合併登記及び登記必要書類!

会社合併の最も重要なステップは、対外的効力を具備するための登記申請です。

合併の実施にあたっては、登記までの全体のスケジュールを想定した上で、添付書類や手数料も十分考慮しなければなりません。

本記事では、会社合併(吸収合併・新設合併)の基礎知識と手続きの流れとともに、登記方法について網羅的に解説します。

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【基礎知識】会社合併の手法

会社合併のスケジュールでは、登記だけでなく関係者との調整時間も考慮されるべきです。ここではまず合併手法について簡単に紹介し、その違いを区別できるようにします。

【用語解説】存続会社・消滅会社とは

消滅会社:合併により消滅する企業

存続会社(または新設会社):合併後も経営を存続させる企業

吸収合併

吸収合併とは、一方の企業(=存続会社)がもう一方の企業(=消滅会社)を吸収するかたちで行われる会社合併の手法です(会社法2条27号)。消滅会社の権利義務や許認可はすべて存続会社に承継し、のちに消滅会社の解散手続きをとります。

吸収合併における対価は、株式・社債のほかに金銭でも受け渡し可能です。

新設合併

新設合併とは、新しい会社(=新設会社)を設立した上で、複数の既存会社(=消滅会社)を新設会社へと吸収させる合併手法です(会社法2条28号)。同じく既存会社の権利義務や許認可はすべて新設会社へと承継し、のちに既存会社各社で解散手続きをとります。

新設合併の対価は、株式・社債による受け渡しに限られます。金銭での受け渡しは出来ません。

簡易合併・略式合併

会社合併は株主総会決議による承認を必要としますが、一定要件を満たすことで左記承認を省略できます。株主総会による承認を省略する合併手法を「簡易合併」または「略式合併」と呼びます。

【簡易合併】(会社法第796条2項)

要件:合併対価が存続会社の純資産額の20%以内であること

【略式合併】(会社法第796条1項)

要件:下記①と②の両方を満たすこと

・吸収合併であること(新設合併は不可)

・存続会社が消滅会社の議決権の90%以上を保有していること

以上の違いを押さえた上で、合併登記までのスケジュールと登記時の手続き方法を確認しましょう。

合併登記までの流れ

合併登記は「効力発生日」の2週間以内に行わなければなりません(会社法921条)。

当初決めた効力発生日までの間に、関係者の利益保護(下記③)・株主総会での承認(下記④)を済ませる必要があり、合併登記のスケジュールも左記事情に合わせて決めなければなりません。

【参考】合併登記の流れ

・合併契約の締結・取締役会の承認

・株主&債権者への公告

・関係者の利益保護

③-1:債権者の異議申述(期限:④の1ヶ月前)

③-2:反対株主による買取請求(期限:⑥の20日前から前日)

③-3:従業員や労働組合との協議(期限:④の2週間前の日の前日)

・株主総会での承認(効力発生の前日までに)

・株券提出の官報公告(消滅会社が株券発行会社である場合)

・会社合併の効力発生日

・合併登記(②もしくは④から2週間以内)

・事後開示(効力発生日から6ヵ月間)

スケジュール中にある官報公告では、官報取扱い代理店への申請から公告掲載までに2週間程度のタイムラグが生じます。

以上のことから、登記実施まで全体で1ヶ月半~2ヵ月程度の余裕をもって合併鉄手続きを進めるべきでしょう。

【吸収合併】登記方法・必要書類

吸収合併の効力発生日は「合併契約書で取り決めた日」とし、以降2週間以内に存続会社側で変更登記・消滅会社側で解散登記を行います。はじめに、登記申請先を整理しておきます。

【吸収合併時の登記申請先】

存続会社:本店所在地を管轄する法務局(変更登記)

消滅会社:主たる事務所を管轄する法務局(解散登記)

※存続会社・消滅会社のあいだで管轄局が異なる場合

…存続会社側の管轄局を経由し、変更登記と解散登記をまとめて行うことが出来ます。

必要書類

吸収合併時の必要書類は、存続会社側・消滅会社側で以下のように異なります。

【存続会社側】必要書類一覧

・変更登記申請書

・吸収合併契約書

・株主リスト(※株主名簿との違いに注意/詳細は後述)

・合併契約承認時の株主会議議事録

・登録免許税の算出根拠を示す書類

(以下は必要に応じて準備する書類)

