医療法人のM&Aにおける非営利性の問題!

本記事は、医療法人への出資や経営への関与を検討している株式会社等の営利法人の経営者の方、及び医療法人の譲渡を検討している理事長の方に向けたものです。

医療法人のM&Aでは非営利性が厳格に要求されます。営利法人は医療法人に出資することはできても社員になることはできず、持分の定めのある社団医療法人に出資した営利法人は、解散時を除いて出資の払戻しを請求できないというのが厚生労働省の見解です。利害関係のある営利法人の役職員が理事や社員を兼ねられるかも問題となります。

医療法人のM&Aを検討している方が、医療法人の非営利性との関係でどのような制約があるのかが分からず悩んでいる場面を想定しています。

医療法人は非営利性が求められるため、営利法人がそのまま社員(オーナー)や役員となることには制約があり、これを把握しないままM&Aの形態を決めると、法令に抵触するおそれがあります。

そこで本記事では、医療法人のM&Aと非営利性の問題として、営利法人が医療法人の社員となれるか、理事又は社員を兼ねられるかについて説明します。

医療法人のM&Aと非営利性の問題

医療法人のM&Aにおいて最も留意すべき特殊性の一つに、「医療法人の非営利性」が挙げられます。

医療法人のM&Aにおいては、医療水準の確保等政策的な理由により「非営利性」が厳格に要求されることから、株式会社等一般企業のM&Aの場合と比較して、より多くの制限を受けます。したがって、医療法人のM&Aにおいては、この「医療法人の非営利性」との観点に、特に留意する必要があります。

以下では、医療法人のM&Aの場面において「医療法人の非営利性」が問題となる代表的な事例として、①営利法人が医療法人の社員(オーナー、すなわち株式会社における「株主」に該当する概念)になることができるか、②医療法人と一定の利害関係のある営利法人の役職員が、医療法人の「理事」(株式会社における「役員」に該当する概念)を兼務することができるか、及び③医療法人と一定の利害関係のある営利法人の役職員が、医療法人の「社員」(オーナー)を兼務することができるか、の3点についてご説明いたします。

営利法人が医療法人の社員(オーナー)になることができるか

まず、①営利法人が医療法人の社員(オーナー)になることができるかについて、営利法人は、医療法人に対する「出資」を行うことはできますが、「医療の非営利性」の観点から医療法人の「社員」になることはできないとされています。そして、これに関連して、平成19年4月1 日以前に設立した持分の定めのある社団医療法人について(※)、医療法人の「社員」が医療法人に対し出資を行った場合には(医療法人の社員は必ずしも医療法人に対し出資を行う必要はないため出資を行っていない社員も存在します)、自らが行った出資の払い戻し請求をして、任意に医療法人から「退社」することが可能ですが、他方で、医療法人に対し出資を行った営利法人は、上記のとおり、医療法人の「社員」になることができず、それゆえ「退社」との概念があてはまらないことから、医療法人に対して出資の払い戻し請求をすることができない(医療法人解散時のみ払い戻しを受けることが可能)、というのが厚生労働省の見解です。(※平成19年に施行された改正医療法により、平成19年4月1日以降、持分の定めのある社団医療法人を設立することができなくなりました。)

医療法人と一定の利害関係のある営利法人の役職員が医療法人の「理事」を兼務することができるか

次に、②医療法人と一定の利害関係のある営利法人の役職員が、医療法人の「理事」(株式会社における「役員」に該当する概念です。)を兼務することができるかについては、通達上、限られた例外的な場合を除き、原則として禁止されています(平20年3月30日厚生労働省医政局総務課長「医療法人の役員と営利法人の役職員の兼務について」)。

医療法人と一定の利害関係のある営利法人の役職員が医療法人の「社員」を兼務することができるか

他方、③医療法人と一定の利害関係のある営利法人の役職員が、医療法人の「社員」を兼務することができるかについては、法令及び通達上、何らの制限も存していません。しかし、「医療の非営利性」の観点から、厚生労働省としては消極的な立場にあります。

以上のように、医療法人のM&Aには、株式会社等一般企業のM&Aにはない特殊性があります。したがって、医療法人のM&Aを検討される場合には、十分に留意の上、医療法人のM&Aの実績をもつ専門家に相談されることをお勧めします。

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執筆者

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会所属 登録番号26775)

長島・大野・常松法律事務所に在籍の後、慶應義塾大学ビジネス・スクール及びペンシルベニア大学ウォートン校に留学し、ファイナンス理論並びにM&A及び不動産を専攻いたしました。不動産投資信託の上場案件に関与し、平成23年には最高裁判所において株式買取請求権に関する裁判において逆転判決を得ております。主として取り扱う分野は、M&A、株式買取請求権、非上場株式の価格の決定、企業価値評価、事業承継及び企業法務であります。詳しくは執筆者紹介を御覧ください。

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