M&A価格をアップする「交渉術」
M&A会社売却における「交渉」の重要性は論を待ちません。
ではどのように「交渉」を行えばよいのでしょうか。
声が大きければよいのでしょうか、態度がデカければ良いのでしょうか。踏ん反り返って偉そうにすればよいのでしょうか。相手を威圧すればよいのでしょうか。相手を圧迫的言辞で追い詰めればよいのでしょうか。
昔ながらの弁護士の中には、やたらとこのような交渉方法に固執する者がいます。昔はこれで通用していたのでしょう。
欧米のビジネススクールの「交渉理論」の授業では、これらは前近代的な交渉方法として、愚かなものとされています。
現在においては、交渉は「交渉理論」という科学の領域になっているのです。
交渉の前提としての情報収集・情報分析
「交渉理論」においては、交渉の前提として、情報収集・情報分析が非常に重要とされています。
M&Aに敷衍してみますと、この「情報」というのは、売主自身に関する情報、買主候補者に関する情報、売却する対象会社に関する情報がメインになりますが、それ以外に、対象会社の属する業界に関する情報や、商品の市場に関する情報、経済情勢なども重要な情報となってきます。
売主自身に関する情報
M&Aの際によくある売主自身に関する重要な情報としては、特に事業承継M&Aに多いのですが、オーナー経営者様の健康問題などで、時間が多く残されているか居ないか、売り急いでいるのか急いでいないのか、という点です。また例えば売主がいついつまでに銀行融資を返済しなければいけない、それまでに返済しないと破産しなければならないなどの資金繰りの問題で、いついつまでに対象会社を売却し、資金調達しなければならないとか、そのような場合も、売り急いでいるという状態、すなわち、売りたくて売りたくてたまらない状態になります。
売りたくて売りたくてたまらない状態の場合は、「時間」が敵になります。「時間」が掛かればかかるほど、タイムリミットに近づけば近づくほど、こちらの要求は通り難くなります。銀行融資の返済日前日になってしまったら、売主は、いくらでもよいので兎に角対象会社を売却しなければなりません。オーナー経営者様の健康問題が生じている場合も、同じです。オーナー経営者様が経営に関与しようにもできなくなるほど健康状態が悪化する前に対象会社を売却しなければいけません。
他方、買主候補企業は、特段、買い急いでいないでしょうから、時間が経てば経つほど、売主は交渉力を失って行き、買主候補企業は知らないうちに交渉力が増加してゆきます。
現在のM&Aにおいて、オーナー経営者様の健康問題が生じた会社が、買主候補企業に、異常なほど安く買い叩かれてゆくことが多いのは、これが原因です。
このような状況下にあるオーナー経営者様は、相当、綿密に計画を立てて、M&A会社売却を進めないと、全く希望に沿わない条件で、会社を売却せざるを得なくなるのです。
ですので、買主候補企業がこのような情報を把握し、本当に売主が売り急いでいるのならば、相当な交渉優位に立つことができますので、買主候補企業としては、このような情報収集に非常に力を注ぎます。
ですので、「交渉理論」においては、交渉の前提として、情報収集・情報分析が非常に重要とされているのです。
買主候補者に関する情報
M&Aの際によくある買主候補者に関する重要な情報としては、「実は買収したくてしたくてたまらない」というのがあります。
買主候補企業としては、「対象会社を買収したい!」と言えば言うほど、売主から見れば、「そんなに買収したいのなら、もっと値段を高くしようか、条件を有利に変更しようか」などなど考えられます。売主が売ろうとしているのは、世界に一つしかない会社です。対象会社は1社しかないのです。ですので、対象会社を売るか売らないか、誰に売るか、いくらで売るかなどということは、本来は、売主の自由であるはずです。そうですので、買主候補企業としては、あまり「対象会社を買収したい!」と言って交渉力を喪失するくらいなら、「条件が合えば買います」などなど、奥歯に物が挟まったような物言いをすることとなります。
買主候補企業が、「実は買収したくてしたくてたまらない」という気持ちになるのにはいくつか状況がありますが、一般的な議論は省略しますが、M&AM&Aをしたい買主候補企業というのはやはり業容拡大に意欲的であり、また、買主候補企業と十分なシナジーが出るような会社というのはなかなか売却されないからなのだと思います。
買主候補企業は対象会社を買収したくてしたくてたまらなくなればなるほど、交渉力を喪失してゆきます。正確にいえば、売主にそのことがバレればバレるほど、交渉力を喪失します。ですから、買主候補企業は、「条件が合えば買います」などなど、奥歯に物が挟まったような物言いをすることにより、交渉力の喪失を防止するのです。
売主としては、このような買収したくてしたくてたまらない買主候補企業が出現してきた場合は、さらにその他の会社にも買収を打診して、両者を天秤にかけるのです。
現在のM&Aにおいて、買収したくてしたくてたまらない会社が、売主の言いなりになり、異常に高い価格でM&AM&Aを行っていることが多いのは、これが原因です。
ですので、売主としては、このような情報を把握し、本当に買主候補企業が買収したくてしたくてたまらないのかどうか確認し、送ならば、相当な交渉優位に立つことができますので、売主としては、このような情報収集に非常に力を注ぎます。「交渉理論」においては、交渉の前提として、情報収集・情報分析が非常に重要とされているのです。
そのような情報収集方法
ではこのような情報はどのように収集すればよいでしょうか。
売主や買主候補企業にストレートに聞いてもはぐらかされてしまうのがオチでしょう。
受領した資料から客観的に分析するとか、打ち合わせの際に本題を聞くようなそぶりをしつついろいろ聞いてみるとか、、、。
貴社が現在置かれている状態を、弁護士法人M&A総合法律事務所の弁護士に話して頂きましたら、このM&A交渉の交渉力の状況はどのような状況なのか、どのような情報を、どのような方法で収集することが良いのか、など、M&A交渉戦略についてもご相談に応じています。
なお、裁判や訴訟も、交渉の一種です。ですので、交渉理論を修得したM&A弁護士は裁判・訴訟にも非常に強いということとなります。
すなわち、M&Aの過程において、どのように交渉を進めるべきかの方針についても、これらの諸般の事情を考慮して、検討することが重要です。