・債権者保護手続きの関連書類

…公告のコピーおよび催告証明書など

・債権者を害する恐れがないことを証する書類

…異議を述べた債権者がいる場合のみ必須。弁済金受領書などを提出

・資本金計上証明書

…合併により存続会社の資本金が増加する場合に必須

・株券提出公告のコピー

…消滅会社が株券発行会社である場合に必須

・消滅会社の登記事項証明書・印鑑登録証明書

…消滅会社の本店所在地を管轄する登記所と申請先が異なる場合

・委任状

…司法書士等に依頼する場合

 【消滅会社側】必要書類一覧

・解散登記申請書

※その他必要書類は存続会社が提出するため、基本的に消滅会社は申請書のみの準備で構いません。

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【新設合併】登記方法・必要書類

新設合併の効力発生日は「合併先会社の設立日」とし、以降2週間以内に存続会社側で合併による設立登記・消滅会社側で解散登記を行います。ここでもまず、登記申請先を整理しておきます。

【新設合併時の登記申請先】

存続会社:本店所在地を管轄する法務局(合併による設立登記)

新設会社:主たる事務所を管轄する法務局(解散登記)

※存続会社・消滅会社のあいだで管轄局が異なる場合

…存続会社側の管轄局を経由し、設立登記と解散登記をまとめて行うことが出来ます。

必要書類

新設合併の登記では、新設会社側で「定款」「代表取締役の選定に関する書類」「役員の就任承諾書」をすべて添付しなければならない点に要注意です。

同じく、新設会社側・消滅会社側の両方で必要書類を紹介します。

【新設会社側】必要書類一覧

設立登記申請書

・新設合併契約書

・定款

・代表取締役の選定に関する書類

・役員の就任承諾書

・株主リスト(※株主名簿との違いに注意/詳細は後述)

・合併契約承認時の株主会議議事録

・登録免許税の算出根拠を示す書類

(以下は必要に応じて準備する書類)

・債権者保護手続きの関連書類

…公告のコピーおよび催告証明書など

・債権者を害する恐れがないことを証する書類

…異議を述べた債権者がいる場合のみ必須。弁済金受領書などを提出

・資本金計上証明書

…合併により存続会社の資本金が増加する場合に必須

・消滅会社の登記事項証明書・印鑑登録証明書

…消滅会社の本店所在地を管轄する登記所と申請先が異なる場合

・株券提出公告のコピー

…消滅会社が株券発行会社である場合に必須

・委任状

…司法書士等に依頼する場合

 【消滅会社側】必要書類一覧

・解散登記申請書

※その他必要書類は新設会社が提出するため、基本的に消滅会社は申請書のみの準備で構いません。

【共通の注意点】株主リストと株主名簿の違い

平成28年以降、合併登記の際には「株主リスト」の提出が求められるようになりました。

株主名簿とは記載すべき内容が異なるため、作成時は違いに十分注意しましょう(下記表)。

比較項目株主名簿の内容株主リストの内容
共通点株主の氏名又は名称

株主の住所

その株主が保有している株式の数

相違点それぞれの株式の取得日

保有している株券番号

議決権数

議決権数割合

合併登記でかかる手数料

合併登記の際は、新設合併・吸収合併共通で「①登録免許税」「②官報公告の掲載料金」の2種類の費用が最低でも生じます。

①登録免許税

登録免許税については、合併手法によりで計算方法が異なる点に注意しましょう。

吸収合併時の登録免許税

吸収合併の際の登録免許税は、消滅会社・存続会社で以下のように異なります。

【吸収合併時の登録免許税】

消滅会社:一律3万円

存続会社:合併によって増えた資本金×0.15%(下限3万円)※

※吸収合併による資本金の増加分が消滅会社の資本金を上回る場合、左記超過分の0.7%が加算されます。

新設合併時の登録免許税

新設合併の際の登録免許税は、消滅会社側では吸収合併時と同じく一律3万円であるものの、新設会社側では以下のように計算方法が異なります。

【新設合併時の登録免許税】

消滅会社:一律3万円

存続会社:新設会社の資本金×0.15%(下限3万円)※

※合併直前の消滅会社の資本金が一定額を超える場合、左記超過分の0.7%が加算されます。

②官報公告の掲載料金

官報公告の掲載料金は、1回あたり4万円~8万円と幅があります。

1行あたり3,589円(税込/2020年2月時点)となり、文字数や行数により変化します。

異議を述べられる債権者への公告は個別に行う必要があるため、高額化の予測は十分立てておく必要があるでしょう。

詳細は全国官報販売協同組合の掲載料金ページリンク)で確認可能です。

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まとめ

会社合併の登記では、当事会社が協力して収集すべき書類が多岐に渡ります。

官報公告や関係者利益の保護などを含め、効力発生日までに所定の手続きを終えられることも重視しなければなりません。

弁護士・司法書士などの専門的支援を受けるタイミングは、合併に向けて具体的に動き始める段階からがベストです。

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