受には該当しません。

MBO(management Buyout)

MBO(management Buyout)は、マネジメント(経営陣)が株主から自社株式を買い取ったり、事業部門統括者が当該事業部門を取得したりするものです。

近年、事業のリストラを進める手法として増加しています。

資本・業務提携

資本・業務提携は、他の企業と穏やかな協力関係を形成するものです。会社の一部出資を引き受ける「資本提携」と製造委託、共同研究や販売協力を行う「業務提携」があります。

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各M&A手法(スキーム)の特徴とメリット

合併のメリット

合併は複数の会社が一体化することから、強固な組織として構築することが可能になります。合併では、ほとんどのケースで吸収合併が行われますが、これにより存続会社の許認可が承継されるという利点があります。

また被合併会社の資産と負債が包括的に合併会社に移転できることから、被合併会社は、清算手続きを行うことなく消滅することができます。

被合併会社に欠損金がある場合は、次年度以降7年間でゼロ円になるまで黒字と相殺できるため節税をすることができます。

株式交換のメリット

株式交換は、自社の株式を対価として他社の株式をすべて強制交換するものです。つまり、子会社が保有する株式を自社が発行する株式と交換をすることで、完全子会社化を図るという方法です。

株式交換のメリットを買い手と売り手それぞれの立場からみていきましょう。

買い手のメリット

株式の交換によって取引が成立するために、子会社の株式取得に現金を要しないというメリットがあります。株主総会で株式交換が承認されると、子会社側の全株主は、株式の交換に応じなければいけないとされています。これにより、100%子会社化が可能になります。

公開買付けや市場買付けにおいては、発行されている株式をすべて取得することは、現実的に不可能です。このため、完全子会社化を図りたい場合は、株式交換による方法が最善です。

さらに特定の少数株主を親会社の株主から除きたい場合は、親会社の株式の代わりに現金等交付する「スイーズアウト」という手法を用いれば、株主構成メンバーの調整が可能になります。

売り手のメリット

売り手側は、親会社の株主総会で子会社が決議されると、強制的に株式が交換されるために、100%子会社という安定した地位を確立することができます。

しかも子会社とはいえ、法律的には親会社とは全く独立した別法人であるために、従業員の抵抗も比較的少ないものとなります。また法人格の変更が生じないために、基本的にそれまで取得した許認可への影響はありません。

株主にとっても、親会社の経営力に対する評価から、交換した株式の株価が上昇することが想定できます。しかも一定要件を満たせば、株式交換によって取得した株式には、売却するまで課税が発生しません。また当然の権利として、親会社の経営方針に対して株主として意見を出すことが可能になります。

株式譲渡のメリット

株式譲渡は、手続きが比較的簡易であることから、非上場の中小企業で最も多く実施される手法です。

株主総会の承認を要さないので、買い手と売り手が合意できれば、売り手企業のオーナーは、早い段階で直接譲渡代金が入ります。この場合の代金には、独自のノウハウ、ブランド、優良顧客との取引関係等の、いわゆる「のれん」が含まれますから、買い手が「のれん」に対して高評価をした場合は、その価値が売却価格に上乗せされることになります。

税金面も、事業譲渡では、会社に対して約30%の法人税が課税されますが、株式譲渡では、個人に対する所得税・住民税として約20%の課税になるので有利です。

また会社は基本的に現状のまま存続するので、対外的には経営者が代わる以外には、大きな変化はありません。

共同特殊会社方式によるメリット

共同特殊会社方式では、合併とは異なり組織が強制的に統合されることがないので、異なる企業文化や賃金体系を維持しながら、グループで統一された価値観に基づき、統合した効果を実現することができます。

また特定の事業の利益にとらわれることない本社機能を構築することによって、新事業を構築しやすい組織の再編を実行しやすくなります。

さらに、共同特殊会社のコントロールによって、リスクが組織全体に及ばないように、リスクの分散化と遮断を図れる体制づくりが可能になります。

この他、連結納税制度適用による節税が可能になるといったメリットがあります。

ただし、共同特殊会社方式は、各社が単にグループを形成しただけでは、真のメリットは機能しません。事業を集約して、傘下企業を事業別に再編することが重要です。そのうえで、共同特殊企業内に企画立案する機能を保持することで、共同特殊会社方式によるメリットが最大限に発揮できるのです。

事業譲受によるメリット

事業譲受には、譲渡側の企業と譲受側の企業が存在します。

譲渡企業のメリットは、事業・資産・負債のうち、特定の一部だけを取引の対象とできることです。

一方、譲受企業のメリットとして、同じく事業・資産・負債のうち、特定の一部だけを取引の対象とできるほか、引継対象とする債務を特定できるために、対象会社の偶発債務を負う可能性が低いという点も挙げられます。

また取得原価(のれん)が発生する場合は、適正な金額であれば、税務上の償却が認められるために、節税効果を得ることができます。

さらに、従業員の雇用条件を企業の事情に応じて再設定できるという点が挙げられます。

MBO(management Buyout)によるメリット

MBOは、経営陣がオーナーから株式等を買い取り、経営権を獲得するものです。しかし、経営者が自己資金を投じて対象会社を買収するやり方は、個人が多額の借金を背負うことになるため現実的とはいえません。

このため、経営陣と投資会社が共同出資をして、受け皿会社を設立するという手法が用いられています。この受け皿会社に金融機関が融資を行って、買収を行うというのが一般的な流れです。

これにより、新会社で事業を始めたい経営陣と見込みのある事業に投資したい投資会社の利害が一致します。さらに金融機関においても、新規ビジネスを展開できるチャンスになります。

譲渡会社を買収した後は、受け皿会社を特殊会社として運用するという方法や対象会社を吸収合併するという展開が想定できます。

買い手(経営陣)と売り手(オーナー)のメリットとしては、この他に次のような事柄があります。

買い手のメリット

買い手である経営陣のメリットとしては、投資会社との提携によって、少ないリスクで経営権を取得するということが挙げられます。また会社の経営資源である顧客、従業員、ブランド、ノウハウ、組織風土をそのまま引き継ぐことができます。何より、資源の隅々まで知り尽くしているということが大きな財産です。

さらに、オーナーとのしがらみから解放され、自由に経営手腕を発揮できる点も大きなメリットとして挙げられます。

売り手のメリット

売り手(オーナー)にとっては、一般的なM&Aで第三者の会社に売却する場合と比べて、周囲から「リストラ」という負のイメージで見られないということがあります。

また一般的なM&Aでは、長年しのぎを削ってきたライバル会社に売却するという事態もないわけではありません。しかし、MBOでは友好関係を維持でき得る可能性が高く、今後の取引が期待できます。

さらに従業員の雇用関係がそのまま維持できると言う点も大きなメリットとして挙げられます。

まとめ

ここまで、M&A手法(スキーム)によるメリットについて検証をしてきたところです。

M&Aは、合併によるものだけでなく、この他さまざまな手法によって実施されています。M&Aを実行するに際して、どの手法が自社にとって最適なのかという検討も非常に重要です。

最善の相手とタイミング、さらには手法を見極めて、M&Aのメリットを最大限に生かしましょう。

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